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横田弘のコロニー批判

「身体の現代」計画補足・335

立岩 真也 2017/03/28
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1865532883713690

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横田弘『増補新装版 障害者殺しの思想』表紙   立岩真也『青い芝・横塚晃一・横田弘:1970年へ/から』表紙   荒井裕樹『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の行動綱領』表紙   立岩真也編『与えられる生死:1960年代』表紙
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 横田[1974→1979→2015]は『障害者殺しの思想』
http://www.arsvi.com/b2010/1506yh.htm
荒井[2017]は『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の行動綱領』
http://www.arsvi.com/b2010/1701ay.htm
立岩・小林編[2005]は『<障害者自立支援法案>関連資料』
http://www.arsvi.com/b2000/0509kh

 『現代思想』3月号の特集は「社会学の未来」
http://www.arsvi.com/m/gs2017.htm#03
私の連載は第131回。「施設/脱施設/病院/脱病院――生の現代のために・19」。これを分載した。これがその第14回で最終回。『現代思想』連載第131回の目次・リンク付の文献表は
http://www.arsvi.com/ts/20170131.htm
 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172335.htm
にもある。


 「■「体制」の問題とされたことに
 […]
 比べて横田弘(cf.荒井[2017])の批判は、ここでも――連載一二七回(二〇一六年十一月号)に引いた――より直截で、そして(新)左翼的でもある。引用した同じ箇所を今度は短く引用する。

 「一九六〇年、日本の人民がある程度目を開こうとした安保改定阻止の運動を恐れた国家は、所得倍増計画なる幻想を人民にふりまき、その幻想だけを追い求めていった人びとは、自分の周囲から幻想に追いつけないものを排除しようとし始める。作家の水上勉氏が当時の首相に宛てた「拝啓総理大臣殿」という一文こそ形は違え、ナチス・ドイツに障害者抹殺の口実を与えた父親の運動と全く一致するものなのである。これを受けた国家は、一九六五年社会開発懇談会が、
@心身障害者は近時その数を増加しており、障害者は多く貧困に属しているので、リハビリテーシヨンを早期におこなって社会復帰を促進せよ。/A社会で暮らすことのむずかしい精薄については、コロニーに隔離せよ。
と答申し、これを基として全国コロニー網の拡充、徹底した社会からの隔離政策・肉体的抹殺へと方向づけていった。
 彼らは口を開けば生命の尊重と言い、身体障害者の福祉を叫ぶ。だからこそコロニーは必要なのだと言う。しかし現実に立って眺めた場合[…]」(横田[1974:36-38→1979→2015:60-61])

 のぞみの園は七一年に開園した。そしてここでも争議が起こる。労働組合ができたのは七四年(評価部心理判定員の解雇に端を発するとされる)。七六年の一時金減額に対する闘争が威力業務妨害にあたるとして裁判になる。治療訓練ボイコット闘争といったこともなされる。その運動にも党派が関わっているようではあり★07、報告書等の言葉等はまったくそれ風のものである。
 ただだからといってあったことをまったく無視するのがよいとは思われない。語られ書かれることの多くは使えないと思うし、諸党派の主張の差異等に私はまったく関心がない。しかし「体制」の問題として施設を、政策を捉えることは、基本的にはまちがっていないと考えている。ただそれはそう単純に言えないことであり、言われてきたことに言葉を足したりする必要があるはずである。そしてそれと、先述したもっと現場に近いところにある業界の利害に規定される部分とをどのように分けて組み合わせるか。それは理論的な課題である。それとともに、この課題についてどれほど立派なものであったかはともかくとして一定の言論と行動の蓄積があったのだから、やはりそれはそれとして見ておくべきだということになる。

★07 「海保さんと連帯しコロニー裁判を闘う会」の報告が、「全障連(全国障害者解放運動連絡会議)九州ブロック」のHPに掲載されている。全障連九州ブロックは、「革命的労働者協会」についてのウィキペディア情報ではその「傘下の公然団体」と記されている。その二〇〇四年の集会報告は以下のように記されている。
 「全国、各地で闘っておられる「病者」・障害者の皆さん! […]私たちは太宰府市内において、〈「支援費制度」攻撃粉砕―太宰府市差別行政糾弾! 保安処分攻撃粉砕―保安処分施設建設阻止! 戦時障害者抹殺攻撃粉砕! 障害者解放!3・14総決起集会〉を開催しました。/「支援費制度」導入−上限設定の攻撃は、「障害者」の闘いをノーマライゼーションの名の下に融和主義的にからめとり、新たな隔離・抹殺−戦時「障害者」抹殺に踏み込んでいく攻撃に他なりません。/「支援費制度」導入に対する融和主義勢力と厚生労働省の結託を許さず、「支援費制度」導入−上限設定攻撃を粉砕しよう。/イラク出兵−戦争−ファシズムへの突撃と対決し、全国の闘う「障害者」・「病者」・労働者の階級的な団結をうち固め、「脳死・臓器移植」「受精卵診断」「安楽死(尊厳死)」など優生思想を本質とする戦時「障害者」抹殺攻撃を粉砕しよう!/ノーマライゼーション攻撃を突破し、融和主義勢力の敵対を許さず、差別糾弾闘争を復権し、戦闘的全障連建設をかちとり、「障害者」差別からの解放をかちとろう!
 私たちは、闘う障害者に対して国家権力と一体となって襲撃する木元グループをはじめ、あらゆる差別−敵対−介入を許さず闘い抜きます。」
 木元グループは、やはりウィキペディア他の情報によると、解放派が様々に分かれたその一つであるらしい(から、その派のそのグループと敵対するグループによる報告ということらしい)。この時期の「上限設定攻撃」他については立岩・小林編[2005]。
 なお先述の「関西障害者解放委員会」の機関紙は『コロニー解体』というものだが、直接にのぞみの園(高崎コロニー)での闘争に関った名称のものではないようだ。私の手元には(たぶん)その第三号しかない(七六年)。その「関西障害者解放委員会結成宣言」には次のようにある。
 「今また、あの巨大コロニーにわれわれの仲間が次々と隔離収容されつつあるのだ。/すべての「障害者」諸君。/我々はもう黙っていてはならない。「障害者」殺しを許してはならない。われわれは「障害者」に対する差別を徹底糾弾する。われわれは「障害者」の基本的人権を奪還する。われわれは、コロニーを解体する。われわれは日本帝國主義を打倒する。諸君、差別に屈従し、同情にすがっている時代は終った。/立ち上がろう。そして闘おう。」(関西「障害者」解放委員会[1971])
 コロニー裁判に関する記事のある機関紙に『全厚生秩父学園組合ニュース』があった(目次をHP掲載、ちなみに秩父学園長も社会開発懇談会のメンバー)。こうした機関紙の類を、その評価は後ですればよいのだから、まずは集められるだけ集めておこうと思っている。


UP:201703 REV:
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