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「社会モデル」(リプライ・4)

「身体の現代」計画補足・238

立岩 真也 2016/10/19

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『障害学研究』11表紙    『生存学』3・表紙    On Private Property, English Version    『造反有理――精神医療現代史へ』表紙
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 以下に出てくる『現代思想』での連載の一部はそのうちまとめようと思っているが、ひとまずテキスト&HTMLファイルでの提供を始めている(10/05にテキストファイルだけ提供開始→HTMLファイルも作成)。『社会モデル』(2016・期間限定版)
http://www.arsvi.com/ts/2016m2.htm
もう一つ、『加害について』(2016・期間限定版)。
http://www.arsvi.com/ts/2016m1.htm
 障害学会の学会誌『障害学研究』第11号掲載の拙著『造反有理』への松岡克尚さんの書へのリプライ
http://www.arsvi.com/ts/20150013.htm
の第4回。フェイスブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162238.htm
にもある。そこでは多くの人・項目にリンクしているからそちらをご覧いただきたい。

 「■手前のこと・1

 そうやっていくらかずつでも進んでみようと思っているのだが、それはこれから出ていくものを見てもらうことになる。ここでは、この本のこと、この本の手前のことについて、別の筋の補足をする。
 やはり『現代思想』の二〇一〇年七月号(特集:「免疫の意味論――多田富雄の仕事」)に多田らがリハビリテーションの日数制限に反対したことを書いた【357】。つまり彼は不足を言っている。しかし障害者の一部にはリハビリテーションを有期限のものにすべきだとの主張もあった。こうしたことをどう考えるか。この号の「連載」の方の文章は「過剰/過少・1」で、リハビリテーション・(狭義の)福祉といった行ないの過剰/過少について考えようとした。それはなおす/なおさない、という主題に関わっている。私の書きものでは『障害学の主張』(二〇〇二、明石書店)所収の「ないにこしたことはないか・1」があるが、それで話が終わったのではない。例えば、精神疾患という言い方があり、精神障害という言い方もある。病と障害と両方について考えてみる必要がある。
 それで八月号・九月号・十月号を「社会モデル」序・1・2として、基本的なことを考えてみようとした。その後、十一月・十二月号「社会派の行き先」1・2では、「医学モデル」「個人モデル」から「生活モデル」「社会モデル」へだとか、「ADL(日常生活動作)」から「QOL(生活の質)」へだとか、「全人的復権」だとか、「障害受容」だとか、すべて正しいことが語られる――そのことを言った(そのことに賛同した)のは、医療に関わり、指△276 導的な位置にいて、社会」の改革に肯定的・積極的な人たちだった――中で、実際のところはどんなことが起こるのかについて、すこし事態を眺めてみた。その「社会派の行き先・3」(二〇一一年一月号)からが、『造反有理』に収録されていくのだが、その前ではリハビリテーション(医学)界の主導者であってきた上田敏他について書いている。
 それは、この国に存在した二つの間の争いにも関係する。つまり、一方に「極端」なことを言う批判派がおり、他方にその非現実性他を指摘し批判するという構図があった。前者は、おもに一九七〇年代の社会運動(大学闘争・学会改革・障害者運動…)にあったものであり、その主張に反批判を返した後者には共産党系の組織・組織に関わりがあるとされた人たちがいた。取り上げた上田敏といった人たちは、後者の中では、より穏当で世界的動向に注意深い人たちで、後には「自立生活運動」も評価し、バランスのとれたことを言った人だった。もっとはっきりと「発達保障」を掲げ、そのことを巡ってはっきりとした対立があったが、これについてはそこでは触れていない。この対立については双方の立場で書かれたものが幾つもあるということもある。そして、問題はむしろ、中庸でもっともなことを言う人たちのことだった。しかも、なおすことと補うことの二つともが大切で、一つだけを言うのが極端であるというその主張を私自身が受け入れた上で、なおその穏当な人たちのことが「気にいらない」こと――このことを言っている人として私が他に知って著書から引用したのは杉野昭博――をどう言えるか、そうしたことが私は大切だと思った。それはそう単純にはいかない。繰り返すが、真正面から対立しないところに私(たち)自身がいるからだ。そのうえで批判したい。他方で、前者、つまり過激で自己否定的・自己矛盾的なことを言っている人の方が、考えようによっては、まともであると言えると思う。『造反有理』においては、上田との共著書もある秋元波留夫【91】等が後者の位置にいる。そのようにつながっている。」


UP:201609 REV:
『造反有理――精神医療現代史へ』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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