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筋ジストロフィーの人たちの動き(生の現代のために10・9)

「身体の現代」計画補足・132

立岩 真也 2016/03/17
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1702446946688952

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海老原宏美・海老原けえ子『まぁ、空気でも吸って――人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』表紙    『現代思想』2016年3月号 特集:3・11以後の社会運動・表紙    『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙    渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』・表紙
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 「■(4) 別の動き
 […]
 私が主に書いてきたのは脳性まひ他の人たちの動きだった。その書きものを端から読んでもらえれはわかるように、そこには筋ジストロフィー他の人たちも出てくるのだが、その流れを読み取るのは難しいかもしれない。だから、この(4)の部分も、新たに、大幅に書き足す必要がある。
 とくに進行の速い筋ジストロフィーについて、本人たちの運動は困難だった。その例外の一つが仙台の「ありのまま舎」だった。それはようやく二〇歳を超える人たちがいて、可能になった部分がある。そしてその生起には、七〇年頃の学生運動の関係もすこしばかりはあったことを山田富也が証言している。病棟の自治会運動から始まったその運動は、やがて皇族他の著名人も味方につけてのよく知られる動きになっていく。その活動は出版と、そして「ケア付住宅」の運動に向かう。一九八〇年代において身体障害者の運動があって作られたケア付住宅――今は「グループホーム」という言葉の方が通りがよいはずだ――建設の動きとして比較的知られているのは、東京青い芝の会によって作られた「八王子自立ホーム」、札幌いちご会が運動してできた北海道営のケア付き住宅、そして仙台のありのまま舎だった。
 各々にそれらを作ろうとするもっともな理由があった。しかし苦労して実現したそれらは、かけた労力に比して、得られたものの少ないものであったと私は考えている。そして実際そのことをそれを先頭に立って推進して実現させ本人(山田富也)が語っている文章もある。そして、前回紹介した鹿野靖明は札幌のケア付き住宅建設運動に加わり、そこに入居できたのだが、うまくいかず、一人で暮らすことになった人だった。
 筋ジストロフィーに限れば、これらと関係しつつも、すこし異なるところを目指す運動は一九八〇年代初頭に始まる。そしてそれは、私が知る少数の事例についていえば、七〇年代の運動の「過激」な部分を引き継ぐというよりは、八一年の「国際障害者年」を機会に来日して講演などしそれが紹介された米国の運動の影響をより大きく受けたと言えるかもしれない。
 ここでは一人だけをあげておく。高野岳志(一九五七〜一九八四)という人がいた。その人は八一年の九月、千葉の国立療養所下志津病院国立療養所を出て、「自立」しようとした。名称だけということであれば、「自立生活センター」を名乗ったのは、彼が千葉市中央区宮崎にこの年に設立した「宮崎自立生活センター」が日本で最初であったかもしれない。『リハビリテーション』という雑誌に書いた文章(高野[1983])がある。また、当時、一時的に行政と協調路線をとった青い芝の会他の人たちと当時障害福祉課長だった板山賢一という厚労省の官僚とが作った研究会から出版された『自立生活への道』という本に文章も書いている(高野[1984])。山田富也の著書、「ありのまま舎」が出した本にも文章を寄せている。ただその人は八四年に亡くなってしまう。実質的には一人の人を支援するものとして設立された組織は少なくないのだが、それは、亡くなってしまえばまた終わりになるということでもある。
 そんなことがありながら、八〇年代から人工呼吸器が一般化していったということもあり、多くの人たちがより長く生きられるようになる。そして療養所に筋ジストロフィー者だけ集められる、だからそこで集まりができる、という事情があってのことでければ、この名称の人たちだけが集まる理由もとくにない。筋ジストロフィー者(だけ)による集団というより、例えば人工呼吸器の使用者としての集まりが形成されるようになる。「人工呼吸器使用者ネットワーク(JVUN)」が一九九〇年に結成される。また「呼ネット」が二〇〇九年に結成される。そして、自立生活センターと呼ばれる組織のスタッフとして活動する人たちがいる。その最近を伝える本として、「自立生活センター東大和」で働きながら、「呼ネット」の副代表もしている海老原宏美(脊髄性筋萎縮症・SMA)とその母による『まぁ、空気でも吸って――人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』(海老原・海老原[2015])があったり、映画としてその海老原も出てくる『風は生きよと言う』(二〇一五・宍戸大裕監督)があったりする。
 そうした最近のことは、それはそれとして紹介しよう。ただ次回以降はしばらく、もっと昔のことについて書いていくことになる。」


 以上は、『現代思想』連載の第121回(筋ジストロフィー、サリドマイド、スモン、他、関連項目やここに出てくる人、『まぁ、空気でも吸って』他、本の頁へのリンクはここからどうぞ)
http://www.arsvi.com/ts/20160121.htm
の関係の9。
 『現代思想』3月号の特集は「3・11以後の社会運動」。
http://www.arsvi.com/m/gs2016.htm#03

 なお今回のHP版は
http://www.arsvi.com/ts/20162132.htm
『まぁ、空気でも吸って』『こんな夜更けにバナナかよ』等関係する本のページにリンクされている。


UP:201603 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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