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『造反有理』書評へのリプライ・2

「身体の現代」計画補足・236

立岩 真也 2016/10/17

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『造反有理――精神医療現代史へ』表紙    On Private Property, English Version    『障害学研究』11表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 松岡克尚さんによる『造反有理』の書評が『障害学研究』第11号に載った。その「リプライ」を転載・分載するその2。『障害学研究』第11号は
http://www.arsvi.com/ds/jds011.htm
「リプライ」の目次他は
http://www.arsvi.com/ts/20150013.htm
この原稿はずいぶん前に書いたもの。中身からは少し外れてはいるが、私としては大切なことを書いているつもり。下に出てくる『私的所有論』――英語電子書籍+日本語HTML版のことはまたお知らせする、と前も書いた――からの引用は、その本がどんな気分で書かれているかという部分。
 フェイスブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162236.htm
にもある。そこでは多くの人・項目にリンクしているからそちらをご覧いただきたい。

 「■適格でないが書いたこと
 […]
 そして、そういう世代の後、もっと平和になった時代があって、今度はその人たちは、騒がしかった時代のことがわからない。後で記すこの本の「続篇」にはその挿話が出てくるが、フェリックス・ガタリ(らの実践)については本を読んで知っているが、日本のことは知らないという人がいたりする。それでも、このごろは、過去のことを勉強しようというような人たちも出てきて、本誌の読者なら知っているだろう本が幾冊も書かれるようになった。私もそのいくつかに大学院の教員として関わらせてもらっている。ただすくなくともこの本のもとになった連載を書いた二〇一一年頃には「精神」に関わる領域ではなかった。以前読んだ古い本は絶版になっていた。
 その、以前は(ほんのわずかだが)読んだという私は、この本で書いた時期と「もう終わっていた」時期との間にいてきた。そしてそこで、「造反派」と呼んだ人たちの側にいくらか近いところにいた【401】。今も基本的にはそ△272 うだと(自分では)思う。
 けれども全面的に同調ということもできなかった。そこをどう考えるか、また考えなおすかは、最初の本からの私の立ち位置、というか出発点のようなものだ。以下『私的所有論』より。

 「現実や現実を肯定する流れがあり、それに対する批判がある。[…]どちらかと言えば、異を唱えてきた人達の方が何かを言っているだろうと私は感じてきたし、この本を書いてみた今、あらためてそう感じてもいる。ただ、両者のいずれにも満足できなかった。ずっと両者のその間にあったと思う。これは嫌われる立場である。しかし私はそのようにしか考えられなかった。」(第1章2節3「問いについての歴史」、第二版・生活書院文庫版では四八−四九頁)

 ここでは「間にいる」ことが後に記されている。実際そうなのではあるが、その前には、批判する側に就くことは言っている。そして間で考えるにせよ、どう考えどういう結論を出すにせよ、批判し造反した側が言ったり行ったりしたことをある程度は知ってもらわないことには、私が何を考え何を言いたいかもわからないだろうし、その私のことはどうでもよいとして、やはりそれはもったいない、よくないことだと思う★02。
 筆者と年齢も近い評者はそのあたりの「感じ」をわかって書いてくれている。では「もっと後」を生きてきた人たちにとってはこの本はどうだったか。私には想像できないところがある。ただ、そんな、理解するとかなんとかの前のこととして、いくらかは知っておくべきだろうと思って書いた。
 そして書かれるべきがこれから書かれていくことにいくらかの参考にはなる、そんなものになってくれればと思うところがあった。本の出版の後、というのは話ができすぎていてそんなことはなく、そのしばらく前から、私が職業として関係するところでも、幾人かの人がいろいろと調べたり書いたりを始めている。評者が引いている阿部あかねの論文もその一つだ。そしてその阿部や、吉村夕里三野宏治萩原浩史桐原尚之といった人たちが書いてくれている。『生存学』第三号(発売:生活書院)の特集が「精神」で、こ△273 れらの人たちのものも含め十本の論文が収録されている【355】。また同じ号に、天田城介という極めて強靭な聞き手に問われて、へとへとになって話している「生存の技法/生存学の技法――障害と社会、その彼我の現代史」という題の長いインタビューも掲載されており、「精神」の領域のことにもかなり言及している(第四号にさらにその続きが掲載されている)。」

★02 現在の歴史から論点を取り出す、そのためにも言説・出来事を記すという方向のものとしては、まず『生の技法』の第7章そして、第2版・第3版で追加した部分がある。そして『ALS』(二〇〇四、医学書院)。これは時代を辿るという構成にはなっていないけれども、各章ごとにおおむね過去から現在の方へという具合になっている。そして『唯の生』(二〇〇八、筑摩書房)の第2章「近い過去と現在」、第3章「有限でもあるから控えることについて――その時代に起こったこと」、第4章「現在」。安楽死尊厳死について書いた本の一冊だが、とくに高齢者に関わる(終末期)医療についての言説を追った部分がある。『税を直す』も私が書いたところはそういうものとして読める。そして『流儀』(稲場雅紀・山田真・立岩真也、二〇〇八、生活書院)。稲場が語ってくれたこと、そして再録された彼の文章も重要だが、『造反有理』に書かれていることには、山田へのインタビューとそこに付した長い註が大きく関わっている。ぜひ読んでいただきたい。」


UP:201609 REV:
『造反有理――精神医療現代史へ』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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