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書評:庄司洋子・河東田博・河野哲也・菅沼隆編『自立と福祉――制度・臨床への学際的アプローチ』」

立岩 真也 2013/10/01 『リハビリテーション』557(2013-10):36-37


◆庄司 洋子・河東田 博・河野 哲也・菅沼 隆 編 20130310  『自立と福祉――制度・臨床への学際的アプローチ』 ,現代書館,379p. ISBN-10: 4768435211 ISBN-13: 978-4768435212 2300+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

  立教大学社会福祉研究所における共同研究(2009〜2011年度、科学研究費補助金・基盤B)の研究成果として本書が出された。多様な主題が扱われているので、きっとその中には読者の関心のあるものがあるだろう。そこで以下詳細目次を記す。これをと思うものがあったらこの本を入手されたらよい。
  T.自立概念の再検討。「自立をめぐる哲学」(河野哲也)、 「自立とケアの社会学」(庄司洋子
  U.障害と自立の制度的考察。「デンマークにおけるハンディキャップを有する者への就労『支援』と就労能力評価方法」(菅沼隆)、「障害者の自立を支える所得保障」(百瀬優)、「パーソナルアシスタンス制度にみる自立」(河東田博)、「日本の生活保護・障害年金と障害者」(田中聡一郎・百瀬優)、「日本の精神保健福祉施策と自立」(酒本知美)。
  V.障害と自立の臨床的考察。「入院経験者の語りにみる精神科病院と自立」(松原玲子)、「障害者の自立生活と介助」(深田耕一郎)、「組織運営への知的障害当事者の参画と自立」(河東田博)、「リハビリテーションにおける自立」(佐川佳南枝) 。
  W.自立をめぐる福祉社会学的考察:、「スウェーデンにおける家族政策と女性」(浅井亜希)、「妊娠・出産過程にみる女性の自立」(菅野摂子)、「女性の就労と自立の関係」(杉浦浩美)、「高齢期の自立と地域」(新田雅子)、「医療における患者の自立」(松繁卓哉)、「『地域貢献住宅』の可能性」(野呂芳明)、「貧困に晒される人々の健康問題から『自立支援』を問う」(湯澤直美)。
  X.考察とまとめ(河野哲也) 。
  題名にある「自立」は、もちろん理論的・実践的に重要な主題だが、むしろ重要な主題であるからこそというべきか、ここ数十年の間にずいぶん様々が言われた。それを知らない人であれば、間違ったことが本書で言われているわけではないから、益があると思うが、いくらか知っている人であれば、その部分はとくに新しいものを得られるものではないとは感じた。そこで各章(のいずれか)を、と冒頭に述べた。
  とくに外国の事情についての論文に、(すくなくとも私は)知らないことが様々書かれていると感じた。有益であると思う。ただ、それらを含めて、一つひとつをもっと長くしてくれたら(すると本の構成も考えなければならない)もっとよかったと思った。
  私がいくらか知っている領域では深田の「障害者の自立生活と介助」がおもしろかったが、これも本来、もっと詳細に書かれるべきものだろう。ただ深田のこの主題についての研究は、近く単著になると聞くから、それを待つことにしよう。
  そして私自身はすこしも詳しくないが、それでもにまとめようと思っていま調べているところでは精神疾患・精神障害の領域があり、本書では「入院経験者の語りにみる精神科病院と自立」「日本の精神保健福祉施策と自立」といった章がある。それぞれある程度の知見を得ることができた。例えば、前者は統合失調症の入院体験のある人たちが出した書籍を集めてそこに書かれていることから読み取れるものをあげていくというものだ。このような文献は、ありそうでそうなかったように思う。しかし、本人の書きものは多くないとはいえ、もっとあるだろうし、時間的な変化といったものもないではないはずだ。(もっと紙数があれば)もっと詳しい分析もできただろうと思う。
  また後者、「日本の精神保健福祉施策と自立」は「精神障害者退院促進事業」を取り上げる。簡単に退院できる人たちはもう出てしまって、「困難」な人が残り、支援の数としては減少しているという、現場で感じられていることがまず示された後、福祉事務所が精神障害者の生活保受給給等に関わる仕事をどんな具合にやっているか(やれていない)かがその稿の関心の対象になる。福祉事務所と他機関・他の社会資源との連携についての調査結果が示される。それはそれとして意味はあるのだろう。ただ、多職種連携はさんざん言われてきたことだが、そしてなされるべき連携がなされるべきことは最初から決まっているのだが、調べて明らかにすることはその先に(も)あるのだろう。例えば私は、「難病」に関わる連携の不足というか不在についてなら、大学院生の詳細な研究があることによって、いくらかを知っており、具体的に何をするべきかもそこから(私でも)言える。「精神障害者地域生活支援センター」に務めその(不)機能を詳しく知って論文化している人もいて、こちらは、ではどうしたらよいかはまだわからないが、それでもその不機能・困難の具体的な様子を知ることができる。そうした仕事が必要だ。
  それがなされるとよいと思うし、著者(たち)もそれを望んでいるのだろう。他にも、「組織運営への知的障害当事者の参画と自立」について、は書きにくいこともあるのだろうが、困難が多かっただろうその企てについてもっと詳しく知りたいと思ったし、「リハビリテーションにおける自立」は、筆者の「気持ち」は了解しつつ、もっと詰めて、同時に距離をもって、考えられるべきことがあると思った。等々、等々。研究所の今後の研究の展開と成果発信に期待したい。


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