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今般の認知症業界政治

「身体の現代」計画補足・352

立岩 真也 2017/04/26
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1880764282190550

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『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙   立岩真也『精神』表紙   『造反有理――精神医療現代史へ』表紙
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 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』
http://www.arsvi.com/ts/2015b2.htm
刊行に際して、「今般の認知症業界政治と先日までの社会防衛 連載・117」(2015/11/01 『現代思想』43-17(2015-11):20-33)が書かれて、それが『精神』
http://www.arsvi.com/ts/2016m3.htm
に掲載され、以下に分載している。社会学者はあまりやらないが、私は、以下に記しているようなべたに政治的な話というものも大切ではあると思っている。山崎學/安倍晋三/石井みどり…といった人の名が出てくる。

 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172352.htm
にもあって、関連書籍へのリンクがある。


 「■今般の認知症業界政治
 本では第1章「陰鬱な現況と述べること予め」で「日本精神科病院協会(日精協)」会長の山崎學が二〇一二年、二〇一三年にその協会(業界)誌に書いた文章を引用した。後者は、二〇一二年一二月の総選挙を受け、いっとき野党であった時から支援してきた安倍晋三他の名前を列挙し、その人らの党が与党となり安倍が総理大臣他になったこと等を素直に寿ぐ文章であった。また、社会的需要に応える自らを世界一だと正当化し、「欧米かぶれ」他の批判者たちを罵倒する文章も引用した。そしてその協会が精神病院の一部を病室でない場(病棟転換型居住系施設)とすることを認めさせる動きにも関わっていること等を紹介した。
 そして第4章「認知症→精神病院&安楽死、から逃れる」では、二〇一五年一月二七日に発表された所謂「新オレンジプラン」がその二十日前に厚労省が示した「原案」と大きく異なったものになったことを示した。この文書は両方とも公にされたもので、各々の中身と両者の間の差異はまったくはっきりしている。厚労省が二〇日前に示したものが変わったのだから、行政、すくなくとも厚生労働省からではない力が働いたことは明らかである。そして変化の中身をみれば、財務の側の介入とも考えられない。結局それは、政党、そしてそれに関わる業界の力によるとしか解することはできない。その変化の方向はまたまったく明白であり、つまり病院の役割を大きくする方向に大きく変わった。数少なくそのことを報じた共同通信の報道、浅川澄一の文章を示して具体的な変更点を紹介した。
 ここのところ自由民主党国会議員である石井みどりへの「日本歯科医師連盟」(日歯連)による迂回献金、また公職選挙法違反の疑いについて報道され、話題になっているらしいことをごく最近知ったのだが、その人がここでも活躍してきた。この人と、認知症・精神医療・日精協との関係は、歯医者たちのことより重要なことであるかもしれないのだが、まったく報道されていないということもある。だから紹介する意味もあると思った。
 そして本(のもとになった原稿)にはこの人らはまだ出てこないが、本誌にそれを書いた(そして本にした)時に入手できなかった文書をいくつか見つけもした。今年になって書かれた文章として、精神科医の高木俊介の文章(高木[2015]、『精神医療』誌に掲載されたのは九月末だが、サイト上に掲載されたのは七月)、もう一つ、やはり精神科医の上野秀樹の文章(上野[2015a])がある。この二つにしても特別の情報源をもって書かれているものではない。またそこに書かれていることをもとに、さらにすこしやはり座ったまま調べてもいくらかのことはわかる。以下は、この程度のことなら簡単にできるということをでもある。
 先記したように二〇一二年年末の総選挙で自民党が勝って安倍内閣が発足したのだが、その翌年、参議院選挙のあった二〇一三年、日本精神病院協会は石井みどり(この年七月の参議院選挙で二度めの当選)、衛藤晟一(同じ選挙で参議院議員としては二度目の当選)、木村義雄前衆議院議員(同じ選挙で参議院としては初当選、以上いずれも自民党)を全国重点推薦候補者として推薦している。この協会の政治組織「日本精神科病院協会政治連盟」の政治献金については本の第1章「陰鬱な現況と述べること予め」でも紹介したが、この連盟は、二〇一三年、石井、衛藤、木村に、五〇〇万円、八〇〇万円、五〇〇万円の政治献金をしている。
 そして石井みどりが事務局長を務める「認知症医療の充実を推進する議員の会」は翌二〇一四年五月に設立された。その設立趣意書はごく短く、ウェブ上で全文を読める(認知症医療の充実を推進する議員の会[2014])。次のようなことが書いてある。

 「急性憎悪や在宅生活を困難にする重度の症状と問題行動など地域ケアのみでは治療困難である場合も多くみられ、入院医療のサポートがなければ持続可能な地域ケアは成立しません。介護施設においては処遇困難な重度患者の入所がみられることがあり、これが高齢者虐待の温床となっています。」
 「地域包括ケアシステムが成り立つためには、疾患の本質を正確に認識し、介護に偏重せず、早期診断、早期介入から始まる医療と介護、施設ケアと地域ケアをシームレスにつなぐ循環型医療介護システムの確立が必要です。「医療から介護へ」・「施設から地域へ」というスローガンはそれぞれ不可分なケア相互の補完性を軽視しており、シームレスな医療と介護の連携を阻害する可能性があることが懸念されます」


UP:201704 REV:
病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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2017/04/23