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病者障害者運動研究・3(T)

「身体の現代」計画補足・91

立岩 真也 2015/12/07
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1669077290025918

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last update:2015


『現代思想』2015-12 特集:人工知能    『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙    『造反有理――精神医療現代史へ』表紙    『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙
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 『現代思想』(青土社)12月号(特集:人工知能――ポスト・シンギュラリティ)
http://www.arsvi.com/m/gs2015.htm#12
掲載の連載第118回は「病者障害者運動研究」。この回は、研究費関係の応募書類ほぼそのままというものだ。前々回=1回めはその書類冒頭の一番短く計画の概要を記した部分を再掲した。前回はその次の部分
 その前々回と前回分は
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1667658580167789
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/1668679896732324
 それを、いくらかずつ補足しながら分載していくが、長くかかるから、『現代思想』買ってください。今回は3回め。
 「社会防衛」というと、大仰な感じがするのだが、しかしとても小さな社会、例えばその人にとっての他人である私も護られたいと思うし、そのためのことをするだろう。言われれば当然のことなのだが、その当然のことから考えていこうということがひとつ。)加えればそれは一人ひとりと例えば国家といったものを同列に並べようということではない。区別はしたうえで考えようということだ。)
 そんなところから、具体的には、施設に入った(入れられた)人たちの移り代わりといったものを見ていくということが一つあるだろう。例えば、国立療養所の結核療養所にいた人たちがいなくなる(いなくならさせる)代わりに、筋ジストロフィーの子どもたちが入いることになった。そして一部は重度心身障害児施設(重心)にもなっていった。こういうことは実際にそこにいた古い人は知っているのだが、知らない人も多い。まずその辺りなど、押さえておいてよいのではないか。『現代思想』連載の次の回ではそのことについて書こうと思っている。
 cf.
 筋ジストロフィー
http://www.arsvi.com/d/md.htm
 重症心身障害児施設
http://www.arsvi.com/d/j01.htm
 今回のHP版
http://www.arsvi.com/ts/20152091.htm
 
身体の現代:歴史
 「■概要
 研究代表者・分担者他は、多年の研究・社会活動から既に多くの組織・人との繋がりを得て研究を進め、成果を出してきた。それに関心を共有し時間と意欲をもって研究を進めている大学院生や修了者等が連繋し、調査研究に当たる。資料室がありスタッフを擁する研究機関(COEを引き継ぐ生存学研究センター、以下◇を付した著書はその成果)が日常的な活動を支える。この体制のもと、これまでの蓄積に加え、散逸しつつある資料を収集・整理・公開する。関係者への聞き取り(一部は公開インタビュー)を行い、記録化する(文字、一部については動画)。それらに詳細な註を付した上で書籍化していく。基礎情報を踏まえ考察を進め、研究書を年2冊以上出す。韓国、中国、英国他の研究者と連携し、運動史を比較研究し、成果を国際的に発信する。
 平成28年度:研究を円滑に進められる体制に向けた調整をしつつ、五つの焦点を持つ調査・研究を進める。故二人を含む人達への聞き取りを基に追加調査した書籍を二冊発行。同時に新たな聞き取り調査を進め、公表資料・アンケート調査から組織の概要と変化を把握し、年表等を作成。機関誌やビラの類も重要なものはPDF画像、より重要なものは文字コード化してウェブ公開する。
 【T】日本での集合的な運動は結核療養所、ハンセン病療養所入所者の運動から始まった。ハンセン病療養所における生活・運動については近年幾つか研究がある。また結核療養者の運動についても「朝日訴訟」を象徴的なものとして運動に積極的に関わった人たちによる古い文献はある。ただそれがその後の運動にどのように連続し不連続だったかについての研究はほぼなされていない。「防衛」の対象になれば、その対象者には制約が課せられる。施設とそこでの処遇は不満・批判の対象となり、だからそこで運動も生起したのだが、あてがわれた場や人は実際上生活の「よすが」でもあった。するとその処遇に対する抗議の運動もいくらか複雑になる。全国組織の会報の合本版等はあるが、距離をとったその解析はなされていない。その変化と連続性を追う。
 施設化と脱施設化は、現在「地域移行」に誰もが反対しない中で、かえってその実情がわからなくなっているところがある。例えば、重症心身障害児(重心)の施設や筋ジストロフィー児の施設については、その家族の切実な訴えがあり、その「成果」を得るに至るその足取りがある程度記憶され、資料が残り、私達においても研究がいくらかある。だが否定的な価値が付与されている精神病院については、精神疾患・精神障害の家族会が少なくともその初期、病院体制に肯定的であった部分はかえって見えなくなっている。そしてこれらは皆、家族・親を「護る」ためのものでもあった。だから、結核やハンセン病の場合と全く異なるとだけ捉えることもできない。また国立療養所を巡る政策においても変化と連続性がある。つまり、結核が減り結核療養病床・施設が減らされていくが、そうした施設が一つに重症心身障害児、筋ジストロフィー児を受け入れていく。またいっときはサリドマイド児(→U)が入所していたこともある。運営に関わった人たちが回顧した文書がいくらかある以外、これらのほぼすべてがまとめられていない。」

 続く。


UP:201512 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇身体の現代:歴史
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