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『人間の条件――そんなものない』

何がおもしろうて読むか書くか 第5回

立岩 真也 2018/04/25
『Chio』 別冊「Chio通信」5
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立岩真也『人間の条件――そんなものない 増補新版』表紙

[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 ※以下は実際に掲載されているものとだいぶ違う草稿ですので「Chio通信」のほうをお読みください。

 『人間の条件――そんなものない』という本を二〇一〇年に出してもらった。理論社という出版社からだった。ただその出版社、本が八月に出て、その半年後に印税が入ることになっていたその間に民事再生法適用、ということになった。それで単価は安いものの一万部と私の本としては破格に多い初刷の数で、たくさん印税が入るはず、のところ、まったくなし、になり、さらに本は出せなくなった。その後、イースト・プレスという出版社からいったん再刊されたが、諸般の事情ありそれも出せなくなるという不幸な経緯を辿った。
 その本、というか「よりみちパンセ」というシリーズで今度は新曜社で再刊・再開されることになった。それでついでだから、と少し加筆して、第二版とすることにした。といっても、基本はインタビューを一つ加えただけ。そのことは後で。
 再刊ということで、その自分の本を読んでみた。そのシリーズの本はすべての漢字にふりがながふってあって、子どもが読めるというふれこみのものだ。でも実際には、大人たちが読んでいると聞いたことがある。それで私の本だが、まあこれを最後まで中学生に読めというのは「酷」なんだろうなと思った。難解だとかそういうことではない。実際、すこしも難解ではない。ただ、しばらく人生やってからの方がよいという本がある。人生やっていって、いろいろと言われたり、教えられたり、「こんなものだ」と知ったうえで、しかし、「考えてみるとそうではないかも」、ということになって、なるほどそうかも」と思うといった本の読み方がある。「それまでの人生」がないと、「何でこんなことをやっているんだろう、この人は?」となるかもだ。だから、大人の人に読んでもらったらよいかなと思ったのだった。
 ただ一つ、「本体」は十二の部分からできているのだが、その最初の「T できなくてなんだ」までは、社会を長く生きていないとわからない部品も出てこない。子どもでも、自分が見知っている範囲でわかる部分だ。ここは、また「U ならどうならよいのか・1」あたりまでは、中学生ぐらいだったら十分読めるし、その人たちは、私もそうだったが、「自分のことは自分でしなさい」と毎日言われているのだから、「なんで?」を考えるために読んでもらうのはよいと思った。
 ここは短い、四七ぺージしかない、とも言える。また、「自分でできる」のがどのぐらいよいか、そんなによくもないかについて、ここまで全体的に?書いた本は、私の他の本にも、世の中にも他にないと思うから、まとまった分量のあるオリジナルなものとして読んでもらってよいと思う。
 あとの部分は、私がこれまでいろいろな本で書いてきたことを繰り返している部分が多い。ただ、そのいろいろな本がたくさんあってしまっているので、まず一つということであればこれもありかと思う。私は難しい漢字を、知らないか忘れているかということも多いので、ふりがなは多くの人には役に立たないかもだが、まず、文庫本になっているものを除くと私の他の本より安いので、それもよいと思う。
 もう一つ、この本には「補」という部分があって、高校の「現代社会」の教科書に書いたコラム、三つのインタビューや対談、そして今度の第二版に新たに収録されたインタビューが入っている。そのあわせて四つのインタビュー・対談のうち二つが、『子育て未来視点BOOK・下巻』(ジャパンマシニスト社、二〇〇四年)に収録されている山田真さんとの対談「明るくないけど、変えることは不可能じゃない」、そして『お・は』第二六号(二〇〇五年)に掲載されている岡崎勝さんによるインタビュー「みんな「できる人」でないとダメなの?――学校の能力・競争主義をみつめて」。これは再録にあたり「それでも世の中は回っていく」という題になった(こういう題や見出しは今回みな編集者につけてもらった)。ですので、こういうところもよいのではないかと。
 そして第二版に加えたのは、まず一つ、はじまりの部分「簡単で別の世界を、を歌えないなら、字を書く」への少しの書き足し。そして一つ、「終わりに」に置いてあった(私の)「本の紹介」の部分に、二〇一〇年以降の本の追加。そして一つ、やはり「終わり」に「第二版の終わりに」を追加。
 そして最後一つは、二〇〇九年に出版された『生存権――いまを生きるあなたに』(立岩 真也・岡本 厚・尾藤 廣喜、同成社)の販売終了ということで、販売されている時にはけっこう読んでもらえていたので、そこに収録されたインタビュー「「目指すは最低限度」じゃないでしょう?」の再録。生活保護の話をしている。
 というわけでよろしければどうぞ。今回は最初から最後まで本の宣伝でした。


◆2017/04/25 「何がおもしろうて読むか書くか 第1回」
 『Chio通信』1:8-9(『Chio』115号別冊)
◆2017/07/25 「そんなこともあって、「能力主義」について考えはじめた――何がおもしろうて読むか書くか 第2回」
 『Chio』115号 別冊「Chio通信」02
◆2017/10/25 「どういうふうに喧嘩をするのか、その方法論もあったほうがよい――何がおもしろうて読むか書くか 第3回」
 『Chio』116号別冊「Chio通信」03
◆2018/01/25 「何がおもしろうて読むか書くか 第4回」
 『Chio通信』4:(『Chio』118号別冊)


[説明]
 『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』は116号から単行本仕立てになった。116号は浜田寿美男さんの『親になるまでの時間』。本の頁は別途作るが、まずは注文→[amazon][kinokuniya]
 私はその別冊『Chio通信』に短文を載せることになっている。この『Chio通信』は『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』を定期講読するとそのおまけ(特典)としてついてくるという趣向のもの。以下に広告があった。
http://karaimo.exblog.jp/26367357/

◆第03号のお知らせ:https://twitter.com/japama_official/status/923752263700553728


UP:2018 REV:20180524
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