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精神医療現代史へ・追記5――連載・102

立岩 真也 2013/08/01 『現代思想』2014-8
『現代思想』連載(2005〜)


 ※以下の本になりました。
◆立岩 真也 2015/11/13 『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』,青土社,433p. ISBN-10: 4791768884 ISBN-13: 978-4791768882 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

十全会闘争

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

『現代思想』2014-5表紙    『造反有理――精神医療現代史へ』表紙    『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙

■文献(→文献表・総合



■前回と今回
 京都十全会病院について、他は(自分たちの病院は)そんなにひどくないという話になってしまっては困ると思いながら、書いている。赤木孝★01が始めたその病院・法人の成り立ちについて述べた後、そこでの行ないに対してそれなりに広汎な批判の動きがあったこと、しかし京都府の行政はなかなか動かなかったこと、医療者側の批判勢力として「造反派」と拙著(立岩[2013])で述べたような人たちが残ったようなのだが、それはその京都の地においてもなかなか力を行使できる場にいられないことを当人たちが嘆いていることまでを述べた。ただこの病院のことは忘れ去られたというわけではない。株の買い占め等の関係での報道は引き続きあった。一九八〇年にはNHKの番組も放映された。そしてとくに八一年には国会でかなり取り上げられ、今回はその時期について記す。(「十全会闘争」の頁に国会議事録を含め情報掲載。三〇万字程。よって以下では最低限を記し、あとはその頁でご覧いただければと。)
 ただその前に、この病院でのことに(も)関わって起こったできごとが幾つかあって、それはそれとして押さえておくとよいと考えた。一つ、 五月号(特集:精神医療のリアル)で紹介したのは、現在は「認知症の人と家族の会」という名称になっている会の発足と運営に関わった三宅貴夫が双岡病院の近くに住んでいて、という回顧の文章だった。十全会のことが記され、このようなことであってはならないこと、それがその会のきっかけにもなったこと、しかし、受け入れる態勢が整わない中で、そうした病院が需要されてしまうことも記されていた。三宅はその後認知症の人たちについての本を何冊も書いている。すべて実用的・実践的な本だが、その中で精神病院にふれている箇所がある。その中で、質はよくないけれども高齢者相手のものが存在することを述べ、嘆いている★02。
 もう一つ、このことに関わる別の動きが生ずる。それはその病院の収容者数に比せば百分の一に達しないほどの小さな動きではある。ただたしかにすくなくともある人たちについては別の生活の可能性を示し、現実を現われさせるものだった。

■「前進友の会」
 一九七六年に結成された「前進友の会」の『キケンな〈なかま〉たち――地を這う二〇年を振り返って』は幾人かの文章からなっている。小山通子の文章から。
 […]

■八〇年『ルポルタージュにっぽん』
 NHK総合の番組『ルポルタージュにっぽん』の一九八〇年二月一六日放送分が「精神病棟の中で…京都・十全会病院の場合」。作家井上光晴(一九二六〜九二)が取材している。二〇〇一年の「戦争をどう裁くか」の一件で番組制作から退くことになった永田浩三が二〇一二年の番組が(この八〇年の番組と比べて)よくないことを述べ、日本精神科病院協会を批判した文章があることを紹介したが、その永田はその当京都放送局にいた。文中の桜井は「戦争をどう裁くか」を永田とともに制作したプロデューサー。
 […]
 この番組はユー・チューブで今でも見ることができる。(中に出てくる言葉はほぼすべてHP上の頁に全文を掲載してある。)この時もその後も(やがて理事長は辞任させられるのだが)赤木孝は健在であり、自らの行いが正当であることについて能弁に語っている。
 番組は、先生(井上)は長生きするだろうが、それでも数日後に死ぬかもしれない、それは仕方がないのだといったことを元気に語る赤木の言葉の後、「今日もまた一人の老人が死亡退院しました。病院の話では一月の平均死亡率は二〜三%、年間およそ一〇〇〇人が死亡して退院するといいます。」というナレーションが入る。
 […]

■国会・七〇年代
 この番組をはさんだ時期、一九七〇年代末から八〇年代前半にかけてこの病院のことが国会の本会議や委員会で多くとりあげられる。ただその前にもなくはない。

■国会・八〇年代


■文献 *のあるものはウェブ上にあり

赤木孝 1959 「細菌の五炭糖代謝 第1篇 発育菌の五炭糖の分解 第2篇 静止菌の五炭糖の酸化」、『岡山医学会雑誌』71:3-
朝日新聞社 編 1973 『立ちあがった群像』、朝日新聞社、朝日市民教室・日本の医療6
江端一起 1996? 「友の会の歩み、そして今」、『キケンな〈なかま〉たち――地を這う20年を振り返って 前進友の会』*
―――― 2013 『キーサン革命宣言――精神病者のセーカツとカクメイ』、アットワークス
榎本貴志雄 1975 「十全会糾弾闘争の経過」、『精神医療』2-4-2(16):32-39 *
福井東一 1983 「混乱の中から生れたもの――精神神経学会」、朝日新聞社編[1973]
古屋 龍太 2008 「日本病院・地域精神医学会の50年とわが国の精神保健福祉をめぐる流れ」、『病院・地域精神医学』51-3(173)*
桐原 尚之 2014 「アイデンティティ政治における〈他者〉との連帯の意味付与――鈴木國男君虐殺糾弾闘争の歴史から」、『現代思想』42-8(2014-5):224-237
小山通子 1996? 「あのころの日の岡荘」、『キケンな〈なかま〉たち――地を這う20年を振り返って 前進友の会』*
三宅貴夫 1983 『ぼけ老人と家族をささえる――暖かくつつむ援助・介護・医療の受け方』、保健同人社
―――― 1995 『老いをめぐる12+1話――老年科医の診療ノートから』、ユージン伝
永田浩三 2010 『NHK、鉄の沈黙はだれのために――番組改変事件10年目の告白』、柏書房
二木立 2011 「日本の民間病院の「営利性」と活力」(二木教授の医療時評・90)、『文化連情報』399(2011-6):20-25→2011 『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター号』83 *
岡江晃 2013 『統合失調症の責任能力――なぜ罪が軽くなるのか』、dZERO、発売:インプレスコミュニケーションズ
大森武士・赤木孝 1953 「橋本氏病の一剖檢例」、『岡山医学会雑誌』65:3-
大野萌子 2014 「私の筋が通らない、それはやらないと。――精神障害者運動の黎明を生きて」(インタビュー、聞き手:=立岩真也・桐原尚之・安原荘一)、『現代思想』42-8(2014-5):192-206
立岩真也 2008 『唯の生』、筑摩書房
―――― 2013 『造反有理――精神医療現代史へ』、青土社
高杉廸忠 1982 『福祉優先社会の構想』、学陽書房
山本眞理 2014 「「精神病」者集団、差別に抗する現代史」(インタビュー、聞き手:立岩真也)、『現代思想』42-8(2014-5):30-49
前進友の会編 2005 『懲りない精神医療電パチはあかん!!』、千書房


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