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国立療養所/筋ジストロフィー――生の現代のために・9
連載・120
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121
立岩 真也
2016/02/01
『現代思想』44-3(2016-2)
:14-25
『現代思想』連載(2005〜)
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■目次
■反社会的病気/社会病
■国立療養所における変化
■筋ジストロフィー
■関連項目・人
◆
筋ジストロフィー・文献
◆
「難病」:歴史
◆
生の現代へ:文献表
◆
石川 左門
◆
石川 正一
◆
伊藤 佳世子
◆
鹿野 靖明
◆
轟木 敏秀
◆
福嶋 あき江
◆
山田 富也
◆
山田 秀人
◆
山田 寛之
◆
渡辺 正直
■註
★01 京大がウイルス説、東大・新潟大が非ウイルス説を主張して対立していたことは比較的知られている。次の註にあげる西谷の著書では当時の京大での様子についての記述もある。また当初キノホルム説を否定していたが椿らの研究もあり自らの研究成果からもキノホルム説を支持すにるいたった九大の研究グループの動向等々について井上[2014]にかなり詳しく記されている。スモンに関わる告発・訴訟以後の書籍は多く出ている。HPにいくつか挙げている。
★02 西谷は宇多野表院の院長などを務めた。西谷[2006]に収録されている文章は書物に収録されるはずだったもので、その予定がなくなって二〇〇〇年時の原稿の全体がサイトに掲載され(西谷[2000]、ただし文献は略されている)、さらに西谷の単行書に収録されたもの。他に論文・総説を集めたものとして西谷[1994]がある。
宇多野病院は、『精神病院体制の終わり』(立岩[2015])で取り上げた十全会病院とともに京都の病院だ。十全会病院(の東山サナトリウム)が結核療養者の施設から始まったこともその本で述べた。加えれば堀川病院(早川他[2015])も京都の病院だ。宇多野病院は筋ジストロフィーの人たちを受け入れた。そこに入院した人に関わって研究した人も周りにいて、またそこに務めながら「難病」者の支援をする人にも会ったりして、宇多野病院のことを知ることになった。熱心でもあり、同時に、そこに暮らす人には辛い場所だという話も聞いてきた。長谷川唯による西谷へのインタビュー記録もある。許可が得られればそれを使うこともあるかもしれない。
★03 この文章は次のように続いている。
「この研究班の発展は、当時日本神経学会をリードしていた沖中重雄、黒岩義五郎、里吉栄二郎、祖父江逸郎らの協力と、基礎医学者「の江橋節郎、整形外科の山田憲吾などの、私心のない熱意によるところが大きかった。
とくにこの共同研究班では、経理面での透明性や外部評価の面でも当時の医学界の常識を越える公正さが配慮されており、後の難病研究の原型とも言える多くのアイディアが生まれた。」(西谷[2006])
比べればそうであったかもしれない。ただ厚生労働省関係の研究費は、文部科学省関係のものに比べ、実質的な公募である度合いは低いことは誰もが知っている。それは、政策誘導の方向に作用する度合いが高いということでもあるが、このこと自体が一概によくないことであるとは言えない。ただ一定の方向がもたらされることと迎合との間の距離は時にわずかだ。
★04 以下は当時の旭川児童院院長と副院長による文章から。
「わが国の心身障害児教育・福祉は明治・大正期に萌生したが、重症心身障害児にまでは及ばなかった。しかし、昭和二〇年代にはいると小林提樹博士、草野熊吉氏を中心として重症心身障害児をもつ家族の努力により、重症心身障害児福祉は具体的に展開をはじめた。/小林博士は勤務されていた病院の一棟で重症心身障害児の療育を始めた。そして家族によって「両親の集い」――後の全国重症心身障害児(者)を守る会――が結成され、活発に活動し、その後の重症心身障害児・者福祉の具体化、体系化に大きな役割を果たしてきた。/昭和四二年に公法人立重症心身障害児施設は一三施設であったが、昭和五四年には四八施設となり、国立療養所委託ベッドも八〇余療養所となっている。そのベッド数は一三〇〇〇余である(表1)。」(江草・末光[1980])
ここにはその年までの表がある。その後のことを記したものもないはずはない。また親の会の活動については堀[2014]に記述がある。
★05 ただその熱心さは一人ひとりでも組織によっても一様ではなかった。増床要求について日本筋ジストロフィー協会(日筋協)と東京都筋ジストロフィー協会(東筋協)との方向が一致しなかったことがある。さらに、デュシェンヌ型の場合は遺伝するのだが、このことを公表したり告知したりすることを巡っても対立があった。前者の役員を務め後者の会長だった石川左門(一九二七〜)――後述する石川正一の父――は、これらのことを巡って、全国組織の役員を解任された。石井に対する二〇〇九年のインタビュー記録がある。許可が得られれば引用することがあるかもしれない。
★06 九一〜九二年には筋ジス二五〇〇床分の予算が計上される。註04に記したことでもあるが、こうした数字の単純な年次推移がわかるのかどうか、既にまとめられているのかどうか、調べてくれるとよいと思う。
★07 その前にこれも一部では知られていた、というより出版当時はかなり話題になった石坂直行(一九二四〜)の『ヨーロッパ車いすひとり旅』(石坂[1973])がある。ただ彼は、進行性で子どもの時に発症するデュシェンヌ型の人ではなかった。石坂に行動と思想についての著作に馬場[2004]。
「石坂さんは一九二四年一〇月大分県別府市に生まれた。中学生の頃、柔道でケガをした後、手足が少し不自由になり、筋ジストロフイーの一種と診断された。その後銀行に就職。それでも杖を使わずに歩けたし、日常生活そのものはそれほど不自由を感じなかったこともあり、自分を「身体障害者」と自認することだけは絶対にしないとの思いで過ごしていた。
ところがある日、車での出勤の途中、わき見運転のダンプカーに追突され、その半年後、突然一夜にして両足がマヒし、立っていることもできなくなった。」(馬場[2004:18]) 石坂は七一年に車いすで単独でヨーロッパへの団体旅行に参加し、その体験をさきの本に書いた。「その本の与えたインパクト」は「大きかった[…]これは日本におけるバリアフリー旅行の歴史の出発点ともいえる書物だろう」(馬場[2004:18])と馬場は述べる。石坂の本は絶版になったが、その全体が石坂・日比野[2000]に再録された。また石坂の文章の一覧も馬場[2004]にある。
★08 正一没後、石川・石川[1982]が出版されている。
最首悟の話の中の石川についての言及だけをここでは引いておく――他にもあった記憶があるが、まだ見つけられていない。
「筋ジストロフィーの青年たちに見られるような、私の出合った石川正一君もそうでしたが、その明るさというのは、もう、世を越えての明るさです。でも、普通私たちが言える明るさというのはそういうのじゃあない。にもかかわらずそういうことを無神経に言われたら、障害をもつ人とか、障害をもつ家族はがっくりするわけです。」(最首[1995→1998:322-323])
■文献表 ※分量の関係で次回以降にとりあげるもの:◇21 →
文献表
◇阿部 恭嗣 著/竹之内 裕文 編 20101009
『七転び八起き寝たきりいのちの証し――クチマウスで綴る筋ジス・自立生活20年』
,新教出版社,331p.
◇ありのまま舎 編 2002
『車椅子の青春 2002――難病患者たちの魂の詩 詩集』
,ありのまま舎
◇ありのまま舎 編 2004
『いのちを語る手記集――難病と障害を持つ四十五人の手記』
,ありのまま舎
◆ありのまま舎 編 20050613
『愛と孤独と詩――限られた生命の世界で 難病生活34年・孤高の人生 山本秀人遺稿集』
,社会福祉法人ありのまま舎,238p.
◆有吉 玲子 2013/11/14
『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』
,生活書院,336p.※ a03. h.[98][118]
◆あゆみ編集委員会 編 1983 『国立療養所における重心・筋ジス病棟のあゆみ』,第一法規出版
◆馬場 清 20040507
『障害をもつ人びととバリアフリー旅行――石坂直行の思想と実践』
,明石書店,231p.
◆江草安彦・末光茂 1980 「重症心身障害児施設の現状と問題点」,『リハビリテーション研究』34(1980-7)
※
◆衛藤 幹子 19931120
『医療の政策過程と受益者――難病対策にみる患者組織の政策参加』
,信山社
◇福島あき江 1984a 「時間の重さ」,
岸田・金編[1984
:180-193]
◇―――― 1984b 「共同生活ハウスでの実践をとおして」,
仲村・板山編[1984
:268-278]
◇―――― 19871113
『二十歳もっと生きたい』
,草思社,222p. ISBN-10: 4794202989 ISBN-13: 978-4794202987 1365
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※ md.,
◆早川 一光・立岩 真也・西沢 いづみ 2015
『わらじ医者の来た道――民主的医療現代史』
,青土社
◇日野原 重明・山田 富也・西脇 智子 編 19970720
『希望とともに生きて――難病ホスピス開設にいたる「ありのまま舎」のあゆみ』
,中央法規出版,191p.
◆堀智久 2014
『障害学のアイデンティティ――日本における障害者運動の歴史から』
,生活書院
◆井上尚英 2011 『緑の天使――SMON研究の思い出』,海鳥社
◆石川 正一 1973
『たとえぼくに明日はなくとも――車椅子の上の17才の青春』
,立風書房,234p.
◆石川 正一・石川 左門 1982 『めぐり逢うべき誰かのために――明日なき生命の詩』,立風書房
◆
石坂 直行
1973 『ヨーロッパ車いすひとり旅』,日本放送出版会,273p.,680
◆石坂 直行・日比野 正己 200010
『石坂直行旅行・福祉著作集――障害者の海外旅行・福祉文化・福祉のまちづくりの情報』
,HM研究所,福祉のまちづくり関連の先駆的文献シリーズ
◆
伊藤 佳世子
2008/03/01 「筋ジストロフィー患者の医療的世界」,
『現代思想』36(3)(特集:患者学――生存の技法)
青土社,156-170
◆
伊藤 佳世子
20100331 「長期療養病棟の課題――筋ジストロフィー病棟について」,『Core Ethics』6:25-36
※
◆伊藤佳代子・大山良子 2013 「おうちにかえろう――30年暮らした病院から地域に帰ったふたりの歩き方 1〜13」、『かんかん!――看護師のためのwebマガジン』、医学書院
※
◆菊池 麻由美 2010 「筋ジストロフィー病棟の歴史的変遷――筋ジストロフィー病棟での療養をめぐる研究の方向を探る」『慈恵医大誌』125:143-52
※
◇岸田 美智子・金 満里 編 1984
『私は女』
,長征社,274p. ※
◆国立西多賀病院詩集編集委員会 編 1975
『車椅子の青春――進行性筋ジストロフィー症者の訴え』
,エール出版社
◆近藤文雄 1983 「筋ジスと障害児の夜明け」,あゆみ編集委員会編[1983]
◆厚生省医務局療養所課内国立療養所史研究会編 1976 「国立療養所史 総括篇』,厚生省医務局
◆森山治 2004 「東京都における保健・医療・福祉政策――重症心身障害児施策の成立過程についての考察(その1)」,『人文論究』73:97-112(北海道教育大学函館人文学会)
※
◆―――― 2005 「東京都における重症心身障害児施策」,『人文論究』74:43-61(北海道教育大学函館人文学会)
※
◇仲村 優一・板山 賢治 編 1984
『自立生活への道』
,全国社会福祉協議会,317p. ※
◆西谷 裕 1994 『神経学のフィールドにて』,近代文芸社
◆―――― 2000 「わが国の難病医療・福祉の歩み」
※
◆―――― 2006
『難病治療と巡礼の旅』
,誠信書房
◆最首悟 1995 「私たちは何をめざすのか」『平成六年度障害福祉関係者研修報告書』障害福祉報告書通算第5集、三重県飯南多気福祉事務所→1998 「星子と場」,最首[1998:301-343]
◆―――― 1998
『星子が居る――言葉なく語りかける重複障害者の娘との20年』
,世織書房,444p.
◆仙台市・西多賀病院西友会編集委員会 編 197101
『車椅子の青春――一生に一度の願い 詩集』
,西友会,175p. 380
◇清水哲男 200406 『死亡退院――生きがいも夢も病棟にある』,南日本新聞社,347p. ISBN-10: 4860740297 ISBN-13: 978-4860740290
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※
◆進行性筋萎縮症連絡会地域福祉研究会「仙台」詩集編集委員会 編・発行 1975 『詩集 続 車椅子の青春 進行性筋ジストロフィー者(児)の叫び』
◇高野岳志 1983 「障害者の自立の場宮崎障害者生活センター」,『リハビリテーション』267(83-10):32-37
◇―――― 1984 「街のなかに生きるために」,仲村・板山編[1984:286-296]
◆立岩 真也 20041115
『ALS――不動の身体と息する機械』
,医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940
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※
◇立岩 真也 2014/10/24
「そもそも難病って?だが、それでも難病者は(ほぼ)障害者だ」
,難病の障害を考える研究集会 ※ [115]
http://www.sakura-kai.net/wp/wp-content/uploads/4365fa0acc4dfcf6291f6ee6aed051421.pdf
◇―――― 2015 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』、青土社
◇轟木敏秀 1993 『光彩』
※
◆渡辺 一史 20030331
『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』
,北海道新聞社,463p. ISBN:4-89453-247-6 1890
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[kinokuniya]
→20130710 文春文庫,558p. ISBN-10: 4167838702 ISBN-13: 978-4167838706 760+
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[kinokuniya]
※ md.
◇山田 富也 19750920
『隣り合せの悲しみ――死を見つめながら生きる筋ジストロフィー症者の青春記』
,エ−ル出版社, 208p, ※ md. n02h
◇―――― 1978 『さよならの日日――友情、恋、そして死…難病と闘った少年の青春』,エール出版社,201p. ASIN: B000J8IHHQ
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◇―――― 1985
『愛ふり返る時――難病患者・生命を賭けた10年の記録』
,エ−ル出版社,190p.
◇―――― 19891115
『透明な明日に向かって』
,燦葉出版,254p. 2060 ※ md. n02h,
◇山田 富也 199004
『こころの勲章』
,エフエー出版,245p. ISBN-10: 4900435899 ISBN-13: 978-4900435896 ※ md. n02h.
◇―――― 19990310 『全身うごかず――筋ジスの施設長をめぐるふれあいの軌跡』,中央法規出版,272p. ISBN:4-8058-1785-2 2500
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※ md
◇―――― 20050930
『筋ジス患者の証言「生きるたたかいを放棄しなかった人びと」――逝きし者の想影』
,明石書店,280p ※ md.
◇山田 富也・寛仁親王・沢地 久枝・斎藤 武 19951220
『いのちの時間』
,新潮社,237p. ISBN-10: 410409501X ISBN-13: 9784104095018 1528
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※ md.,
UP:20151231 REV:20160111, 12, 0327
◇
筋ジストロフィー
◇
病者障害者運動史研究
◇
立岩 真也
◇
Shin'ya Tateiwa
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◇