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「再発防止策」関係『京都新聞』(『相模原障害者殺傷事件』補遺・5)

「身体の現代」計画補足・280

立岩 真也 2016/12/22

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 「拙速で乱暴な仕組み」『京都新聞』2016-12-9朝刊:3、は
http://www.arsvi.com/ts/20160042.htm
 『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』
http://www.arsvi.com/ts/2017b1.htm
12月19日発売。『現代思想』2017年1月号に載る「『相模原障害者殺傷事件』補遺」
http://www.arsvi.com/ts/20170129.htm
の分載の第5回。

 フェイスブックに載せているこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162280.htm
にもある。

 「■もう一つ、「再発防止策」関係で
 本の仕事(一一月二九日に校正を終わらせたが、一二月四日にさらに間違いを一つ発見)が終わった後、十二月八日「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書が出た([2016/12/08]、「中間とりまとめ」は[2016/09/14])。その日の夕方、京都新聞社の記者から連絡があって、一〇〇〇字ほど書くことになった。四時間ほどをかけてなんとか書いてみた。翌日の朝刊に[2016/12/09]が載った。これは京都の人しか読まない新聞で、他の新聞におけるこの報告書の扱いはだいぶ違うものであったようだから、やはりHPに公開している。
 精神医療は基本的にこのような事件に関わらない方がよいことについては、本の第1部第1章に書いた。だからその章は、その一〇〇〇字の短文の一部をより詳しく説明するものではある。その私の基本的な主張は維持されてよいとして、もっと考えることはある。私が不勉強であり、考えが足りないことを思った。近頃は「社会防衛」とは言わない(かつてその言葉がまったく肯定的に使われていたことは連載で紹介した)。「支援」と言う。それは人を欺く言葉であり、そしてたぶん報告書を書いた当人たちはそのことに自覚的でない。このことは記事に書いた。けれどそれを言うことは「ではどうするか」に応えるものではない。「病気」から行為を「予想」するというのでなく、「現に行なっていること」に応ずること、その容疑者であれば脅迫していることへの対応は可能だし、なされてよいだろう。このことも本や記事に書いた。しかしさらに、それだけではない。例えばいったん捕縛したとして誰が何をするか。
 きっぱり言えることは言う。それはそれで大切だと思うから言う。ただそれとともに、その後のことを考える必要のあることがある。考えるだけでなく知っておく必要のあることがある。考えるために知っておく必要のあることがある。歴史を知る、書くことの意味の一つがそこにある。
 本の第1部第2章になった「障害者殺しと抵抗の系譜」――今回はたくさん題を編集者につけてもらった――に書いたことをすべての人が知っていることはない。不幸なことを多くの人が知っているというのも、それはそれで不幸なことであるように思う。ただ、知っているかのようなことを言う(立場の)人たちには知っておいてもらう必要がある。例えば、殺さないことがよいことを言うに際しても、ひとまとめにしない方がよい複数の言葉がある。皆が同じことを願っていることが本当だとして、その前にある、さほど大きくはないかもしれない差異、第2章では六〇年代初頭と七〇年の間にあったとした差異、断続を見て置く必要がある。後述する。」


UP:201612 REV:
『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究  ◇身体の現代:歴史
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