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「この本はまず実用的な本で、そして正統な社会科学の本だ」1

「身体の現代」計画補足・536

立岩 真也 2018/10/
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仲尾 謙二 20180930 『自動車 カーシェアリングと自動運転という未来――脱自動車保有・脱運転免許のシステムへ』,生活書院,300p. ISBN-10: 4865000860 ISBN-13: 978-4865000863 3000+ [amazon][kinokuniya]
 本センター客員研究員の仲尾謙二さんの本『自動車 カーシェアリングと自動運転という未来――脱自動車保有・脱運転免許のシステムへ』が刊行された。この本のもとになった博士論文の主査(大学院における主担当)を務めた私は、この本に「この本はまず実用的な本で、そして正統な社会科学の本だ」という短文を書かせてもらっている。この本がたくさん売れてほしいので、それを何回かに分けてここで掲載していく。



 この本はまず実用的な本だと思う。実用書の多くよりは値段が高いけれども、自動車を買うか買わないか、買い換えるか買い換えないかにはずいぶん大きなお金が関係してくるだろう。どうしようか考えている人、考えてもよいという人は、この本を買ってゆっくり読んで、考えるとよいと思う。まず第2章、六〇頁あたりをから読んでください。自分の車を持つのとカーシェアリングにするのとお金のかかり具合はどうかは一三八頁あたり。
 そしてすでにカーシェアリングをしている人にせよ、これからのことを考えようという人にせよ、自分がしていることやこれからするかもしれないことの位置、また「いわれ」を知ることは、それ自体けっこう楽しいことだと思う。自分が今していること、これからすることが、どんな流れの中にあるとわかり、自分のために、自分の身のまわりのこととして使っているものが、どのようにこれからの世の中にも関わってくるのかを見晴らすことができるということにもなる。どこをクリックするとどうなるというマニュアル本もあってよいけれども、原理とか成り立ちとかがわかった方が結局はよく頭に入るということはある。本書はそのような本でもある。第1部第1章をどうぞ。
 さて。カーシェアリングというものがあることはたいがいの人が知っていると思う。私もあることは知っていた。けれども、それが駐車場など経営している会社が参入し、ネットを使って、商売として、そこそこにやれていること、成長産業であることを知ったのは、仲尾さんが大学院にやってきたからのことだった。自分では自動車(自家用車)を使わないという事情もあるからだが、私は素朴に知らなかった。それで、近所の有料駐車場を通りかかった時にちらっと見ると――私は、京都市街の北、北区、北山とか上賀茂とか呼ばれる、仲尾さん(以下著者)と似たような辺りに住んでいる――駐車場の一角にシェアリングの車を見つけて、こんなところにあるのだと思った(五九頁・図1の上の方)。タイムズ24の人が語っているが(七五頁)、以前はなにか「エコ」なものとして聞いていたものが、普通の、自動車の利用法を提供する商売として、これまでになかった商売として成立している。そういうことが現に起こっている。そして利用者にとって「まずまず」のものとして存在している(七六頁)。


 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20182536.htm
にもある。


UP:2018 REV:
仲尾 謙二  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究 
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