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悲しく美しい本から…

「身体の現代」計画補足・309

立岩 真也 2017/02/07
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1843259692607676


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海老原宏美・けえ子『まぁ空気でも吸って』・表紙   『現代思想』2017年2月号 特集:ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ・表紙   立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 『まぁ空気でも吸って』(海老原宏美・けえ子)は
http://www.arsvi.com/b2010/1509eh.htm
 もう一つ海老原宏美が出てくる映画は『風は生きよという』は
http://www.arsvi.com/p/2015k.htm
その他、『現代思想』2017年2月号(特集「ビットコインとブロックチェーンの思想――中央なき社会のゆくえ」)に掲載された連載に対応する文献表
http://www.arsvi.com/ts/20170130.htm
にはいろいろ載っているので見てください。以下はその連載を分載しているその第9回。その、フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20172309.htm
にもある。


 「■本人たちの闘病記等
 […]
 多くの書きものにおいて読者を多数獲得するといったことは想定されてはいない。ただ、薄命であること、悲しいことについての社会的需要は常に一定あるから、なくなることはないだろう。そういった需要に呼応し、ときに売れるものがある。例えば脊髄小脳変性症の人の書いたものとして『1リットルの涙――難病と闘い続ける少女亜也の日記』(木藤[1986→2002])がたくさん売れ、コミックにもなり、それで脊髄小脳変性症も知られたのだと言う。またその前、例えば重症筋無力症(MG)について、『瞳に涙が光っていたら――クリーゼとたたかう青春の詩』(北川ひとみ[1975])、『母さんより早く死にたい――愛の詩』(水村一美[1976])といった本があった。スモン、筋ジストロフィー関係以外でもっと前に出たものとして確認できたのは『父ちゃんのポーが聞こえる――則子・その愛と死』(松本則子[1971])。著者は一九七〇年に二一歳で亡くなったハンチントン病の人(最初は進行性筋萎縮症の診断)。同年東宝で映画化もされる。「難病」という語は見当たらない。父親による「まえがき」に「業病」の語はある。
 それが、だいぶ時が経ってのことだが、同じ重症筋無力症でも、『I’m“MG”――重症筋無力症とほほ日記』(わたなべすがこ[2007])、『しあわせ難病生活――それでも私は恋をする』(大橋グレース愛喜恵[2014])といった本になってくる。脊髄性筋萎縮症(SMA)の人のものでは『まぁ空気でも吸って――人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』(海老原宏美・海老原けえ子[2015])、等。悲しげなものから前向きのものに変わってくる。あるいはいくらか脱力した感じのものになる。実際の変化はきっとそれほどでもないのだろう。言葉使いの流行の変化という部分はあるだろう。ただ、表に現れる言説の変化も含め、それはそれとしてまず押えておく必要がある。」


UP:201701 REV:
『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究  ◇身体の現代:歴史
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