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二〇一二年読書アンケート
立岩 真也
2012/02/01 『みすず』55-1(2013-1・2 no.611):67-68
『みすず』55-1(2013-1・2 no.):-
http://www.msz.co.jp
書名からみてとれるような領域において、ときに『現代思想』といった雑誌を手にとってみるというような「読書人」なら知っている人たちの本で、いずれも青土社から出た本として、小泉義之の
『生と病の哲学――生存のポリティカルエコノミー』
(六月)、小松美彦
『生権力の歴史――脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって』
(十一月)、美馬達哉
『リスク化される身体――現代医学と統治のテクノロジー』
(十二月)と出版されている。美馬の本はたいへん短い――がゆえに「本題」に入らずにすむ――「書評」を書いてホームページに載せてある。小松の本は大作であって、フーコーやアガンベンやハイデッガーといった人たちを取り上げる。そして、それは自らが書いてきたことの「まとめ」のようでもある。小泉の本は、たぶんじつは「方角」においてそうは違わないはずなのだが、つとめて小松のような語り口では語らない本である。この二人の書きものについては拙著(『唯の生』、筑摩書房、二〇〇九)で各一章ずつ書いていて、とくに加えることはない。以下、まず押さえておくべき事実・史実を記した本をあげる。
@利光惠子『受精卵診断と出生前診断――その導入をめぐる争いの現代史』(生活書院)
A柘植あづみ『生殖技術――不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか』(みすず書房)
B島次郎『精神を切る手術――脳に分け入る科学の歴史』(岩波書店)
C斎藤 義彦 20120210 『ドイツと日本「介護」の力と危機――介護保険制度改革とその挑戦』 (ミネルヴァ書房)
D廣川和花『近代日本のハンセン病問題と地域社会』,大阪大学出版会
@のもとは博士論文。長く「優生思想を問うネットワーク」という関西を中心とした組織――今はもうなくなっている――で活動してきた人の書いた本でもある。Aはやはりず<0067<っとこの主題について研究してきた人の、より総論的な――だから詳しくは@のような本が書かれねばならない――本。近頃あまり見かけないように思うのだが、そこで扱われる主題が消えてなくなったわけではない。
Bはとくにフランスの医療、生命倫理に関わる研究を行なってきた著者が近年取り組んできた主題についての本。かつて、四〇年ほど前、批判・糾弾がなされた後、賛成にせよそうでないにせよ、もう長いこと日本でこの主題に関わる本はなかった。さらに、まずは 日本のことをもっと知りたいと思う。
Cのような本は「今年の何冊」といったものとしてあげられることはあまりないように思う。けれども、こうした本がそのときどきに書かれていくことによって――著者は、日本、ドイツ、米国についてこの十五年ほどの間に五冊の本を書いていて、有馬斉との共著書、
『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』
(生活書院)で紹介した――ようやく、私たちは現在のことを忘れないでいることができる。
Dは二〇一一年に出版された本。ハンセン病は他に比して珍しく多数の書籍が出版されてきた。ただそれでも、「たぶんそれだけではない(なかった)だろう」と思いながら、そのままにされている部分があって、それが調べられ、書かれた。
@利光 惠子 20121130
『受精卵診断と出生前診断――その導入をめぐる争いの現代史』
,生活書院,339p. ISBN-10:4865000038 ISBN-13:978-4865000030 \2940
[amazon]
/
[kinokuniya]
※
A柘植 あづみ 20120910
『生殖技術――不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか』
,みすず書房,288p. ISBN-10: 462207706X ISBN-13: 978-4622077060 3200+
[amazon]
/
[kinokuniya]
※ be.
B
島 次郎
(ぬでしま じろう) 20120523 『精神を切る手術――脳に分け入る科学の歴史』,岩波書店,256p. ISBN-10: 4000258435 ISBN-13: 978-4000258432 [amazon]/[kinokuniya] ※ m.
C斎藤 義彦 20120210
『ドイツと日本「介護」の力と危機――介護保険制度改革とその挑戦』
,ミネルヴァ書房,268p. ISBN-10: 4623060950 ISBN-13: 978-4623060955 2800+ [amazon]/[kinokuniya] ※ a02.
D廣川 和花 2011,『近代日本のハンセン病問題と地域社会』,大阪大学出版会.
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