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立岩 真也 2015/10/16

生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第7回「精神障害のある人への法制と成年後見制度の課題
於:立命館大学朱雀キャンパス 18:00〜
http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/667

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 「立岩:ありがとうございました。障害学をかじっている者として、俗に言う社会モデルという話の路線で言うと、こういう話なんです。目的はある。だけど、そのための手段というのが欠けている。だから手段を他から補充すれば目的は達成される。その手段のところに社会が入ってくる。もともとの社会モデルというのは、そういう図式なんです。それは、身体障害でどこか行きたいというのは決まっているんだけど行く手段がいろいろなくてどうしようか、という話にはうまくはまるんです。ところが、目的そのものがそれでいいのか、あるいは、その人においてわかるのかという時に、ここの中で言っている社会モデルというのをストレートにつなげた時に、この話がうまくいくかという理論的な▽123 問題はかなり大きい。
 池原さんおっしゃったのは、そのけっこう難しいことの一つなんです。つまり、本人にとっての目標っていうか、目的みたいなものが、聞き取れない、わからない、例えば遷延性意識障害とか、そういった状態の時のことです。そういった時にどうしようかという話。これも難問の一つです。
 もう一つの問題は、その人はなにかの目標らしきことを言っている、だけどそれを受け入れたらこの人やばいんじゃないのっていうことはけっこうあるわけです。そうした時に、どういう形の介入をしてくのか、すべきでないのかという話がある。そこら辺になってくると、単純な意味での社会モデルはたぶん使えない。だから、そこのところの議論というのが非常に重要になってくるんだろうと思います。
 おそらくそれは、池原さんが最後の方でおっしゃっていた、誰か代わりになる人を決めるのか、それともこういう時には社会はこうすべきであるという行為準則みたいなものを決めるかっていう、その選択にも関わっています。僕は、どちらかというと、後者の方で行けるかもしれないというふうに思っているんです。つまり、代わりの誰それを決める、その決める人を決めるのではなくて、こうなったらこうしなさいっていうやり方を決めるというやり方の方がいいかもしれない。そういうことも含めて考えていかないと、これはたくさんの方が毎日体験されていると思うけど、代理するって人の側の都合が結局通ってしまったり、うまくいかないことにすぐなると思うんです。それにどう答えていくかというのは、そこをきちんとやっていかないとというふうに思いました。
 ポジティブではない話なんですけど、もう一つ今日聞きたいなと思ってきたのは、僕も今の成年後見制度はいいとは全然思ってないわけです。後見人が1人べたっと張り付いて、1から10 までやるみたいなモデルっていうのは、全然駄目だろうと思っている。そういう意味で言えば、こういう場合にこの分だけをこの人がちょっとやるというやり方がいいというところでは、全く池原さんと同じなんだけれども、その時に、今までだったらある資格を持った人たちが全面的あるいは部分的に定まった権限を持って、介在していた。だけど、池原さんの話をもっと敷衍していけば、社会全体とかいろんな人が支援するというのがいいという話です。そこは、僕もいいと思っている。だけど、その時に▽124 さっき言ったような、この人が言っている話と支援するって言っている人の話が必ずしもそぐわないということは多々あるわけです。そういった時に、誰が支援者として認められるのか。僕は今、例えば弁護士なら弁護士、PSW ならPSW っていうふうな資格で制限するというモデルは嫌いなんだけれども、代わりにそこのところを本人と支援するサイドがぶつかりうるという可能性を踏まえた上で、それでも誰が行うことができるのかという仕掛けをどう作るのかというのは、大きな問題だと思っているんです。それについて、池原さんは現時点でどう考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいなと思うんです。ちょっと長くなりました。」(立岩[2015])
 それに対する池原の応答(とそれを受けた私の発言)は以下
 「池原:そうですね。ありがとうございます。そこら辺はいろいろ問題があるところなんですけど、もともと本人と密接な関係を持ってきた人たちのグループによる問題解決というのをもう1回高める方法とか、あるいは精神医療に関しては、専門家も含めて議論、対話を繰り返していく中で問題を解決していく手法とかっていうのは、いくつか試みはあるように思います。けれども、なかなかこれだったらいけそうだというのを今のところ私自身は思っていない。そういう中から、共通項としてどういうふうなものができるかなというところをちょっと考えているところなんです。もう一つ思っているのは、本人は例えば左の方向に行きたい、ただあっち行くと崖っぷちでおっこちゃうよという話になる時に、専門家だと道のことをよくわかっているのでいや右に行った方が決まっているといったように本人の決定が妥当性を欠いているという時に、従来あまりにも対立的な構図で捉えているんだけれども、そこに本人の持っている目的自体に少し働きかけをする、説得しつくすという意味じゃないんですけど、例えば、どうしてやりたいと思ったんだろうとか、そのあたりの構造に働きかけて行くっていうことがもうちょっとできないのかなというふうに思っているところはあります。だから、目的があってその目的が不動だということではなくて、目的自体にもう少し関わりが持てるような関係というのはないのかな、とすごく漠然と思っています。それは、例えば、精神障害の人に関わっている時に、入院したくないとか、薬は飲みたくないというような、目的というふうにはわからないけど、希望なりがまずあった時に、それはどうしてなんだろう、▽125 どうして今入院したくないんですか、とか、なんでこの薬は駄目なんですかっていう質問からスタートするといったところで対話が発生していって、なぜ飲まないのか、入院するのかしないのかという綱引きをするのではないような関係から、場合によっては入院しないで済むような別の選択肢が見つかることもある。結局は入院するときも、そこの病院が前に入院した時にいやな経験があったから他の病院だったらいいとか、あるいは、きちんと期限が付いていて出てくれるのがはっきりしているなら入院してもいいとか、いろんなことがあるのかもしれませんが、目的自体に対する関わり方というのができないのかと私は思っているところなんです。あまり対立構図化しないような関わり方ができないのかと思ったりしています。
立岩:気持ちとしてはというか、考えてみると非常によくわかるし、それはそうだなと思う。そういう関係があるといいというのは僕は別に全然否定しないんだけれども、それこそ法や制度っていうもののかみ合わせですね。そのあたりが、結局この話の勝負どころかと思っていて、そこがけっこうまだみんな考えあぐねている、考える手前ぐらいのところにいるんじゃないかっていう感じがしている。」

 

 *以下はこの企画の前にHPに掲載したもの。

■読んでくると望ましい本

◆池原 毅和 20110720 『精神障害法』,三省堂,400p. ISBN-10:4385323208 ISBN-13:978-4385323206 \3400+税 [amazon][kinokuniya] ※ m.


■関連書籍・雑誌〜当日販売予定

◆立岩 真也 2015/11/13 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社,433p. ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

『生存学』Vol.3 立命館大学生存学研究センター 編 20110325 生活書院,272p. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 9784903690728 2200+110 [amazon][kinokuniya] ※

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,434p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

■告知・広告他

http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/667

◆2015/10/14 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/65418525756284928
0  「明後日16日、司会する:http://www.arsvi.com/ts/20151016.htm ということで、池原毅和『精神障害法』からの引用はじめ:http://www.arsvi.com/b2010/1107iy.htm まだ「成年後見」のところには行かず。「自己決定支援」結構だとして誰が? 当日販売の拙著では第4章で少し」

◆2015/10/14 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/654116682303057920
『生存学』3 特集:「精神」http://www.arsvi.com/m/sz003.htm 山口真紀「自閉者の手記にみる病名診断の隘路:なぜ「つまづき」について語ろうとするのか」/片山知哉「ネオ・リベラリズムの時代の自閉文化論」続く 10/16販売http://www.arsvi.com/ts/20151016.htm」

◆2015/10/13 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/653933459451187200
 「池原毅和頁とりあえず作成→http://www.arsvi.com/w/iy11.htm これから増補&整理。その著書『精神障害法』→http://www.arsvi.com/b2010/1107iy.htm いまのところ(詳細目次)だけですがこれから勉強(多分)。10/16の司会より→http://www.arsvi.com/ts/2015b2.htm」
 ※http://www.arsvi.com/ts/2015b2.htmはhttp://www.arsvi.com/ts/20151016.htmの誤記

◆2015/10/13 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/653774217599520768
 「立岩真也?@ShinyaTateiwa 10/16(金)18時池原毅和弁護士出演 於京都 http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/667 … 新刊『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』http://www.arsvi.com/ts/2015b2.htm  見本着販売。他割引販売ほしいもの→tae01303@nifty.ne.jpキャンセル可」

◆2015/10/05 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/651030142278627328
 「立岩真也?@ShinyaTateiwa 10/16(金)18時〜立命館朱雀キャンパス、池原毅和弁護士講演http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/667 … 司会&本売ります。この日にと思った新刊はまにあいませんでしたが『生存学』『造反有理』他あるものなんでも約2割引tae01303@nifty.ne.jp立岩。キャンセル可」


20150926
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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