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筋ジストロフィー関連本

「身体の現代」計画補足・311

立岩 真也 2017/02/11
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1843291775937801

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渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(文庫版)表紙   立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙   『現代思想』2017年2月号 特集:ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 『現代思想』2017年2月号(特集「ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ」)に掲載された連載第130回を分載しているその第11回。 http://www.arsvi.com/ts/20170130.htm
に下記に記しているリストがあって、各々の本の頁にリンクされている。
 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172311.htm
にもある。渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』の紹介頁などにすぐ行ける。どうぞ。


 「■筋ジストロフィー関連本
 筋ジストロフィーについてもたくさんの本がある。リスト◆には八七冊をあげている。一部は既にこの連載であげた。この障害・病気の人たち、とくにデュシエンヌ型の人たちは、とくに過去、一九七〇年代まで、短命であり、多くは十代の後半、二十代の前半には亡くなった。字を覚えてから例えば十年ほどの間文章を書くことができ、書くことに力を注ぐ人もいる。ここでも死が書き手に意識され、読み手はそれを読む。『たとえぼくに明日はなくとも――車椅子の上の一七才の青春』(石川正一[1973])、『隣り合せの悲しみ――死を見つめながら生きる筋ジストロフィー症者の青春記』(山田富也[1975])といった本がある。石川は早くに亡くなったが父が活動を続けた。山田はなかでは長く生きて活発に活動した。
 一九八〇年代になると、やはり型による差は大きいのだが、より長く生きられるようになっていく。心臓の動きが弱くなっていくことへの対応は今でも困難だが、人工呼吸器が使われるようになり、呼吸はできるようになった。実業家になった人が書いた本などもある。ただ、多くの人たちは施設・病院にいる。長生きできるようになった分、その時間をかつて国立療養所であった病院−施設で暮らしている。そこで暮らし、ものを書いた人もいるし、その人やその人の書いたものを知って、生というものの何たるかをそこから感じいって、それを本に書く医師もいたりすることを述べた。それはまったくその通りであるとして、その手前で、この人たちがどのようにして病院−施設で暮らすようになり、今もさほどは変わらないののはどういう経緯でなのかという問いはある。それは、ここで私が問いとしている、身体を社会がどのように配置し、どのように遇しているのかという問いの一部である。
 ライターが筋ジストロフィーの人を取材した、多くの研究者のものよりよほど優れた著作に『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(渡辺一史[2003])があるが、その本に出てくる鹿野も、周囲の人たちが亡くなっていく病院での経験を語っていた。そして連載一二〇回・一二六回で紹介した伊藤佳世子の書いたものがある。伊藤は筋ジストロフィーの人たちがいる施設で働き、その処遇への違和感・反感があって研究することにし、書くようになった。さらに続きを書いてくれると私は思ったがそれはかなわず、結局今のところ私が書いているという次第だ。」


UP:201701 REV:
『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究  ◇身体の現代:歴史
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