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『相模原障害者殺傷事件』:『そよ風』最終号に・2

「身体の現代」計画補足・396

立岩 真也 2017/08/11
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 「もらったものについて・17」分載の続き。ただ、今のところ全文も以下で読める。
http://www.arsvi.com/ts/20170017.htm
 『そよ風のように街に出よう』(りぼん社)が91号で終刊。そこに書いた文章。この号は
http://www.arsvi.com/m/s01.htm
9月5日の刊行になっているがもう売っています。この最終号も、バックナンバーも、買いつくしてください。

 「□『相模原障害者殺傷事件』
 この連載の前回はいつだっただろう、つまり本誌の最終号の一つ前の発行はいつだっただろうとみたら、昨年一二月五日。そしてその回の原稿を、相模原での事件が起こって二月が経った九月二六日、国会議員会館で集会がありその後行進があったその時に書いていて、その後書き終えて送ったようだ。その時には事件を特集した『現代思想』の十月号が出て、その紹介をしている。そして私は、この号と、その前の九月号と後の十一月号に原稿を書いた。そしてその特集号に載っている杉田俊介さんの原稿と、そして杉田さんとの対談を収録した本『相模原障害者殺傷事件』をこの一月に出してもらった(初売りは二〇一六年十二月のJILの集会だったが)。その全体の紹介、いくつかの書評などはHPのほうにあるから、ご覧くださいなのだが、私の原稿を集めた第一部の第二章が、事件を特集した『現代思想』十月号掲載の原稿をもとにした「障害者殺しと抵抗の系譜」。
 そこで私は、一つ、重症心身障害児施設(いわゆる重心)島田療育園(現在は島田療育センター)への公的支援の拡大を求めた公開書簡「拝啓池田総理大臣殿」(一九六三年)によって知られている作家水上勉が同じ六三年、ベルギーでサリドマイドを服用した親から生まれたいわゆるサリドマイド児を親が殺した事件をきっかけに企画された座談会で、障害児が生まれたらその生死を決める政府の委員会を作ったらよいといったことを語っていることを紹介した。前者は社会福祉業界(学界)では知られているが、後者はそうでない。後者は知って楽しいことではないが、しかし前者と一緒に――この「一緒に」、というところが重要だ――あらゆる人が、とは言わないが、知っておいた方がよい。だからそのことについて、簡単にだが、書いた。それ以前に、業界の人は知っているはずの「拝啓」にしても全部を読んだ人は多くはそうはいないはずだから、二〇一五年に『与えられる生死:△060 1960年代――『しののめ』安楽死特集/重症心身障害児/あざらしっ子/「拝啓池田総理大臣殿」他』という資料集を「電子書籍」として(誰でもHP上で読めるファイルとして)作って売っている。  もう亡くなった優れた作家を非難しようというのではない。殺すことと救うことの間の距離はときにそんなに遠くはない。その遠くなさ、近さは何通りかあり、だからそれに対しても言うべきことは何通りかある。そのことについては本の第一部・第三章「道筋を何度も作ること」に書いたのだが、実際にこの人がこういう場にいてこんなことも言っている(まずそれを知っておこう)というような示し方でその近さがわかることもある。
 すべての人が知る必要はないのだろう。ただ仲間にそして社会に何かを伝え、社会を変えていこうという人たちがたくさんいる。まずその人たちには知ってほしいと思った。この事件に関わる催しはさきの国会議員会館での集まりの後もたくさんあった。。私が話をしに行ったものでは、二〇一六年末の福岡でのJIL(全国自立生活センター協議会)の集まり、年末から年を越して大阪で三度、そして六月三日は、京都で開催されたDPI日本会議の集会。こういう場というのがいったいどういう場であるのか、あればよいのかと思う。たいしたことを思いつかないが、一つには、そこがものを伝えたりものを言う立場にいる人たちの集まりであるなら、やはり知ってほしいと思って話すし、今度の本を大量に運びこんで会場で販売する。これからも呼ばれればどこでも行く。」

 続く。


UP:201707 REV:
病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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