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足りないから集める

「身体の現代」計画補足・160

立岩 真也 2016/05/28
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1732022357064744

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『生存学』3・表紙    立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙    『生存学』1・表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

どんなふうに「研究」をやっていくか、の話の続きとして、これからしばらく、立岩真也・天田城介「生存の技法/生存学の技法――障害と社会、その彼我の現代史・1」、『生存学』3:6-90(2011/03/25)
http://www.arsvi.com/ts/20110003.htm
より。これは、『生存学』3号に掲載されている。
http://www.arsvi.com/m/sz003.htm
創刊号
http://www.arsvi.com/m/sz001.htm
はほぼ売り切れだが、この号はまだ買えます。

以下に出てくる「趣」は
http://www.arsvi.com/a/c.htm
今回のHP版は
http://www.arsvi.com/ts/20162160.htm


 「天田:[…]簡単に言ってしまうと、「生存学」創成拠点ってのは、「趣意書」の「概要」にて最も簡単に言ってしまうと、人びとは身体の様々な異なりを生きており、それは個人の「困難」であると同時に、「社会」における「贈与」「連帯」や「敵対」を形成し変化させているという意味で、「人」と「社会」の本質的部分である。その「人」と「社会」の本質を形成し変化させる身体の異なりに着目して、では人びとはどのように生きているのか、その生の様式・技法とはいかなるものであるのか、そのような生の様式と技法と社会はどのように関わるのか、そこから構想すべき生き方や社会とは何であるのか、を考えるのだ、ということで了解しました。
 では、そのような目的を踏まえつつ、最初に、「生存学」創成拠点の三つの目的である【集積と考究】【学問の組換】【連帯と構築】の第一番目の【集積と考究】――「趣意書」には「身体を巡り障老病異を巡り、とくに近代・現代に起こったこと、言われ考えられてきたことを集積し、全容を明らかにし、公開し、考察する」とある――を意識しつつ、その「厚み」や「質量」の「不足」を説明してください。その後、その「不足」を研究すること、そして、それらの研究を「彼の地」に向けて伝えていくことの意義についてお聞きしたいと思います。では、まず、「不足」についてお願いします。なお、私は「外部の人間」として聞きますので、そのあたりもよろしくお願いします。

■足りないから集める
立岩:足りないのにはいろんな事情があるんでしょうが、一つには個々の研究者がばらばらに研究をしている。大学の教員になったらなったで、いくらかお金をもらって一人であるいは数人で何年間の研究をやるんだけれども、教えたり事務の仕事などで忙しくて、自分の生活のごく一部しかそういったものに割けない。そういった中で、わりとお手軽に調べられて書けるものはぽつぽつ出るんだけれども、それなりに時間をかけてちゃんと調べないといけないものがたくさん取り残されている。
 そういう状況をどこまで変えられるかはここがどれだけの規模でどれだけの期間やっていけるのか、それにどこまで我々が力を使ってやっていくかに関わってきますけれども、とにかく研究そのものの「質」も「量」も「まったく足りない」という感じがして、それをここ五年とか十年の間に一定のところまで持ってきたいと思います。それが一つです。
 で何をしているか、RA(リサーチ・アシスタント)の人たちを中心に何をしてもらっているかというと、一つにはまったく地味な仕事です。書籍を集めて発行年順に我々が「書庫」と称している場に並べる、一つ一つのデータベースをHP上に作っていく。だいたい過去五〇年分ぐらいですね。それを資料・史料として捉え、研究の素材にしていく。それに連動させて人や事項のページを作り増補していくといった仕事です。いくつかの主題についてはかなり充実したもの、とくに年表の類ができています(「生存学」→「索」→「年表」)。また、集めたり整理したりするのが誰でもできるというわけでもないので、関連する研究なさっているPD(ポストドクトラル・フェロー)の青木千帆子さん(報告として青木[2010a][2010b])等にやっていただいて、いろんな団体の機関誌であるとか資料を集めて整理するといったことをしています。例えば本一冊一冊のページ(ファイル)は八〇〇〇冊分ぐらいになっています。全体では二万ページ超えていて、年間のアクセスは一〇〇〇万ヒットを超えました。そういうわけで、やることはやっているのですがそれを別の言葉にするというのはまた別の仕事で、それはなかなかやっかいです。それはまた後でお話します。」


UP:201605 REV:
『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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