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精神障害者に対する脅威となることは最初から懸念された(事件後に・4)

「身体の現代」計画補足・197

立岩 真也 2016/08/29
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1769056140028032

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『現代思想』2016年9月号 特集:精神医療の新時代――オープンダイアローグ・ACT・当事者研究…・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 特集:精神医療の新時代――オープンダイアローグ・ACT・当事者研究…、という『現代思想』9月号。連載の代わりに書いた「七・二六殺傷事件後に」。目次や文献表は
http://www.arsvi.com/ts/20160030.htm
以下精神医療関連の声明・要望書等は
http://www.arsvi.com/2010/20160726ts.htm#1
からご覧になれる。ご覧ください。
 フェイブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162198.htm
にもある。


 「■脅威に対してまず言われたこと
 この事件の受け止められ方が精神障害者に対する脅威となることは最初から懸念されたことだった。池田小学校事件のときも、犯人の精神障害が取り沙汰され(後の鑑定でそれは否定された、だが否定されたにもかかわらず)、それが「医療観察法(心神喪失者等医療観察法)」成立のきっかけになったと言われる。そのことを思い起こした人もいた。慎重な対応を求める声明がすぐにいくつも出された。集められたものを収録・掲載している★04。
 二六日・地域精神保健福祉機構★05。「この事件で逮捕された男について、一部報道では、措置入院の過去があったと報じられています。私たちは、事件の背景・動機などの詳細が不明な段階で、精神障害による犯行とするような報道を危惧しております。/「精神病院に入院」「通院」といった部分記述は、事実であっても、その一文によって、読者には「精神疾患」が事件の原因であり、動機で あると読まれてしまいます。その結果、「精神病者(精神障害者)はみな危険」という画一的なイメージ(=偏見)を助長してしまうと考えるからです。/二〇〇一年の大阪教育大学付属池田小学校事件では、精神障害者の犯行として大々的に報道され、精神障害の当事者に多大な報道被害をもたらしました。」
 二八日・大阪精神医療人権センター★06。「加害者の精神科病院への入院歴があたかも事件を起こした動機・理由と関連があるかのような報道がされています。しかし、事件と精神障害とを結びつけるような報道が、精神障害者が危険な存在であるかのような偏見を助長・拡大することを強く危惧します。地域社会で暮らしている精神障害者が攻撃の対象とされて平穏に過ごせなくなるおそれがあるからです。/さらに、加害者に対する措置入院の解除が問題であったかのような報道もされています。そもそも加害者に措置入院の要件があったのか、入院中にどのような治療がなされたのか、措置入院が解除されたのはどうしてか等々も不明です。加害者を精神科病院に閉じこめておけばよかったかのような考えは、精神医療を犯罪防止の道具にする短絡的思考につながっていきます。事件の全容が十分に明らかになっていない段階での報道に対して強い疑念を抱かざるをえません。/私たちは、報道機関に対し、緻密に調査された正しい事実に基づいて、精神障害者に対する差別や偏見を助長することのない適正な報道に努めていただくことを強く要望します。」
 精神医療についての言及を一部に含む声明もある。
 二七日・DPI(障害者インターナショナル)日本会議。「なお、容疑者とされる者の入院歴等が一部マスコミで取り沙汰されているが、事件の全容が解明されていない中で偏見と予断を煽りかねない報道は差し控えられることをあわせて求めるものである。」
 個人の文章、記事も多く書かれ知らさせるようになった。二九日・原昌平。「今の段階で強調しておきたいことが二点あります。/第一に、容疑者は措置入院になっていた時期がありますが、本当に何らかの精神障害があったかどうかは、まだよくわかりません。したがって、精神障害による犯行と決めつけたり、事件を予防できなかった原因を精神科医療システムに求めたりするのは、時期尚早だということです。」
 報道機関に対する声明・要望は、理解を求め、お願いするものだから、まず慎重な対応を求めるといったものになったのは当然のことだ。容疑者は措置入院し退院したと報じられているが、それがとんなことであったのか。早く退院させたことが問題だとされたが、その事情もわからない。措置入院自体も、現行の制度・規定を前提したとしても、適切であったかわからない。精神障害者と言えるかわからない。精神障害ゆえの犯行と言えるかわからない。まだわからないから慎重な対処を求める。そんな言い方になっている。そして、精神障害者全般の危険視、排除につながることが懸念される。
 私もまず書いたのはそういうことだ。[…]


★04 声明を出したのはまず「全国手をつなぐ育成会連合会」(二六日)、「きょうされん」(二六日)。知的障害者に(も)関係する組織から出された。他にも多くの組織・個人から声明等が出された。海外からのメッセージもあった。http://www.arsvi.com/の表紙からそれらを集めた頁に行けるようにした。
★05 「コンボ」と略称される。全国精神障害者家族会連合会(全家連)が消滅した後にできた。全家連とその消滅については吉村[2008][2009:chap.3]。
★06 『精神病院体制の終わり』(に収録した本の紹介のシリーズ、他)で『大阪精神病院ありのまま』(大阪精神医療人権センター[2000]、[2000]は第二版、その後も刊行は続いている)を紹介した([2015/11/13:110,302,345])。」


UP:201608 REV:
7.26障害者殺傷事件  ◇『現代思想』2016  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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