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病・障害を知ること語ること――その歴史の総括と考察

立命館大学2011年度研究推進プログラム(基盤研究)申請調書 文責:立岩 真也 2011


 *2011/08/02採択通知

研究課題 病・障害を知ること語ること――その歴史の総括と考察

2011年度 研究推進プログラム(基盤研究) 申請調書
2011年6月24日 副学長(研究担当)殿

研究代表者 所属機関・職名:先端総合学術研究科・立岩真也
氏名: 立岩 真也(印)(教職員番号: 0200087) 年齢(2011年4月1日現在)50

研究課題 病・障害を知ること語ること――その歴史の総括と考察

研究分野及びキーワード(5点以内)<研究分野:社会学> (知ること)(告知)(病・障害の表象)(裁判と認定) (現代史)

希望する研究経費 A100万円

研究メンバー
研究代表者 立岩 真也(大学院・先端総合学術研究科・教授)
研究分担者 […]

T.研究目的
本欄には、研究の全体構想及びその中での本研究の具体的な目的について、特に次の点について焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください。
@研究の学術的背景(本研究に関連する国内・国外の研究動向及び位置づけ、応募者のこれまでの研究成果を踏まえ着想に至った経緯、これまでの研究成果を発展させる場合にはその内容等)
A研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか
B当該分野における本研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

@研究の学術的背景
 病や障害を見出し、その名を人々に付与(し医療他の実践の対象と)することの歴史を辿り、その理論的な含意を検討する。それは例えば社会学では、「医療化」と呼ばれ、その営みを技術・専門家の生活世界の浸食と捉えられることがあるが、それほど単純ではない。名前・診断を求めること避けることの両方に、同じ当人にとって積極的な少なくともやむを得ぬ事情があり、同時に負荷がある。この視点を明示した研究はこれまであまりなされていない。例えば「発達障害」に括られる種々の名を得ることの本人たちの肯定と同時に存在する懸念について、また公害病、薬害、過労死・過労自殺を巡る原因究明や判定を巡る過去と現在について、確実にあるいはある確率での罹患を予め知ってしまうことの是非を巡って、事実を辿り、考察する意義がある。

A研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか
 @に記した事実・議論を収集・整理し、文字化し考察する。そして本研究は、社会学にある「範疇化」「医療化」「専門家支配」といった言葉に、この国におけるその内実を与えるものであり、同時に、それらの言葉で何がどこまで言えるのかを吟味し、確定する作業でもある。また、障害者運動・障害学の知見も踏まえつつ、そこにあった「障害者は病人ではない」といった主張をどう捉えるのか、「社会モデル」という標語をどの水準で捉えるのか、これらを考察し確認する作業でもある。

B当該分野における本研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
 私たちのこれまでの調査の期間中に亡くなられた方は既に多い。そして多くの人たちが語ろうとしているが、自らそれを文字にして公けにできる人は少ない。この研究は今しかできない。そしてAに記した理論的な貢献も期待される。例えば、公害や労災を巡る責任追及や補償を巡り、被害の有無や軽重を巡って原因や事実認定が争われざるをえないことがある。それは必須のことだったとしても、大きな負荷がもたらされる。例えば病や障害の悲惨を語らざるをえなくなる。他の可能性はないのか。それを考えるためにも、水俣病、薬害エイズ、C型肝炎等を巡って起こったことを調べ記述する必要がある。

U.研究計画・方法
 本欄には、研究目的を達成するための具体的な研究計画・方法について、焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください。

 例えば「先天性四肢障害児父母の会」(1975〜)は、環境汚染が様々に問題にされていたその活動の初期、環境要因を疑い、当初「原因究明」を訴える活動をする。ここでは当然その障害をなくすことが目指された。だが現に障害があって暮らしている子どもがいる時、障害を否定的に捉えてよいのか。それを考えていくことになる。そうしてそうした議論はその時が初めてではなかった。水俣病を巡る病・障害の表象を巡る議論の推移を追う。具体的にはユージン・スミスによって撮影されたが後にその写真集から外されることになる胎児性水俣病の子(とその母親)の写真を巡る経緯を追う(写真家の未亡人が京都在住)。また、遺伝性の部分を含む筋ジストロフィーについて、1970年代、そのことも社会に知らしめるべきだという主張とそれに慎重な主張が対立し、それは組織の分裂も引き起こした。その後には遺伝子診断を巡る議論もなされる。現在は入手困難な出版物や石川左門(1937〜)他への聞き取り調査からこれらの軌跡を辿る。
 他方、その名(と対処法等)を得ることが本人たちに肯定的に受け止められることがある。さらに同時に、名付け、医療の対象とすることの危うさもまた――ときに医療者やカウンセリングに従事する人たちの一部自らから――指摘される。「(高機能)自閉症」「アスペルガー症候群」についてそうしたことが起こった。本人たちがその名を得て、自ら書いた本が相次いで出版され、それを読んだ人たちがまた自己規定を得るといった連鎖が、この十年ほどの間に起こっている。既収集の資料をさらに充実させ、言論を整理し、知ることが有効で有意義であることを認めつつ、ことさらにそれを追究・追及せずにすむ社会の可能性を探る。

V.本プログラムを契機とする研究活動の展開・方向性
 本プログラムは、研究を発展させていくためのスタートアップ資金として位置づけています。次の点について焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください。
@今後、科研費などの学外研究費に申請し、どのように研究を発展させようとしているのか
A本研究終了後、どういう形式・内容で研究成果を発信し、どのように学術的な評価を得ようとしているのか
Bその他、研究活動の展開・方向性に関する点(Bは該当がない場合、記入は不要です)
(字の大きさは10.5ポイント。様式の改変・追加は不可とする)
@今後、科研費などの学外研究費に申請し、どのように研究を発展させようとしているのか

 2011年度でグローバルCOEは終了することもあり、生存学研究センターの研究活動を維持・発展させていくためにも学外研究費の獲得が必要である。本プログラムの成果をふまえ、その継続を研究全体の一部として、科研費Aに申請する。その全体はひとまず以下の予定。T:名付け、表わし、因果を問うことを巡り起こってきたこと。U:なおしたり補ったりする技術・技法の経緯、その正負の歴史、是非を巡る議論。V:社会運動の内部対立を含む経緯、そこに現れた主張・思想。W:運動と時に独立に、後に幾らか関わりをもって遂行されてきた政策の具体像・全体像。X:政策や運動と連動し、概ね肯定的に語られ、時に主導権に関わる攻防もあり、様々な形で提供されて/されないできたケアに関わる言説・現実とそのもとでの生活の変容と現在。(ただ2011年度類似の構成の計画で通っていない。私たちとしては十分に実現可能でありまた連続性・整合性のあるものと考えているが、より限定的な内容のものとて再提出した方が得策かもしれないとも考えている。)
 本プログラムはTの研究の準備として位置づけられるものであり、2011年度内に、その成果を公刊することは科研費の獲得に有利に作用すると考える。

A本研究終了後、どういう形式・内容で研究成果を発信し、どのように学術的な評価を得ようとしているのか

 この主題については、各国に共通する部分と固有の部分とがあり、国際的に発信することによって、その差異と共通性について互いに知り、検討し議論する意義がある。生存学研究センターのオンライン英語雑誌『Art Vivendi Journal』を一つの媒体として成果を公表する。また立岩はこれまで執筆してきた文章も用い、みすず書房から単著を刊行する――『分かること逃れること――身体の現代・1』(仮題)。また立岩と[…]は青土社から共著書を刊行する――『ケア労働――とくに評価し支払うことについて』(仮題)。[…]は障害学の国際的な雑誌Disability & Societyに英語論文を投稿する。

Bその他、研究活動の展開・方向性に関する点(Bは該当がない場合、記入は不要です)

W.研究経費執行計画
[…]

X.これまでに受けた研究費とその成果等
[…]

 cf.
応募・2011×


UP:20110802 REV:
歴史  ◇立岩 真也 
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