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島田療育園からの脱走事件・3

「身体の現代」計画補足・331

立岩 真也 2017/03/20
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1861288320804813

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『現代思想』2017年3月号 特集:社会学の未来・表紙   立岩真也・杉田俊介『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』表紙   『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 前便に記した岩橋さんとのやりとりの後、また岩橋さんから返信(コメント)いただいて、それを障害学のMLに以下紹介した。時間つくれれば私自身うかがいたいと思っている。なお島田療育園については
http://www.arsvi.com/o/shimada.htm

◆From: 立岩 真也
Sent: Thursday, March 09, 2017 9:55 AM
To: jsds@nx.normanet.ne.jp
Subject: [Jsds:1832]島田療育園での脱走事件・続

岩橋さんよりフェイスブックのほうに

「先ほど元職員の方に話を聞いたところ、「そんな昔の資料なんてないよ!」との事。「同行者たち―「重症児施設」島田療育園の二十年 (1983年) 荘田 智彦 (著)が資料としてはすべてだよ」
との事でした。ただ、「来てくれれば、話するのはできます」との事でした。報告まで失礼します。」

とのこと。話をうかがうとよいと思います。私自身もなんとかならぬかと。
というような返信。
『同行者たち』は当方の書庫にあり。

落とされて続けている科研
http://www.arsvi.com/d/hsm.htm
なんとかならんかと。ご支援たまわりますよう。立岩

◇ ◇

 『現代思想』3月号の特集は「社会学の未来」
http://www.arsvi.com/m/gs2017.htm#03
私の連載は第131回。「施設/脱施設/病院/脱病院――生の現代のために・19」。これを分載していく。これがその第10回。この第131回の目次・リンク付の文献表は
http://www.arsvi.com/ts/20170131.htm

 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172331.htm
にもある。


 「■福祉の先駆という語りに
  […]
 ただ、やはり、それだけのことでもない。事件についての本でも紹介したように(立岩[2017:70-73])、八二年に島田療育園からの「脱走」が起こった。本で全文掲載すると予告したビラはHPに収録した(島田療育園を告発する障害者七人委員会[1982])。それは、共闘して居住の場・同時に職場を護ろうとしてきた日患同盟、全医労といった流れとはいささか異なるものであり、その関係の書きものにも出てこない。そして事件の本にも記したように、経営者の苦労話や経営者を称賛する文献にも出てこない。
 施設を全面的に拒絶できるかと言われると歯切れがわるくなる。実際、多くの人たちは親や配偶者等自らの関係者を施設に入れている。そうしたことをせずにすんできた人たちがいくらかいるとしても、その多くはたんなる偶然からだ。そこから出てきた人以外はなかなかはっきりしたことを言えない。施設のほうがよい、それで仕方がない場合もあると言うことになる。
 すると次には、出てもよい人と出なくてよい人の間に線引きをするのかと言われる。昨年の事件で人が殺傷された施設の入居者はじつはそんなに「重い」人たちでなかったこと(立岩・杉田[2017b:211-212])も、本当に重い人であれば仕方がないが、という筋の話につながることはある。ただ、すべてか、でなければ区分するかという話に乗らねばならないことはないはずだ★04。そのことを(脱)施設を巡る具体的な事件(を巡る記録)は示していると思う。
 この八二年の事件で、脳性まひの女性の入所者の家出を支持し支援した人たちの側のものを見る限りにおいては、その事件は、出たいし、出ることに支障のない人が、出られなかった、出ることを妨げられたという事件である。阻まれ、そのことに理屈が付され、また具体的な力が介在している。そしてその理屈や手続きには法解釈上の問題も見出され、そしてそれでも裁判はうまくいかないといったことが起こったようだ。代理人とされる人が拒みそれが通る。今でもたくさん起こっていることがここでも起こる。

★04 事件についての本での施設/脱施設についての言及の一つは対談部分。「一箇所の人数が少ないからよいというものではないということは最低限言えるでしょう。[…]一人、あるいはごく一部の人が仕切っていて他が入ってこないとひどくなることはありえます」(立岩・杉田[2017b:216-217])。事件と関連し施設についての言及として他に「『相模原障害者殺傷事件』補遺(連載一二九回・二〇一七年一月号)。」


UP:201701 REV:
病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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