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重度訪問介護事業+事業者たち:ケア場・3

「身体の現代」計画補足・183

立岩 真也 2016/07/24
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1753867068213606
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『生存学』1・表紙    立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 「この人たちの、学会報告等も含めればおびただしい数の論文・報告を、まずは読んでほしいと思う。」と始まる
 『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』
http://www.arsvi.com/b2010/1603rcav.htm
補章の「3穴があいているので埋める・塊を作る」より「ケア場」の3。

 フェイスブック上のこの文章と同じ文章が
http://www.arsvi.com/ts/20162183.htm
にあるが、そこから注文できる『生存学』1掲載の論文たちも「おびただしい数の…」の一部。
 「重度訪問介護事業」については
http://www.arsvi.com/d/a02j.htm
川口有美子は
http://www.arsvi.com/w/ky03.htm
白杉眞は
http://www.arsvi.com/w/sm22.htm
伊藤加世子は
http://www.arsvi.com/w/ik10.htm
辻義宏は
http://www.arsvi.com/w/ty08.htm
伊藤が休んでいるので私がせざるをえなくなった仕事というの(の文献表)は
http://www.arsvi.com/ts/20160120b.htm


「■3 穴があいているので埋める・塊を作る

 ■ケア場
 […]
 この人たちの、学会報告等も含めればおびただしい数の論文・報告を、まずは読んでほしいと思う。これらで明らかにされるのは、葛藤の深さ、困難の大きさでもあり、それをすっかりなくすことなどどうがんばっても無理そうだということだが、同時に、どうにかならないわけではない部分が確実にあるということだ。
 その一つが、制度、とくに介助(介護)に関わる制度と、その制度を作り出し、また制度外でなされてきた実践を知り、それに与することだ。もう一つが、機能を果たしていない「相談支援」と今は呼ばれるものの機能を働かせることである。
 例えば前者について、ケアマネージャーや役所の担当者やら、知らない人たちにとくに悪意があるわけでなく、単純に、現在では「障害者総合支援法」に規定されている制度、とくにその中で「重度訪問介護事業」と呼ばれているものを知らないし、知らないから伝えないということがある。様々に在宅や訪問が大切だと説いている人たちがわかっていない。個々の人たちはよい人で熱心であったりもする。だが、あるいはよい人たちであるからこそ、その人たちの話をそのまま受けとり、こんなものかと思って、生きていくのは無理だとあきらめてしまう。そしてこの制度は、交渉しないと取れないし、役所が認めても、事業所がその事業を受けないならやはり使えない。
 そんな状況だから、研究は研究として継続しつつ、自分たちで「事業」をやった方がよいのではないかという話はずいぶん前からあったが、例えば日本学術振興会特別研究員というものになると研究専念義務というものが発生し、他の仕事を(基本的に)してならないということになっている等、諸般の事情でまだ実現はしていない。そしてそれはひとまず研究外の活動ということになる。だが、その事業・活動がどのように可能なのか、また現実になされているのかは、研究の課題となる。そしてそうした研究もまたこれまでほぼなされていない。それには幾つか要因があるが、その一つは、事業・事業所の内情が研究者に伝わっていないことだ。事業をしている人たち自身の方がその仕事・事業のことをよく知っている。実際に経営に関わっているから書けることもある。そして、その気になりさえすれば、自分たちのことならいくらも書けるということはある。
 既にNPO法人の理事長であったり、会社社長であったり、事業主として、あるいは働き手として、事業に関わっている、経営している人たちがいる。東京では前出の川口有美子が重度の所謂医療的ケアを必要とする人への介助者派遣会社「ケアサポートもも」を経営してきた。そして白杉眞が京都市内に自立生活センター(CIL)「スリーピース」を設立して運営している(白杉[2010][2011])。辻義宏は神戸市内で介助者派遣等の会社「小鳩」を経営している(辻[2015])。筋ジストロフィー病棟で非正規で働いている時そこでの処遇がよくないことに憤って研究を始めた伊藤加世子が、いくつか論文も書いた(伊藤[2008][2010])ものの、そんな施設から出て暮らせるようにと千葉県で始めた事業があまりに忙しくなって、研究を(いったん)やめたのは残念なことだったが、事業をきちんと行なうことの方が論文など書くよりたぶん大切なのだから、仕方がない。(ただ、代わりに筆者は、伊藤が調べ始めた分野を書くことにはなってしまった。)」


UP:201607 REV:20160727
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史『生存学の企て』
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