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難病者と社会――その歴史を辿りこれからを展望する


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2016年度稲盛財団研究助成申請書 2015年   月   日
公益財団法人 稲盛財団 理事長 稲盛和夫 殿

申請者 氏名(ふりがな) 立岩 真也(たていわ しんや)
(西暦1960年8月16日生 54歳)
所属機関・学部・学科(もしくはそれに準ずる機構名)・肩書(正式名称)

立命館大学大学院先端総合学術研究科・教授
任期 任期の定めなし
所属機関住所 〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
Tel:(075)465−8475       E-mail: tae01303@nifty.ne.jp
自宅住所 〒603-8047 京都市北区上賀茂本山258-21
Tel(携帯可):(075)703−2121     E-mail:tae01303@nifty.ne.jp

下記の通り貴財団の研究助成を申請いたします。

研究題目(和文)(50字以内、題目には全てふりがなをつけてください。)
難病者と社会――その歴史を辿りこれからを展望する
(なんびょうしゃとしゃかい――そのれきしをたどりこれからをてんぼうする)

研究題目(英文)
Persons with Intractable Diseases and Society: Tracing its History and Looking to its Future
*研究題目は和文・英文の両方とも記入してください

推薦者
本申請者が貴研究助成の応募資格に合致することを証し、本申請を推薦いたします。
氏名(ふりがな)  おぜき   もとあき
           小 関  素 明
所属機関・職名
            立命館大学 衣笠総合研究機構・機構長
所属機関住所 〒603-8577
          京都市 北区等持院北町56-1
Tel:(075 ) 465   −  8245  


研究分野(今回応募の研究内容に最も近い分野を一つ選んでください。)

自然科学系 (先端技術を含む)
人文・社会科学系 ○5.社会学

研究計画の概要 (できるだけ具体的に)

1.目的
 「難病」は、日常のこの語の語感を引き継ぎつつ、日本の複雑な政治過程、その歴史の中に位置づく政治的な語でもある。1960年代から70年代にかけての公害・薬害問題の顕在化を背景とし、具体的には薬害スモン被害の収拾策がきっかけとなって政策に現れた。そして、基本的には原因・治療法の研究を推進するとし、その予算をつけながら、医療費他生活の支援も行うという、制度の狭間にある制度としてあってきた。指定される疾患は幾度にもわたり徐々に増え、2015年に施行された難病医療法では、医療費助成が56疾患から306疾患となり、対象者も約78万人から約150万人になった。
 この仕組みは確かにある人たちに益をもたらし、その受益者も次第に増えてきたとは言える。しかし同時に、つねにその外に置かれる人たちが残されてもきた。一定以上の数のいる人たち、そして/あるいは、苦痛や疲労が主症状で「客観的」診断が困難とされる複合性局所疼痛症候群(CRPS)、慢性疲労症候群、繊維筋痛症といった人たちは今回も除外された。また重症度による選別や自己負担が導入された。今の枠組みを前提に、ただ拡大していけばよいということにはならない。そのことは誰もが思っている。
 だが、そもそもこの仕組みの成り立ちとその範囲の拡大、施策の変遷についての人文社会科学的な研究はほとんど手つかずである。そしてその経緯を踏まえた今後の姿についての研究もない。結果、難病者自身やその組織も、官僚も、報道機関・関係者もこれまでのいきさつと現在を知らず、そしてあるべき姿を見いだせず、現状は混迷の中にある。
 そこでまずこの約50年について、今を逃すと極めて困難になるだろう現代史研究・調査を行う。それをまず資料集にし、ウェブ・電子書籍を媒体として公開する。そしてそれを踏まえ、現状を評価し、今後のあり方を提言する著書にまとめる。

2.内容
 ◇ここ約50年間の政策、社会運動、技術の歴史を押さえる。機関紙等、入手困難な文献がある。書籍も殆んど絶版になっている。今を逃すと収集できないものが多い。協力してくれる人・組織からの贈呈を含め、可能な限り収集し、整理する。そのなから必要な部分については、文字を読み取り、資料化する。画像としてではなくコンピュータの文字コード化する。それにより検索や編集が可能になり、視覚障害や上肢の障害のために墨字・紙の本を読めない人も読めるようになる。
 ◇次に、文字情報によって得られる部分は限られているから、聞き取りを行なう。1970年代を知っている人は、1920〜1930年代に生まれた人たちである――例:西谷裕(京都宇多野病院元院長、1928〜)、石川左門(元東京進行性筋萎縮症協会会長、1937〜)。今のうちに話を伺う意義は大きい。録音記録も文字化し、了承を得られた公開可能な部分を公開する。
 ◇HP上の各疾患別・年別の頁は、本人や関係者の実用に供しようとするものとして、既にいくらか作成してある。それを増補し、また新たに作成し、1960年代からの変遷を示す注釈付きの年表を編纂しHPに掲載する。これらは年間ヒット数約1000万のサイト(http://www.arsvi.com/→「生存学」で検索)上に置かれる。
 ◇患者組織の要望書、政府による通達等の重要文書、その時々の報道、文献リスト等を収録した資料集を電子書籍として刊行する。電子書籍とするのは、関連するHP上の頁を参照できること、収録する情報の増加に対応して頻回に改版することができることによる。
 ◇雑誌『現代思想』連載中の「生の現代へ」の続篇として、歴史を辿り、論点を摘出し、考察する文章を毎月掲載し、2017年を目途に書籍化する。
 ◇今後の方向・政策を提言する。それは基本的に、治療技術については個別に対応すべきは当然のこととして、医療・福祉他の社会的支援策については疾患の種別によって対応すべきでなく、生活における必要の度合いに応ずるべきことを示すものとなる。ただ、変更によって現行の水準を低下させることがないようにする必要がある。これまでの経緯を踏まえ、具体的な移行の手順を含め福祉・医療など支援の仕組みを提案する。

3.研究期間
 2016年4月から2018年3月まで

申請者の略歴
1979 新潟県立両津高等学校卒業
1983 東京大学文学部IV類(行動学)社会学科卒業
1983 東京大学大学院社会学研究科 社会学(A)修士課程入学
1990 東京大学大学院社会学研究科 社会学(A)博士課程単位取得退学
1990 日本学術振興会特別研究員(PD)(1992年3月まで)
1993 千葉大学文学部行動科学科社会学講座助手
1995 信州大学医療技術短期大学部専任講師 1997 同助教授
2002 立命館大学政策科学部助教授
2003 立命館大学大学院先端総合学術研究科助教授 2004 同教授 現在に至る

1997-2011 立命館大学グローバールCOE「生存学」創成拠点・拠点リーダー/立命館大学生存学研究センター・センター長 2014- 立命館大学生存学研究センター・センター長

非常勤講師(大学院での集中講義のみ):お茶の水女子大学大学院人間文化研究科(2000)富山大学大学院教育学研究科(2000)九州大学大学院法学府師(2000)大分医科大学大学医学系研究科(2000)東北大学大学院文学研究科(2001)筑波大学大学院心身障害学研究科(2001)立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科(2002)法政大学大学院人間社会研究科(2002)京都大学大学院文学研究科(2002)東京大学大学院教育学研究科(2005)筑波大学大学院人文社会科学研究科(2012)お茶の水女子大学大学院人間文化研究科(2013)

申請者の主な著書・論文
◆単著(14):1997 『私的所有論』,勁草書房,445+66p./2000 『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』,青土社,357+25p./2004 『自由の平等――簡単で別な姿の世界』,岩波書店,349+41p./2004 『ALS――不動の身体と息する機械』,医学書院,449p./2006 『希望について』,青土社,320p./2008 『良い死』,筑摩書房,374p./2009 『唯の生』,筑摩書房,424p./2010 『人間の条件――そんなものない』,理論社,392p./2013 『私的所有論 第2版』,生活書院・文庫版,973p./2013 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p./2014 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p./2015 『良い死 韓国語版』,青年社,409p./2015 『0n Private Property』,Kyoto Books(近刊)/2015『精神病院の時代――続いてしまったこと・終わらせること』(仮題・近刊),青土社
◆共著(13):1990 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』,藤原書店,320p.(安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩真也)/1995 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補・改訂版』,藤原書店,366p.(同上)/2008 『所有と国家のゆくえ』,NHKブックス,301p.(稲葉振一郎・立岩真也)/2008 『流儀――アフリカと世界に向い我が邦の来し方を振り返り今後を考える二つの対話』,生活書院,272p.(稲場雅紀・山田真・立岩真也)/2009 『生存権――いまを生きるあなたに』,同成社,141p.(立岩真也・岡本厚・尾藤廣喜)/2009 『税を直す』,青土社(立岩真也・村上慎司・橋口昌治),350p./2010 『ベーシックインカム――分配する最小国家の可能性』,青土社,329+19p.(立岩真也・齊藤拓)/2010 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 韓国語版』(安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩真也)/2011 『家族性分業論前哨』,生活書院,360p.(立岩真也・村上潔)/2012 『差異と平等――障害とケア/有償と無償』,青土社,342+17p.(立岩真也・堀田義太郎)/2012 『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』,生活書院,241p.(立岩真也・有馬斉)/2012 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』,生活書院・文庫版,666p.(安積純子・尾中文哉・岡原正幸・立岩真也)/2015『わらじ医者はわらじも脱ぎ捨て――「民主的医療」現代史』(仮題・近刊),青土社,(早川一光・立岩真也・西沢いづみ) 
◆編書(資料集)(7):2005『貧しい国々でのエイズ治療実現へのあゆみ――アフリカ諸国でのPLWHAの当事者運動、エイズ治療薬の特許権をめぐる国際的な論争 第1部〜第3部』/2005『生存の争い――のために・1』/2005『闘争と遡行・1――於:関西+』/2005『<障害者自立支援法案>関連資料』/2007『運動と国境』/2014『身体の現代・記録(準)――被差別統一戦線
〜被差別共闘・楠敏雄』』/2015『与えられる生死:1960年代』


2013年度以降受領の、他の助成金・補助金・奨励金があれば、受領予定のものを含め、公的・民間問わず全て記載してください(分担研究者である場合も含む)
採択年/
支給団体

代表研究者

研究課題名
金額
(単位:万円)
氏名 所属
2015年/立命館大学人間科学研究所
立岩真也
立命館大学大学院先端総合学術研究科
「統合教育」を巡る現代史
30万円

2013〜2014年度/厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 橋本操
NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会
新規薬剤・機器の研究開発を必要とする難治性神経・筋疾患患者におけるナラティブに基づく難治性疾患データベースと臨床評価法に関する研究 30万円/年
2013〜2014年度/厚生労働科学研究 難治性疾患等克服研究事業
中島孝 国立病院機構新潟病院 希少性難治性疾患−神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究 25万円/年


UP:201507 REV:
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