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本出ました+余談

立岩 真也 2010/08/10
http://www.rironsha.co.jp/special/ningen/index.html


『人間の条件――そんなものない』表紙  *この回は、そのうち連載の続きが本になることがあったとして、収録されることもないと思いますし、リンクの確認のためにもということで、ここにも掲載させていただきます。なお以下に出てくるCDや本、ここのリンクを介してアマゾンから買うと寄付されます→説明

■立岩 真也 2010/08/16 『人間の条件――そんなものない』,理論社,りみちパン!セ,392p. ISBN-10: 4652078552 ISBN-13: 978-4652078556 1500+ [amazon][kinokuniya] ※

 この連載がもとになった本が1つできた。結局『人間の条件――そんなものない』という題になった。同じ題名の有名な本がすくなくとも2つはある――ということの以前に、この題はないだろうと思いもしたのだが、まあいいやということになった――が、関係はないです。8月16日発行ということになった。編集部の方からもいろいろと提案をいただいて、以前の(古いものでは2000年の)対談やらインタビューの再録などの「おまけ」がついたりして、結果392頁というページ数になったのだが、薄い紙を使ってもらって、そんなに厚い感じはしないと思います。100%ORANGEの及川賢治さんのイラストだけ見るとかもありでしょう。で1500円(+消費税)。お買い得、です。
 そして連載は続けさせていただくということになり、この本には書けなかったこと、連載に書いたけれど本に載せなかった部分を書きなおすなり書き足すなりして次のものを、と、今のところ、思っている。ただ、どこから再開しようか、ちょっとまだ見当がついていないところもあり、今回は、この本のことに関わって、どうでもいいことを、つれづれなるままに、ということにさせてもらう。もらいます。
 まず、私たちがやっているウェブサイトにもこの本の関係のページを置いた。今のところ目次とかだけだが、そのうち中身を増やしていこうと思う。ときどき見てくれたらありがたいかなと。
 さて、その本にそんな難しいことは書いてないと思う。でも、それでも、というところがあるのかもしれない。あるのだろうと思う。ただ私にはそういう――なにがどうわからないのか、わかりにくいのかという――ところの見当がつかないところがある。なので、「ここがどうなの?」、とか、「あそこはどうだ」、とか言って(書いて)くだされば、なにか、応えようとしてみようと思う。メール出せるようになっているので、そちらを使ってみてください。

 さて、「本旨」とは関係ない話を。私がものを考えて書いてきた、というか、そういう気分になったり、その力を得たりしてきたそのもとは、「学問」から来てるんではないというようなことをその本に書いて、そこですこしだけ音楽の話をしているところがある。夏休みだから――といってもこの時期、暑いのは十分すぎるぐらい暑いのはそれとして、当方はそんな感じではないのだが――ちょっとその話を、という以下が長くなる。
 1967年にあった「モンタレー・ポップ・フェスティバル」のことをほんのすこし書いて、DVDを買ったけど再生されなかったと書いた(97〜98頁)。が、それはたんに私のPCのドライブが壊れていたからだということがわかった。なおったらちゃんと再生された。それは3枚組みで、1枚がドキュメンタリー映画で、私がテレビで見たというのはこれのはず(ちなみに最初に買って「これだけだったっけ」と思ったCDの収録曲とこのDVDの収録曲はすこし違う。)私はたいがいのことは忘れるのだけれども、それは細部もかなり覚えていた。最後に出てくるのがラヴィ・シャンカール(達)のシタール(他)の演奏なのだが、座っているラヴィ・シャンカールの足の指とか。空の真上を飛んでいく飛行機だとか。朝、まだ客のいない客席(野外)の椅子を(勝手に)拭いていく人だとか、カントリー・ジョーの変な格好とか。ただ、当時ヒッピーなどと言われたようないでたちをしている客たち――といってもまあけっこう普通の人たちが多い――を映している部分が多くて、そんな場面がそんなに多いという記憶はなかった。それはあまり印象に残らなかったようだ。それから43年経っているのだから、生きている人たちは70歳とかになっていることになる。
 で、あと2枚のうち1枚は映画では使われてない曲をいくつか並べたもの(ジャニス・ジョプリンのは+1曲で、結局、「これだけ」感は残った。2曲しかやらなかったのだろうか。解説書?見てもよくわからない。が、ウィキペディアだとやはり2曲しかやらなかったようだ。)もう1枚は、ジミ・ヘンドリックスとオーティス・レディングの演奏を集めたものでこれも映画になったもの。オーティス・レディングのことは、本では清志郎の「親戚みたい」などと書いたのだが(98頁)、むろん、清志郎がその甥のような存在であるわけで、清志郎の「あいしあっているかあい?」はこの人の「We all love each other, right ?」から来ているのだろうと思う。やはりこのコンサートで名をあげ、そして超偉いということに決まっているジミ・ヘンは、他にもっとよい演奏もあると思った。たいがい人が仰天するのは、1969年のこちらも超有名な「ウッドストックコンサート」――映画になってます――でのアメリカ国歌の演奏、あとソロが普通にかっこよくて聞きやすい、という言い方がよいのか、ボブ・ディランの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」とかがよいかと。(ユーチューブだとこれとか、あとライブでのもいくつか。さっき、猫が間違ってキーボードを踏んでかかってしまった「リトル・ウィング」のスタジオ版など聞くと、まずはスタジオ録音のを聞くと、真面目で正統で上手なギタリストであることがよくわかる。)
 で、「ボール・アンド・チェイン」のジャニス・ジョプリン。「ウィキペディア」――についてなんのかんの言う人もいるようだが、多くの場合、立派なものだと思う――によれば1943年生まれ。1970年没。コカインが致死量を超えたためだということだ。
 私は1枚だけベストアルバムのLPをもっていて、他は友人から借りたりして聞いた。1枚通しで聞いたりすると疲れるので、そんなことはそうしないのだが、そこに「サマータイム」がはいっていて、それは、私がこの世にたくさんある名曲・名演奏の中で最も好きな何曲かの1曲だ。1968年のフィルモアでのライブを収録した『チープスリル』というアルバムに入っている。ガーシュインの有名な曲で、ジャズの歌手なんかがたくさん歌っているが、ジャニスのはもとの曲とまったく違って聞こえる。歌詞はそのとおりに歌っていると思うのだが、歌われるのはまったく別の世界だ。
 そのLPを買ったのと、番組とどちらが先だったのか。検索してみたら、「Young Music Show 放送リスト」というものがあった。はいはい、見てました、いっしょうけんめい。「ヤング・ミュージック・ショー」。NHK総合。1971年から始まったというのは知らなかった。1981年に終わったというのも知らなかった(私はその時には大学生で、下宿にテレビはなかった)。で、「モンタレー・ポップ・フェスティバル」は、1975年8月30日放映、1976年9月4日に再放送とある。中学3年か高校1年か。とすると見てからLP買ったのかなと。
 彼女は、このコンサートのあった1967年に最初のレコードを出しているが、それは売れなかったのだそうだ。で、このコンサートの「ボール・アンド・チェイン」で有名になった、ということのようだ。この時24歳というところか。すでに酒と薬でということもあったのか、肌は荒れていて、おばあさんのようにも見える。子どものようにも見える。服も、その頃そういうところで流行っていた「サイケ」なやつではなくて、解説書によると「gold-knit pants suit with no bra underneath」とある、ぼおっとした色の,薄い長めのニットの上と、ちょっとキラキラしたものは入っているパンツで、その声と、跳ねて、というよりはかかとをサンダルから浮かせ、小さく膝を曲げて、そして膝を伸ばして、足を真下に蹴るようにして、歌う姿は、しんに心揺すぶられるものがある。で、歌い終わると、やった、うまく歌えた、ってかんじで、彼女は舞台袖の方にうれしそうに走っていく――このシーンは覚えてなかった。
 そして他方、コンサートのだいたいにおいて、その頃にはまだわりとおとなしかった観客たちは、なにか暢気なもので、あるいはなにかかっこよくない、どうしたもんやらみたいな感じの顔をしている。しかし、私(たち)がそこにいたとしても――まあそこに出てくるのはほとんどすべて白い人なのだが――そんなものだろう。ばか顔してそこにきょとんといるというぐらいのものだ。では、その後の、観客総立ち的コンサート的に盛り上がればそれがよいのか。たぶんそういうことでもないのだろう。どうしたって、せいぜい客は客かなと思ったりする。ただ、最後のラヴィ・シャンカールはえらく受けていた。そして、ジャニスの歌い終わった後も、さすがに客は、感じいり、まいっていた。(このDVDの1枚目になった映画、音楽を記録した映画としては出来はあまりよろしくない、と思う。客を映し過ぎだ。「ボール・アンド・チェイン」の演奏中も、サングラスをしたなんだかなあという同じ女性が2度も出てくる。)
 で、また「Janis Joplin Summertime」でユーチューブを見る。すると、1969年のストックホルムでのライブ、同じ年のアムステルダムでのライブ、同じ年のフランクフルトでのライブ、などを見る・聞くことができる。ただ、結局、『チープスリル』に入っている「サマータイム」が一番よいように思った。短い間に消耗したのもあるのかもしれない。こういうふうに歌う人だと、同じ歌を同じように歌えなかったりする。そしてジミ・ヘンドリックスは、1972年生まれで、よく知られていることだがジャニスと同じ一九七〇年に死んでいる。やはり異常に詳しいウィキペディアの記事によると、こないだのマイケル・ジャクソンの一件のときもそうだったが、死んだ事情についても諸説あるらしいが、彼の場合は睡眠薬と酒をいっしょに大量にということであったらしい。
 薬物が演奏・歌を高めるといったことは明らかにあるはずだ。そんな演奏はにせものだとか言っても仕方がない。薬が作用してすごい演奏になることは実際にある。本人たちも死にたくはなかっただろうし、死なないように、死なない程度にやってもらいたかったとは思うし、実際そんなぐあいにやって来れた人たちもけっこういる。ただいつもそうそううまくいくものでもない。まともに演奏できなくなってしまうこともあるし、死んでしまうこともある。チャーリー・パーカー(34歳で没)だってもっと長生きしてほしかったのだ。「夭折の天才」という言い方を私たちはよくする。してしまう。こういうことをどう考えてよいのか、わからない。
 この「よりみちパン!セ」のシリーズにはこのところ本の最後のところに「おすすめメディア」というコーナーがあって、著者が、おすすめをいくつか紹介するという趣向のものである。最初は無難に、シリーズの何冊かを選ぼうと思ったのだが、結局、趣味を通してみることにした。中学校から高校の時に読んだり聞いたりしたものから4つ。そこに付した(ごく短い)コメントは略して(本のほうを見てください)、『谷川俊太郎詩集』(1965、思潮社、「続」は1979、思潮社)/The Rollong Stones のいろいろの中の幾つか/Eric Dolphy at the Five Spot, Volume 2(録音1961、CDあり)/武満徹「ガーデンレイン」(録音1974、LP『ミニアチュール第5集』、題名の違う中身の同じCDは廃盤だがで探せなくはない)。そして加えて、大学生になってから見た『1900年』(1976、ベルナルド・ベルトルッチ監督)。
 ストーンズ(の今のメンバーたち)は、意外にというか、うまくやってというか、生きているし、谷川さんもご健在でいらっしゃる。武満さんは65歳で亡くなられた。最後の本が『サイレント・ガーデン――滞院報告・キャロティンの祭典』といって、入院していた時に書いた手書きの料理レシピ51品が収められている。エリック・ドルフィーは1928年生まれ、1964年、36歳で亡くなった。糖尿病による心臓発作によってだという。『Making Eric Dolphy's Complete Discography』によると、彼が録音などしているのはほぼ1960年から1964年の4年間に限られる。
 今度の本読んでもらってもわかるように、私は「細く長く」派で、それでよいと思っている。そのことは、私の仕事がどうであるかということとは基本関係ないのだが、ただ私のような仕事をする人間の場合、かなりできのよい人でなければ、一定の仕事をするのには手間がかかるということもある。そしてまあしらふでないと、ものを書いていくのは難しい。
 他方に、すごく短い時間を「駆け抜けた」人がいる。実際には、あの時、げろを吐けない程飲まなければ死ぬことはなかったのに、とか、突然売れ出しておかしなことになって、とかそんなことでたいがいのことは起こっている。あの何年しか生きてなかったから「伝説上の人物」に祀り上げられてしまって、ということもある。ただ、そうやって冷静になった上でも、命を削って、みたいなこともあることがなくはないのだろうと。結局、よくはわからない。ただそういうものを聞いて、「私(たち)は正しく、勝利しており、肯定されてよく」、「おおよそどうのこうの世間が言われていることはどうでもよい」(98頁)と思ったのだった。そしてその上で、「そのずっと後にいて、退屈な、でも必要だと思う仕事をする」(14頁)、そう思って仕事をしてきて、この本も書かせてもらった。というわけで、今回の本は、こういう話とか、学生の頃になにをいろいろと血迷っていただとか、恥ずかしめの話がいくらか混じってしまっている。ただそういうこともあってよいように思って、書いてしまった。
 DVDが再生できなかったのは、米国製のそれが規格に合わなかったとかではなく、私の機械のせいでしたということだけお伝えしようと思ったら、こんなことになってしまった。次回から、また真面目に、と思います。では。

■Janis Joplin: Summertime etc.

◆Summertime (Cheap Thrills Recording Session)
 http://www.youtube.com/watch?v=aTFF-BaT0MM&feature=related
◆Janis Joplin - Summertime lyrics  http://www.youtube.com/watch?v=MEy1B1NtzD8&NR=1
 「From album "Cheap Thrills" released in Septemeber 1968」
◆1968/11/02
 http://www.youtube.com/watch?v=8npK1q6LY9Q
 「One of the last performances Janis Joplin performed with Big Brother and the Holding Company, on the Saturday night variety TV show "The Hollywood Palace" (11/2/68)」
◆Janis Joplin Summertime (SPECIAL GERMANY).avi  [1969 Frankfurt]
 http://www.youtube.com/watch?v=m3PWf1IJcUA&feature=related
◆Summertime (Live Grona Lund 1969)
 http://www.youtube.com/watch?v=mzNEgcqWDG4&a=GxdCwVVULXdC1_uK3KV1zCSzPVvGV8Rv&playnext=1
◆Janis Joplin - Summertime [Concertgebouw, Amsterdam 4 april 1969]
 http://www.youtube.com/watch?v=_PVOMzouNWY&NR=1
 「Janis Joplin Summertime Concertgebouw, Amsterdam 4 april 1969」
◆Janis Joplin - summertime Live in Amsterdam
 http://www.youtube.com/watch?v=x1DmwzPpZqs&feature=related
◆Janis Joplin - summertime
 http://www.youtube.com/watch?v=A27FF2T2z2k&feature=related
◆Janis Joplin-Summertime (live)
 http://www.youtube.com/watch?v=-7Fjy5Is0Tw&feature=related

◆1967 ball and chain Monterey
 http://www.youtube.com/watch?v=OmRaTcLDJWU&NR=1&feature=fvwp
 *Summertime とあるのは誤り

◆Little Girl Blue (This is Tom Jones, 1969)
 http://www.youtube.com/watch?v=FVpDOIPx_sY&a=GxdCwVVULXdC1_uK3KV1zCSzPVvGV8Rv&playnext=2
 「Queen Janis sings an amazing version of this song, way back in 1969. I put this video up because it's rarely shown elsewhere, it's such a vulnerable performance and unlike anything else she ever recorded. Enjoy.」

◆Janis Joplin - Cry Baby (live in toronto 1970)
 http://www.youtube.com/watch?v=JjD4eWEUgMM&feature=related

◆Summertime - Janis Joplin
http://www.youtube.com/watch?v=zrOA7dLyZlM&feature=related
 「Tributo a Janis Joplin en su cumpleanos 65, Propuesta audiovisual presentada en Diva Nicotina 26 de enero 2008」

■Jimi Hendrix

◆Jimi Hendrix - All Along the Watchtower
 http://www.youtube.com/watch?v=4AuxJH2Mj30&feature=related
◆All Along The Watchtower-Stonefree Experience [Live] ◎
 http://www.youtube.com/watch?v=K38uTI0EHCI&feature=related
◆Jimi Hendrix - All Along The Watchtower (Live)
 http://www.youtube.com/watch?v=mZTPsrcfQSE&feature=related
◆Jimi Hendrix - All Along The Watchtower Live at Atlanta 1970
 http://www.youtube.com/watch?v=l6Z7LR8Z9_o&feature=related
◆All Along The Watch Tower, Jimi Hendrix [Live]
 http://www.youtube.com/watch?v=EEe0xwSEEB0&feature=related
◆Jimi Hendrix - Watchtower [Live]
 http://www.youtube.com/watch?v=G2Sn6AoQSWc&feature=fvw


UP:20100806 REV:20100807, 25, 0913
病者障害者運動史研究  ◇身体の現代:歴史  ◇『生存学の企て』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa
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