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病者障害者運動研究・5(V)

「身体の現代」計画補足・93

立岩 真也 2015/12/11
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1670093993257581

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last update:2015


『現代思想』2015-12 特集:人工知能    『ALS――不動の身体と息する機械』表紙    有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史』表紙
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 『現代思想』(青土社)12月号(特集:人工知能――ポスト・シンギュラリティ)
http://www.arsvi.com/m/gs2015.htm#12
掲載の連載第118回は「病者障害者運動研究」。この(第118)回は、研究費関係の応募書類ほぼそのままというものだ。ここでは、それを、いくらかずつ補足しながら分載していくが、長くかかるから、『現代思想』買ってください。今回は5回め。過去の4回分は
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1667658580167789
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1668679896732324
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1669077290025918
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1669588606641453
 今回のHP版
http://www.arsvi.com/ts/20152093.htm
 上記からは、有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史』の頁にも行ける。
 以下すこし長いから「解説」はまたということにする。ただ一つだけ。「難病」については
http://www.arsvi.com/d/n02.htm
他の(「人文社会」系の)サイトよりは情報はある。ただ、昔のことはそこにはあまり出てこない。『ALS』という本(2004、医学書院)になった原稿を書いていた頃から集めていたデータがもとのもとになっていて、その時はそんなに昔のこと、とくに「難病」全般に関わる制度や運動について調べたわけではなかったということもある。今になって、もっと調べないと、というより、誰かに調べてほしいと思っている。


 「【V】以上二つは一つに社会の側の利害による管理・保護とそれへの抵抗、また一つ、加害者として社会を名指すものだったが、直接の原因・理由がなんであれ、当人たちにとって大切なのは生活であり、治療を含む生活のための費用であり、それが社会に対して常に求められてきた。そして求められた側も何もしなかったのではない。政策側も何かはしようと思うのだが、どこまでなら認めることにするか戸惑いもする。大きくは医療保険等の医療政策、障害者施策全般とそれに関わる運動があり政策があるが、それらについてなら一定の研究の蓄積はある。今回の研究においては、それでは到底足りないと感じられそれで起こったできごと、制度の狭間にあり位置づけにくいものに関わって起こった運動とそれへの対応を追って、境界・限界を巡る攻防を検証する。まず一九七〇年代初頭には、人工透析について、公費負担(一九七二年に更生医療適用)に至る経緯、「全国腎臓病協議会(全腎協)」(一九七一〜)の関わりが有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史』(二〇一三)◇で明らかにされた。その他についても、とくに「難病」と呼ばれるようになったものがどのように位置づけられてきたのかを探る。それがT・Uと接続し、偶然的な事情にも左右されて今日に至るその動きを明らかにする。難病対策の始まりには1960年代に設立されていく疾患別の患者会の活動があるが、「難病」「特定疾患」という行政的な範疇の生成を現実化したのは一九七〇年前後の薬害スモンの政治問題化(U)が関わっている。そうした中で政策が始まり拡大していった過程がある。その制度とその内実の推移を調査しまとめる。それは(まだなおらない)疾患をなおすための研究という名のもとで生活を(生活も)援助する制度として現れ、それはその政策の対象になる本人や家族において障害というより(やがてなおるようになる)疾患という認識を強めるものだったが、1990年代に入ると障害者運動が獲得した介助制度等の利用を介し、障害者運動との接近、障害者としての自己規定が一部に現れもする(cf.立岩二〇〇四『ALS』◇)。同時に、列挙される疾患だけが対象になるという制度そもそもの限界を有しつつ、対象疾患を拡大する動きは続いてきたが、例えば苦痛を主症状とする「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」は、病が忌避されるのは苦痛ゆえであるのに、客観的基準がないとして認定されず(米国・韓国では認められている)、認定を求める運動が続いている(cf. 大野真由子二〇一三「慢性疼痛と「障害」認定をめぐる課題」◇)。それらを追って変動し浮動する歴史・現在の全体を描き、これからの主張・政策のあり様を示す。これ自体はこの国に特異に起こったことだが、それでも数百万の人たちの生活に直接関わる。さらに、どこまでの範囲の疾患・障害、広く人の状態・様態に関わる費用をどのような理由でどこが持つのかは普遍的な問題であり、理論的検討課題となる。」

 続く。


UP:201512 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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