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1960年代からの筋ジストロフィー

「身体の現代」計画補足・312

立岩 真也 2017/02/13
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1846165145650464

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  『現代思想』2017年2月号 特集:ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ・表紙   『ALS――不動の身体と息する機械』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 西谷裕(京都・宇多野病院)、近藤文雄[1996](仙台・西多賀病院)、「国立療養史」全四巻、『国立療養所における重心・筋ジス病棟のあゆみ』、「ありのまま舎」等々は
http://www.arsvi.com/ts/20170130.htm
から各々の頁に行けるはず。
 『現代思想』2017年2月号(特集「ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ」)に掲載された連載第130回を分載しているその第12回。 http://www.arsvi.com/ts/20170130.htm
は、その第130回に対応した文献リスト。
 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172312.htm
にもある。


 「■筋ジストロフィー関連本
 […]
 手記の類については、多くの場合、仕組み・制度は出会うものとして書かれる。経験者は多くは一人の経験者である。出会い、そして不満を感じる者として存在する。それによって制度の面倒さを知ることができる。ただ多くの読者は、既に自分や自分の関係者のこととして、制度や手続きの面倒さ自体は知っている。そしてその面倒なものが作られ維持されている経緯はそこからはわからない。
 死に向かう少女のような感動の対象でないから、そのように見られているから、書かれないことがあるが、やむにやまれぬことで、だから悲しいことでもあるのだが、組織や運動は生ずる。難病について関連の組織の紹介が載っている本もかなりある。ただそれを読むだけでは、やはりそう多くのことはわからない。組織は自助的な活動をし、そして政府に対して研究と医療に関わる予算を要求し、うまくいっているところではそれがいくらかは実現している。それはそのとおりで間違いではないが、そのような要求をしていくその枠組がどうして作られたのか、それをどう評価するかという主題があり、その主題のためにはあるものをあるだけ集めて来る必要がある。私にはそれはできない。目についたわずかなものを挙げている。未見だが、『この子らの救いを求めて』(川崎菊一[1966])等初期の日本筋ジストロフィー協会の運動を担った人のものもある。
 そして六〇年代から七〇年代にかけての病院やそこから出ようとする動きが書かれたものが見出される。仙台の「ありのまま舎」(リスト◆に一三冊をあげた)から出された本がある。ありのまま舎は有名になった。それは多くの人の協力を得て、莫大な労力を注入して、「グループホーム」を作った。その努力は立派だったと思うが、私には素晴らしい力の使い方としてその営みがどうだったかと思うところがある。そして、単行書は少ないが、一九八〇年代の初めに国立療養所を出て「自立生活」を始めた人の書きものがある。しかしそれを始めた人たちは亡くなってしまう。私はそれらを八〇年代の終わりに知って本の文献にはあげたが、それ以来そのような動きについて書かれたものはない。それですこし再開した。救済・収容に関わった人たちの、ここ数年の間に知ることになった書き物があり、連載ではそれを紹介した。医療、医療施設に関わってきた医師が回顧した書物として西谷裕[1994][2006](京都・宇多野病院)、近藤文雄[1996](仙台・西多賀病院)等があった。連載では他に福永秀敏の著書をあげた。また連載で長く使っている「国立療養史」全四巻、『国立療養所における重心・筋ジス病棟のあゆみ』(あゆみ編集委員会編[1994])がある。今ならもっと慎重になるものなのかもしれないのだが、それらには経営者・科学者たちの素直な感慨が表出されている。」


UP:201701 REV:
病者障害者運動史研究  ◇『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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