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早川一光の後で
立岩 真也
2018/12/15
医師早川一光を語る会――西陣の医療から総合人間学へ 於:立命館大学 朱雀キャンパス
http://www.ritsumei.ac.jp/research/health-c/news/article.html/?id=18
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[表紙写真クリックで紹介頁へ]
※当日、講演と最後のシンポジウムで発言の機会を与えられました。後者の方が大切なことをお話しできたかもしれません。記録があるのであれば、そのうち公開させていだだくこともあるかもしれません。
◆
病者障害者運動史研究
◆早川 一光・立岩 真也・西沢 いづみ 2015/09/10
『わらじ医者の来た道――民主的医療現代史』
,青土社,250p. ISBN-10: 4791768795 ISBN-13: 978-4791768790 1850+
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※ 1850+
■インタビューの後で 立岩真也
■1 あった(らしい)こと・補遺
■十全会病院/堀川病院
■終戦後・前
■太田典礼/松田道雄
■党との距離に関わる事情
■だが大きな分岐にはならない
■変化は後で起こる
■早川
■2 何を継げるか
■成功と苦難とは同じところから発している
■基本的な仕組み
■支払う制度の方向について
■支払う制度の決め方について
■組織において
■人について
■介入の自由を認めること
■結語――仁医をあきらめ、同時に、可能にする
■新聞報道
◆「わらじ医者」早川一光さん、親交の50人が語る情熱の足跡
京都新聞社: 2018年12月16日 14時00分
写真:早川さんの思い出や、引き継ぐべき課題について話す登壇者(15日午前11時50分、京都市中京区・立命館大朱雀キャンパス)
ご覧ください→
https://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20181216000036
「京都の地域医療に尽力し、今年6月に94歳で亡くなった「わらじ医者」早川一光さんの足跡をたどる「医師早川一光を語る会 西陣の医療から総合人間学へ」(実行委主催)が15日、京都市中京区の立命館朱雀キャンパスで開かれた。生前を知る関係者や市民ら約50人が登壇。早川さんが果たした役割を振り返り、死後に残った問いや課題を考えた。
早川さんと親交があった元NHK解説委員の行天良雄さんは、早川さんが京都・西陣で医療に携わり始めた戦後まもない時期に医療保険制度が形作られ、地域の医師らがお金のない住民を医療につなぐために活動したことを紹介。中でも「早川先生が一番実行した人だった」と評価した。
早川さんをインタビューした経験がある立命館大大学院の立岩真也教授は、早川さんが院長、副院長を務めた堀川病院(上京区)が住民主体の運営だったことを挙げ、病院医療が大きな比重を占める現代においても「利用者や市民らが医療のあり方、病院経営のあり方に現実的な影響力を及ぼす道があるのではないか」と述べた。
同病院の在宅医療に老年医の立場で助力した奈倉道隆さんは、往診に力を注いだ早川さんについて「西陣地域全体を病院ととらえていた」と語った。同病院でともに働いた医師や元職員は、患者や家族の側に立ち、生活環境にも目を配り診療した姿を懐かしんだ。
公益社団法人「認知症の人と家族の会」の高見国生前代表理事は「早川先生の情熱を継承し、時代に合わせて創意工夫することが大事だ」と呼び掛けた。」
より正確には以下↓
◆
『わらじ医者の来た道――民主的医療現代史』
所収の「インタビューの後で」の「介入の自由を認めること」の(本文の)全文
「□介入の自由を認めること
ここまでは人や人が受け取る金のことだった。もちろんその他に様々な問題が起こることがある。それがどこに起こりやすいかもここまで述べたことから明らかである。要求・主張が聞きとれないそして/あるいは聞かれない場、それでよい、しかたがないということにされている場、精神病院や知的障害者や高齢者がたくさんいる施設で問題はより起こりやすい。どうするか。早川へのインタビューの前後、『造反有理』の後に、おもに精神病院のことについて書いた連載で考えてきたのもそのことについてだった。より詳しくはそれを本にした立岩[2015b]で述べることになるから、ここでは簡単に幾つかを。ここまで述べたこととほぼ同じことを言うのだが、順序などすこし変える。
様々に起こるできごとについて、それを直接に政府・行政が統制するという方法もある。もちろんそれはそれで必要なことがある。ただこれは、しばしばあまりあてにはならない。一九八〇年前後、全会事件が再び国会で取り上げられた後、八五年に医療法が改定されて監視が強められることになったが、それでもたいしたことはできてこなかった。一つひとつを見ていられないということもあるだろう。会計に関わる明白だがさほど大きくはない違反といったものが専ら監視・監査の対象になり、それ以上のことはめったに起こらない。
では地方に委ねればよいか。十全会病院事件の時も、地方(革新)行政と(革新)医師会がつながっていたことが動きを悪くした可能性があると述べた(→▼頁・註▼)。この時、(議会ではそれなりに政党も動いたのだが)「革新」側が「健全な批判勢力」として存在していなかったことがかえって事態の改善を遅らせた可能性がある。そのようなつながりは排するべきだ。ただそこにあったのは、たんに医師会が選挙を応援したといったことではない。十全会はその当時の――今でも基本的には続いている――制度下において、とくに認知症高齢者についての実際の需要に応えた、行政の側は供給先としてあてにしたということがあった。だからそのような仕組みを廃するべきだとは考えるし、そのことを述べたが、なかなか難しいことでもある。
だから同時に、実情を知り、その問題を指摘し改善を求めることを誰もができるようにするのがよい。
その可能な一つが、堀川病院が(かつて)とった理事の数を住民側八対病院側七にするといった体制になるだろう。ただ、その人たちが常に地域住民である必要、直接の利用者だけである必要はないと、私なら面倒だから遠慮するだろうと思ってしまう私は、考える。利用者は利用者であって、しかもほとんどは一時的な利用者であり、その仕事のことをよく知っているわけではないし、通常は関心があるわけでもない。むしろ、これは他人から得ること全般について言えることだが、自分は知らないから他人やその組織を利用する。運営そのものを担う、担ってもらうというやり方はなかなかにたいへんなことではある。まじめにやれば早川がインタビューでも述べたようになかなか大変であり、でなければ形骸化してしまう。
そうして考えると、一つ、経営そのものに経営に利害のない人(たち)として関わるという方向と別に、またときにそれと並行して、そこでなされている経営と実践とを知ること、そこに介入することが認められることである。早川の話を聞いてなお、あるいは聞いたから、直接に経営するというより、介入する、実態を示させる、改善を求めるという方向をとる方が現実的であり効果的であると考える。それがおかしなことでない理由は既に述べた。
病人は、医療を切実に要する人であるが、逆の効果を生み出してしまうような過剰なむしろ加害的な医療を受けることを歓迎することはない。しかし私(たち)が是認するとした出来高払いの払い方も一つの背景になって、利用者の不利になることが起こる。弱っている人が多いのだから、なおそうした傾向は強くなる。通常の市場におけるより供給側が強くなってしまう。とくにそうした病院・施設では、供給側でない人たちが関わる必要、実際を知り、そこに介入できるようにする必要がある。
加えて、受け手の側だからわかることがあるというのであれば、その利用者側が加わるべきだとなる。長く関わり、また病院に居続けることになって、実際の処遇をされないとわからないことをわかる人たちがいる精神医療の領域ではとくにこうした介入が必要とされる。そして経済的な益を得ない側にいることが必要だ。だから利用者やその利害を代弁する人・人たちの関与があった方がよい。
そんなことを目指す行動が自発的に起こったとしても、それを組織が自発的に受け入れるのはなかなか難しい。そして、それはそうした介入が必要な、よろしくないところであるほどうけいれようとしない。他方、まともに受け止めまともな仕事をしようとするところは困難に陥ってしまうこともありうる。そのことをここで述べてきたのだった。個々に努力しても難しい。むろんそれを否定するわけではない。それを可能にまた容易するためにもどうしたらよいかということである。大きくは金の流れ、流し方の問題だが、それはもう述べた。
とくに誰と特定することなく、知り、介入し、要求する自由を政治・強制力が保証するようにするのである。良心的なところの良心に頼るのでなく、知り介入する権利を政治権力によって認め、その訴えを受け取り検討し対処する義務を政府・司法が引き受けるということである。
利用者には配慮せねばならないが、そこに問題がなければ、これはすこしも乱暴なことではない。もともと様々な人がいる場所にいるはずの人が、偶々病院の中にいる。そこに人が訪れるのを断わる理由はない。
そしてとくに強制的な処置がなされる場合は、その例外的な正当性を証明しなければならないのはその強制を実施する供給側である。これを倫理的に正当化するのは簡単だが、実際に実現するのはそれほどでない。それは法・政治の水準で確保されるべきものであり、そのことに関わる人々の自由・権利を認めるということである。
むろん、どこに問題があるのか、ときに微妙な場合はあるだろう。実際に必要なものが抑制されてしまうことも多々あってきたし、とくにまじめに仕事をしようとする側が目をつけられることがあってきた★40。不確実性はたしかにつきまとう。行なわれた処方に顕著な効果は期待できないかもしれないが一定の効果はあるかもしれないと言われることもあるだろう。どこまでをよくないことだと言えるか難しいときもある。しかし他方では加害があり、すべきでないことがなされ、それが抑止されてこなかったことも事実だ。片方の言うことをつねに受け入れろということではない。まず実情を知るまた訴える自由が実質的に確保されるべきであるということだ。
以上に記したのは、基本的な制度設計、金の使い方・出し方、について供給者側に決めさせないということである。それはなにか統制を強めることであるように受け取られるかもしれない。けれども今構成されている現実そのものが種々の利害によって統制・制御され作られてきたものである。早川が関わった堀川病院にしても、その後の美山の診療所にしても、それによって苦労することになった。だからそれを変えた方がよい、よいことをするのがより容易になればよい。そうなる。」
◆早川 一光・立岩 真也・西沢 いづみ 2015/09/10
『わらじ医者の来た道――民主的医療現代史』
,青土社,250p. ISBN-10: 4791768795 ISBN-13: 978-4791768790 1850+
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[kinokuniya]
※ 1850+
■お知らせ
◆[mlst-ars-vive: 19074] 1215医師早川一光を語る会
Date: Mon, 26 Nov 2018 09:03:26 +0900
From: TATEIWA Shinya <tae01303@nifty.ne.jp>
Reply-To: mlst-ars-vive@ml.ritsumei.ac.jp
To: mlst-ars-vive@ml.ritsumei.ac.jp
http://www.ritsumei.ac.jp/research/health-c/news/article.html/?id=18
私も話します。あらためて本
http://www.arsvi.com/b2010/1509hk.htm
も販売しようと思います。立岩
◆[mlst-ars-vive: 19133] 再度 1215医師早川一光を語る会
Date: Thu, 13 Dec 2018 09:56:31 +0900
From: TATEIWA Shinya <tae01303@nifty.ne.jp>
To: mlst-ars-vive@ml.ritsumei.ac.jp
200人〜の予約あると聞いています。本は売れることが確定しました。
(いつも思うのですが、そと行くよりうちに居てしっかり本読んでいた方が得られるものあるのではと…とはいえ、歓迎です。)
何を話すか考えます。今日か明日にまたお知らせします。
12週毎週なにかあります。翌週のことについてもまたお知らせします。
立岩
https://twitter.com/ShinyaTateiwa
以下は川村さんからメールでいただいた案
■2018年8月4日
計画案
早川一光先生を語る会 〜西陣の医療から総合人間学へ〜
2018年6月2日、早川一光先生が亡くなりました。94歳。
1949年に京都府立医大を卒業し、翌年には西陣に住民出資の診療所を創設。26歳にして所長となった早川先生は、亡くなる瞬間まで「医師」として生き抜かれました。
「地域医療の神様」「在宅医療のパイオニア」と称される戦後日本を代表する医療者であり、認知症をいちはやく社会問題として取り上げ、1980年「認知症の人と家族の会」を創設。亡くなる2か月前まで30年半続いたラジオ番組「ばんざい人間」のパーソナリティであり、医学、哲学、芸術、宗教が融合する「総合人間学」構想を語る夢追い人。
しかし、その70年近い医師人生の全貌を私たちはどれだけ知っているでしょうか?
そして、早川先生が追い求めた「医学」「総合人間学」「大往生」とはどんなものなのか?
早川先生を知る人々が集まって、それぞれの目で捉えた「医師早川一光」を語り、志を引き継ぐ集まりを開きたいと思います。
★日時
12月15日(土)10:00−17:00(休憩あり)
★場所
立命館大学朱雀キャンパス 5階大ホール(470人)
★呼びかけ人をお願いしたい方々
谷口政春 堀川病院顧問
近藤泰正 西陣健康会理事長
西池季一 堀川病院OB会副会長
根津幸彦 永原診療会千本診療所
見国生 認知症の人と家族の会 前代表理事
伊澤 敏 佐久総合病院統括院長
北澤彰浩 佐久総合病院
中村伸一 名田庄診療所所長
細尾真奈美 早川塾
★準備事務局
高見国生
早川静好(早川家に下宿しながら大学へ。堀川病院元職員)
色平哲郎(佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)
長 純一 石巻市立病院開成仮診療所長・石巻市包括ケアセンター長
川村雄次 NHKディレクター
★基本的な構成
第1部:早川一光の仕事を知るための講演 (目安 各30分×2)
「(仮)あなたの老いを誰が看る〜早川一光の現代的意義〜」行天良雄(元NHK解説委員)
「戦後の医療運動と早川一光」
第2部:それぞれの見た早川一光 思い出と引き継ぐもの (目安4時間)
(早川先生について思い出のある人々が次々に登壇し、語る。
実行委員会からお願いする人の他、発言希望者を募り、基本的に全員が発言する。
話す内容によって、「白峰診療所時代」「ラジオ」「患者になった早川先生」など、テーマに分け、
発言順や長さを相談の上で決める。3分〜15分。複数登壇もあり。)
第3部:早川先生の仕事の現代的意義を考えるシンポジウム(目安1時間)
コーディネーター: 町永俊雄(元NHK「福祉ネットワーク」キャスター)・・・内諾
※時間と体力のある人は最初から最後まで参加。そうでない人は自分の発言時間のみ参加。
[…]
UP:20181215 REV:20181219
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立岩 真也
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Shin'ya Tateiwa
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病者障害者運動史研究
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立岩真也:青土社との仕事
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