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星加良司『障害とは何か』の2の04

「身体の現代」計画補足・460

立岩 真也 2018/01/17
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/1998831853717125

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立岩真也編『社会モデル』表紙   『現代思想』2018年1月号 特集:現代思想の総展望2018・表紙   星加良司『障害とは何か――ディスアビリティの社会理論に向けて』表紙

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 『現代思想』2018年1月号が発売されている。
http://www.arsvi.com/m/gs2018.htm#01
 そこに載っている私の連載の第141回「星加良司『障害とは何か』の2」 http://www.arsvi.com/ts/20180141.htm
を断片的に分載していく。今回はその第4回。立岩真也編『社会モデル』
http://www.arsvi.com/ts/2016m2.htm
の購入者には、この回の原稿を収録した増補版を無償で後日提供します。

 「■不利益の集中  次に、これが星加の本の一番大切な部分であるはずだが、問題にされるのはたんなる不利益ではない。「〈ディスアビリティとは、不利益が特有な形式で個人に集中的に経験される現象である〉」([194-195])とされる。  不利益の複合化について。「個々の社会的状況における諸々の「社会的価値」と「個体的条件」との関連に規定されて生じる不利益が重なる状態を、不利益の「複合化」と呼ぶ[…]情報アクセスについても移動についても就労についても、それぞれに対応した「社会的価値」を満たせない状態にあるために、様々な場面で不利益を経験してしまうというのが、不利益の複合化ということになる」([198])。「不利益が複合化するという事態は、あらゆる事柄について「できない」状態にあるということのみならず、そのように特定の個人に不利な「社会的価値」のリストが、我々の社会に存在していることの現われでもある。ある特定の「社会的価値」に関して不利な「個体的条件」を抱えている人はあらゆるところに見出すことができ、そのこと自体は普遍的だから、その限りで「障害者」と「健常者」の間に質的な区別はないのだが、そうした個別の「社会的価値」が集積された「社会的価値」のリストとの関連では、「障害者」は他の人々とは異質な状況に置かれているのである。これは、「障害者」というカテゴリーが、生産能力を要求する「社会的価値」との関連で創出されたものであり、またその生産能力を要求する「社会的価値」が社会の編成の基底に置かれている、ということと関連しているだろう。つまり、不利益が「障害者」に集中的に経験される蓋然性が高いという意味で、不利益の複合化という現象はディスアビリティに特徴的な要素、あるいは先鋭化して現れる傾向として把握できるのである」([199])。  次に「複層化」。「特定の社会的活動において「できない」状態になると、そこから自動的に他の社会的活動に関しても社会的状態が悪化し、不利益が生じてくる」。「こうした不利益の増幅は、より「軽度」な不利益がより「重度」な不利益へと変換されていく過程でもある。たとえば、移動に関して不利益を受けていることによって自動的に職を得る機会が失われてしまえば、当事者の経験する「障害」は「重度」化する。さらに、労働に関する不利益が、労働に応じた所得の分配機構を通じて、様々な社会参加における不利益や「自己決定」に関する不利益へと変換されていく[…]。[…]諸々の「社会的価値」は、その重要度や手段−目的関係において階層化されており、さらにそうした階層間には明示的・非明示的な結び付き(たとえば、尊厳死をめぐる議論において「生きていくこと」の価値と「体を自由に動かすこと」の価値とが安易に結び付けられるように、別の水準にある「社会的価値」の間に一様な関係が想定されること)が存在するから、「社会的価値」との関連で生じる不利益もその階層構造に対応して増幅されていくのである。こうした事態を、不利益の「複層化」と呼ぶ」([200])。  「障害者の経験する不利益は「複合化」され「複層化」されることによって集中していく[…]。確かに不利益の「複合化」も「複層化」も、障害者に対して固有に生起する現象ではない。しかし、生産能力を要求する「社会的価値」を基底に諸々の「社会的価値」のリストが編成されていること、また主に機能的な観点からそうした諸価値が階層的に連結されていることを踏まえれば、障害者に対して不利益が集中する傾向が強いということは言えよう。また[…]障害のインペアメントの側面に関わって、非制度的位相において不利益が増幅される過程も存在し、その意味でも「不利益の集中」はディスアビリティ現象に特徴的なものとなる」([202])。」

 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20182460.htm
にもある。


UP:2017 REV:
病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇『現代思想』 
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