HOME > Tateiwa >

講義

立岩 真也 2016/11/24
立命館大学薬学部,於:BKC F303(フォレストハウス3階)

Tweet


◆稲場 雅紀 2016/02/15 「「エイズを終わらせる」ために何が必要か――NPO法人「アフリカ日本協議会」国際保健部門ディレクター、稲場雅紀氏インタビュー」,『SYNODOS』
 http://synodos.jp/international/16132/4

 「先進国の一部の特許法では、製薬企業が持つ臨床試験のデータを保護する規定がありますが、その他の国にはありません。そこでTPPは、臨床試験のデータ保護期間を新たに統一し、それを各国の特許法における標準的な装備にしようとしているのです。
 TPP妥結前によく報道された通り、TPP交渉ではその保護期間を12年、8年、5年のいずれにするのか議論され、結局8年に決まりました。経緯としてはオーストラリア、ニュージーランド、ベトナムは5年を希望しましたがアメリカが12年と強く主張したため、「それなら間をとって8年にしましょう」と日本が勧めたわけです。これは、米国同様に知的財産権保護を強化したい日本が、漁夫の利を得るためによく使う手口です。
 このルールが適用されると、保護期間中はジェネリック薬に臨床試験のデータを添付できなくなります。するとその薬は臨床試験を経ていないと見なされ、当然、認可されることはなくなり、市場には出せません。これはまさにインドやその他の地域のジェネリック薬企業を狙い撃ちにするものです。
 これだけでなく、米国は、医薬品における知的財産権保護の強化のために、あらゆる手段を講じています。その例としてよく挙げられるのが、期限が切れそうになると少し成分や形を変えて特許を取得し直し、さらに20年間延長する、いわゆる「常緑化」(エバーグリーニング)です。
 先に述べた通り、「TRIPs協定」は2001年の「ドーハ宣言」で、各国は国民の健康を守るための措置として知的財産権に一定の柔軟性を持たせることを可能としました。これに対してアメリカの製薬企業協会(PhRMA)は圧倒的なロビーを展開し、結果として、米国は経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉において、臨床試験のデータ保護と常緑化を常に求める「TRIPs+」というパッケージを常に強制しようとするのです。  これは、保健・医療産業の側が一方で「途上国でも治療薬のアクセスを拡大しよう」などと綺麗事を言いつつ、実際に目指していることは何か、ということを非常に明確に表しています。これまでMDGsの時代は、援助効果の文脈において「政策一貫性」が強調されてきました。この「政策一貫性」というのは、あらゆる政策を「途上国の開発の促進」に向けて調和させていこう、ということです。ところが、特に知的財産権の問題に対しては、政策一貫性とは真逆の方向を向いているわけです。」

『流儀』 (Ways)表紙
◆稲場 雅紀・山田 真・立岩 真也 2008/11/30 『流儀――アフリカと世界に向い我が邦の来し方を振り返り今後を考える二つの対話』,生活書院,272p. ISBN:10 490369030X ISBN:13 9784903690308 2310 [amazon][kinokuniya] ※,

On Private Property, English Version Shinya Tateiwa 2016/09/21 On Private Property, English VersionKyoto Books 10$/\1000

薬/薬害 ◆HIV/AIDS


UP:20161124 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)