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調べることがあってしまっている:『生存学の企て』序章2

「身体の現代」計画補足・142

立岩 真也 2016/04/13
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1714230732177240

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立命館大学生存学研究センター編『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』・表紙    『生存学』9・表紙    横田弘・立岩真也・>臼井正樹『われらは愛と正義を否定する――脳性マヒ者 横田弘と「青い芝」』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 『生存学の企て――障老病異と共に暮らす世界へ』の紹介の2。
http://www.arsvi.com/b2010/1603rcav.htm
この生存学研究センター編。私はその「序章」と「補章」を書いだ。
 前々回はその最初の部分を掲載した。そしてその掲載に際して、「なにか、研究、というか、書いてまとめたいという人にとっては役に立つ本になっていると思う。これから私が書いた2つの部分を紹介していく。長くかかる。まず本を手にとってもらいたいと思う。何かしたい人には役に立つと思う。」と書いた。
 その回のHP版は http://www.arsvi.com/ts/20162140.htm
 今回はその続き


 「そして具体的に行なうと記したのは【集積と考究】【学問の組換】【連帯と構築】という3つの柱についてそれぞれ3つの課題を置くという、3×3の形式美を追求したものだったが、それは本書末尾の補章(p.181)に置いた。その後、ここ数年は「生存の現代史」「生存のエスノグラフィー」「生存をめぐる制度・政策」「生存をめぐる科学・技術」の4つに分けてみているが、そのように分けたときの各々の成果の一端は本書各章の担当者が解説しているから、ここではその解説を解説することはしない。すこし別の見方で言う。
 全国にこんなにたくさん、できすぎるほど大学院もできて、研究者はいて、論文は書かねばならないことになっていて、書かれているではないか。そう思うかもしれない。ところがそうではない。調べられていない、書かれてもいないことが山のようにある。だからわざわざへんな看板を掲げてやっているのでもある。なぜ調べたり考えたりすることがあってしまうのか、そのわけと思うものの一部をまず述べる。次に、なぜそれらがあまり調べられたり考えられたりしてこなかったのかを説明する。

■調べることがあってしまっている
 人は死ぬまで生きている。ただ生きて暮らしていけばよく、何かを書く必要、書かれる必要などない。と私は思う。それでも一つ、考えたければ、書きたければそうすればよい。さらに一つ、考えたくなくても知りたくなくても、そうもいかないことがある。生きていくことがうまくいかずに、わざわざ「生存」など掲げて、争ったりせねばならないことがある。
 その仕方のなさは、私の考えでは、身体と社会の基本的なところに発している。人は身体があって生きている。生きていて身体がある。そしてそれは人によって違うし、また一人の一生の中でも異なる。
 例えばその性能がみな同じだったら、各人は同じだけ生産できるだろう。するとほっておいても、人々は等しい暮らしができるように思える。けれども実際には差はある。その性能の差に関わって、暮らし向きが変わってきたり、世話したりされたりということもある。そのことについて、いざこざがたくさん起こっている。同時に「ケア」は、気持ちがよかったり大切なことだともされる。さてどうなっているのか。社会はどうしてきたか。これからどうするか。
 そして、人と人にはできるできない以外にも違いがあって、あるいは違いがあるとされて、それで、あるいはそれが理由にされて、好きだったり嫌いだったりする。もてよう、好かれようと努力するが、どうにもならないところもある。ではどうにでもなったら、なんとでも変えられたら、それでよいだろうか。よい、と言い切れないようにも思える。
 そんなことからも、あるいはそんなことが理由にされて、争いも起こる。社会がこのままでいけないと思う人たちが出てくる。どのようにしたらよいのか、考えざるをえないことになる。実際、いろいろと考えられたり、争いが起こることになった。それには言葉・文字として残っているものもあるし、そうでない部分もある。そしてそれはもちろん過去のことでなく、過去のことだけでなく、現在のことであり、将来もあるだろう。
 ただ、過去のことが多く忘れられるというだけでなく、今現在起こっていることもまた、たくさん知られていない。知られていないというのは、「研究」の主題になったことがないことも含めてのことだ。」


 今回のHP版は
http://www.arsvi.com/ts/20162142.htm


UP:201604 REV:
『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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