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指定発言

立岩真也 2011
障害学会第7回大会特別講演+シンポジウム「障害学と障害者政策――イギリスと日本の対話」の記録
『障害学研究』7掲載


  立岩です。3分いただいてますが、2分でなんとかやってみたいと思います。バーンズさんシェルダンさんには昨日まで私たちの大学院で4日間集中講義をしていただきました。ありがとうございました。そのお礼をこの場でもさせていただきます。
  今回このたびのバーンズさんのお話は極めて明快であり、より詳しく聞きたいことはありますけれども、なにより時間がありません。また堀さん横須賀さんもいくつか質問もしてくださいました。また講義で私自身いろいろお話を伺うことができました。そこで私はむしろ東さんのお話にあった部分について、そしてむしろこの会場におられる会員の方々に向けて短い話をし、せっかくゲストとして来ていただいた東さんに時間をいくらかでもさしあげたいと思います。
  イギリスの場合、運動家でもあり研究家でもあった人たちが障害学を立ち上げました。日本の場合はいささか事情が異なります。説明は省きますけれども、運動が先行しました。その運動で言われてきたことは、社会モデルの主張と全く共通するものであったと私は思います。そしてそれは日本に限りません。それは障害者運動が障害者の運動であり、社会運動として存在する場合の必然のようなものだと思います。それと、東さんおっしゃった「社会全般を見たときにそれはなかなか理解をされがたい」という事態が同時に存在しているということではないかと思います。この事情も日本とイギリスの場合は同じではあるんです。そのこと自体には仕方のないところもある。それは、障害学そして障害者運動の主張のかなり基本的なところに、この社会の基本的なありように真っ向から異議を申し立てざるをえない部分があるからです。しかしそうでありながら、その社会から現実に取るものを取って来なければならない。そこに障害者運動・障害学の困難も、また面白さもあるだろうと思っています。
  そして、この学会、障害学の創設等にかかわってきた人たちの多くは、堀さん自身もそうですけれども、障害者の運動に影響を受け、また運動に直接・間接に関わってきて、その歴史を知ってきた、経験してきた人たちです。ただそうしたことを知らない方々が、この学会の会員でもあってもとくに新しい会員の中には多くおられるように思います。日本の研究者だから日本のことは知っているかというとそうでもないのです。それについて私たちにはいくらかの責任があると思っています。今まで何がなされてきたのか、考えられてきたのかをお知らせする、そのための私個人も幾らか努力したいと思います。また国外の人にも知っていただきたいと思います。そこで、我々のウェブサイトに日本語英語韓国語等で情報を提供していきたいと思います。
  次に、今申し上げたこと、困難な中で現実を構想し作っていくことが出発点であったということ関わり、私は東さんのおっしゃることにたいへん共感するところがあります。すなわち政策に関わる、あるいは政策につながる研究、研究者が少ないということです。もちろんこの会場にも岡部耕典さん小川喜道さん他の方々はおられる。しかし研究者の数も研究の数も絶対的に少ない。2005年のこの大会のシンポジウムでも私はこのことを申し上げましたけれども、依然としてその状況は変わっていないと思います。
  それには、例えば社会学の場合、イギリスでは社会学と社会政策学はそもそもかなり密接につながっているのに対し、日本の社会学は少なくともここ数十年そういった部分の研究・議論を避けぎみであったこと、避けて別のことを語ることが流行であるかのようであったことも関係するかもしれません。ともかく、政策に関わる研究が我々の中で少ない、それは非常によくない状況であるということ、そのことは指摘しておきたいし、その方に関心を向けていただきたいと願っています。ただもちろん研究にはお金も要ります。そして個人でできることは限られています。また、運動家も含む、研究者も含む、政治家に含む場をどう構築していくのか。そうした事々も含め、研究をしそれを社会に還元していく仕組みをどのように構築していくのか。それが一つの大きな我々の課題であり、みなさんにも考えていただきたい。以上で私の発言を終わります。


UP:20110130 REV:20110501
障害学会第7回大会  ◇障害学  ◇障害学会  ◇立岩 真也 
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