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『良い死』コリア語版序文

立岩 真也 2015/08/20

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last update:20150825

 言うまでもなく、主張の根拠の根拠をと問うていけば、結局のところ、互いにあいいれない命題が併存することがあり、対立が解消されないままになることもある。そして、本書で主張されることが、欧米の一部で展開されてきた所謂 bioethics において有力な議論と異なる部分があることは承知している。すると、その違い・対立は調停不可能な神々の争いということになるだろうか。私自身、その bioethics で有力とされる論者他に、とくに主体の自律、自律する主体に対するそれ以上の根拠を見いだせない強い信仰を実感することが多い。そう簡単に意見が一致することがあるとも、また一致しなければならないとも思わない。
 しかし、私は本書でなされる主張についてそれを述べるに際しての論理は明示している。そして、本書で扱った主題について私が本書に記したことが特殊な文化を前提したものであると考えていない。むしろ、前述した強い信仰がない方が世界のどこでも一般的なのであり、ゆえに本書に述べたことは世界のどこでも理解されると考えている。実際にそうなるのかどうか、この本が韓国の読者の方々に読まれることを願っている。

 なお、本書は死の決定について論じたのだが、その議論の基底にあるのは著者の最初の著書『私的所有論』(1997年に初版、2013年に第2版)における思考である。その英訳版を2104年中に電子書籍で出版する予定である。興味があればご覧いただきたい。
 また本書冒頭で関連する本を3冊出すと述べたが、2冊めの『唯の生』は2009年に出版された。ここにはさきに「有力とされる論者」と述べた中に含まれる Peter SingerHelga Kuhse の論を検討した章(第1章「人命の特別を言わず/言う」)もある。また3冊めは、当初の予定と異なる構成で2012年に有馬斉(ありま・ひとし)との共著で『生死の語り行い・1』として刊行された。その書では有馬が功利主義による安楽死肯定論を紹介している。また1978年から2012年にかけて種々の団体から出された法制化に賛成・反対する声明を収録している。そして当初予告していた関連する書籍を紹介する本は現在準備中であり、近く電子書籍として刊行する予定になっている。

 最後に、本書の翻訳を提案してくださり実現してくださった鄭孝雲さんと「寛紋さんに感謝する。この翻訳の企画は、2013年に開催されたハンリム(翰林)大学校生死学HK(Humanities Korea:人文韓国)研究団主催のシンポジウムで私が報告させていただき、それがきっかけに研究団と私が現在センター長を務める立命館大学生存学研究センターとの研究協力協定か結ばれたことに由来する。今後ともよい協力関係が形成され研究成果があがることを願っている。本生存学研究センターではコリア語(そして英語・日本語)のホームページ、メールマガジン、フェイスブックでの発信も行っている。本書に関連する情報も提供しており、ホームページの中には私のコリア語のページもある。ご覧いただき、そして情報提供の希望や疑問をお寄せいただきたい。できるかぎりお応えしたいと思う。

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◇立岩 真也 2013/06/05 "On Boundaries",於:韓国・ハンリム(翰林)大学
◇立岩 真也 2014/02/12 開会挨拶・司会,翰林大学生死学研究所×立命館大学生存学研究センター研究交流会,於:立命館大学衣笠キャンパス
◇立岩 真也 2014/02/12 韓国での自殺研究・対策等に関する質問,翰林大学生死学研究所×立命館大学生存学研究センター研究交流会,於:立命館大学衣笠キャンパス


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