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ケア場:『こんな夜更けにバナナかよ』…

「身体の現代」計画補足・181

立岩 真也 2016/07/20
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1752196158380697
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渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』・表紙    立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙    『生存学』1・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 「「ケア」は、とくに近年、例外的に研究が様々あった領域だった。だからそこは他〔の大学院他〕にすっかりまかせておいてよかった数少ない部分だろうとも思える。ところが実際にはそんなことはまったくなかった。」と始まる『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』
http://www.arsvi.com/b2010/1603rcav.htm
補章の「3穴があいているので埋める・塊を作る」より「ケア場」冒頭。
 フェイスブック上のこの文章と同じ文章が
http://www.arsvi.com/ts/20162181.htm
にあり、そこから『こんな夜更けにバナナかよ』、『生存学』創刊号購入できる。


「■3 穴があいているので埋める・塊を作る

 ■ケア場
 「ケア」は、とくに近年、例外的に研究が様々あった領域だった。だからそこは他にすっかりまかせておいてよかった数少ない部分だろうとも思える。ところが実際にはそんなことはまったくなかった。
 まず、ときに生ずる人的関係の極度の困難さを、その困難さに見合う濃度において書くことがなされてこなかった。『こんな夜更けにバナナかよ』(渡辺一史[2003]])は名著で、すこしばかり論文ぽい外装を施せば十分に博士論文にもなる本だが――というか、このごろ量産される博士論文の多くよりずっと優れている「ノンフィクション」本はとてもたくさんある――そこに出てくる、なかなかやっかいな人物である鹿野靖明(筋ジストロフィー)より、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の中ある人たちの一時期、とくに急な進行期の人とはとてもやっかいな、こじれた関係ができることがある。それを諸般の事情で研究という以前に体験することになってしまった人たちがいて、『生存学』創刊号(→本書pp.231-232)に1〜4の続きものとして載ったのは、そこに巻き込まれた人たちの文章である。
 その後、長谷川唯はこの主題で博士論文「重度障害者の安定した地域生活構築のために――ALSの人の独居生活支援活動を通して」(長谷川[2012])を書いて、いましばらくは日本学術振興会特別研究員。この研究科としては異色の、建築学の修士号をとって(3年次=後期課程に)やってきた山本晋輔も、ALSの人たちの居住空間に関する博士論文「重度身体障害者の居住/住居――家族の支援がない2人のALSの人の支援を通して」(山本[2012])を書いて、現在は建築事務所で図面を引いているのだが、このごろ福祉関係の建物の設定にも関わっている。このできごとに最も長く深刻に関わり、受傷した西田美紀(看護師、アルバイト先のデイケアで偶々その厄介な人に遭遇することになった)は、その後もその厳しい体験を、それほど直接的なかたちでというわけではく、論文にしてきたが(西田[2010][2011][2013])、ゆえに博士論文にするまでに手間がかかっている(現在は大学病院の難病在宅支援室といったところで働いている)。福祉系の大学務めの酒井美和はALS協会の地方支部の活動に関わったこともある(酒井[2012])。」


UP:201607 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史『生存学の企て』 
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