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位置取りについて

「身体の現代」計画補足・88

立岩 真也 2015/11/13

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last update:2015


『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙    『現代思想』2015-11 特集:大学の終焉――人文学の消滅表紙    『造反有理――精神医療現代史へ』表紙   
[表紙写真クリックで紹介頁へ]

 発売中の『現代思想』(青土社)11月号(特集:「大学の終焉」)
http://www.arsvi.com/m/gs2015.htm#11
掲載の連載第117回は「今般の認知症業界政治と先日までの社会防衛」。最近出た拙著『精神病医体制の終わり――認知症の時代に』を広告しつつ、一つそれと直近のことに関わることを知らせた。この回を小分けにしてここに掲載している。今回はその9回め。最後。HP版は
http://www.arsvi.com/ts/20152088.htm
以下に出てくる『精神医療』誌は
http://www.arsvi.com/m/p.htm


 「さきに引いた高木俊介の文章は、『造反有理』でその成り立ちを紹介した『精神医療』誌に掲載されている。その雑誌は精神医療の「停滞」の始まりとされる時期に創刊され、これまでずっと続いてきたものだ。それは「学術誌」ということにはならないのだろう。だが、医療・医学の定義は人に役立つための営み・知として定義してかまわないはずであり、その限りにおいて、停滞とされる時期の実践やこの雑誌やそこにある書きものの少なくともある部分は、ときに行われてきたことを停止させること、停止させ続けることにおいて、生産的なことであり、また学的なことであってきた。
 ただまず、それを始めた人たちがだんだんといなくなってしまっている。その人たちは前書でも列挙したが、今度の本が出る二年間に、臺弘と岡江晃が亡くなって、そのことを本に記した。さらに本年の六月、前書の何箇所かに出てくる松本雅彦(一九三七〜二〇一五)が亡くなり、一冊、松本[2015]が遺された。そして『精神医療』の次号はその追悼の号だと言う。高木[2015]が掲載されている今出ている号には森山公夫の追悼文(森山[2015])が掲載されている★04。私には追悼という行ないの本当の意味はわからないが、これらのことはなされてよく、なされるべきであると思う。ただ、松本[2015]から得られるものの多くは、病院の経営者がひどく儲かっていたということであり、いったん(京都大学)教授になると何も書かなくてもよかった(良い)時代があったといった事実・挿話であり、松本に映ったその時々の像だ。その先のことは、それは誰によってでもかまわないのだが、別の仕事なのだろうと思った。
 今回後半、ものを調べて書くことについて、寄り道して書いてしまった。次回からもとに戻し、さきに記すとしたことを記していく。

★04 森山の追悼文からは、東大精神科医師連合が刊行していた第一次『精神医療』を引き継ぎ、「全国版」として第二次『精神医療』(現在は第四次)を出す相談を森山と松本が東京でしたといったことがわかる。松本の(洛南病院院長の後の)最後の勤め先は私の住む近所にある岩倉病院だったが、彼はまた、かつて告発した日本精神病理学会の理事長も務めた。」

■文献
 ◇:次回以降まわし〜今回は使わない文献
 ※:全文にリンク(主に外部リンク)

◆有吉 玲子 2013 『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』,生活書院
◇朝日新聞社 編 1973 『立ちあがった群像』,朝日新聞社,朝日市民教室・日本の医療6
◇安積 純子・尾中 文哉・岡原 正幸・立岩 真也 1990 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』、藤原書店→1995 増補改訂版,藤原書店
◇―――― 1995 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補・改訂版』,藤原書店
◇―――― 2012 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』,生活書院・文庫版
◇萩原一昭 1976 「精神障害者家族会と友の会」,『友の会会報』8→友の会編[1981:121-123] <6#13>
◇―――― 19770130 『無告の霊が何故かと問う』,永田書房
◆早川一光他・立岩真也・西沢いづみ 2015 『わらじ医者の来た道――民主的医療現代史』、青土社
◇本澤二郎 2002 『霞が関の犯罪――「お上社会」腐食の構造』,リベルタ出版
◇下司孝之 2013 『戦後医学生運動史・年表』  <2#64>
◇猪飼周平 2010 『病院の世紀の理論』,有斐閣
◆石井知行 2014 「理事長挨拶」,『知仁会だより』129 
◇窪田好恵 2014 「重症心身障害児施設の黎明期――島田療育園の創設と法制化」,『Core Ethics』10:73-83 ※ 
◇―――― 2015 「全国重症心身障害児(者)を守る会」の発足と活動の背景,『Core 2015/10/12Ethics』11:59-70 
◆松本雅彦 2015 『日本の精神医学この五〇年』、みすず書房
◇守屋 1973 
◆森山公夫 2015/09/30 「追悼 松本雅彦君、ご苦労様でした」,『精神医療』4-80(155)
◇森山治 2004 「東京都における保健・医療・福祉政策――重症心身障害児施策の成立過程についての考察(その1)」,『人文論究』73:97-112(北海道教育大学函館人文学会) 
◇―――― 2005 「東京都における重症心身障害児施策」,『人文論究』74:43-61(北海道教育大学函館人文学会) 
◆認知症医療の充実を推進する議員の会 201405 「「認知症医療の充実を推進する議員の会」設立趣意書」
◇西谷 裕 20061024 『難病治療と巡礼の旅』,誠信書房
◇小野寺光源 2007 『精神保健福祉の問題点を考える』,新風舎
◇最首悟 「みられることをとおしてみるものへ」,疾走プロダクション[1972]→最首[2010:277-283]
◇―――― 20100303 『「痞」という病いからの―水俣誌々パート2』,どうぶつ社
◇疾走プロダクション 19720408 『シナリオ さようならCP』,疾走プロダクション
◆塩崎恭久 2014 「認知症サミット日本後継イベント2日目閉会式での厚生労働大臣挨拶」  [English]
◇菅井正彦 1973 「ある脳性マヒ者集団〔青い芝の会〕の問い続けるもの」(ルポルタージュ),『社会福祉研究』12:95-98
◇鈴木雅子 2003 「高度経済成長期における脳性マヒ者運動の展開」,『歴史学研究』2003-08
◇―――― 2012 「1960年代の重度身体障害者運動――国立身体障害センター・医療問題闘争を事例に」,『歴史学研究』899(2012-2):18-34,41
高木 俊介 2015/06/20 「白雪姫の毒リンゴ、知らぬが仏の毒みかん――新オレンジプランと認知症大収容時代の到来」,『精神医療』4-80(155)
◇滝沢武久 1989 「精神障害者家族会の組織と活動」,『リハビリテーション研究』58・59:79-82 
◇―――― 
◆立岩真也 2013b 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社
◇―――― 2014a 「人命の特別を言わず/言う」,『現代と親鸞』28
◇―――― 2014b 『自閉症連続体の時代』,みすず書房
◇―――― 2014- 「生の現代のために・1〜(連載・97〜)」,『現代思想』41-(2014-3):-
◇―――― 2015/06/10 「補足したうえでざっと見取り図を書いてみる」,『賃金と社会保障』1635:13-19
◇―――― 2015a「再刊にあたって 解説」,横田[2015]
◆―――― 2015b 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社
◇―――― 2015c 「横塚晃一――障害者は主張する」(編集部による仮題),吉見編[2015]
◇友の会編 1974 『鉄格子の中から――精神医療はこれでいいのか』,海潮社
◇―――― 1981 『精神障害者解放への歩み――私達の状況を変えるのは私達』,新泉社 <1#25>
◇上野秀樹 2015/03/04 「「新オレンジプラン」の問題点」,『上野秀樹 Official Web Site』 
◇―――― 2015/05/24 「日本精神科病院協会の戦術転換」,『上野秀樹 Official Web Site』 
◇宇井 純 編 19911115 『公害自主講座15年』,亜紀書房
◇脇田愉司 1995 「障害をもつ人の存在証明――1994年度障害福祉関係者研修会・最首悟講演会解題」 
◇横田弘  1974 『炎群――障害者殺しの思想』、しののめ発行所、しののめ叢書
◇―――― 1979 『障害者殺しの思想』,JCA出版
◇―――― 2015 『増補新装版 障害者殺しの思想』,現代書館
横塚 晃一 1973 「CP――障害者として生きる」,朝日新聞社編[1973]
◇―――― 1974 「ある障害者運動の目指すもの」,『ジュリスト』572(臨時増刊 特集 福祉問題の焦点):209-214→横塚[1975][2010:93-150]
◇―――― 1975 『母よ!殺すな』、すずさわ書店
◇―――― 1981 『母よ!殺すな 増補版』、すずさわ書店
◇―――― 2007 『母よ!殺すな 第3版』,生活書院
◇―――― 2010 『母よ!殺すな 第4版』,生活書院
◇吉見 俊哉 編 2015 『万博と沖縄返還――一九七〇前後』,岩波書店,ひとびとの精神史5
吉村 夕里 20080301 「精神障害をめぐる組織力学――全国精神障害者家族会連合会を事例として」,『現代思想』36-3(2008-3):138-155
◇―――― 20091220 『臨床場面のポリティクス――精神障害をめぐるミクロとマクロのツール』,生活書院
全国精神障害者団体連合会準備会・全国精神障害者家族会連合会 編 19930415 『こころの病い――私たち100人の体験』,中央法規出版