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創刊にあたって(草稿)

立岩 真也 2011
Ars Vivendi Journal 1


http://www.ritsumei-arsvi.org/contents/read/id/24
http://www.ritsumei-arsvi.org/uploads/contents/23/2011AVJ1_Foreword_Tateiwa.pdf

 文部科学省から選定され資金援助を受けてきた2007年からのプログラム「立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点――障老病異と共に暮らす世界の創造」は2011年で終了するが、私たちは大学の支援を「生存学研究センター」の活動を今後も継続していく。(その活動内容等についてはウェブサイトをご覧いただきたい。また英語・韓国語のメールマガジンによってもその活動をお知らせしている。)
 この雑誌は、その私たちが、主に英語による私たちからの発信を意図して刊行するものである。その構想は以前よりあったのだが、どのような形で発行するのか等の検討に思いのほか時間を要した。基本的に不定期刊のオンライン・ジャーナルとし、まずは、一つ、試行版としてこの創刊号を発刊することにした。内容の充実はこれからの課題であるが、私たちには皆さんにお伝えしたいことが多くある。必ず実現していこうと考えている。
 これまで私たちは世界の人々の研究からおおいに恩恵を被りつつ、私たちの側からの発信を怠ってきた。それには幾つかの理由があるのだが、その一つは、日本国内ではそのコンテクストが了解された上で書かれ刊行されたきたものをそのまま別言語にしても、その含意が伝わりにくいこと、そして、国内に一定の「市場」が存在するため、日本人のために書く仕事に私たちが追われ、それを国外のみなさんに読んでいただけるものにする労力を一人ひとりが割くことができなかったことによる。個人の努力に依るのではその状態を変えるのは難しい。そこで私たちは、組織としてこの作業に対応することによって、そして国内・国外の研究者の方々に協力をお願いし、この状態を変えていこうとする。
 それでも難しいところはあるだろう。例えば、Bioehicsの(主流の)の発想と、さらに言えば――それらがたいへん多様であることも承知しつつ、しかし――近代・西欧的な思想の根幹にあるものと、基本的なところで別のものの考え方・感じ方もこの社会にはある。そこから発する人々の主張があり、それを受けた学的な営為がある。それをうまく伝えるのは、そして理解してもらうのは容易なことでないかもしれない。だが、だからこそ、これからの私たちの発信の試みに意義があるとも感じている。この始まったばかりの挑戦を、できる限り持続し、発展させていこうと考えている。これから、どうぞよろしくお願いいたします。


UP:20110531 REV:20110827
立岩 真也 
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