HOME > Tateiwa >

インペアメントの棄却?1:星加良司『障害とは何か』の1の04

「身体の現代」計画補足・446

立岩 真也 2017/12/02
……

445 < / > 447

Tweet


立岩真也編『社会モデル』表紙   星加良司『障害とは何か――ディスアビリティの社会理論に向けて』表紙   『現代思想』2017年12月号 特集:人新世――地質年代が示す人類と地球の未来・表紙   榊原賢二郎『社会的包摂と身体――障害者差別禁止法制後の障害定義と異別処遇を巡って』表紙

[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 「星加良司『障害とは何か』の1」を分載中(連載・第140回)。が、全部を紹介することはない。
 『現代思想』2017年12月号の特集は「人新世――地質年代が示す人類と地球の未来」
http://www.arsvi.com/m/gs2017.htm#12
買ってください。ただ、立岩真也編『社会モデル』
http://www.arsvi.com/ts/2016m2.htm
の購入者には、この回の原稿を収録した増補版を無償で後日提供します。またお知らせします。以下、分載の第4回。

 「■インペアメントの棄却
 「ディスアビリティとはインペアメントのある人の問題だ」という把握についての星加の議論を見る。Xの(2)で星加はインペアメントをもってきて、(星加によれば不利益としての)ディスアビリティを規定することを――何をもって「規定」と呼ぶのかが問題なのだが――棄却する。(以下、あげられている文献、書誌情報はここでは略し、HPにあげておく。)
 その論の進め方は、次節に見る「原因論」が失敗する、「そこで、別の基準によってディスアビリティを他の不利益と区別して把握する必要が生じ」、「ディスアビリティをインペアメントとの関連で捉える」ことになり、「ディスアビリティとはインペアメントのある人の問題だ」とされるというものだ([107])。対象とされている論者自身においてそうした順序で議論がされているのではないが、それは重要な点ではない。
 社会モデルを言う議論においては「インペアメントとディスアビリティとの因果的連関という想定は拒絶されるが、ディスアビリティがインペアメントのある人の問題であることが示され、その点で他の不利益との弁別が可能な構造になっている」。しかし星加はこれを採用しない。それは、「インペアメントはディスアビリティの存在から遡及的に措定されるものであると考えるからだ。[…]社会において要求される価値との関連でディスアビリティが生じ、それを個人に帰責するためにある種の機能的特質に対して否定的な価値付けがなされたものがインペアメントであり、社会史的な理解としては、インペアメントはディスアビリティに先行して存在しているのではない。[…]ディスアビリティはそれとして発生ないし創出されているのであって、インペアメントはあくまでも後続のカテゴリーだから、ディスアビリティをインペアメントとの関連で同定することには無理がある」とする([108])★05。
 たださらに次のように続けられる。「現にインペアメントが否定的な価値付けを伴って措定された社会に生きる人々のリアリティに定位した場合にはどうか。[…]社会的現実においては両者は並存しているのだから、インペアメントとの関連でディスアビリティを同定する可能性も残されている」。「インペアメントの存在を要件とすること自体は可能だが、それが不利益を生む他の可能的要件を措定した場合とどのように異なるのかについては何も言えていない。「体が人並みはずれて大きい人」にとっての不利益や「田舎で生まれた人」にとっての不利益ではなく、「インペアメントのある人」にとっての不利益だけがなぜディスアビリティとして把握され、その解消が特に要請されるのかが[…]不明なのである。また、このことに回答を与えるためには、インペアメントがあることによって不利益の経験のあり方にどのような影響があり、それがどのような意味で特有な社会現象といえるのかについて[…]の議論が不十分[…]。だから、ディスアビリティの同定に当たってインペアメントの存在を要件とする従来の議論は、論理的な水準においてきわめて不十分なものなのだ」([109])。
 理解が難しいところ、私には不可解なところがある。」

 「★05 ここで個人への「帰責」と言うべきかどうかは問題である。むしろしかじかは障害であるという規定は、「免責」の行ないでもある(cf.立岩[2014])。「帰属」と「帰責」は分けて考えた方がよい。帰属は因果に関わり、帰責は責任に関わる。」


 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20172446.htm
にもある。


UP:2017 REV:
病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)