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日本の精神障害者福祉政策について

立岩 真也다테이와 신야 2018/11/08
障害者政策博覧会 於:韓国・ソウル

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■障害者総合福祉法で精神障害者に対する支援は?

・居宅介護
・グループホーム
・就労移行
・就労継続
・移動支援
・地域移行
・地域定着
・自律訓練
・短期入所
・相談支援

※韓国の障害者福祉法第15条で「精神保健福祉法のサービスを受けている人は障害者福祉法のサービスをうけることができない」となっているという。日本の法律はそのようにはなっていない。
○基本的に身体障害と同じ
○ただ、多くの支援について、支援者との共同作業が前提となっている。
 精神障害の場合は、補うではなくて、訓練して自立させる(自分で自分のことができるようになる)という意味合いが強いので、どの支援も、介助者との共同作業が前提になっている。できないことをやってもらう、手伝ってもらう、ではなくて、本人にやり方などを一緒にすることで覚えてもらったり、できるようになってもらうことになる。
 精神障害の人は、体調の変動が大きいから起きることができなかったり、動けないこともあったり、外に出ることも難しいといったことがある。その場合に、部屋の掃除をしてほしいとか、料理を作って欲しいとかっていっても、原則的には共同作業なのでヘルパーがそれをやることはできないという理解になる。制度を作った側の理解だとこうなるが、できないものはできないので、事業所の許す範囲、また本人との関係性では、それなりに体調理解ということで本人が横になって休んでいてもヘルパーがやっている場合もある。だが、このことで本人と事業所がもめてうまく支援がなされないといったトラブルもおこっている。
○相談支援がうまくいっているとは言えない。お金のかけ方がまちがっている。1件いくらという計算なので、実際に手間がかかる人の支援は採算がとれない(cf.立岩[2015])。


■精神保健法で精神障害者に対する支援は? 

○この法律は、医療及び保護のもとに、措置入院など非自発的入院の枠組みを定めているので、精神障害を持つ本人にとってというよりは、医療者や支援者の視点の法律になっている。
○その中で、精神障害の人が利用するのは、精神障害者保健福祉手帳と精神医療審査会。
 精神医療審査会は入院中の精神障害の人への支援として位置づけられている。入院中の人にとっての唯一の権利擁護機関。これがあるから精神科病院は虐待防止法の対象から外れることが認められている。ただメンバーの構成や運営、実態どれをとっても、精神医療審査会が機能しているとは到底言えない。
○地域での支援としては、精神保健福祉センターがあります。京都市では、「京都市こころの健康増進センター」。電話相談や情報提供、社会復帰に向けたデイケアなどをしています。電話相談やデイケアを利用する人が多い。ひきこもりとかアルコール依存とか、精神障害を幅広く対象としているので、本人だけではなく家族の人たちも相談などで利用。支援者向けにも研修や企画などをしているので支援者も利用。

 ※以上の多くは長谷川唯HASEGAWA Yui)さんから教えてもらった。感謝する。


■報告者の仕事

 精神障害者に関わる現在の政策のことについては報告者は詳しくない。歴史(といってもこの60年ほどの歴史)についての本が2冊ある。加えて自閉症の人たちに関わる本も1冊ある。

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

◆立岩 真也 2014/08/26 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※

◆立岩 真也 2015/11/13 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社,433p. ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


立岩真也『造反有理――精神医療現代史へ』表紙   立岩真也『自閉症連続体の時代』表紙   立岩真也『不如意の身体――病障害とある社会』表紙   立岩真也『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙

■報告者の仕事・2+

 成年後見制度の問題点を検討し、それに変わる仕組みを考えることが必要であると考えている。一つだけ韓国語に翻訳されたものがある。

◆立岩 真也 2016/09/23 「成年後見制度に代わるもの」,障害学国際セミナー 2016「法的能力(障害者権利条約第12条)と成年後見制度」,於:立命館大学 [Chinese] / [Korean]

◆立岩 真也 2017/10/01 「成年後見制度後見に代わるもの」,明治安田こころの健康財団編『研究助成論文集・第52号』 

 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第2版』(安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩 真也、1995、初版は1990、第3版が2012)を鄭 喜慶(정희경)さんに翻訳してもらった(『생의기법――장애사회학장애인의 자립생활』)。そのファイル、また私の主著である『私的所有論』の英語版をディスクに納めたものを持参した。みなさんにさしあげます。

◆安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩 真也 2012/12/25 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』  生活書院・文庫版,666p. ISBN-10: 486500002X ISBN-13: 978-4865000023 1200+ [amazon][kinokuniya] ※

◆TATEIWA Shinya 2016/09/21 On Private Property, English VersionKyoto Books 10$/\1000

『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙   On Private Property, English Version   『생의기법――장애사회학장애인의 자립생활』


UP:20181017 REV:
立岩 真也  ◇다테이와 신야  ◇Shin'ya Tateiwa 
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