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身体に良き本――主に運動の方面から

立岩 真也 2012/08/25-09/下旬
新宿・紀伊国屋書店ブックフェア http://www.kinokuniya.co.jp/20120825095245.html


■「選書」にあたり

  私がずっと書いてきているのは、所有・分配について、それと「能力」との関わりについてということになります。この主題についての本たちも、もちろん、それなりにあります。しかし、その方面なら、僣越ながら、まず拙著を読んでいただければよいのかなと。そこには、幾分か偏ってますし、世界中というわけにもきませんが、いくらか文献もあげてありますから、それを手がかりにしていてもらえればよいかなと思います。
  そこで今回は、そんなことにも当然関係ある、つまり私たちの社会における所有・分配の仕組みのもとではいちばんわりを食う人たちでもある障害――能力ability→障害disability――を有する人について、というより多くその人たちが書いた本を中心に集めることにしました。一つ覚えのように――というとわるい言葉のようですが、そんなことはない――「能力主義」「優生思想」という言葉で批判を繰り返してきたのもその人たちであり、私はそれが基本的に当たっていると思って、やってきたのだと思います。それは単純だけれども腹がすわっていて、もっともだと思って、そしてそこまで開き直った主張は、世界中みてもそうなされていない気がします。(そんな事情も関係するのでしょうか、英語でちょうどよい言葉はなかなか見当たらないのですが、このところ ablism という言葉を使う人たちもいるみたいです。)
  さらに障害には「できない」という面だけでなく、「かたちが違う」とか、あって、さらに病には「痛い」とかそんなこともある。死んでしまうこともあるし、犯罪に結びつけられることもある。そいうことをひとまず分けて考えていく必要があると私は思っていて、ぼつぼつとそういう仕事ができればとも思っています。
  そのためにも、人が何を語り、叫び、書いてきたかを知ったほうがよい。そこで、私は勤め先そのほかで、昔のことを調べて書こうと言ってきました。たしょうそういうこともあり(その「成果」が出ていくのは今後になるでしょう)、べつにそんなことと関係なく、ここ数年、そんな本がいくらか出るようになりました。多くは私が直接に知る人たちで、今回の選書はしょうじき、えこひいきっぽいところがある、すくなくともそう思われても仕方がない。しかし、でも、読んでもらったらと思って選びました。その際、多くの人に知られている(と私は思う)名著、売れた本、売れてる本はあえて外しました。
  選んだ本の本としての完成度はかなりばらつきがあります。でもそんなことはすくなくとも一番大切なことじゃないだろうと。まず1冊、いや2冊なら、横塚『母よ!殺すな』、吉田『「精神障害者」の解放と連帯』でしょうか。その「時代」のものなので、書き口や用語は (とくに吉田の本の場合)今風ではありませんが、そんなこともどうでもいいだろうと。最後についでに、私たちの「センター」で『生存学』という雑誌を出しています。おもしろいです。よろしく。

■本(31)

◆吉田 おさみ 19831201 『「精神障害者」の解放と連帯』,新泉社,246p. 1500 ISBN-10: 4787783157 ISBN-13: 978-4787783158 [amazon][kinokuniya] ※/杉並369 m
 *深い理論的洞察。自らの経験。1970年代から始まる精神障害者たちの運動を知るためにも。
◆小澤 勲 19841100 『自閉症とは何か』,悠久書房,584p. 4800→20070720 洋泉社,577p. ISBN-10:4862481833 ISBN-13:978-4862481832 5670  [amazon] ※ a07.
 *村瀬学氏らの尽力によって復刊なった大作。ここから今何が言えるのか私にはわからない。だが(だから)大切。
◆大林 道子 19890420 『助産婦の戦後』,勁草書房,医療・福祉シリーズ30,330+5p. ISBN: 4326798637 2580→3570 [amazon][kinokuniya] ※/三鷹498
 *助産師の位置の変化へのGHQの介在、さらに遡ると米国の優生思想にも行き着く。もう聞き取り、書かれることのできない名著。
◆「病」者の本出版委員会 編 19950430 『天上天下「病」者反撃!――地を這う「精神」者運動』,社会評論社,230p. ISBN-10: 4784501398 ISBN-13: 978-4784501397 2100 [amazon][kinokuniya] ※ m
 *まあ過激、ということになるのでしょう。でも、「べてるの家」の本読んで感心する人はこういうのも読まねばなりません。
◆金 満里 19960825 『生きることのはじまり』,筑摩書房,ちくまプリマーブックス103,224p. ISBN:4-480-04203-2 1155 [amazon][kinokuniya] ※ b
 *恥ずかしながら彼女が主宰する劇団「態変」の公演を見たことがない。しかし一度聞いたら忘れないそれを始めたいきさつその他々。
◆最首 悟 19980530 『星子が居る――言葉なく語りかける重複障害者の娘との20年』,世織書房,444p. ISBN-10: 4906388655 ISBN-13: 978-490638865 3780 [amazon][kinokuniya] ※ e19.
 「論点を次第にしぼってついにこれ以上はしぼれない一点があるはずだ」(p.384)。私にはまだわからない部分があるけれども。
◆Klee, Ernst 1993 >>Euthanasie<< im NS-Staat, Fisher, Frankfurt am Main=1999 松下正明訳,『第三帝国と安楽死――生きるに値しない生命の抹殺』,批評社,702p. ISBN:4-8265-0259-1 8925 [amazon][kinokuniya] ※
 ナチス政権下における障害者殺害の詳細にされだしたのはドイツでも1980年代になって だという。まずれはこれを読みないが読む。基本文献。
◆全国自立生活センター協議会 編 20010501 『自立生活運動と障害文化――当事者からの福祉論』全国自立生活センター協議会,発売:現代書館,480p. ISBN:4-7684-3426-6 3675 [amazon][bk1] ※
 尊厳するのは横塚晃一と吉田おさみと高橋修。高橋は自ら文章を書かない人だった。それで彼の章は私が書かせてもらった。
森岡正博 20011110 『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』,勁草書房,477+17p. ISBN:4-326-65261-6 3990 [amazon][kinokuniya] ※
 http://www.lifestudies.org/lifestudiesapproaches00.html
 例えば、ウーマン・リブについて、田中美津について、何も知らないというのはやはり よからぬことであると思う。
◆渡辺 一史 20030331 『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』,北海道新聞社,463p. ISBN:4-89453-247-6 1890 [amazon][kinokuniya][bk1] ※
 *今はボランティアでというのは比べて少なくなっている。だが、そんなことはともかくこんな世界がある。
◆上農 正剛 20031020 『たったひとりのクレオール――聴覚障害児教育における言語論と障害認識』,ポット出版,505p. ISBN-10:4939015556 ISBN-13: 978-4939015557 2835 [amazon][kinokuniya] ※ c02
*手話が私の言語だと居直れればよしとして、聞こえないが聞こえることにしてことは進んでしまったりもする。苦い話だ。しかしそれが現実。
◆Wexler, Alice 1995 Mapping Fate: A Memoir of Family, Risk and Genetic Research, University of California Press=20030925 武藤 香織・額賀 淑郎 訳, 『ウェクスラー家の選択――遺伝子診断と向きあった家族』,新潮社,361p. ISBN:4-10-543401-2 2730 [kinokuniya][amazon][bk1] ※ 07a
 *ハンチントン病は厳しい病気だが、遺伝性で、筆者には発症する半分の可能性があり、 それを遺伝子検査で知ることができる。
◆横田 弘 20040125 『否定されるいのちからの問い――脳性マヒ者として生きて 横田弘対談集』,現代書館,262p. ISBN:4-7684-3437-1 2200+税 [amazon][kinokuniya] ※ ds
 *私も対談させていただいた。横浜でもうすぐ80年の横田さんの昔話を聞き出すことに熱心すぎて、横田さんお気にめさず、収録されたのは二度目の対談。
◆佐藤 幹夫 20050317 『自閉症裁判――レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』,洋泉社,318p. ISBN: 4896918983 2310 [kinokuniya] ※ i01,
 *どうして刺して死なせたか。やはりわからない。その感じはずっと残る。だが、その前で留まれたかもしれない。文中に出てくる岩渕さんは2008年に亡くなった。
◆田中 耕一郎 20051120 『障害者運動と価値形成――日英の比較から』,現代書館,331p. ISBN: 4768434509 3360 [amazon][kinokuniya] ※,
 *「全国障害者解放運動連絡会議(全障連)」も取り上げられている。その組織このごろあまりぱっとしない。だから知っておいたってよい。
◆三井 絹子 20060520 『抵抗の証 私は人形じゃない』,「三井絹子60年のあゆみ」編集委員会ライフステーションワンステップかたつむり,発売:千書房,299p. ISBN-10: 4787300466 ISBN-13: 978-4787300461 2100 [amazon][kinokuniya][JUNKDO] ※ d i05 i051970 b02.
 *1970年、都知事が「ああいう人ってのは人格あるのかね」と語った府中療育センターで、日本で初めて「脱施設」につながる動きを始め、国立に移り、暮らしてきたのが著者(旧姓:新田)。
◆「生きる力」編集委員会編 20061128 『生きる力――神経難病ALS患者たちからのメッセージ』,岩波書店,岩波ブックレットNo.689,144p. ASIN: 4000093894 840 [amazon] ※ als ts2007a
 *ちかごろはすこしメジャーになったALS。なおるかもというニュースもあったりだが、もうすこし待たねばならないだろう。という人たちが、ともかく生きてきた。
横塚 晃一 20070910 『母よ!殺すな 新版』,生活書院,432p. ISBN9784903690148 10桁ISBN4903690148 2500+ [amazon][kinokuniya] ※ d dh
 *1975初版、81年増補改訂版。著者は「青い芝の会」という小さな組織に関わり、78年に、42歳で、たぶん死なずにすむこともできたがんで亡くなった。20世紀の名著。
◆佐藤 幹夫 20070727 『裁かれた罪裁けなかった「こころ」――17歳の自閉症裁判』,岩波書店,280p. ISBN-10: 4000230190 ISBN-13: 978-4000230193 2520 [amazon][kinokuniya] ※ m
 *ものの感じ方がもともと違う、ことを否定するというのはなにか押しつけがましくもある。すると「処遇」はとても難しい。が、そうでもないかもしれない。そんなことを思う。
◆三島 亜紀子 20071130 『社会福祉学の「科学」性――ソーシャルワーカーは専門職か?』,勁草書房,211+36p. ISBN-10: 4326602066 ISBN-13: 978-4326602063 \3150 [amazon][kinokuniya] ※
 *専門家はたいがい自分を肯定するために「学」を発達させるのだが、ソーシャルワークという仕事は少しひねくれている。だが仕事をやめるわけにもいかない。何が起こるか。
◆杉田 俊介 200805 『無能力批評――労働と生存のエチカ』,大月書店,351p. ISBN-10: 4272430750 ISBN-13: 978-4272430758 \2310 [amazon][kinokuniya] p0601
 *この本はどのぐらい読まれたのだろうか。読まれたらよいと思う。私はこのように課書かないのか、書けないのか、よくわからない。
◆山下幸子 20080930 『「健常」であることを見つめる―一九七〇年代障害当事者/健全者運動から』,生活書院,243p. ISBN-10: 4903690253 ISBN-13: 978-4903690254 \2625 [amazon][kinokuniya] ※ ds
 *「自立障害者集団友人組織関西グループゴリラ連合会」という、ありえない名前の組織が一時期あり、様々なすったもんだがあり、くだらないと思われてけっこう、の記録。
◆寺本 晃久・岡部 耕典・末永 弘・岩橋 誠治 20081110 『良い支援?――知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援』,生活書院,298p. ISBN-13: 9784903690285 ISBN-10: 4903690288 2415 [amazon][kinokuniya] ※
 *足が動かなければ足の代わりになるものがあればいいだけの話だ。しかし、この本に出てくる人たちの「支援」とはどんなことか。
◆前田 拓也 20090930 『介助現場の社会学――身体障害者の自立生活と介助者のリアリティ』,生活書院,369p. ISBN-10:4903690458 ISBN-13: 978-4903690452 \2940 [amazon][kinokuniya] ※ c04 ds
 *こちらは身体系の人たちなので、比べれば簡単そうに思える。しかしそうでもない。例えば身体と身体とが普通なら異常に接近してしまうわけだ。するとどうなるか。
◆新田 勲 編 20091110 『足文字は叫ぶ!――全身性障害のいのちの保障を』,現代書館,270p. ISBN-10: 476843486X ISBN-13: 978-4768434864 2200+ [amazon][kinokuniya] ※
 *新田と三井は兄妹で、同じ施設に入り抗議し、出て、新田は北区で、行政とかけあい取れるものを取ってた。もう40年になる。そうしてなんとか暮らせるようになった人たちが出てきたのだ。
◆角岡 伸彦 20100921  『カニは横に歩く――自立障害者たちの半世紀』,講談社,509p. ISBN-10:4062164086 ISBN-13:978-4062164085 \2310 [amazon][kinokuniya]
 *1980年代、兵庫青い芝の会の脳性まひ者たちの介助(介護)に関わることになった人が、そこのあくの強い人たちの、正しくもどたばたとした軌跡を本にした。
◆渡邉 琢 20110220 『介助者たちは、どう生きていくのか――障害者の地域自立生活と介助という営み』,生活書院,420p.,ISBN-10: 4903690679 ISBN-13: 978-4903690674 \2415 [amazon][kinokuniya] ※
 *大学院途中でやめて京都で介助者して稼いできた人が、自分野こと、自分の周りのこと、関西のこと、介助労働者のこと(彼は「かりん燈」というのもやっている)を書いた。
◆定藤 邦子 20110331 『関西障害者運動の現代s史――大阪青い芝の会を中心に』,生活書院,344p. ISBN-10: 4903690741 ISBN-13: 9784903690742 \3000 [amazon][kinokuniya] ※ dh. ds.
 *これは大阪の同じ名前の組織の誕生と活動と停滞といささかの転換とを追う。ちなみに『カニは横に歩く』は当時関西で撮られた映画。『母よ!殺すな』は神奈川で撮られた映画の題名でもある。
◆児玉 真美 20110922 『アシュリー事件――メディカル・コントロールと新・優生思想の時代』,生活書院,264p. ISBN-10: 4903690814 ISBN-13: 978-4903690810 2300+ [amazon][kinokuniya] ※ be. eg.
 *米国で、6歳の重複障害の女の子に、両親の希望である生育を制限する医療介入が行なわれた。詳細に追って、論点を抽出する。学者はさぼっていてこんな本を書けない。
◆新山 智基 20111201 『世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動――生存の視座から』,生活書院,216p. ISBN-10:4903690857 ISBN-13:978-4903690858 3150 [amazon][kinokuniya]
 *アフリカのこと、そこでのHIVエイズのことを、そしてそこの地の本人たちの動きがすくなくとも事態のいくらかを動かしてきた。アフリカ関係ない人もおもしろいです。
◆天畠 大輔 20120510 『声に出さない あ・か・さ・た・な――世界にたった一つのコミュニケーション』,生活書院,256p. ISBN-10:490369092X ISBN-13:978-4903690926 1800円+税 [amazon][kinokuniya] ※
 *勤め先の大学院にやってきた、かつて心肺停止となり、脳死と判断され、身体障害なんでもありの、1981年生まれの著者の「自伝」。現在は大学院生兼事業所経営。
◆新田 勲 20120815 『愛雪――ある全身性重度障害者のいのちの物語』,第三書館,上:448p. ISBN-10: 480741206X ISBN-13: 978-4807412068 1800+ [amazon][kinokuniya] ※ 下:352p. ISBN-10: 4807412078 ISBN-13: 978-4807412075 1200+ [amazon][kinokuniya] ※ d00h.d00p.i051970.


■立岩関係ということで

◆立命館大学生存学研究センター 編 2009/02/25 『生存学』1,生活書院,414p. ISBN-10: 4903690350 ISBN-13: 978-4903690353 2310 [amazon][kinokuniya] ※
◆立命館大学生存学研究センター 編 2010/03/20 『生存学』2,生活書院,416p. ISBN-10:4903690512  ISBN-13:978-4-903690-51-3  2200+ [amazon][kinokuniya] ※
876666666666666666666666666666666666666◆立命館大学生存学研究センター 編 20110325 『生存学』3,生活書院,272p. ISBN-10: 4903690725 ISBN-13: 9784903690728 2200+110 [amazon][kinokuniya] ※
◆立命館大学生存学研究センター 編 20110525 『生存学』4,生活書院,251p. ISBN-10: 4903690768 ISBN-13: 9784903690766 2200+110 [amazon][kinokuniya] ※
◆立命館大学生存学研究センター 編 20120320 『生存学』.5,生活書院,288p. ISBN-10: 4903690911 ISBN-13: 978-4903690919 2200+110 [amazon][kinokuniya] ※ n08 sz

■共著→立岩真也・著書/共著書/編書

■監訳

◆Pogge, Thomas W. 2008 World Poverty and Human Rights: Cosmopolitan Responsibilities and Reforms, second expanded edition, Cambridge, Polity Press.=20100325 立岩真也監訳/安部彰・池田浩章・石田知恵・岩間優希・齊藤拓・原佑介・的場和子・村上慎司 訳,『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか――世界的貧困と人権』,生活書院,423p ISBN-10: 4903690520 ISBN-13: 9784903690520 3000 [amazon][kinokuniya] ※

■絶版・品切

◇八木下 浩一 19800125 『街に生きる――ある脳性マヒ者の半生』,現代書館,210p. ISBN-10: 4768433340 ISBN-13: 978-4768433348 1300 [amazon][kinokuniya] ※
◇吉田 おさみ 198101 『”狂気”からの反撃――精神医療解体運動への視点』,新泉社,276p. ISBN: 4787780085 1575 [品切] [amazon] m.
◇八木下 浩一 19811025  『障害者殺しの現在』,JCA出版,231p. ISBN-10: 9831305434 1500 [kinokuniya] 神奈川A27-212

 
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■twitter→紀伊國屋書店様
◆2012/08/30

 紹介していただきたいへんありがとうございます。「できますれば」1冊あげさせている新田勲氏の新刊 http://www.arsvi.com/w/ni02.htm もお願いできればと。本来最初から入れるべきだったのですが、私のところにも昨日着いたものですから。

UP:20120730 REV:20120806, 26, 0909
立岩 真也
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