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1960年代補足続(10月号・08)

「身体の現代」計画補足続・222

立岩 真也 2016/10/03
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1783688655231447

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荒井裕樹『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』・表紙    『現代思想』2016年10月号 緊急特集:相模原障害者殺傷事件・表紙    横田弘・立岩真也・臼井正樹『われらは愛と正義を否定する――脳性マヒ者 横田弘と「青い芝」』表紙    『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 昨年(2015/09/26)の荒井裕樹・臼井正樹との鼎談(全体はかなり長い)から、その2。この鼎談は『われらは愛と正義を否定する――脳性マヒ者 横田弘と「青い芝」』(生活書院、2016/03/25)
http://www.arsvi.com/b2010/1603yh.htm
の企画中に、臼井正樹が企画して彼の勤め先である神奈川県立保健福祉大学を会場にして行われた。
 「七・二六殺傷事件後に 2」
http://www.arsvi.com/ts/20160031.htm
で1960年代のことにふれていて、その部分を前々々回と前々回に引用した。そこで
◇立岩真也 編 2015/05/31 『与えられる生死:1960年代――『しののめ』安楽死特集/あざらしっ子/重度心身障害児/「拝啓池田総理大学殿」他』,Kyoto Books
http://www.arsvi.com/ts/2015b1.htm
を紹介している。以下の発言で【本書】とあるのはそれを指す。それを販売中。700円。紙本にすると3000円ぐらいにはなってそれは無理と思ったこともあり。
 『現代思想』の特集に載った文章では以下に出てくる松山善三――その時の鼎談ではもう亡くなったことにしてしまったが、亡くなったのは今年の9月、もうしわけない――の「小児マヒと闘う人々」も『典子は、今』も出てくる。それと殺傷事件と何の関係があるかと思うだろうが、関係はある。

 フェイスブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162222.htm
にもある。


 「[…]それから、これも荒井さんの本(荒井[2011b])で初めて知ったんだけれども、「私を殺してほしい!」っていう『女性自身』に載った手記(1962、立岩[2015]【本書】に再録)は実は花田春兆さんが書いた文章だそうです。横田さんが女性を騙って書いた詩と、『しののめ』の書き手は少なくとも2回、女性を騙って文章を書いたってことですね。
 また、松山善三っていう映画監督がいます。高峰秀子が妻だったんですけれども、彼女も関わって1981年に『典子は、今』っていう映画を撮っています。皆さん知っていますか。サリドマイドで生まれた熊本の人が旅に出るみたいな内容です。ノンフィクションではないんだけれども、サリドマイドの本人が出ている映画で、当時、皇太子殿下も見に行ったという、何百万人を動員したっていう映画です。この松山善三が61年に「小児マヒと闘う人々」(松山[1961]、立岩編[2015]【本書】に再録)で書いている話っていうのは、やっぱり小児マヒがいかに悲惨であって、ポリオがいかに悲惨であって、それからCPはもっと悲惨であって、それをいかに医療者たちが、一生懸命治そうと努力しているか、その涙ぐましい姿を見よ、みたいな、そういう話なんです。そういう話がこの中であって、なおかつ、それから8年という短い時間の間に、1970年っていう時が訪れる。これは一体なんだろかっていうことです。
 しかも、話はもっと複雑でもあるかもしれず、これもさっき荒井さんと雑談したんだけれども、たとえば横塚晃一は、整肢療護園っていう、日本でいえばリハビリテーションっていうか、医療的リハビリテーションっていったらいいんですか、そういったものの先駆みたいなところに入っていた人間でもあって、そこの自治会の会長なんかしたのかな、そういった人間でもある。脳性マヒを治すってことに一生懸命で、少なくともその時期一番先駆的であったところに、少なくとも彼は何年かいたりしたわけです。
 そうすると、障害を治すというようなこと、あるいは、障害を否定するとか肯定するっていうのは一体どういうことなのかということを、我々は否応なく考えざるを得ないことにもなるわけです。しかし、否応なく考えるためには、そういった非常に素朴な否定といったものがあった時期、そしてそれが、そのまま通った時期、そしてそれが、7年、8年と経った時期に、一転してそれに対する強力なカウンターが出ている。そのとき、それから、その後ですね、72〜73年と、その後になります。たった10年でも15年でもいいわけですけど、その間に何が起こったのかっていうことを、やはり我々は拾い上げて、そしてそれをもとにして考えていくということが必要だろう。横田さんなら、横田さんっていう人もそういうところにいた。
 僕は、さっき言いましたように、じいさんたちに嫌われながら、でも、横田さんみたいなじいさんには付き合ってもらえた。結局、「お前たちで終わったわけじゃないんだよ」っていうことを僕は言いたいんだと思います。お前たちで問いは終わってないし、答も終わってないんだ。それを我々がどうやって継ぐのかっていうことが、やっぱり、今のところ、まだ生きている人たちが、すでにもういなくなった人たちに対してできる仕事、引き継ぎ方なんじゃないかということを、僕は横田さんと話しているときも思いましたし、もっと前に学生やっているときに、この人たちが言っていることを、どう私は受けたらいいのかっていうことを考えたときに思った次第です。めちゃくちゃ長くなりましたけれども、これで終わりにしときます。」


UP:201609 REV:
障害者殺し  ◇7.26障害者殺傷事件  ◇『現代思想』2016  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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