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法制化は不必要

立岩 真也 2012/10/25 共同通信配信記事


 ※分量の制約等もあり以下は各紙に掲載されたものと少し異なります。

◎終末期の定義が不明 法制化は不必要
インタビューA立命館大大学院教授・立岩真也氏

 ―尊厳死法は必要か。
 「必要ない。法案では終末期の状態で、延命措置を不開始、あるいは停止するというのだが、まずその終末期がどんな状態なのかわからない。日常の語感では、本当にもうそろそろご臨終というか、もう持たないだろうというところだと思う。ならば、あらためて装置を外す外さないとか決める必要はない。亡くなるまでの短い期間を丁寧に看護することで十分だ」
 ―ほかに理由は。
 「あと数時間といった普通の意味なら医療者の判断はそう間違えない。しかし、それに関わる規定はなく、複数のとはいえ医師に委ねられる。するとずいぶん手前で終末期とされ、そして判断も不確かになる。あと1日だとか言われて、その後20年、30年生きてきた人も多い。たしかに不治ではあるが、生命の維持が十分に可能なのに終末期とされることもある。その人たちが、この法律ができたら今の自分はいない、容認できないと言うのももっともだ」
 ―海外では尊厳死を認める国も出ている。
 「西洋の一部にある世界観・人間観は一つの要因ではあるだろう。人間の活動性や能動性、意識の有無に非常に重きが置かれる。自分のことは自分ででき、人のためにもなって自律的な活動ができるうちが人であり、そうでない人間は生きるに値しないとはっきり言う学者たちもいる。それは理詰めでそんな結論になるというより議論の手前の信念のようなもので、それが強いところでは、死を早めるところに抵抗が少ない。ただどこでもそうした考えに反対している人たちもいる」
 ―国内では日本尊厳死協会が「尊厳死の宣言書」の普及と法制化を求めてきたが。
 「1970年代後半から協会の前身、安楽死協会が法制化を求めて活動してきた。認知症や神経難病の人の尊厳死が主張されたこともあるし、今もそれを支持する発言をする役員もいる★01。「終末期」の対象が広がっていくというさきの懸念はたんなる杞憂ではない」
 ―延命至上主義と批判されることもあるが。
 「なにより生存期間を長引かせるのを優先させるべきだとは思わない。現行法でも、多少寿命は短くなるかもしれないが自分がしたいことができる生活を優先する選択は、問題ない。その上で、死ぬ、生きるの決定は、やはりどこか特別で慎重に考えなければならない」
 ―具体的には。
 「経済的負担や家族の負担、国の経済を気にして今のうちに死の意志を書類にしておくことと、多くは経済的な理由で年に3万人自殺していることと、別のことではない。後者を止めよう減らそうとするなら、前者を認めることにもならない。」
 ―24時間ケアが必要な病気の人もいる。
 「長いこといろんな人が頑張って、地域によってはケアが充実し、家族の助けなしに生きられるようになってきた。それが後退することになることをその人たちは危惧している。私たちの社会にはそうした人たちが生きるのを手伝うための十分な余裕がある。」
 ―経済とは別、あくまで自己の選択だという主張もあるが。
 「『自分の頭や体が動くうちが人間だ』といった価値、『潔く死にたい』といった美学によって、「事前」に決める今の自分は、多く、心身ともに健全で、健全でない人を見たり想像して「死ぬほど」嫌っているということだ。それはその状態、その状態にある人々を嫌悪しているのとは違うと言えるだろうか。
 そしていざその状態になり口もきけなくなった時は、喉が乾いても腹が減っても「延命措置」はなしということになる。
   ×   ×   
 たていわ・しんや 60年新潟県生まれ。東京大大学院博士課程取得退学。社会学。著書に「生死の語り行い・1」(共著)など。


◎写真に付ける一言
 「未知の自分を予め決めておくことができるのか」と話す立岩真也さん=京都市内の喫茶店で

★01 この部分は以下をもとにしています。井形氏の見解の後半部分は(普通の意味で)末期の人でない人を死なせられなかった(それを可能にする法律がなかった)ことがよろしくなかったとしか読めないからです。ただ、井形氏はその後理事長を退任されましたし、分量の制約もあり、掲載時にはこの部分は変更されました。(確定版は後日掲載いたします。)
◇(社)日本尊厳死協会理事長 井形 昭弘 2012/04/24 「法律案に反対する団体の意見に対する(社)日本尊厳死協会の見解」
 於:自民党勉強会 [MS Word版]
川口 有美子 2012/05/22 「平成24年4月24日の日本尊厳死協会理事長、井形昭弘氏の見解は事実誤認」
 [MS Word版] cf.相模原事件
橋本操 2012/05/25 「平成24年4月24日の日本尊厳死協会理事長、井形昭弘氏の見解は事実誤認」
 [MS Word版] cf.相模原事件


UP:20121102 REV:
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