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紹介:荒井裕樹『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の行動綱領』

立岩 真也 2017
共同通信配信:https://www.kyodo.co.jp/

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荒井 裕樹 20170125 『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の行動綱領』,現代書館,300p. ISBN-10: 4768435521 ISBN-13: 978-4768435526 2200+ [amazon][kinokuniya] ※ o/a01 hsm.

 ※Aを送る→綱領を主文だけにしたものに、他という要請あり→Bを送る→さらに本の将来らしく著者の紹介をもっと前にもってきてほしい他のC案が示され(たぶんほぼそのまま)受け入れる。

■A:草稿

 「一、われらは、自らが脳性マヒ者であることを自覚する。
 われらは、現代社会にあって『本来あってはならない存在』とされ…」
 「一、われらは、強烈な自己主張を行なう。」
 「一、われらは、愛と正義を否定する。
 われらは、愛と正義のもつエゴイズムを鋭く告発し…」
 「一、われらは、健全者文明を否定する。」
 「一、われらは、問題解決の路を選ばない。
 われらは、安易に問題の解決を図ろうとすることが、いかに危険な妥協への出発であるか身をもって知ってきた。…」
 これは二〇一三年に八〇歳で亡くなった、脳性まひ者横田弘が(四番目以外を)作った「青い芝の会」という組織の「綱領」だ。これはパラリンピック的、あるいはバリアフリー的な、明るい前向きの障害者像と違う。だが、なんだかそういう像は嘘くさいと感じる人はたくさんいると思う。
 昨年多くの障害者が殺傷される事件があった。現実は陰惨だ。そしてその陰惨さに対抗しようとする時にも、「普通さ」や「よさ」が持ち出される。しかしわざわざそのように言わねばならないのか。それはそれで腹立たしく思える。ではどう言えばよいか。
 そんなことを思う人は暗くて重いことを言ったその横田という人がどんな人だったか、知りたいと思うだろう。
 明るくないと暗くなり怒りっぽくなる。横田の言葉も暗くはある。そして怒っている。だが方角の間違っている怒りが怒りと怨念を増殖させてしまうのに対して、横田の怒りはまっとうだ。情けないところもあるが清々としてもいて、まわりまわって私たちに解放感と勇気を与えさえする。
 文学の研究者である著者は、詩人だった横田の詩を読みこみ、横田が生きている時たくさん会ってたくさん話を聞いた。他の各種のどうでもよい有名人より知られてよいのに、横田は知られていない。それはよくない、多くの人に知ってほしいと本書を書いてくれた。

荒井裕樹『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の行動綱領』表紙   横田弘・立岩真也・臼井正樹『われらは愛と正義を否定する――脳性マヒ者 横田弘と「青い芝」』表紙   『増補新装版 障害者殺しの思想』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

■B:編集部の要請を受けて手をいれた版
 ※さらに編集部の手が入った掲載されるものとは異なります。

 「一、われらは、自らが脳性マヒ者であることを自覚する。
 一、われらは、強烈な自己主張を行なう。
 一、われらは、愛と正義を否定する。
 一、われらは、健全者文明を否定する。」
 一、われらは、問題解決の路を選ばない。」
 これは二〇一三年に八〇歳で亡くなった、脳性まひ者横田弘が(四番目以外を)作った「青い芝の会」という組織の「綱領」だ。これはパラリンピック的、あるいはバリアフリー的な明るい前向きの障害者像と異なる。だがなんだかそんな像は嘘くさいと感じる人は実はたくさんいると思う。
 横田は横浜市で生まれ活動した人たちが、同じ神奈川県の施設で昨年、多くの障害者が殺傷される事件があった。現実は陰惨だ。そしてその陰惨さに対抗しようとする時にも、「普通さ」や「よさ」が持ち出される。だがわざわざそのように言わねばならないのか。それはそれで腹立たしい。ではどう言えばよいか。
 そんなことを思う人は暗くて重いことを言ったその横田という人がどんな人だったか、知りたいと思うだろう。
 明るくないと暗くなり怒りっぽくなる。横田の言葉も暗くはある。そして怒っている。だが方角の間違っている怒りが怒りと怨念を増殖させてしまうのに対して、横田の怒りはまっとうだ。清々としてもいて、まわりまわって私たちに解放感と勇気を与えさえする。
 横田たちの行動は、障害児を殺した親の減刑を求める運動への批判から始まった。そして障害児が生まれない社会をよしとすることを批判し、学校での隔離に反対した。これらを主張したい時、「私たちもみなさんと同じなんです」だけでは弱いのだ。そこに思想と言葉の強度が現れる。
 文学の研究者である著者は、詩人だった横田の詩を読みこみ、横田が生きている時たくさん会ってたくさん話を聞いた。他の各種のどうでもよい有名人より知られてよいのに、横田は知られていない。それはよくない、多くの人に知ってほしいと本書を書いてくれた。

■C:再提案があり、掲載されたかそれに近いもの

 「一、われらは、自らが脳性マヒ者であることを自覚する。
 一、われらは、強烈な自己主張を行なう。
 一、われらは、愛と正義を否定する。
 一、われらは、健全者文明を否定する。」
 一、われらは、問題解決の路を選ばない」
 これは二〇一三年に八〇歳で亡くなった、脳性まひ者横田弘が(四番目以外を)作った「青い芝の会」という組織の「綱領」だ。本書に登場するこの文章は、パラリンピック的、あるいはバリアフリー的な明るい前向きの障害者像と異なる。だがなんだかそんな像は嘘くさいと感じる人は実はたくさんいると思う。
 文学の研究者である著者は、詩人だった横田の詩を読みこみ、横田が生きている時たくさん会ってたくさん話を聞いた。他の各種のどうでもよい有名人より知られてよいのに、横田は知られていない。それはよくない、多くの人に知ってほしいと本書を書いてくれた。
 神奈川県の施設で昨年、多くの障害者が殺傷される事件があった。現実は陰惨だ。そしてその陰惨さに対抗しようとする時にも、「普通さ」や「よさ」が持ち出される。だがわざわざそう言わねばならないのか。それはそれで腹立たしい。ではどう言えばよいか。
 そんなことを思う人は暗くて重いことを言ったその横田という人がどんな人だったか、知りたいと思うだろう。
 本書での横田たちの行動は、障害児を殺した親の減刑を求める運動への批判から始まる。そして障害児が生まれない社会をよしとすることを批判し、学校での隔離に反対した。これらを主張したい時、「私たちもみなさんと同じなんです」だけでは弱いのだ。そこに思想と言葉の強度が現れる。
 横田は怒っている。方角の間違っている怒りが怒りと怨念を増殖させてしまうのに対して、横田の怒りはまっとうだ。清々としてもいて、回りまわって私たちに解放感と勇気を与えさえする。

cf.
◇青い芝の会綱領全文→http://www.arsvi.com/o/a01.htm#6
青い芝の会
横田 弘

横田 弘 2015/06/03 『増補新装版 障害者殺しの思想』,現代書館,254p. ISBN-10: 4768435424 ISBN-13: 978-4768435427 2200+ [amazon][kinokuniya] ※ cp. be. o/a01
◇荒井 裕樹 20110210 『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』,現代書館,253p. ISBN-10: 4768435114 ISBN-13: 978-4768435113 2200+ [amazon][kinokuniya] ※ o/a01.
◇横田 弘・立岩 真也・臼井 正樹 2016/03/25 『われらは愛と正義を否定する――脳性マヒ者 横田弘と「青い芝」』,生活書院,235+xip.
◇立岩 真也 2016/04/29 『青い芝・横塚晃一・横田弘:1970年へ/から』Kyoto Books 327.4kb \700


UP:20170215 REV:20170303, 13
横田 弘  ◇荒井 裕樹  ◇病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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