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雇用差別の禁止について/国連条約に対する韓国の寄与について

立岩 真也 2012/11/23→2013/03/22


※2012/11/23 障害学国際セミナー2012 於:韓国・ソウル市 イルム・センター

「ディスカッション」,川端 美季・吉田 幸恵・李 旭 編 2013/03/22 『障害学国際セミナー2012――日本と韓国における障害と病をめぐる議論』,生存学研究センター報告20,pp.229-45

 「立岩 真也:立岩です。1点だけ補足させていただきます。それから、今回お答えいただけなくても結構ですが、後で一つ教えていただきたいことを申し上げます。一つ目は、長瀬さんの報告のなかにもありましたけれども、ADAによって障害者の就業率が上がっていないどころかむしろ下がっているということです。このことはきちんと考えておいたほうがよくて。つまりこういうことです。障害者を雇用するためのコストがかかり、そのコストを企業自身が負担しなくてはならない。そうした場合に、同じ仕事を出来る人が目の前に2人並んでいたとして、企業はどちらを採用するか。おそらくコストのかからない人のほうを採用するわけです。それは不当だとBさん(障害者)は企業を訴えるかもしれません。しかし企業側は「そんな理由で雇用しなかったわけではない」と言い張り、それに反証することは非常に難しいわけです。このようなことになると、結局原告である雇用されなかった障害者が敗訴してしまうという、簡単といえば簡単な話であるわけですけれども、そういうことを一つおさえておく必要があります。そうすると、なすべきことはそれほど多くはありません。一つには雇用にかかわる費用負担の問題、先ほど<0103<イ・ソックさんが、報告の終わりのほうで政府の役割について述べていましたが、たとえばその部分にかんして政府が幾分か負担するならば、一定の効果があがるでしょう。そしてADA的な雇用政策のなかでは何か古くさいものとして雇用割当や雇用率の設定があるわけですが、そうとばかりは言えないということで、それらの組み合わせをどのように構想し実践していくかといったあたりが、障害学が政策に対して理論的に貢献できるところではないかと思います。
 もう一つは、後で今日の宴席でもどこでもおうかがいしたいのですけれども、以前から韓国が(障害をもつ)女性の条項を盛り込むことに対して積極的に動き、その結果当該条項が盛り込まれたということは聞いていますが、そのあたりの具体的な動向についてご存知の方がいらっしゃれば教えていただければと思います。というのも、私どもの大学院にバングラデシュの女性障害者について研究している院生がおります。彼女が自分の博士論文を書くなかで、韓国はなぜイニシアチブを取り、どのようにして条項が盛り込まれたのかを書けば有意義だということがあります。
 ということで、雇用の問題はADA的なスキームだけでは論理的に上手くいかないようになっているといったほうがいいだろう、と。それにプラスしてどのような政策を加えるのかということがあるだろう、という補足をしました。それから、簡単な質問を一つさせていただきました。以上です。」(pp.103-104)


UP:201310 REV: 
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