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当事者である/と宣することについて

立岩 真也 2014/11/28
第87回日本社会学会大会シンポジウム「<当事者宣言>の社会学――カムアウトからカテゴリー構築まで」
公開報告会 於:立命館大学
http://www.r-gscefs.jp/?p=5376

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 ※話したことの一部(後日増補する予定→たぶん「センター」のフェイスブックに載せます)
 →https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi

◆「当事者研究」はまだされてよかろうことが多々あるだろうこと。ただ、そのうち(場合によってはそろそろ)飽和状態になってくる(いる)ところもあるかもしれない。

◆上記を認めた上で一つの仕事として、自ら(たち)を名乗る・立ち上げるということの得失(そして天田さんが言うにはその可能性/困難/不可能性の条件)を考えるという仕事がある。
 ↓
 その一つとして拙著↓

■立岩 真也 2014/08/26 『自閉症連続体の時代』,すず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※

『自閉症連続体の時代』表紙

■「生存学研究センター」のMLに送ったメール

◇◇2014/11/29 20:29
  [mlst-ars-vive:015442] わかること〜なのること

昨日出ていたわかることをめぐり「原因/帰属」という頁
http://www.arsvi.com/d/c11.htm

名前出した人として
片山
http://www.arsvi.com/w/kt24.htm
山口
http://www.arsvi.com/w/ym10.htm
『現代思想』掲載
http://www.arsvi.com/m/gs2014.htm#09
のものとしては
「「傷」への処方――帰属をめぐる見取り図作成のために」

■ちなみに私は「当事者」という言葉をほとんど使わない。理由は単純で(当日もこのことに関連する質問があったのだが)、この言葉には幅があって「こと(事)にあ(当)たる人」ということであれば例えば家族も含まれる。本人だけと家族を含む場合とときに違いは大きい。それが混同されないように、私は「本人」とかでよいと思うので、そのように記している。(ただこのことは誤解・混同がないのであればこの言葉を使うのはかまわないということでもある。)

■などという私の書きもので「当事者」という言葉がかなりたくさん出てくるのは、1990/10/25「接続の技法――介助する人をどこに置くか」(安積・尾中・岡原・立岩『生の技法 初版』,第8章)。ちなみにこの章は1995年の第2版(増補改訂版)では「私が決め、社会が支える、のを当事者が支える――介助システム論」という章に置き換えられており、そこには以下のようなくだりがある。
 「介助者の選定や介助内容に関わる決定を誰が行うか[…]。その者が誰であるべきかは明らかだ。介助を受ける当人である。これまで、特に医療、福祉の領域では、行政の担当者、施設の職員、専門家達が主導権を握ってきた。だが、自らの暮らし方は自分で決めてよいはずだ。彼らは生活の自律性を獲得しようとする。自らのこと、自らの生活のことは自らが一番よく知っている。こうして、提供(資源供給)側の支配に抗し、当事者主権を主張する。」(p.229,第3版ではp.356)
 またこの版で新たに加えられた第9章「自立生活センターの挑戦」には次のようにある。
 「むろんこれまで見たように、地域での生活と当事者主権という理念は既に獲得されていた。それはCILだけの特徴ではない。そして過去・現在のあらゆる当事者組織が当事者の必要に応えようと活動している。だがこれまで、介助等のいわゆる福祉サービスについては、与える側の組織があって、受け手はそこから切り離されてきた。これは行政だけでなく、ボランティア団体にしても同じである。この当事者の側に渡されず受け手としてしか現れてこなかった部分に当事者が入りこみ、その活動を担おうとする。このことをはっきりと打ち出したのはCILである。」(p.270,第3版ではp.417)
 そして、この時期=おおむね1990年代の書きものをながめなおすと「当事者」という言葉がずいぶん出てくる。当時すでに私が知っていたかなり限られた業界ではこの言葉は一般的な語であって、私もそれをそのまま使っていたということだ。上記したような理由から、私自身はあまり使わなくなったのはその後のことのようだ。といったことを私はすっかり忘れていて、上野千鶴子の文章に会学者?の書きものにおける「当事者主権」の語が初めて使われたのは拙文であったと書いてあってまちがいだろうと思って調べてみたらあった、といったことがあった。

『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙

■もう一つついでに。「当事者研究」という言葉は商業的に発明されたんではないかと思っていて、それを発明したのは白石正明さんだと思っているのだが――浦河べてるの家 20050220 『べてるの家の「当事者研究」』,医学書院,シリーズケアをひらく――その白石さんの拙著についてのツィート。

・2013/12/28 https://twitter.com/shiraishimas/status/416091673404272640

 「白石正明?@shiraishimas 立岩真也さんの『造反有理――精神医療現代史へ』(青土社)http://www.amazon.co.jp/%E9%80%A0%E5%8F%8D%E6%9C%89%E7%90%86-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E5%8F%B2%E3%81%B8-%E7%AB%8B%E5%B2%A9%E7%9C%9F%E4%B9%9F/dp/4791767446 …が面白い。立岩さんがいいのは、「非当事者」としての弁えがあるところだと改めて思った。これはなにより大変な胆力と知力がいる。そして案外、仲間とされている人々にも理解されない。」

 弁え=わきまえ。知力云々はともかく(不足している)、また「弁えている」気も本人的にはあまりしないのだが、ここでの当事者は誰のことか、「仲間とされている人々」は誰か……とか。この拙著についての言及をまとめてあります→表紙写真をクリック。

『造反有理――精神医療現代史へ』表紙

■さらにもっとついでに。
 佐藤幹夫 2014/11/01 「ポロ酔い日記 1 二〇一四年七月一日〜八月一日」,『飢餓陣営』41(2014年秋号) :33-35
 「七月二六日(土)/ひと月ほど前、立岩真也氏の『造反有理』(青土社)の書評に新たな稿を書き加え、ブログに掲載したが(ワタシのホームページから入れます)おおむね次のようなことを書いた。○氏は、自身の思いをできるだけ簡潔なところから発したいと思っている。言い換えれば、シンプルだが基本中の基本であるような問いの形にすること。問いがシンプルになればなるほど、叙述は慎重になる。そして関係者の発言や論文などの資料について、自身の文脈に強引に引き寄せた引用ではなく、記録としての客観性をどう担保した引用にしていくか、それが重要になる――ほぼ、そのようなことを書いた。○そのとき再度できず、描き切れなかったことがもう一つあった。『不動の身体と息する機械』(医学書院)との関連である。この著作でも、問いはシンプルだが、きわめて本質的で、進行するALSの患者が人工呼吸器の装着を拒んだとき、積極的にせよ消極的にせよ、それをよしとすることは妥当かどうか――これが問われていることである。○驚くべきは、筆者自らが、論理的に解答を追いこんでいく、という方法が取られていないことだ。工夫された構成の下に当事者の証言を引用していくのだが、もちろん、たんなる羅列ではない。「人工呼吸器をしない」という選択は、認められないのではないかという方向に、いつの間にか着地させていく。筆者自身の見解は引用の間に数行挟まれるだけだが、患者自身に語らせながら、少しずつ方向性を示していくのである。いわば「当事者決定」を、本のなかでやって見せるのだ。ちょっと驚いた。○ここには、構成や編集技法の卓抜さ、というだけでは済ますことのできない問題があるのではないか。それが、原資料(記録)をどうとらえるか、筆者が独特の思想をもっているゆえに、可能となった方法ではないか。そんなことを書きたかったのだと、今回再度して、改めて考えた。」(35)

 ちなみに『ALS――不動の身体と息する機械』を出してくれたのは上記の白石さんで、『べてるの家の「当事者研究」』は同じ「ケアをひらく」シリーズの拙著の一つ後に出た本ではないかと。
『ALS――不動の身体と息する機械』表紙

■事前の案内→https://twitter.com/ShinyaTateiwa

◇2014/11/28 https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/538145875797622785

 [再告]本日11月28日(金)16:20〜19:30、立命館大学衣笠キャンパス創思館405・406で、第87回日本社会学会大会のシンポジウム「<当事者宣言>の社会学――カムアウトからカテゴリー構築まで」公開報告会→http://www.r-gscefs.jp/?p=5376 私も出ます。


UP:20141128 REV: 20141130 
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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