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病者障害者運動研究・10(X)

「身体の現代」計画補足・98

立岩 真也 2015/12/26
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1675230456077268

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last update:2015


『現代思想』2015-12 特集:人工知能    『世界障害報告書』表紙    『自閉症連続体の時代』表紙    『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙
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 『現代思想』(青土社)12月号(特集:人工知能――ポスト・シンギュラリティ)
http://www.arsvi.com/m/gs2015.htm#12
掲載の連載第118回は「病者障害者運動研究」。この(第118)回は、研究費関係の応募書類ほぼそのままというものだ。ここでは、それを、いくらかずつ補足しながら分載していくが、長くかかるから、『現代思想』買ってください。今回は10回め。前回(9回め)は
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1675006516099662
 今回のHP版
http://www.arsvi.com/ts/20152098.htm
 『生の技法』の第2版が出たのが1995年で、それから20年経って、その20年分の全体を追うことは到底できないけれども、それでも2013年の第3版に付した第10章「多様で複雑でもあるが基本は単純であること」、第11章「共助・対・障害者――前世紀末からの約十五年」は読んどいてほしいなと。


 「【X】いま日本ではいっときの騒乱・対立は収束に向かっているようでもある。つまり、地域生活と自己決定という看板は、誰もが反対しないものになっている。とくに一九八〇年代以降、Wの時期の運動体を引き継ぎつつより広範な範囲が加わる組織が活動している。そして大きくは「障害者権利条約」の批准、その実施状況の国連への報告(民間組織も報告することができる)を利用して、それによる法整備等を進めようという流れになっている(cf.長瀬修他編二〇一二『増補改訂 障害者の権利条約と日本』◇、長瀬監訳二〇一三『世界障害報告書』◇)。だがまずなお理論的に追究されるべき論点は残っている。なおすことを巡って病者と障害者の間にあってきた差異をどのように理解するのか。(障害は)なおらないという現実が所与である限り、これは現実的な問題にはならないが、その前提は不動ではない。また、差別禁止は当然に必要だとして、それは「障害」による差別に対する対応とされ、そこから除外される能力の差異に関わる不利益は捨象されてしまうことにもなる。認定は免責をもたらすが(「病人役割」)、同時に排除の理由にされるという現実の基本は変わらない(cf.立岩二〇一四『自閉症連続体の時代』◇)。そしてなにより、高齢化、認知症者の増加が言われ、悪意と偏見によってではなく、資源の有限性をもって、社会が護られるべきこと、広い意味での「防衛」のやむをえぬ必要が言われる。多くの人たちがそのように思っている。かつて優生思想といった言葉によって指弾された力がこれから最も強く作動する時期に入っていく。それに運動はどう対しているか、またどう対するべきか。分析と考察の精度を上げる必要がある。流動的な現在を把握し、将来を展望するためにも、これまでの経緯をまとめる。[…]」

 続く。


UP:201512 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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