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事件後に・1

「身体の現代」計画補足・195

立岩 真也 2016/08/23
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1767137586886554

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『造反有理――精神医療現代史へ』表紙    『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙
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 あと数日で発売の『現代思想』9月号の特集が「精神医療の新時代」で、私は予定を変えて「七・二六殺傷事件後に」という文章を書くことになった。目次や文献表は
http://www.arsvi.com/ts/20160030.htm
にある。これからしばらくきれぎれに掲載していく。
 フェイブックに載せるのと同じこの文章は
http://www.arsvi.com/ts/20162195.htm
にもある。


 「■事件に関わり二つ書くこと
 七月二六日に相模原市の障害者施設で入所者一九人が刺殺され二六人が負傷する事件があった。本誌連載の予定を変えて、その事件に関わることについて書こうと思った。その草稿は大きく、精神障害・精神医療★01に関わる(というより関わらせられてしまっている)部分と、障害者殺しの歴史に関わる部分とになっていって、合わせるとずいぶんと長くなっていった。
 そうしているうちに、今月号の特集が「精神医療の新時代」ということで、前半の部分をその特集の中に収めてもらうことになった。さらに、本誌十月号がこの事件を特集するものになったということで、後半はそちらに掲載させてもらうことになった。
 その連載では精神医療に関わることも書いていて、それは『造反有理』『精神病院体制の終わり』という二冊の本になった★02。それはまずは昔を語る本であり、人によったらなんという呑気な昔話をしているのかということになるだろうが、その過去は現在に関わっている。またある部分はそのまま現在のことでもあり、二冊めの記述は現在に及んでいる。そして本が出た後の連載で、その本を書いたすぐに起こったことについても記している。そこからどうしたものかについても、とくに二冊目では具体的なことをいくつか述べている。ただ、そこで私は「強制医療」「強制」についてはほとんど考えて書いていない。」

■註
★01 英語ではこのごろは「persons with psychosocial disabilities」という言葉を使うのが一般的なのだという。後に述べることにも関わり、障害と言うか疾病・疾患と言うかといったこともある。本稿ではまったく「てきとうに」使っている。ときどき「精神」の関係とか、「精神」の人、などと記すこともある。註12も参照のこと。
★02 いくつか書評をいただいたが私がリプライを書いたものでは『造反有理』について松岡[2016]、リプライが立岩[2016/09/10]。『精神病委員体制の終わり』について桐原[2017]、リプライが立岩[2017/03/**]。全文をHPに掲載している。なお連載の[2015/10/01]は、本の概要を知らせる部分と本の補章2になった「病院化についての覚書」。[2015/11/01]は本刊行後に起こったこと等を記した「今般の認知症業界政治と先日までの社会防衛」とした。
 『造反有理』はそう歯切れのよい話をしているのではない。というか、起こったことがそう歯切れのよいできごとではなかった。その各々について、例えばかつてあったロボトミー事件・裁判についてもう読めるものがほとんどなくなっているのはよくないと思った。また例えば中井久夫はよい人として、なにか気の利いたことを書く人として受け止められ、それはそれで間違いではない。ただ、総じて精神科医の書くものはそのように受容されるのだが、それには抵抗があった。そして中井はそんなものだけを書いたのではない。かつて「抵抗的医師とは何か」といった文章を匿名で書き、そしてそれを自らの著作として二〇一〇年に再刊した。そんな気持ちになったということだ。それを受けようと思った。
 そして『精神病院体制の終わり』は今終わりつつあることを書いたのではない。現在における繁盛にもかかわらず終えることはできるということ、そしてそのための条件を述べた。
 こうしてすこし古い話をした、古いところから始めたのではあるが、まったく今の現実のことでもあることを思い知ることにもなった。今年になって、認知症の親の医療保護入院に立ち会うことにもなった。また別の人のありうる転院先として「十全会病院がありますが」、という話を聞いた。このようにことは運ぶのかと思った。
 新しい歴史を調べて書くべきことについては、(二〇一六年度についても)採用されなかった科研費応募書類から転記した「病者障害者運動研究」([2015/12/01])他で述べている。」


UP:201608 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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