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二〇一七年読書アンケート
立岩 真也 2017/02/01 『みすず』60-1(2018-1・2):90
http://www.msz.co.jp
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何冊かきっとこの本はよい本だと思うものがあったのだが、結局、すくなくとも今のところ読めていない。以下は、ゆえあって読むことになった本、というよりまず最初の二冊は本が出るのに関わった本。
1 クァク・ジョンナン
『日本手話とろう教育――日本語能力主義をこえて』
(生活書院、二〇一七)。もとはといえば私の勤め先の大学院(立命館大学大学院先端総合学術研究科)に提出された博士論文。日本ではじめて日本手話を使用言語としたフリースクールが始まり、そして学校になって続いている。その成り立ちを追い、いったいそこがどうなっているかを記す。だがそれで終わらず、結局学校があっても、そしてそれはよいことであっても、「日本語能力主義」がある限りは…、と進む。それは「言わずもがな」と思うかもしれない。しかし筆者はそれを書きたかったし、そして間違っていないから書いてよかったと私は思う。ただ、このフリースクール・学校そのもの、そのものに関わることについてもっと調べたらもっと確実によくなった。ただ著者は、日本での留学を終え韓国に帰らざるをえなくなり、今回の研究はここで終わった。よって、誰が続けるにせよその研究は終わらない。
2 樋澤吉彦
『保安処分構想と医療観察法体制――日本精神保健福祉士協会の関わりをめぐって』
(生活書院、二〇一七)。これも同じ年に同じ研究科に提出され同じ人(私)が主査として関わった博士論文がもとになった本。私は私はこの本に付された
「不可解さを示すという仕事」
という文章を書かせてもらっている。検索すると全文が出てくるので、読んでいただければと。これも名作という種類のものではないが、しかし、現在において存在する価値のある本だと思う。どのように読めばよいかを考えさせる本だ。
3 中村沙絵
『響応する身体――スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサの民族誌』
(ナカニシヤ出版、二〇一七)。私が関係するその研究科の隣?にある「生存学研究センター」というところでは、センターの運営委員であり研究科の同僚でもある小川さやかの発案により「生存学奨励賞」なるものを設けることになり、昨年末、その第三回受賞作が決まった。これがその本。ちなみに一昨年の第二回の受賞作は、「二〇一七年読書アンケート」にあげた矢野亮
『しかし、誰が、どのように、分配してきたのか――同和政策・地域有力者・都市大阪』
(洛北出版、二〇一六)。実はこの矢野の本も私が関係した博士論文がもとになった本なのだが、身内びいきをする気はさらさらないので、今年の第四回の応募もよろしくです。さて、『響応する身体』。異議なくこの本が選ばれたのだが、意外とその「講評」書くのに手間取った。これもHPに全文掲載されているのでご覧ください。そこにも書いたが、まずこの中村の本はとても丁寧に調べて丁寧に書かれた本で、私が関係させられている「質的研究」関係の博士論文たちもこのぐらい書いてくれればじつに安心・満足、ということなのだが、それに加えて何か引き出して言おうとすると意外と難しい感じもする。それで「講評」に手間取ったのでもある。
4 最後に、一昨年出た本になるが、榊原賢二郎
『社会的包摂と身体――障害者差別禁止法制後の障害定義と異別処遇を巡って』
(生活書院、二〇一六)。これはここまでとすこし異なる「理論的」な本。ただ博士論文がもとになった本というところは共通している。こういうものが出てもあまり取り沙汰されることがないという状況はよくないと思ってもいて、遅ればせながら、さらに遅ればせながらの星加良司
『障害とは何か――ディスアビリティの社会理論に向けて』
とともに、昨年後半から今年の初めにかけての『現代思想』連載で検討している。
◆榊原 賢二郎 20161110
『社会的包摂と身体――障害者差別禁止法制後の障害定義と異別処遇を巡って』
,生活書院,398p.
◆中村 沙絵 20170331
『響応する身体――スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサの民族誌』
,ナカニシヤ出版,404p.
◆
樋澤 吉彦
20171010
『保安処分構想と医療観察応対正――日本精神保健福祉士協会の関わりをめぐって』
,生活書院,312p. ISBN-10:4865000720 ISBN-13:978-4865000726 3000+
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※ m, u/gsce
◆
クァク・ジョンナン
20170310 :
『日本手話とろう教育――日本語能力主義をこえて』
,生活書院,192p. ISBN-10: 4865000658 ISBN-13: 978-4865000658 2500+
[amazon]
/
[kinokuniya]
※ h02, h02sl, c07.
◆2017/02/01
「二〇一六年読書アンケート」
『みすず』59-1(2017-1・2):
http://www.msz.co.jp
◆2016/02/01
「二〇一五年読書アンケート」
『みすず』58-1(2016-1・2):
http://www.msz.co.jp
◆2015/02/01
「二〇一四年読書アンケート」
『みすず』57-1(2015-1・2):
http://www.msz.co.jp
◆2012/02/01
「二〇一一年読書アンケート」
『みすず』54-1(2012-1・2 no.601):68-69
http://www.msz.co.jp
◆2011/02/01
「二〇一〇年読書アンケート」
『みすず』53-1(2011-1・2 no.590):93
http://www.msz.co.jp
,
◆2010/02/01
「二〇〇九年読書アンケート」
『みすず』52-1(2010-1・2 no.):-
http://www.msz.co.jp
,
生存学奨励賞→
http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/699
UP:2018 REV:
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