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業界の外の力が要る(事件後に13)

「身体の現代」計画補足・207

立岩 真也 2016/09/17
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1775661839367462

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『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙    『現代思想』2016年9月号 特集:精神医療の新時代――オープンダイアローグ・ACT・当事者研究…・表紙    『造反有理――精神医療現代史へ』表紙
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 特集:精神医療の新時代――オープンダイアローグ・ACT・当事者研究…、という、現在発売中の、『現代思想』9月号に、連載の代わりに書いた「七・二六殺傷事件後に」を分けて載せていて――とても長くかかったから、『現代思想』買ってください――その13回め。これで終わり。目次や文献表は
http://www.arsvi.com/ts/20160030.htm
下に出てくる「精神科医療懇話会」の文書もそこから読むことができる。
 フェイスブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162207.htm
にもある。

 この9月22・23日、立命館大学いばらきキャンパスを会場にした障害学国際セミナー2016
http://www.arsvi.com/a/20160922.htm
テーマは「法的能力(障害者権利条約第一二条)と成年後見制度」、の話が最後に出てくる。基本事前申し込み制。手話通訳、文字通訳(共に日本語)あり。おいでください。関連して「意思決定支援」。
http://www.arsvi.com/d/ds.htm

 「■しなくてよいと言ってもすると言う人たちはいるのだが
 と言ったうえでも様々な具体的なやっかいなことはあるだろう。また以上のように捉えたうえで、再度医療はどのようにそこに介在するのかという問題もあるだろう。ただ基本、他の様々で忙しいという精神医療は撤退した方がよいだろうということだ。
 二〇一三年一一月二三日、精神保健従事者団体懇談会主催の第7回精神保健フォーラムの講演「病院と医療者が出る幕でないことがある」([2013/11/23])――その日に『造反有理』が発売になった、というかその日に合わせて本の準備をしてもらった――で、わざわざ面倒で危うい仕事をすることはない、大変だ忙しいと愚痴を言うのなら、仕事を減らすべきだと述べた(後に『精神病院体制の終わり』に収録)。
 事件が起こった日、安原荘一が配信したメールに、「心神喪失者等医療観察法」(二〇〇二年)ができるきっかけに――後にその犯人が精神障害者だとは認められないとされたにもかかわらず――なった二〇〇一年の池田小学校事件の時、日本精神神経学会の動きに対して「精神科医療懇話会」がそれを批判する文書(精神科医療懇話会[2001/06/27][2001/07/20][2001/09/18])を出していたことを知った。二冊の拙著にも度々出てくるその学会は一九六〇年代末までは保安処分に賛成だったが、反対に転じ、「社会防衛」を否定的な言葉で用いるようになり、基本的にはその路線を維持する。だが高木俊介らのその懇話会は、保安処分〜医療観察法には反対したが、犯罪と精神医療という枠の話には乗ったその学会を諫めている。再犯の可能性など医療者はわからない、犯罪防止のための強制に医療(者)が関わるべきでない、他を述べる。
 異論はあるだろうが、これははっきりした一つの理に適った立場である。それでも、認知症について例えば日本精神科病院協会(日精協)がそうであった(ある)ように、自分たちがそれに応じようと手をあげる人たちが出てくるのだろう。その動きを『精神病院体制の終わり』に記した。そしてこの度の事件に際し、テレビの報道番組や討論番組で、地域での犯罪防止にいかに精神医療が関わるかといったことを滔滔と語る精神科医などを見かけるにつけても、そういう人たちは現にいるのだと思う。
 同業者が仕事を同業者にさせないようにすることはじつはなかなか難しい。野蛮な人たちにさせるよりは自分たちの方がよいという理屈も成り立ちうる。これは精神保健福祉士の団体が医療観察法のときに自らの関与を正当化した理屈の一つでもある(樋澤[2016])。業界が仕事をする(実際に仕事をするかどうかは別として仕事をすると手を挙げて取る)のを辞めさせるには業界の外側の力が必要になる、また業界の発言力・影響力を弱める必要がある。警察や検察から不起訴等にされた人たちが回されてきてしまうことに病院が困っているのが実情だとして、それを変更するのは、引き受けてしまう業界団体があったりしてしまう以上、自分たちだけでは難しいということである。
 このことも『精神病院体制の終わり』で述べた。そうしたことを考えるためにも「近い過去」に起こったできことを知り、書いていく必要がある。そう思って仕事を続けていくことになる。」


UP:201609 REV:
7.26障害者殺傷事件  ◇『現代思想』2016  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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