HOME > Tateiwa >

強制医療・2(『精神医療』掲載稿11)

「身体の現代」計画補足・254

立岩 真也 2016/11/04
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1800532303547082

253 < / > 255

Tweet


『造反有理――精神医療現代史へ』表紙    『精神医療』4-84(159)特集:国家意志とメンタルヘルス表紙    『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 「国家・権力を素朴に考える」
http://www.arsvi.com/ts/20160027.htm
の転載の第11回。
 全文は、他にも様々を集めた、『精神』
http://www.arsvi.com/ts/2016m3.htm
に収録されている。
 もとは『精神医療』第84号(特集:国家意志とメンタルヘルス)に掲載。
http://www.arsvi.com/m/p4084.htm

 フェイスブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162254.htm
にもある。


「■5 「強制医療」
 それを「強制医療」について考えてみるとどういうことになるか。[…]
 「他害」についてはどうか。精神医療に、強制医療、むしろ強制隔離が認められ、それでこのたびも医療に仕事をさせようという話がある。だが、普通に考えれば、医療は本人の苦しみを軽減するためになされるものだ。だから他害の防衛に医療が関わることはない、しない方がよい。そう主張する。すると、それはそのように定義するからであり、苦しみを減らすことと社会防衛の二つの仕事をいっしょにしてはならないというきまりはないと反論される。たしかに歴史的にも医療は「社会防衛」のためにおおいに使われてきた。しかしさらに反論できる。その反論の一つは、二つの役割を同時にさせることは、本人のためと言いながら実はそうでなく、医療と称するものが本人のためにならないこと、むしろ本人に対して加害的なことをしているという合理的な疑いを本人に生じさせることになる、だからそれはやめた方がよいというものだ。
 では代わりにどうするか。そんなことは知ったことではない、と言うこともできる。ただそれでも簡単には述べるなら、基本的に「現行犯」として扱うのがよいと思う。
 誰が対処するにしても、確率によって、未来の可能性によって対処することが望ましくないことは言える。基本、現時点での行ないに対応することにする。もちろん実行と予告とは異なる。ただ言葉による攻撃の方が身体に対する攻撃より問題がすっと少ないということもない。いまの法律や法律の解釈としてどうなのかは別として、両方に対応することができるだろう。それが治安のさらなる強化、警察の過剰な介入をもたら△068 すという危険はある。ただDVやヘイトスピーチのことを考えても、基本的な方向は間違っていないはずだから、その方向を認めたうえで「過剰」を抑える方途を考えることになる。
 ただそのうえでも、予測や予防や矯正のために精神医療の出番があると言われるかもしれない。私は精神医療に何ができるか知らないから、判断はできかねる。しかし、よく考えた方がよい。そこから逃れることはできるし、できるだけそうした方がよいだろうと思う。『造反有理』([2013/12/10]、書評へのリプライが[2016/09/10]、本誌に載った書評が中島[2014])が発売になったその日、2013年11月23日、精神保健従事者団体懇談会主催の第7回精神保健フォーラムの講演で、わざわざ面倒で危うい仕事をすることはない、大変だ忙しいと愚痴を言うのなら、仕事を減らすべきだと述べた([2013/11/23]、『精神病院体制の終わり』([2015])に収録)。精神科医のなかにもそのように言う人たちがいたことをこのたびほぼ初めて知ることになった。池田小学校事件〜医療観察法という時期の、高木俊介ら「精神医療懇話会」による、(保安処分〜医療観察法には反対したが、犯罪と精神医療という枠の話には乗った)日本精神神経学会への働きかけである。それは正当な提起であったと思う。『現代思想』9月号に載った文章で紹介した。
 それでも、認知症について例えば日本精神科病院協会がそうであった(ある)ように、自分たちがそれに応じようと手をあげる人たちが出てくるのだろう。その動きを『精神病院体制の終わり』([2015])に記した。同業者に仕事をさせないように同業者がするというのはじつはなかなか難しい。野蛮な人たちにさせるよりは自分たちの方がよいという理屈も成り立ちうる。これは精神保健福祉士の団体が医療観察法のときに自らの関与を正当化した理屈の一つでもある(樋澤[2016])。業界が仕事をする(実際に仕事をするかどうかは別として仕事をすると手を挙げて取る)のを辞めさせるには業界の外側の力が必要になる、また業界の発言力・影響力を弱める必要かある。警察や検察から不起訴等にされた人たちが回されてきてしまうことに病院が困っているのが実情だとして、それを変更するのは、引き受けてしまう業界団体があったりしてしまう以上、自分たちだけでは難しいということである。このことも『精神病院体制の終わり』で述べた。」


UP:201611 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
TOP HOME (http://www.arsvi.com)