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留保し引き継ぐ

多田富雄の二〇〇六年から

立岩 真也 2010/07/01 『現代思想』38-9(2010-7):


 ※『現代思想』2010年7月号の多田富雄(追悼)特集に依頼された原稿のために作成を始めたもの(2010.6.3〜)

 ※「留保し引き継ぐ」のために作られたこのファイルは以下の電子書籍に収録し、更新もそこで行なわれています。

2017/07/26 立岩真也編『リハビリテーション/批判――多田富雄/上田敏/…』Kyoto Books

立岩真也編『リハビリテーション/批判――多田富雄/上田敏/…』表紙
表紙作成:近藤勇人


立岩 真也 2010/07/01 「留保し引き継ぐ――多田富雄の二〇〇六年から」,『現代思想』38-9(2010-7):196-212 (特集:免疫の意味論――多田富雄の仕事,青土社,ISBN-10: 4791712153 ISBN-13: 978-4791712151 [amazon][kinokuniya] ※
 本題の前に・1/本題の前に・2/二〇〇一〜二〇〇六/別のことも言う本人たちもいること/
 同業者批判/鶴見・上田/国会
表紙をクリック→amazonで購入できます
『現代思想』38-9(2010-7)   201007 特集:免疫の意味論――多田富雄の仕事

◆立岩 真也 2010/08/01 「「社会モデル」・序――連載 57」,『現代思想』38-10(2010-8): 資料
◆立岩 真也 2010/09/01 「多田富雄さんのことから――唯の生の辺りに・5」,『月刊福祉』2010-9

多田富雄/◆上田 敏

1980's  1990's  2000  2001  2002  2003  2004  2005  2006  2007  2008  2009  2010
文献

◆「リハビリ診療報酬改定を考える会」
 http://www.craseed.net/

◆「厚労省の棄民政策(リハビリ関係の「質の評価」等と後期高齢者医療制度)を一挙に粉砕しよう」
 http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/

◆天田 城介 2008/05/01 「リハビリ・1」(世界の感受の只中で・13),『看護学雑誌』(Vol.72 No.05).**-**.医学書院
 http://www.josukeamada.com/bk/bs07-13.htm
◆田島 明子 2009/02/25 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

 
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 ■1970'

◆Union of the Physically Impaired Against Segregation 1975 Fundamental Priciples http://www.leeds.ac.jp/disability-studies/archiveuk/archframe.htm

 
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 ■1980'

DPI

 「一九八一年にスタートした障害者の国際組織である障害者インターナショナル(Disabled Person International)が障害者の立場からの独自のリハビリテーションの定義をおこなって<0030<おり、それが国連の「障害者の十年」の世界行動計画にもとり入れられていることを紹介しておきたい。それは「損傷を負った人に対して、身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることにより、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し、かつ時間を限定したプロセス」というものである。
 これは、リハビリテーション・インターナショナル(Rehabilitaion International; RI, 以前の国際障害者リハビリテーション協会で、代表的な障害者のための国際組織【「のための」に傍点】)の、「八〇年代憲章」のリハビリテーションの定義が次のようにのべていたのと比べると力点のおき方がかなり異なっている。すなわちRIの定義は「医学、社会、教育および職業的方法を組み合わせ、調整して用い、障害のある人の機能を最大限に高めること、および社会のなかでの統合を援助する過程である」というものである。
 八代栄太氏も指摘しているが(10)、RIの定義がたんに「機能を最大限に高める」としているのにたいして、DPIの定義では「最も適した機能水準の達成」と、「各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供する」との二点が含められている。すなわち主体が個々の障害者自身であること、および機能の向上は必ずしも常に最大限が望ましいのではなく、「最適な」ものであってよいという二つの点に違いがあるわけである。このような考え方の根底には機能の向上それ自体は人生における手段であって目的ではないという理念があると思われる。さらに「社会の中での統合の援助」という重要な項目がぬけていることについては、これはリハビリテーションのプロセスと密接不可分ではあるものの、社会の環境を改善し、構造を変革することによって実現しうるものとして、DPIとしては「機会の均等化」という概念を別個に新たに導入して、これをリハビリテーションと並び立つ概念として位置づけたものである。そしてこれとの<0031<関連においてリハビリテーションには「時間を限定したプロセス」【「時間を限定した」に傍点】)という規定が加えられたわけである。」(上田[1983:30-32]、「Disabled Person International」は「Disabled Peoples' International」)
*上田 敏 19830615 『リハビリテーションを考える――障害者の全人間的復権』,青木書店,障害者問題双書,327p. ISBN-10: 4250830187 ISBN-13: 978-4250830181 2000 [amazon][kinokuniya] r02. ※

◆上田 敏 19830615 『リハビリテーションを考える――障害者の全人間的復権』,青木書店,障害者問題双書,327p. ISBN-10: 4250830187 ISBN-13: 978-4250830181 2000 [amazon][kinokuniya] r02. ※

 
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 ■1990'

◆ヒューマンケア協会地域福祉計画策定委員会 1994/03/30 『ニード中心の社会政策――自立生活センターが提唱する福祉の構造改革』,ヒューマンケア協会,88p. 1000
 X 課題別の提案 …30
  7 医療/理療  …53

◆1995 鶴見 和子脳出血で左半身麻痺に
 (多田[200612→2007:111-112])

◆多田 富雄 19970225 『生命の意味論』,新潮社,243p. ISBN-10: 4104161012 ISBN-13: 978-4104161010 1890 [amazon][kinokuniya] ※

◆1997 鶴見 和子

◇「回生」 鶴見和子 多田・鶴見[2003:34-47]
 「一九九七年元旦に、日本のリハビリテーションのくさわけの上田敏先生から、速達をいただきました。「一度、診察してあげたい」と申し出てくださったのです。これは天の恵みでした。わたしはすぐにお電話をして、「ご指定の病院にうかがいます」と申し上げました。上田先生は、茨城県守谷町の会田記念病院をご指定くださいました。
 一月十五日に入院しました。」(鶴見[2003:35]*)
*多田 富雄・鶴見 和子 20030615 『邂逅』,藤原書店,231p. ASIN: 4894343401 2310 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

◇鶴見 和子・大川 弥生・上田 敏 199805 『回生を生きる――本当のリハビリテーションに出会って』,三輪書店,237p. ISBN-10: 4895900800 ISBN-13: 978-4895900805  [amazon][kinokuniya] ※ r02.
◇鶴見 和子・大川 弥生・上田 敏 20070801 『回生を生きる――本当のリハビリテーションに出会って 増補版』,三輪書店,319p. ISBN-10: 489590279X ISBN-13: 978-4895902793 2100 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

 序章 不思議なご縁――三十八年ぶりの出会い 鶴見 和子・上田 敏 17-28

 「上田 […]実は昨年(一九九六年)の末、三十数年ぶりに鶴見さんから突然『回生』という歌集を贈っていただきました。鶴見さんのような有名な方から本を贈っていただくというのは大変光栄なことだと思ったんたですが、しかし一体何の関係があるんだろうと思って読み出したら、ああ、脳卒中をなさったのかと。それでみんな私も知っている病院ですから、あの病院に入ったのか、この病院に行ったのかと。そのうちに、かなり後のほうですけれども、私の名前が突然出てきましてね、なんだこれが関係があるのか、それで私にまで贈っていただいたのかということがわかりました。
 鶴見 私『回生』という歌集を出しましたけれど、あれは全人間的な「回生」ではないんです。つまり命をとりまとめた、一度死んで生き返ったという、それだけのことなんです。私の全人間的な回生は今年が「回生元年」なんです。一九九五年の元旦に上田先生から速達をいただいたんです。先生が「一度診てあげたい」とおっしゃってくださった。もうこんなに素晴らしいことはなかったんです。それでご指定の病<0023<院に伺いますといって、入院させていただいて、それから歩けるようになったんです。
 人間は歩かなきゃ「人間」じゃないと思うんです註4)。この回生第一歩というのは、上田先生との再びの出会いで始まったんです。だから今年が「回生元年」で、歌集『回生』は「回生前期」なんですよ。」(鶴見・上田[1998→2007:23-24])

 「註4 「歩かなきゃ『人間』じゃない」というのは文字どおりにとれば問題発言である。歩けない人でも立派に人間であることはいうまでもない。ただ鶴見さんにとっては「本当のリハビリテーション」によって新しい人生が開けたこと全体の一つのシンボルとしての発言と理解したい。なお鶴見・上田「患者学のすすめ」藤原書店、六三−六六ページ参照。」(鶴見・上田[1998→2007:28])

◇鶴見 和子 19980815 『脳卒中で倒れてから――よく生き よく死ぬために』,婦人生活社,190p. ISBN-10: 4574701188 ISBN-13: 978-4574701181 1680 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

 「一九九七年の元旦、わたしは一通の速達を受け取りました。
 それは、日本のリハビリテーション医学の草分け、上田敏先生(帝京平成大学教授・国際リハビリテーション学会長)からのものでしたた。
 神奈川県のリハビリテーション病院にいたとき、わたしはリハビリテーションについてのいろいろな疑問を、しょっちゅう、理学療法士の先生たちにぶつけていました。
 元来、理屈っぽくできているので、なぜ、それをするのか、どういう意味があるのか、納得しなくてはいられないのでした。
 うるさい患者です。
 大学を出たばかりの若い作業療法士の先生が、では、この本を読んでみなさいと、貸してくださったのが上田先生の『リハビリテーションの思想』(医学書院)でした。  これが大変啓発的な本だったのです。<0020<
    わがこととひき比べつつ胸に落ちぬ
     上田敏の『リハビリテーションの思想』
 歌集『回生』に入れたので、上田先生の大学あてに一部贈呈させていただいておいたのです。
 「一度、ぜひ診察してさしあげたい」という速達です。びっくりしました。
 実はそのとき、わたしはさんざん考えました。というのは、車いすの生活で体も気持ちも一応安定していたからです。もう、これでいいのだけれど、ちょっと気持ちが退けていたかもしれません。でも、相手は、日本一のリハビリテーションの先生です。その先生がせっかくそう言ってくださるのなら、一度、ためしに診察していただこう。そういう気持ちで先生が指定なさった病院にへ出かけたのです。
 茨城県の守谷というところにある。会田記念病院という地域病院で、車で行くと、冬枯れの田んぼの真ん中にその姿をあらわしました。
 ここで、わたしは、本当に変われるのかな、期待半分、不安半分とはいったところでした。<0021<
 到着した日に、リハビリテーション室では、会田記念病院のリハビリテーション医の大川弥生先生(現在国立長寿医療研究センター・老人ケア研究部部長)が、待っていたくださいました。そしてウォーカーケインと、金属の両側支柱付き短下肢装具が持ち出されました。
 「これをつけて歩いてごらんなさい」
 わたしは、耳を疑いました。」(鶴見[1998:20-22])

◆鶴見 和子・大川 弥生・上田 敏 199805 『回生を生きる――本当のリハビリテーションに出会って』,三輪書店,237p. ISBN-10: 4895900800 ISBN-13: 978-4895900805  [amazon][kinokuniya] ※ r02.

 「1995年12月24日、社会学者・鶴見和子は脳内出血で倒れ、片麻痺となった。いくつかの病院を経て、最後はリハビリテーション専門病院で数か月の訓練を受けたが、歩くことはできなかった。入院中に詠んだ歌集『回生』が縁でリハビリテーション医・上田敏と38年ぶりに再会。1997年1月に会田記念病院に入院し、積極的リハビリテーション・プログラムによって杖をついて歩けるまでに回復。回生前期に受けたリハビリテーションから全人間的回生の花道に至る全プロセスを、社会学者と2人のリハビリテーション医が火花を散らして語り合ったありのままの記録を全公開。」(広告)*

杉野 昭博 20070620 『障害学――理論形成と射程』,東京大学出版会,294p. ISBN-10: 4130511270 ISBN-13: 978-4130511278 3990 [amazon][kinokuniya] ※ ds r02

 「医療やリハビリテーションの専門職の人たちのなかには、それこそいつも自分が心がけていることだし、専門職教育はそのようにあるべきだと言う人も多いだろう。しかし、そうした「良心的専門家」と利用者との違いは、前者がこれを「実現すべき目標」としてとらえているのに対して、後者はそれが達成される「制度的保障」を求めている点である。良心的専門家は、専門家1人1人がいかに最善を尽くすべきかは雄弁に語るが、一定水準のサービスを制度的に保障するシステムについてはとたんに口が重くなり、さらに専門家と利用者との間に存在する権力の不均衡についてはまったく鈍感になる13)。」
 「13) この点を象徴的に示しているのが鶴見和子・上田敏・大川弥生(1998)である。この本は、理想のリハビリテーション実践を示すものだが、はからずも、今日の日本における理学療法の実態がいかに理想とかけ離れているかを示している。もしも鶴見が有名人ではなくふつうの患者であったならば、上田や大川といった良心的医師に出会わなかったならば、鶴見の運命は悲惨なものだった。上田は鶴見が最初に経験したリハビリテーションは「古い」ものだとしているが、内反を放置したまま歩行訓練を継続させるという技術水準は、古いか新しいかといったことですまされる問題ではなく、鶴見が最初に受けたリハビリテーション・サービスが適切な水準にないことを示しているのではないだろうか。潜在的な利用者としての国民一般も含めて、利用者が期待しているのは、この本が示すような「素晴らしい専門家との幸運な出会い」ではなく、「安心して利用できる制度」の確立であり、水準の低い専門家や実践を完全に排除できるシステムではないだろうか。しかし、それについては良心的専門家たちは口をつぐむ。」(杉野[2007:111])

◆鶴見 和子 19980815 『脳卒中で倒れてから――よく生き よく死ぬために』,婦人生活社,190p. ISBN-10: 4574701188 ISBN-13: 978-4574701181 1680 [amazon][kinokuniya] ※ r02.


 
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 ■2000

立岩 真也 2000/03/01 「遠離・遭遇――介助について・1」(『現代思想』2000-03)より
 →『弱くある自由へ』第7章

 「利用者・消費者の側は、そんな片側に都合のよい架空のお話を受け入れるわけにはいかなかった。というか、そうしたものに対する危機感、というより実際身に降りかかる危機から、言うべきこと、行なうべきことを探し始めた。その一つが、拡大路線を警戒し、それに歯止めをかけようとすること、仕事を限界づけること、部分的なものにすることだった。例えばリハビリテーションについて、「提供する期間を限定したサービス」と規定するのはそういうことである。リハビリテーションを生業とする人たちがいつまでもその仕事を続けてしまうかもしれないことが警戒されたのである。なにをどれだけすればどこまでのことができるのか、あらかじめはっきりとはわからないこの領域ではこうしたことが起こりやすい。だから限定しようというのである。

 「私たちが拒絶するものは実行されている仕事の多くの不適切性、彼らの態度の不適切性、彼らが私たちを代表しようとすることの完全な不適切性です。私たちは専門家を必要とし、サービスを必要とし、リハビリテーションを必要とします。しかし、リハビリテーションは人生の非常に短い期間に私たちに起こる何かであると急いでつけ加えるでしょう。それは、決して障害者の生活における最も重要なものではありません。」(マイク・デュ・トワ(Mike du Toit)、コーリッジ(Coleridge)[1993=1999:123]に引用)★23

 必要なものを利用しつつ(それで何かよいことがあれば正当に評価し、ときに「感謝」し)、境界を定め、過剰なものを排し、介入してこない部分を確保しようとする。……
 こうした主張、動きのあったこと、あることがどれだけ知られているのだろうか。注意が払われてきただろうか。反論があればいくらでもすればよい。しかし知らずに、あるいは知らないことにして、なにかうるわしい信頼と共生の物語をただ物語り続けるのは、よくないことだと私は思う。」

「★23 インタビューに対して。マイク・デュ・トワは南アフリカの白人。事故で片麻痺。ソーシャルワーカーとして一九八一年にカナダのウィニペグで開催されたRI(Rehabilitation Internationa)の会議に参加するのだが、ここで障害者たちが、RIに対し障害者自身が理事会の五〇%を占めることを要求して受け入れられず、会議場を出て、独自に結成したDPI(Disabled Peoples' International)の誕生に立ち合う(Coleridge[1993=1999:72-73])。」
Coleridge, Peter 1993 Disablity, Liberation and Development, Oxfam GB.=1999 中西由起子訳,『アジア・アフリカの障害者とエンパワメント』,明石書店

◆2000/04 診療報酬改定で、特定入院料に「回復期リハビリテーション病棟入院料」が設けられる。「現在、急性期病院では在院日数の短縮化が推進されていますが、介護保険では在宅ケアサービス体制が整備されつつあり、この急性期治療と家庭復帰の中間に位置するのが「回復期リハビリテーション病棟」です。」(http://www.rehabili.jp/index2.htmlより)

 「2000年は、介護保険制度が開始された年だが、診療報酬を見ると、回復期リハビリテーション病棟(入院料)が新設された。回復期リハビリテーション病棟は医療法上の規定はないが、実態的には急性期と慢性期の中間の「亜急性期病床」の制度化といえる。回復期リハビリテーション病棟は急速に増加し、2007年7月には42107床に達している。この回復期リハビリテーション病床の新設は、リハビリテーション医師の石川誠が最初に提唱し、その後、1995年〜1996年に日本リハビリテーション病院・施設協会の粘り強いロビー活動によって実現したものである(二木[2008:236])」(田島[2009]*)
*田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

 
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 ■2001

◆2001/02/02 「回復期リハビリテーション病棟入院料」の制度は「新たな制度であることから、現場では一部混乱や戸惑いがあることも事実です。そこで「回復期リハビリテーション病棟入院料」を算定する病院が集まり、平成13年2月2日に「全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会」を設立いたしました。病棟運営の工夫、今後の展開等に関し研究会や研修会の開催や情報誌の発行等を通じて、より良い回復期リハビリテーション病棟を作り上げていきたいと考えております。」(http://www.rehabili.jp/index2.htmlより)

◆鶴見 和子 20010620 『歌集 回生』,藤原書店,113p. ISBN-10: 4894342391 ISBN-13: 978-4894342392 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

◆立岩 真也 2001/07/30 「なおすことについて」,野口裕二・大村英昭編『臨床社会学の実践』,有斐閣 pp.171-196

 
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 ■2002

◆2002

 2002年の改定について、二木[2004:198]は、「ゼロサム」改定と評価している。つまり、1990〜2000年の10年間で、理学療法の施設基準適合施設、理学療法(T)の入院6か月以内の患者に対する「複雑なもの」(345点→660点)、は大幅に診療報酬が引き上げられたが、「単純なもの」「簡単なもの」については据え置きか、その引き上げはわずかなものであり、「早期の濃密なリハビリテーションへの誘導・シフトが徐々に」(二木[2004:199])行われている。とはいえ、リハビリテーション医療費の医科医療費総額に対する割合をみると、わずか0.19%ポイントしか増えていないからである(二木[2004:199])。一方で、慢性期リハビリテーションの点数は大幅に引き下げられている。
 また、個別の理学療法・作業療法・言語療法を合わせ、患者一人・一日あたりの単位数の上限がさだめられたことにより、上限を超えるリハビリテーションは全額自費で認めるという、公私混合医療化の布石がうたれたと二木[2004:201]はその時点で分析している。こうした公私混合化の動きに対して、高山[2003:511]は、「社会保険で給付すべき医療サービスは、有効性や安全性が医学的に妥当であり、広く国民に給付されるべきと確認されたものであるため、開発途上の治療法や医薬品といった先端的な医療技術や、あるいは生活習慣改善薬や美容整形など、主として患者側の意思によって開発される治療に関しては、私費ないし私的保険との供用もありうると思われる。ただし、医学的に成果が確認された後には社会保険を通じて給付されるべきであり、社会保険を最低限度に圧縮して私的保険に軸心を移そうとの議論は、やはり逆立ちした議論である」と指摘している。しかし、公私混合化の動きは、後に記述したように、2006年4月の改定で棚上げされた。
 もう1点、2002年の改定における特徴として、「規制が一段と強化された」(二木[2004:202])ことがあげられる。つまり、「リハビリテーションの「通則」において、「リハビリテーションは、適切な計画の下に行われるものであり、その効果を定期的に評価し、それに基づき計画を見直しつつ実施されるもの」」(二木[2004:202])という規定がわざわざ盛り込まれたのである。それに基づき、厚生労働省は、「リハビリテーション(総合)実施計画書」を設定し、その中には、ICF(International Classification of Functioning,Disability and Health:国際生活機能分類)にある「心身機能・構造」「活動」・「参加」などの分類を適用している。(二木[2004:202])」(田島[2009]*)
*田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

 
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 ■2003

◆多田 富雄・鶴見 和子 20030615 『邂逅』,藤原書店,231p. ASIN: 4894343401 2310 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

◆鶴見 和子・上田 敏 200307 『患者学のすすめ――“内発的”リハビリテーション 鶴見和子・対話まんだら 上田敏の巻』,藤原書店,238p. ISBN-10: 4894343428 ISBN-13: 978-4894343429 2310 [amazon][kinokuniya] ※ r02.
◆2003

 「介護保険制度は、市町村の保険事業運営期間(3年)のサイクルに合わせて、事業者に支払う報酬を改定することとしており、制度施行後初めての改定が2003年4月に行われたが、その内容を見ると、介護保険下のリハビリテーションにおいて、個別リハビリテーションを推進する観点からの評価の充実が行われている。具体的には、訪問リハビリテーションでは、退所(退院)6か月以内の利用者に対して、具体的なリハビリテーション計画に基づき、ADL(Activities of Daily Living:日常生活活動)の自立性の向上を目的としたリハビリテーションについて、1日当たり50単位の加算を設けるとともに、提供元として、従来の病院・診療所のほか、介護老人保険施設を追加した。また、通所リハビリテーションについては、身体障害や廃用性症候群等の利用者に対して、個別リハビリテーション計画に基づき、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が個別にリハビリテーションを行った場合に、退院・退所日から1年以内の期間は1日130単位、1年を超えた期間は1日100単位の加算を新設した。加えて、介護老人保健施設での個別的なリハビリテーションについても評価の充実を行っている(成松[2003:1021-1022])。」(田島[2009]*)
*田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

◆200307 高齢者リハビリテーション研究会設置
 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/030908/2f.html
 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/2-3b.html
 座長:上田敏(日本障害者リハビリテーション協会顧問)

 
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 ■2004

◆20040129 高齢者リハビリテーション研究会・中間報告
「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」
 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/2-3b.html
 http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/sankou28.html
 概要:http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05kaig.nsf/2c9fefd2431b24884925689b0049dddd/9c2704511ce2544749256e1d0026cfb4/$FILE/gaiyou.pdf
「(1)  死亡の原因疾患と生活機能低下の原因疾患が異なること
(2)  軽度の要介護者が急増していること
(3)  介護予防の効果があがっていないこと
(4) 高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であること
と指摘し、この課題を解決するため、今後の高齢者リハビリテーションの基本的な考え方として、
(1)  高齢者の態様に応じた対応(脳卒中モデル、廃用症候群モデル、痴呆高齢者モデル)
(2)  疾患の発症直後の急性期の治療と並行した実施
(3)  必要な時期に、短期間に集中しての実施、また、期間を限定して計画的な実施の必要性を指摘し、現行サービスの見直しについては、予防、医療、介護が断片的でなく、総合的に提供されるよう行うべきであるとしている。」
 (http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/2-3b.htmlより)
「ポイント1 高齢者リハビリテーションの現状と課題
<高齢者リハビリテーションの現状>
 以下の課題があり、満足すべき状況には至っていない。
○  最も重点的に行われるべき急性期リハビリテーション医療が不十分である。
○  長期間にわたる効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている。
○  医療から介護への連続するシステムが機能していない。
○  リハビリテーションとケアとの境界が明確に区別されておらず、リハビリテーションとケアが混同して提供されている。
○  在宅リハビリテーションが不十分である。」
 (http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/040219/sankou28.htmlより)

 ※多くのHPでリンク先としてある下記の頁は現在存在しないよう。
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0331-3.html

◆2004/02? 『高齢者リハビリテーションのあるべき方向――高齢者リハビリテーション研究会報告書平成16年1月』,社会保険研究所,62p. ISBN:9784789471602 788 ※

上田 敏(日本障害者リハビリテーション協会) 2004/03 「高齢者リハビリテーションのあるべき方向――高齢者リハビリテーション研究会中間報告」,『作業療法ジャーナル』38巻3号 Page238-239

◆2004

 「2004年における診療報酬改定時には、「亜急性期入院医療管理料」が新設された。二木[2007:65-66]は、この新設について、一般病床が急性期病床だけではなく亜急性期病棟も含まれたことが明解となったこと、また、回復期リハビリテーション病棟の入院料の施設基準と異なり、疾患が限定されていなかったり、点数が高いことなどから、民間中小病院を中心に急速に普及すると予測している。」(田島[2009]*)
*田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

◆多田 富雄・柳沢 桂子 20040430 『露の身ながら――往復書簡いのちへの対話』,集英社,269p. ISBN: 4087812650 1470 [amazon][kinokuniya] ※

◆中村 秀一(厚生労働省老健局長)・上田敏(日本障害者リハビリテーション協会顧問) 2004/04/05 「リハビリテーションの総検証」(対談),『週刊医学界新聞』2004-4-5
 http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2579dir/n2579_01.htm

「中村 […]それから,実施方法の2つ目のポイントとして,急性期の医療機関で原因疾患の治療が終了した人のリハビリテーションについては,回復期リハビリテーション病棟や介護老人保健施設において「短期間に集中して実施する」とあります。3番目に,それが済んだあとに,今度は在宅で「必要な時期に期間を限定して,計画的に実施する」のだと,この報告書はうたっています。
 つまり,リハビリテーションにはちゃんと期間があって,ダラダラと毎日やればいいというものじゃない。いちばん大事な時に,きちんと目標を定め,期間を定めてやるのがリハビリテーションであるということをはっきり言っているわけですね。
上田 一般の方は,リハビリテーションはやればやっただけ,長ければ長いだけ効果があがると考えがちなのですが,それは効果的なやり方をしていないからです。これまでは,非効率的にダラダラとやって,いわゆる“訓練人生”,訓練が生きがいであるような本末転倒の,人間らしい生活とはいえないようなものにまで追い込んでしまっていました。」

◇田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

 「C)今後の高齢期における制度・政策、リハビリテーションの医療経済に関わる重要ポイント−『高齢者リハビリテーションのあるべき方向』  2003年7月に、高齢者介護研究会(座長:堀田力)の後を受けて厚生労働省老健局内に設置された高齢者リハビリテーション研究会(座長:上田敏)は、介護・医療双方に跨って今後の高齢者リハビリテーションのあり方を検討しており、その研究会において示された『高齢者リハビリテーションのあるべき方向』註7)は、その直後に行われた2006年の診療報酬、介護報酬の改定にも大きな影響を与えている(中村・上田[2004:691])。本研究の対象文献には、当時の老健局長であった中村秀一と研究会の座長であった上田敏との対談があるので(データ番号【2004-6】=中村・上田[2004])、対談の内容から、今後の高齢者リハビリテーションの方向性を確認し、本項の総括としたい。
 まず中村は対談の冒頭、本研究会の立ち上げの経緯・背景について次にように述べている。

「いくつかの背景がありますが、1つは、2000年にスタートした介護保険制度が見直しの時期に入っているということです。2005年には介護保険法の改正法案を国会に提出しなければなりませんし、2006年4月には介護報酬と診療報酬が同時に改定となります。研究会がはじまった2003年7月がリハの見直しに向けたギリギリのタイミングでした。2つ目は、介護保険制度実施後3年半を経過して課題が明確になってきたことです。予想以上に要介護認定に該当する方が増えて、開始時は65歳以上の方の10人に1人が要介護認定者という割合でしたが、今日では7人に1人と上昇しています。特に軽度の要介護の方が非常に増えています。介護保険の理念・目的には「自立支援・介護予防・リハ」がありますが、これらが実際に達成されているかどうかを検証しなければならない時期にきていました。3つ目として、2003年3月に高齢者介護サービスのあり方の方向性を探る「高齢者介護研究会」(座長:堀田力氏)をつくり、その報告書がまとめられました。そこでは、2015年の高齢者介護を考える際の最大の課題として介護予防・リハの充実があげられ、「今後精査・研究が必要である」と指摘しています。」(同、p691)

 また、その目的を次のようにも語っている。

 「報告書をとりまとめていただく時にお願いしたのは、リハの現状と課題についてのレビューでした。しかも、私ども老健局は介護を整備する立場ですが、介護だけ論じるのは意味がないので、医療と介護双方におけるリハの現状と課題について、総合的にレビューしていただきたかった。老健局は介護保険を実施している立場なので「高齢者リハ」といわざるを得ないのですが、理念としては「高齢者」を取って「リハ」の研究会と思っていただいて構いませんということでした。報告書はかなりの分量になりましたが、ある意味で「リハ白書」とも言うべきもので、現状分析とともにリハのこれからの方向性も明示されました。これから先、介護保険制度の改革、あるいは介護報酬・診療報酬の改定が待っているなか、提示された方向性をできるだけ具体化し、政策化していくことが、われわれに課せられた使命だと思っております。」(同、p692)

 それに対して上田は、以下のように、本研究会の成果として「廃用症候群モデル」の呈示を挙げており、軽度の要介護者を対象として生活機能の低下をいかに防止するかという観点を呈示できたことの重要性を強調している。つまり、急性期・回復期リハビリテーションと維持期のリハビリテーションを同列化、また、軽度の要介護者への対応策を明確化し、介護保険後の需要に呼応している点が伺われる。

「研究会の最初のプレゼンテーションで、私は2つのタイプのリハ・プログラムがあるということを言いました。1つは、脳卒中のように急激に悪くなってその後回復していく時に、それをさらによくするかたちのリハです。もう1つは、廃用症候群や変形性骨関節症のように、徐々に生活機能が低下していくのをいかに早く気づいて食い止めるかという、これまで注目されてこなかったリハです。後者の対象は高齢者に多く、また軽度の要介護度者への取り組みとして重要なのに、いままでリハの対象外におかれていました。こういうことを研究会の最初から説明はしていたのですが、議論をしていくうちに次第に整理されて、「高齢者リハには脳卒中モデルと廃用症候群モデルがある」とはっきり記述するところまでいったのは大変よかった」(同、p694)

 またそれは、2001年5月22日、WHOの第54回世界保健会議(The 54th World Health Assembly)において採択された新しい国際障害分類であるICFとも呼応する考え方であるとし、リハビリテーションに積極的にICFを取り入れ(ようとし)ている点も、2000年以降の高齢期リハビリテーションの理念、医療経済等に大きな影響を与えていることとして特筆すべきことである。

「リハというのは、ICF(国際生活機能分類)のいう生活機能全体、つまり生命・生活・人生のすべてを重視する立場にたたなければいけないのだということが打ち出されました」(同、694) 」

 「ここで確認・強調しておきたいことは、この2004年の『高齢者リハビリテーションのあるべき方向』によって、高齢期における維持期・慢性期リハビリテーションの、急性期・回復期に劣ることのない重要性が、制度・政策に反映される場において大きく取り上げられたことである。逆に言えば、そのことは、リハビリテーション業界内においてさえ、十分な認識がなされていなかったということである。もう1つ注目しておきたいことは、維持期・慢性期の重要性は指摘されたものの、それは昨今増加している軽度の要介護者の「寝たきり」予防として維持期・慢性期リハビリテーションを想定していることである。つまり、ここで掲げられている維持期・慢性期リハビリテーションの内実には、「寝たきり」の状態にある重度の障害者は対象として想定されていないのである。」(田島[2009])

◆2004 日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会「平成16年度診療報酬改定に関するアンケート結果報告書」
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/iinkai/shakaihk/41-722.htm

 「平成16年度も診療報酬の改定が実施され,リハビリテーション(以下,リハ)医療領域においても若干の改定が行われた.本委員会としても,その現状を把握し,今後の診療報酬要求を検討していくためのアンケートを実施したので,その結果を報告する.」

◆2004/04/09 「高齢者リハビリテーション研究会中間報告書について」
 http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05Kaig.nsf/vAdmPBigcategory20/7C90E7D294C1B38649256E71002B48B1?OpenDocument

◆大川 弥生(国立長寿医療センター・研究所/生活機能賦活研究部) 2004/04/19 「高齢者リハビリテーション研究会報告を読む」,『週刊医学界新聞』2581
 http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2581dir/n2581_03.htm

リハの正しいあり方を打ち出した画期的な提言
 厚生労働省老健局の高齢者リハビリテーション研究会の報告書「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」が1月末にまとめられ,本紙でもそれに関連して老健局長・中村秀一氏と研究会座長・上田敏氏との対談「リハビリテーションの総検証」が行なわれた。委員の1人として報告書の概略を紹介したい。
 まず報告書の内容の全体的印象を述べると,「全人間的復権」という本来のリハビリテーション(以下,リハと略す)の理念の実現に向けて,リハの原点を正面からみすえた画期的な提言と言うことができよう。
 前記の対談で中村氏が「恐ろしいことを淡々と記述している」,「ある意味で激震になるかもしれない」と述べられているように,この報告は,一般国民の感覚からみれば当然のことでありながら,リハの現状からみるとかなり手厳しい指摘とならざるを得ない点を含んだものである。このような内容に,各界を代表する21人の委員のコンセンサスが得られ,行政側にも高く評価されていることは非常に意義深いことと言わなければならない。対談の終わり近くに上田氏が指摘されるとおり,まさに「時代がそのように動き出した」のであろう。
 中村氏も言っておられるように,この報告書は「高齢者」を取ってリハ全般に関する提言としても十分に通用するものである。またここで述べられた内容はリハだけでなく,高齢者にとってのより良い医療・介護・保健・福祉づくりの指針になるものと考えられる。
介護保険のリハの質的問題が露呈
 この報告書作成の背景としては,介護保険によって,リハが一般国民にとって利用しやすいものになり,量的には急激に拡大した反面,さまざまな質的問題が露呈したことがあげられよう。しかしそれは介護保険だけの問題ではなく,むしろそれ以前から医療の世界で行なわれていたリハの本質的な問題が表面化したという面が大きい。
 介護保険でリハに関するサービス提供者が急激に増えたが,その際それまでさまざまな問題をはらみつつ“リハと称して”行なわれてきたものがそのまま取り入れられてしまったことが問題だったのである。
□報告書が指摘した現状の問題点と新たな提言
リハの理念は機能回復ではなく「全人間的復権」
 報告書は冒頭に,「リハは,単なる機能回復訓練ではなく,心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として,‥‥(後略)」と述べ,「全人間的復権」というリハの原点に立つことを明らかにしている。この点はわが国の障害者施策の基本である障害者基本計画が,リハの理念は「全人間的復権」であるとしていることと軌を一にしている。
 これは「リハは機能回復訓練」との「通念」を明確に否定するものである。このような誤った「通念」がさまざまな誤解の根源になっているだけに,これを冒頭で否定したことは大きな意義を持っている。
枠組みはICFの生活機能構造
 本報告書のもう1つの大きな特徴は,ICF(国際生活機能分類:WHO制定,2001年)の枠組みに立っていることである。ICFでは,人が「生きる」ことを,(1)心身機能,(2)活動,(3)参加の3階層で構成される「生活機能」としてとらえる。この3レベルは,(1)生命,(2)生活,(3)人生と言い換えることもできる。
 本報告書の基調は,リハとは生活機能全体の向上をめざすものということである。これはすでに昨年のリハに関する介護報酬改定の基本骨格となった「個別性重視」の基礎にある考え方であり,「リハビリテーションは,患者の生活機能の改善等を目的とする……実用的な日常生活における諸活動の自立性の向上を目的として行われるもの」(特定診療費に関する規定,下線筆者)と定義されていることと一致している。
 このように3レベルからなる生活機能が相互に,また健康状態(疾患,加齢など)や,環境因子,個人因子などとの間で,相互作用を行なうことを重視するのがICFの生活機能モデルであり,本報告書はそのような総合的な見方に立ってリハを見ているのが大きな特徴である。
 生活機能モデルで整理すると,例えば機能回復訓練は,心身機能のマイナス面である機能障害レベルのみへの直接的な働きかけであり,生活機能全体の中のごく一部への働きかけであることが理解できよう。
「維持期リハ」の呼称による誤解
 これまで「介護保険のリハは維持期のリハであり,維持的リハである」と一部では言われてきたが,本報告書はそれを明確に否定している。すなわち,「医療保険と介護保険の制度に分かれることによって,それぞれ提供されるリハに制度上の差異があるかのごとく考えられやすいが,リハの目的や目標に差異があってはならない」という指摘である。
 「維持期のリハ」という呼称はこれまで大きな誤解を与えてきた。1つは「維持すれば十分である」という誤解,もう1つは「維持するにはリハが必要である,リハをしていなければ維持さえできず,悪くなるだけである」との誤解である。これにより漫然と長期的にリハが行なわれ,「訓練人生」という本来のリハとは逆のものをつくり,また財源の面でもマイナスになっていた。
 この「維持期」という呼称の背景としては,大きく3つの根本的な問題があると考えられる。1つは,リハの対象を機能障害と考え,ある時期以後は改善がなく,維持しかありえないないとしたことである。しかしICFモデルに立てば機能障害は改善せずとも生活(活動)・人生(参加)はより良くできるのである。2つ目は,機能回復訓練中心であったことである。活動向上訓練によって生活・人生を改善できることへの認識の不足である。そして3つ目は,これまでのリハが,次に述べる「脳卒中モデル」のみに立っていたことである。
□廃用症候群モデルの重要性を強調
 脳卒中モデルとは,脳卒中や骨折などによる急激な生活機能の低下につづいてある程度の回復傾向を示すものに対して,その回復を促進するプログラムであり,従来はこれが唯一のリハのあり方であるような固定観念にとらわれがちであった。
 現在介護保険で急激に増えている軽度の要介護者の多くは,心身機能の不使用(生活の不活発化)のために心身の機能が低下する廃用症候群や,骨関節疾患(これにも廃用症候群が合併しているのが普通)などのように徐々に生活機能全体が低下するタイプに属している。そしてこのような人々に対しては生活機能低下の早期発見と早期対応という「廃用症候群モデル」のリハが必要なのである。
 報告書では「高齢者リハの基本的な考え方」の最初に「脳卒中モデルと廃用症候群モデルとでは,リハの内容は異なる」として二者の違いを図示している(前記対談の図参照)。
維持的リハではなく「断続的リハ」
 この2つのモデルはリハに大きな影響を及ぼすが,その1つに時期区分がある。報告書では「脳卒中モデル」について従来の「回復期」「維持期」の呼称を避け,文章で説明している。
 すなわち脳卒中モデルにおいては,「(1)発症直後からリハを開始し,(2)自宅復帰を目指して短期的に集中してリハを行なった後に,(3)自宅復帰後は日常的に適切な自己訓練を行なうとともに具体的な課題やさらなる目標が設定された時に,必要に応じて,期間を定めて計画的にリハを行なうことが基本となる((1),(2)等の数字は筆者追加)」とある。図でこれを(1)「急性期リハ」,(2)「集中的リハ」,(3)「断続的リハ」の名称で示している。
 一方,廃用症候群モデルにおいては,「脳卒中の発症のように急性ではなく,徐々に生活機能が低下してくることから,生活機能の低下が軽度である早い時期にリハを行なうことが基本となる。リハの提供にあたっては,必要な時に,期間を定めて計画的に行なわれることが必要である」とある。
 これは,廃用症候群モデルでは最初から断続的リハを行なうということである。この断続的リハとは「必要に応じて,期間を定めて計画的に」行なうリハであり,慢然と続ける維持的リハを否定し,それに代わるものである。
「安静度」から「活動度」へ
 廃用症候群とその悪循環は「廃用症候群モデル」だけの問題ではなく,「脳卒中モデル」でも一般医療でも常に考慮すべき問題である。
 報告書は「廃用症候群の対策の重要性」として「後期高齢者に多い衰弱を含め,高齢者の心身機能の低下は,『年だから仕方がない』などと考えがちであるが,実は廃用症候群であったことが見逃されていたことが少なくない」としている。これはリハにおける一般医療の役割の重要性を示すものといえる。
 報告書では,廃用症候群は,「必要以上の安静の指導がなされたり,早期離床や早期の日常生活活動向上のための取組がなされなかったことなどによって生じる」ことを指摘し,これに対して「これまで医療機関で日常的に使用されてきた『安静度』という用語を見直し,『活動度』に変更する必要がある」と提言している。
「つくられた歩行不能」――安易な“車いす偏重”の害
 […] 活動向上訓練の重要性
 リハの基本技術は訓練室での機能回復訓練ではなく,活動向上訓練である。これによってはじめて過度の車いすへの依存からの脱却が可能となる。活動向上訓練は,「めざす人生」の具体像であるさまざまな「活動」を可能にしていくものである。めざす人生は1人ひとり違うのだから,活動向上訓練の対象とする「活動」も,それを可能にするための進め方(プログラム)も本質的に個別なものである。これが昨年のリハに関する介護報酬改定のかなめとなった「個別リハ」の基本的考え方である。
 本報告書では「入院(所)リハについては,これまでの訓練室中心のプログラムから病棟・居室中心のプログラムの充実をはかる必要がある。入院(所)直後からの日常生活の活動向上訓練,福祉用具の適切な選択と使用方法や使い分けの指導が,病棟・居室棟の実生活の場で在宅生活と同じような環境の中で行われる必要がある」と述べている。また,「リハ専門職が訓練を行ない向上させた高齢者の活動能力を,看護職・介護職が日常でのケアを通じ,実生活で実行できるように定着させるような連携が重要である(下線筆者)」と,活動向上訓練における「できる活動」(ICFの「能力」)と「している活動」(ICFの「実行状況」)の両方への働きかけが必要だとしている。
 これと関連して,「早期の在宅復帰の促進を図るために,病棟・居室棟の設備については,車いす用設備に偏らない,通常の在宅生活・社会生活に近い多様なものが望ましい」と述べているのも重要な点である。これは「車いす用設備偏重からの脱却」と言ってよい。
□国民と医療職に求められること
一般医療の役割を重視
 従来リハは専門の施設で,理学療法士,作業療法士などのリハ専門職で行なわれるものと考えられがちであった。しかし本報告書では,リハにおける一般医療の役割を強調している。
 すなわち,「リハは,ともするとリハ専門の医療機関のリハ専門職だけが訓練室で実施するものであるというような誤解が生じがちである」としたうえで,「しかし,リハ専門医療機関あるいは専門職のみならず,身近な医療機関において医師・看護師などが日常の医療や看護業務の中で実際の生活の場に近い環境で行なうことが重要である」と述べている。
リハの主体は本人
 報告書はさらに「リハは,単なる機能回復訓練と捉えがちであるが,本来の意義である生命・生活・人生のすべての側面に働きかけ,その人の持つ潜在的な生活機能を引き出し,生活上の活動を高め,それにより豊かな暮らしを送ることも可能とするものであることの理解を,より一層すすめる必要がある」として,まず国民,そしてかかりつけ医,介護支援専門員,その他高齢者の予防・医療・介護にかかわるすべての専門職と関係者の理解を求めている。
 特に,リハの主体は専門家ではなく利用者・患者本人であることを強調し,報告書は次のように述べている。「リハの目標や計画は,利用者が主体となって専門職がこれを支援するような取り組みで設定・作成される。このような過程を経ないで設定された目標や,計画に基づかない単なる機能訓練を漫然と実施することがあってはならない。これは訓練そのものが目的化することになり,いわゆる『訓練人生』をつくることになる」。
おわりに
 以上に述べたこと以外にも,報告書は専門家のチームアプローチの重要性,地域リハ支援体制の再構築,老人保健事業・介護予防事業の総合,入院リハ中心から在宅生活での必要に応じての外来・通所リハ重視への転換,患者・利用者の生活機能に関する情報の交換や履歴の共有化など,多くの新しい提言を行なっているが,紙面の制約で略す。今後報告書の提言をどう生かすかが,われわれ専門家に与えられた大きな課題である。
 この報告書が広く理解され,利用者・患者の自己決定権を尊重した本当の意味のリハビリテーション(全人間的復権)達成にむけたリハビリテーション・ルネッサンスの第一歩となることを委員のひとりとして心から願っている。

 
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 ■2005

上田 敏 2005/06/01 「高齢者リハビリテーションのあるべき方向――「高齢者リハビリテーション研究会報告書から」(下)」,『リハビリテーション研究』No.123
 http://www.jsrpd.jp/index.php?q=reha_magazine/2&from=20

◆2005/10

 「小泉政権下における医療改革において、混合診療化の方向が示され、リハビリテーションにおいても、2005年10月には、回数の上限設定がなされ、保険給付は上限以下に厳しく抑制する反面、上限を超えるリハビリテーションは全額自費で認めるという、リハビリテーション医療の公私2階建て医療(公私混合医療)が認められたが、これは、2006年4月に行われた診療報酬改定において棚上げされている。(二木[2007]:52)」(田島[2009]*)
*田島 明子 20090225 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

◆2005/10/12 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会
 議事録
(3)出席者 土田武史委員長 遠藤久夫委員 室谷千英委員 小林麻理委員
      対馬忠明委員 小島茂委員 大内教正委員 松浦稔明委員
      松原謙二委員 青木重孝委員(代 三上) 石井暎禧委員
      黒ア紀正委員 山本信夫委員
      岡谷恵子専門委員
      <事務局>
      宮島審議官 麦谷医療課長 石原調査課長  他
○土田小委員長
 それでは、次の議題に進みたいと思います。次は、「リハビリテーションに対する評価」について議題としたいと思います。
 これも事務局より資料が出されておりますので、説明をお願いします。
○事務局(麦谷医療課長)
 それでは、「リハビリテーションに対する評価」という資料を御説明申し上げます。先ほどと同じように、資料、中医協診−3−1という本文と、診−3−2という2枚紙の資料をごらんください。
 […]この現状で何が課題かということでございますが、1つは、理学療法士の要件あるいは作業療法士の要件、場合によっては医師の要件、それから広さによって決められているわけですが、患者さんから見ますと、例えば同じようなリハビリを受けていながらその施設によって値段が違うというようなことが現出してまいります。つまり、同じ疾患で同程度の患者さんが、行く施設によって、行われているリハビリテーションが同じなのに値段が違うといったことが、実際、世の中で現出いたします。
 そういうことが1つは問題ではあろうかという認識の下に、まず課題でございますが、資料診−3−1の1ページ、「2 現行の診療報酬上の評価の課題」の最初の丸でございます。平成16年1月に、これは老健局の方で、高齢者リハビリテーション研究会の報告として、「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」ということで、5つの課題が指摘されております。それはそこの四角の中に書いてございますが、最も重点的に行われるべき急性期のリハビリテーション医療が十分ではない、2番目、長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある、3番目、医療から介護への連続するシステムが機能していない、4番目、リハビリテーションとケアとの境界が明確に区別されておらず、リハビリテーションとケアとが混同して提供されているものがある、最後に、在宅におけるリハビリテーションが十分でない、このような御指摘がございます。
 それから、めくっていただいて2ページ、これは既に何度もお示ししていますが、15年3月28日に閣議決定された「基本方針」においても、その中にリハビリテーションという項目がありまして、疾病の特性等に応じた評価をすべきであると閣議決定がなされておりますので、指摘された問題点、それから閣議決定での内容を踏まえ、論点としては、次のようなことが論点になるのではないかということで、本文の2ページ目、「論点」として、(1)、疾病の特性等を踏まえた体系の見直しということで、人員配置、機能訓練室の面積等を要件とする施設基準により区分された現在の報酬体系を見直し、疾病や障害の特性に応じた評価、同じような状態の患者さんであれば、どこでリハビリを受けても、もし同じようなリハビリであれば同じ値段になるというようなことにしてはどうか。
 それから、広大な機能訓練室がなくとも手厚い人員配置により質の高いリハビリテーションの提供が可能な場合もあると考えられることから、その評価の在り方について検討してはどうか。
 3つ目でございますが、急性期のリハビリテーションの充実を図るため、発症から早期の報酬については、患者1人・1日当たりの算定単位数の上限の緩和、すなわち発症直後からすぐにリハビリをやった方がいいものが幾つかございますので、そういったものにつきましては、上限を設定して、それ以上は請求できないというのもいかがなものかという感じがいたしますので、そういったものについても少し上限の緩和をいたしまして集中的にリハビリを行ってはどうかという論点でございます。
 それから、長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が一部に行われているとの指摘がありますので、疾患の特性や治療の現状を踏まえて、算定日数の上限を新たに設定してはどうか。
 それから、もう1枚めくっていただきまして、医療機関ごとの弾力的な運用を可能とする観点から、リハビリテーション従事者1人・1日当たりの実施単位数、今は上限ございますが、これも少し見直してはどうかということを考えております。
 それから、(2)、回復期リハビリテーションの評価につきましては、診−3−2の別紙2にグラフがつけてございますが、現在約2万8,000床に増えてきております。この回復期リハビリテーションのさらなる普及を図るため、算定対象となる疾患の拡大、それから、疾患ごとに算定日数上限を短縮すること、もっと短く、集中的にやったらどうかということを論点として挙げてあります。
 それから(3)、最後でございますが、訪問リハビリテーションの評価につきまして、理学療法士等が居宅を訪問して行うリハビリテーションについては、入院から在宅における療養への円滑な移行を促進するため、退院後早い段階から患者に対し重点化すること等を検討して厚くしてはどうかということを論点として掲げております。実際、訪問リハビリテーションは、介護保険においても医療保険においても、いわゆる売れない商品でありまして、これを売れる商品にするにはどうすればいいかということが論点と、簡単に言えば、そういうことでございます。
 以上です。
○土田小委員長
 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして御意見、御質問等ございましたら、どうぞ。
○小島委員
 質問です。現状のリハビリテーションに対する診療報酬上の評価と課題のところの1ページのところで指摘されているような5つの視点がありますけれども、そこで指摘されているものも、わかるものとわからないものがあるのですけれども、例えば(2)のところ、「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある」と、あるいは(4)の「リハビリテーションとケアとの境界が明確に区別されて」いないといったような、混同しているといったようなことなのですけれども、実際は、どういう形でこれが指摘として挙がっているのかということなのですけれども、それが1つです。
○土田小委員長
 ただいまの質問につきまして、事務局、いかがでしょうか。
○事務局(麦谷医療課長)
 これは、老健局の研究会の報告書からの抜粋でございますので、的確に説明できるかどうかは、それを見ないとわからないのですが、基本的には、長期間といっても、例えば2年3年にわたって同じような、例えば温熱を当てるだけとか、簡易なリハビリがずっと繰り返されている。週に1回とかあるいは週に2回とか、患者さんが医療機関に通って、効果をだれも確かめていないというような、しかも、それほど高い点数ではないので、特に査定もされなくずっと行われているといったようなことを、査定側である部署からよく聞きます。
 それから、リハビリとケアの混同でございますが、リハビリというのはやはりある程度の目的があって行うわけですけれども、そうではなくて、例えば関節可動域をずっと維持するためにただ行っているといったようなことを私どもは耳にしておりますが、それがすべてではありませんけれども、そのような日々のケアというのと、それから、医学的なリハビリというのとが、必ずしも明確に分けられていないというようなことが散見されるということでございます。
○土田小委員長
 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
○松浦委員
 もうちょっと私は、こういうのは苦手な質問の方なのですけれども、14年の改定で、リハビリテーションは適切な計画の下に行われるものであり、その効果を定期的に評価し、それに基づき計画を見直しつつ実施されるものである、こういうことになっておるのだそうですけれども、これはどういう形でやってあるのでしょうか。
○事務局(麦谷医療課長)
 基本的には、そこの点は全く変更がなくて、今松浦委員が御指摘のとおりでございまして、リハビリは、そのように行わなければいけないのですが、それを踏まえて16年1月に、さらにこのような「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」という提言がなされましたので、これにのっとって、今回改定を、改定というのでしょうか、論点を議論していただいてはどうかというふうに思って提供させていただきました。
○松浦委員
 これ、現場ではどういう形で行われるのでしょうか。
○石井委員
 例えば入院ですと、毎日リハをやって、リハの計画書とか、どこまでこの人は回復させるというような目標がつくられていて、大体週1回のケアカンファレンスをやって、その人がどこまで到達したか、今後どうするかの検討が行われます。そういうことの繰り返しをやっていくのが、普通のリハのやり方なのです。恐らく「漫然と」と言われているのは、こういったような急性期のある目標を持ってリハビリテーションが終了し、ここまでは回復したけれども、もうこれ以上は無理だから一応症状固定として、一応退院した後のことです。問題は、障害が残っていてほうっておきますと、家に帰ると、途端にもう動かなくなって、またはもっと悪くなってしまうというような人もいるわけで、そういう場合は、やはり維持期のリハビリテーションか、一定の到達した状態をどう維持していくかということが、課題となります。こういった急性期とそれから維持期のおのおのについての評価や、システムのあり方が問題となっているのだと思います。今までの点数についてみても、単に個別点数の積み上げですので、急性期とか回復期とか維持期についてどういうふうにやっていくかの標準的なシステムが必ずしも診療報酬上は区分されていないとの御指摘だろうと思います。それはそのとおりだと思いますので、おのおのの時期に基づいたやり方はやはり鮮明にしておく必要があると思います。
 それから、この文章でもちょっとわからないのは、急性期のリハビリテーション医療が十分に行われていないと言っていますが、これと回復期リハビリテーションとの関係が、不鮮明です。最初に回復期リハビリテーションというふうに言われたときに、この回復期というのは、いわゆる急性期を含んでいるかどうかあいまいのままになっていると思います。それで、回復期リハビリテーションの診療報酬体系というのは、ある意味で丸めですので、この体制で急性期のリハは行うことはできません。というのは、まだいろいろな病気の治療をしている最中で、これは例えば手術の翌日からリハをやらなければならない場合があります。こういったときには、回復期リハの報酬体系では、回復期であることは確かなのですけれども、対応しきれません。医療的な行為を、いろいろな治療をやりながらリハビリテーションをやる、ここで言う急性期のリハビリテーションの時期と、回復期リハビリテーションの時期は別な時期として考えるべきです。
 それで、問題は、回復期リハビリテーションついてです。後ろ側が180日となっているのですが、前の側が発症から大体3カ月以内にとなりますと、回復期リハビリテーション病棟では、3カ月ぎりぎりまでは受け取ってくれない、そっちは急性期の病院でやってくださいと。で、3カ月ぎりぎりなってから回復期リハビリ病棟に移る。もちろんずっと治療が進んで軽くなったときの方がやりやすいわけですし、値段は同じなわけですから、そういう使い分けになってきている。本来急性期と、回復期リハビリテーションの境はもっと前倒しにすべきとの意見があります。急性期リハについての評価や回復期リハについての評価について、もう一度その辺の実情に踏まえて見直した方がいいのかなと思います。
○土田小委員長
 ありがとうございました。
○松浦委員
 石井委員の今のお話を聞いていて、非常に専門的ですし、また、そういうことは当然必要だろうと思いますが、そういうのはどこでやるのですか、この中医協でやるには非常に専門的……
○土田小委員長
 ただいまの石井委員の発言は、この3ページの「回復期リハビリテーションの評価について」というところで、算定日数上限を短縮する等々の検討、ここにかかわるということですよね。
○石井委員
 はい。
○松浦委員
 それは今非常に専門的で、我々素人ではちょっと判断つきません。そのあたりの区別というのはどこでやるのですか。ここでやるのですか。
○土田小委員長
 それは具体的に、もう少し事務局の方で整理してもらいまして、ここでわかる議論をしたいというふうに考えております。それにつきましてはもう少し議論を進めていきたいのですが、今「論点」の1番目のところで、従来、「施設基準により区分された現在の報酬体系を見直し、疾病や障害の特性に応じた評価とする」というふうに変えていくという、そういう論点の整理がありますが、それからその下もいろいろと整理してもらっていますけれども、この点につきまして、もうちょっと御意見をお伺いしたいのですが。
○松原委員
 急性期リハビリテーションの充実、これは非常に大事だと私どもも思っております。ここのところで、算定単位数の上限があるということにおいて、非常に現場で困っているという意見を聞いております。ぜひ必要な状態にある急性期で、かなりの効果が出る時期でございますので、そのときには十二分な治療ができるように、点数を、こういった回数制限を外してでも、お願いしたいと思います。
 また、先ほど松浦委員の御意見ですけれども、そういった専門的な意見も踏まえて、やはりこれは、点数設定で対応しなければならないことでございますので、最終的には、この中医協で決めねばならない事項ではないかと思っております。
○土田小委員長
 ただいまの松原委員の意見は、この「論点」整理の上から3番目、「患者1人・1日当たりの算定単位数の上限の緩和」ということでございますが、その下にもう1つ、長期にわたるものについては、「算定日数の上限を新たに設定する」というものと組み合わせているわけでございますが、この辺について御意見ございましたら、どうぞ。
○小島委員
 回復期リハについての資料の中では、それを専門にやるといいますか、集中的にやる。病棟の入院料というのは、個別に設定されているようですけれども、それ以外のところは、今療養病床に入っている方、それから一般病床に入っている方について、特段それについてはリハビリテーションについて、別に何か差があるというわけではないので、ここは、「論点」の方で指摘されている「疾病や障害の特性に応じた評価」というような、そういう方向での検討というのは必要ではないかというふうに思っております。今松原委員が指摘されたようなところも、そういうものも含めてもう少し全体的なリハビリテーションの在り方ということも整理をするということは必要ではないかというふうに思います。
○土田小委員長
 ありがとうございます。
○松原委員
 「疾病や障害の特性に応じた評価」というのも、私ども賛成でございます。先ほど委員長から御指摘いただきました、「長期間にわたって効果が明らかでない」場合にはどうするのだという御質問がございましたが、ここのところで問題点は、患者さんはそれぞればらばらで、非常に特性が違う場合があるということでございます。一定のところで切りますと、回復期というのは、非常に漸近線のように、徐々にながらでも、回復される方もいらっしゃいます。そういった少しでも回復している方の場合にはやはりリハビリを継続する必要があると思いますので、ここ一律で切るのではなくて、何らかの意見書を出すなり、一たんそこでどのような形になっているのかという結果を検証して続けると、あるいは、検証してやめるという形でなければならないのではないかと思っております。
○土田小委員長
 これは、僕は先ほどちょっと言葉が足りなかったと思いますが、そのことは「疾患の特性や治療の現状を踏まえ」という記述がありますので、一応そういう形で再度検討をいただくという形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○松原委員
 はい、わかりました。
○対馬委員
 メリハリをつけてやっていくということですから、全体的に見直すということでよろしいのかというふうに思うのですけれども、ちょっと一、二気になるところがあるのは、先ほど「患者1人・1日当たりの算定単位数の上限の緩和」という話もありましたけれども、たしか2単位とか3単位ですね、今は。だから、ということは、20分であると、1時間とかそういうことでしょうかね。それ以上にどんどんということが、そんなに多いのかなというのが1つです。
 あともう1点は、全体的に私ども基準がかなり細かくなって、それはそれで大変苦労するところではあるのですけれども、今日お示しいただいた別紙1の理学療法(IV)というのは、珍しく一切何の要件もないのです。これもまた随分信頼し切っているなという感じがするのです。このあたりは、むしろ事務局に、何でこういう形になったのかということをお聞きしたいというふうに思います。何か、もう信じるしかない、もうやったと言えば、そうなんですかと、こういうことでいいのかどうかということなのですけれども。
○土田小委員長
 2点質問があったと思いますが、いかがでしょうか。
○事務局(麦谷医療課長)
 単位の問題は、皆さんが上限を超えてやられるわけではなくて、まさに疾患を診て、例えば脳梗塞の回復といいますか、脳梗塞の直後のリハビリの場合、単位を超えて、必要な方が現にいらっしゃいますので、そのような方に対して、それを超えてやるのは、その疾患特性に応じて今決めている単位以上に実施してもいいのではないかということを提案しただけで、実際個別にどのような方が対象になるかというのは、また資料は出したいと思っております。
 それから、理学療法(IV)というのがございますが、これは今ずっとこのとおりやられております。したがって、規定はありません。ただし、ごらんのとおり点数は非常に低い点数がついておりまして、実際このように算定している施設はございます。
○土田小委員長
 よろしいでしょうか。
○松原委員
 先ほどの個別に行うリハビリについては、3単位が限度ということで、これは前回、回数制限を伴う医療行為について議論が出たところでございますが、やはりその中で、医療上ほとんど必要でない方もいらっしゃいますが、やはり医療上必要な方もいらっしゃいますので、確かに1単位20分、3回やれば60分で、それ以上すれば大変疲れるということもありますが、急性期においては、やはりそれでもプラスになる場合もあるかと思います。そういったことも含め、また、集団のリハビリテーションの場合も、少し回数制限がきついのではないか、あるいは時間制限がきついのではないか、もう少し治療をすべきではないかという意見があるということを申し上げたわけでございます。 理学療法(IV)に関しましては、これはまだいろいろと議論のあるところでございますが、やはり今医療課長がおっしゃいましたように、非常に低い点数であるというところから、こういったことが今まで残っているということもあります。これは、施設基準において、広さがなければできないという形ではなくて、やはり疾患の特性と障害の程度に応じて行っていくのがリハビリテーションでは正しいのではないかということの裏づけとして、そういったことで、ほかのところですることもあるということでございます。
○土田小委員長
 ありがとうございました。
○対馬委員
 リハビリの回数の問題ですけれども、このあたりは、御承知のとおり、いわゆる「混合診療」というのでしょうか、特定療養費制度の中で大変リハビリについては議論があり、これを過ぎれば患者負担ということとのかかわりもありますので、あまり軽々な議論ではなくて、そちらとのかかわりを含めて総合的な議論が必要ではないのかなと、こういうふうに思います。
○松原委員
 単語について前回少し御指摘いただきましたが、やはりこれは「医療上ほとんど必要がない場合」の特定療養費の議論でございます。こちらは「医療上必要な場合」の議論でございますので、よろしくお願いします。
○土田小委員長
 今の上限につきましては、3ページの方でも1人・1日当たりの上限についても再検討するという項目がございますが、これについて何か御意見ございましたら、お伺いしたいと思います。これは前にたしか労働基準法上の制約という話でしたね、ちょっと説明していただけますか。
○事務局(麦谷医療課長)
 これは、実は、PT(理学療法士)1人・18単位という規定がございます。これは労働基準法上、6時間以上働いてはいけないというか、6時間が限度だということから逆算して単位数が定められているわけでございますが、これはもしその医療機関で、理学療法士がその単位を超えて働いた場合に、例えば手当を支給するとか、あるいは患者さんの需要があって万やむを得ずそうなるといった場合についても、少し考慮してもいいのではないかというようなことで論点として挙げさせていただきました。
○松原委員
 1日当たりの単位数でございますので、例えばある日はどうしても患者さんの希望が多くて少し働かねばならないときもあれば、次の日はそういった希望がなくて、非常に時間のあるときもあります。こういったことを一律に縛りますと、やはり適切な治療ができない場合があるということでございます。むしろ、ここで書くべきことは、健康保険法上の問題であり、労働基準法上の問題はまた別規定でございますので、単位数は労働基準法にお任せするのが正しいのではないかということだと思います。
○土田小委員長
 ありがとうございました。
 あとちょっと議論がまだ十分ではないなと感じているのが、リハビリテーション研究会の報告の(5)で、「在宅におけるリハビリテーションが十分でない」という指摘がありました。そういうのを踏まえてこの一番最後に「訪問リハビリテーションの評価について」、項目を整理してもらっておりますが、これについて御意見を承りたいと思いますが、ございますでしょうか。
○大内委員
 ちょっとこれ教えていただきたいと思いますが、これは指導管理料ということで530点というふうに明記してございますが、これは例えば先ほどの在宅訪問だとか在宅訪問管理だとか、いろいろな加算がついてまいりますけれども、これはこれだけで終わりなのでしょうか、それとも、これ以外に何か別な加算があるのでしょうか、その辺ちょっと教えていただきたいと思います。
○事務局(麦谷医療課長)
 訪問リハビリテーションにつきましては、単体でございます。530点、単体でございます。
○土田小委員長
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 それでは、ほかに御意見、御質問等ないようでしたら、本件にかかわる質疑はこのあたりにして、次の議題に移りたいと思います。最後は、「患者の視点の重視」についてということを議題としたいと思います。
 事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いします。」

◆2005/11/25 平成18年度診療報酬改定の基本方針が、社会保障審議会医療保険部会・医療部会から示される

 
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 ■2006

◆2006/02/15 中医協答申
http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/news.html

◆2006/02/17 石川 誠「「医学モデル」から「生活モデル」へ」
http://blog.goo.ne.jp/hunet01/e/c0be56426d1fb75dde0848d6cc03fe07
講師:石川 誠氏
プロフィール:初台リハビリテーション病院創設者、長嶋茂雄ジャイアンツ終身名誉監督の主治医、脳外科医
会場:インテックス大阪  日時:2月17日
テーマ:「医学モデル」から「生活モデル」へ

◆2006/03/03 日本リハビリテーション医学会会員 道免 和久・藤谷 順子・佐浦 隆一→日本リハビリテーション医学会 理事長 江藤文夫
 「緊急要望書」http://www.bekkoame.ne.jp/~domen/image/emergent.pdf

◆2006/03/10 診療報酬改定が知らされる
 「これほど大きな改定なのに、公開されたのは三月一〇日。実施は四月からです。病院が対応を検討する期間もほとんどなく、患者に十分知らせる時間もとらずに強行してしまったのです。」(浦田[2006])

◆2006/03/25 細井匠(理学療法士)
 『朝新聞』声欄(東京本社版)

◆2006/03/28 疾患の発症日を4月1日するとの通達(これまでリハビリテーションを続けてきた人についてても、すべて算定のスタートを4月1日からとする)

◆2006/04 診療報酬改定 脳卒中者等のリハビリテーションが発病後180日までに制限される
 (多田[20071210][2010:63ff etc.]etc.)

 cf.http://www.st.rim.or.jp/~success/tadatomio2_ye.html

◇「残された課題は多い」
【特集・第4回】 2008年度診療報酬改定(4)
土田武史さん(早稲田大学商学部教授)<下>
更新:2008/03/28 00:46 キャリアブレイン
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/15285.html;jsessionid=5B081E24820E8CB6B9B9FC64665336EB
http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-45.html

「――前回(06年度)の改定率はマイナス3.16%でした。
 きつかったですね。03年の閣議決定で診療報酬改定の抜本見直しを行うことになり、それが06年度から始まりました。マイナス3.16%でしたので、良く言えばメリハリの付いた改定、別の言い方をすればかなり強引な改定でした。その影響として、リハビリや7対1入院基本料の見直しなど、メリハリの付き過ぎた改革は後始末が大変だということが1つの反省材料になりました。
 […]
――06年度改定、具体的にはどのような失敗が挙げられますか。
 療養病床の再編やリハビリの逓減制などです。星野前会長の時代は改定率の議論が中心でしたから、コスト分析がベースでした。コストが安くなればそれを反映させる。病院を過度に儲けさせることはしないが、かといって赤字にさせることはしない。そういうコストを正確に反映した診療報酬体系が基本だったのですが、前回のように改定率がマイナス3.16%にもなると、明らかに医療費コントロールと政策誘導が強くなります。例えば、療養病床の医療区分1の点数を下げれば患者を介護保険に移行させるという流れをつくる。リハビリの逓減制もそうです。」

多田 富雄 2006/04/08 「リハビリ中止は死の宣告」
 『朝日新聞』2006-04-08 多田[2007:43-46]に再録
 http://my.reset.jp/~comcom/shinryo/tada.htm(×:201006)
 http://homepage2.nifty.com/ajikun/news/tdtmo.htm

 「私は脳梗塞の後遺症で、重度の右半身麻痺に言語障害、嚥下障害などで物も満足には食べられない。もう4年になるが、リハビリを続けたお陰で、何とか左手だけでパソコンを打ち、人間らしい文筆生活を送っている。
 ところがこの3月末、突然医師から今回の診療報酬改定で、医療保険の対象としては一部の疾患を除いて障害者のリハビリが発症後180日を上限として、実施できなくなったと宣言された。私は当然リハビリを受けることができないことになる。
 私の場合は、もう急性期のように目立った回復は望めないが、それ以上機能低下を起こせば、動けなくなってしまう。昨年、別な病気で3週間ほどリハビリを休んだら、以前は50メートルは歩けたのに、立ち上がることすら厳しくなった。これ以上低下すれば、寝たきり老人になるほかない。その先はお定まりの衰弱死だ。
 私はリハビリを早期に再開したので、今も少しずつ運動機能は回復している。
 ところが、今回の改定である。私と同様に180日を過ぎた慢性期、維持期の患者でもリハビリに精を出している患者は少なくない。それ以上機能が低下しないように、不自由な体に鞭打って苦しい訓練に汗を流しているのだ。
 そういう人がリハビリを拒否されたら、すぐに廃人になることは、火を見るよりも明らかである。今回の改定は、「障害が180日で回復しなかったら死ね」というのも同じことである。実際の現場で、障害者の訓練をしている理学療法士の細井匠さんも「何人が命を落とすのか」と3月25日の本紙・声欄(東京本社版)に書いている。ある都立病院では、約8割の患者がリハビリを受けられなくなるという。リハビリ外来が崩壊する危機があるのだ。
 私はその病院で言語療法を受けている。こちらはもっと深刻だ。講音障害が運動まひより回復が遅いことは医師なら誰でも知っている。1年たってやっと少し声が出るようになる。もし180日で打ち切られれば一生はなせなくなってしまう。口蓋裂の子供などにはもっと残酷である。この子らを半年で放り出すのは、一生しゃべるなというようなものだ。言語障害のグループ指導などできなくなる。
 身体障害の維持は、寝たきり老人を防ぎ、医療費を抑制する目的とするなら逆行した措置である。それとも障害者の権利を削って医療費を稼ぐというなら、障害者のためのスペースを商業施設に流用した東横インよりも悪質である。
 何よりも、リハビリに対する考え方が間違っている。リハビリは単なる機能回復ではない。社会復帰を含めた、人間の尊厳の回復である。話すことも直立二足歩行も基本的人権に属する。それを奪う改定は、人間の尊厳を踏みにじることになる。そのことに気がついて欲しい。
 今回の改定によって、何人の患者が社会から脱落し、尊厳を失い、命を落とすことになるか。そして、一番弱い障害者に「死ね」といわんばかりの制度をつくる国が、どうして「福祉国家」と言えるのであろうか。

 1934年生まれ。医学博士(免疫学)。「生命の意味論」「独酌余滴」など著書多数。」(全文)

 「この問題の発端は今年の三月の末の出来事でした。私にとっては驚天動地の通告があったのです。リハビリに通っていた病院の医師から、「あなたは四月一日からリハビリができません」といわれたのです。やっと三十メートルぐらい歩けるように回復したのですが、ここで止められたらまたじきに歩けなくなる。それどころか、リハビリを休めば立ち上がることもできなくなってしまうのは、すでに経験済みです。
 なぜリハビリが出来ないかと問いただしたら、四月から診療報酬が改定されて、一部の疾患を除いて、リハビリ医療に上限日数が設けられたからだと聞かされました。疾患によって違うが、私のような脳卒中では、発症から起算して、最大一八〇日(六カ月)で打ち切られるというのです。私<0048<はもう発症してから五年もたっていますから、真っ先に打ち切りです。小泉政権の医療改革の一環で、医療費削減のためだと説明されました。
 はじめはそんな乱暴なことは冗談だろうと思いました。リハビリはそんなに費用のかかっている医療ではないし、中止したら寝たきりになる人が多数いるからです。それに急に言われてもどうしようもない。しかも私たちは、力の弱い障害者です。いくらなんでも福祉国家を自称しているのに、そんなことをするわけがないと思いました。
 でもそれは本当だったのです。患者の七〇%が打ち切られた都立病院もありましたし、泣く泣く治療を諦めたものも続出しました。そんな患者には、鶴見さんのように中止したら寝たきりになり命を落とす人が大勢いました。
 私はあまりのことに驚いて、『朝日新聞』の「私の視点」に投書しました。四月八日に掲載されたこの投書には、「身体機能の維持は、寝たきり老人<0049<を防ぎ、医療費を抑制する予防医学にもなっている。医療費の抑制を目的とするなら、逆行した措置である」「今回の改定は、『障害が一八〇日で回復しなかったら死ね」というのも同じことである」「それとも、障害者の権利を削って医療費を稼ぐというなら、障害者のためのスペースを商業施設に流用した東横インよりも悪質である」と書いたのです。この投書は幅広い反響を呼び、私の予想しなかった国民的署名運動に発展しました。
 兵庫県の医師や患者会が行ったこの運動には、たったの四十日あまりで四四万四千の署名が集まりました。これは国民二九〇人に一人が署名したことになります。このときほど言葉の力を感じたことはありません。市民運動がもとになって、フランス革命も独立戦争も、きっと水俣訴訟も、こうして始まったに相違ありません。」(多田[200611]→石牟礼・多田[2008:48-50]、続きは↓「私は患者の皆さんと一緒に…」*)
*石牟礼 道子・多田 富雄 20080630  『言魂』 ,藤原書店,216p. ISBN-10: 489434632X ISBN-13: 978-4894346321 2310 [amazon][kinokuniya] ※

◆2006/04/28 「日数上限の適用除外」の対象を広げる通達
 「脳血管疾患等によるまひや後遺症を呈している患者であって、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合であれば」、日数上限の適用除外となる「神経障害によるまひ及び後遺症に含まれる」

◆2006/04  『全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会機関誌』Vol.5 No.1  2006年 4月発行 特集1 平成18年度診療報酬改定と回復期リハ 特集2 回復期リハ病棟からの発信 【在庫なし】

◆2006/05/14 リハビリ診療報酬改定を考える会、打ち切り制度の撤廃をめざして全国で署名活動を開始

◆2006/07決定 小泉内閣「骨太の方針2006」医療費適正化計画(2006年7月決定)。2011年までの5年間で医療費を1.1兆円削減(年間2,200億円の削減)することを打ち出す。

◆20060731 鶴見 和子死去

◇「リハビリ制限は、平和な社会の否定である」(多田[200612→2007:111-124])
 『世界』二〇〇六年一二月号

 「社会科学者の鶴見和子さんは、一一年前〔注=一九九五年〕に脳出血で左半身麻痺となった。一〇年以上もリハビリテーション(リハビリ)の訓練をたゆまず行い、精力的に著作活動を続けていたが、今年になって、理学療法士を派遣していた二ヶ所の整形外科病院から、いままで月二回受けていたリハビリをまず一回だけに制限され、その後は打ち切りになると宣言された。医師からは、この措置は小泉さんの政策ですと告げられた。
 その後間もなくベッドから起き上がれなくなってしまい、二ヶ月のうちに、前からあった大腸癌が悪化して、去る七月三〇日に他界された。直接の死因は癌であっても、リハビリの制限が、死を早めたことは間違いない。<0111<
 その証拠に、藤原書店刊『環』に掲載された短歌に、

 政人[まつりごとびと]いざ事問わん老人[おいびと]われ生きぬく道のありやなしやと

 寝たきりの予兆なるかなベッドより
 おきあがることできずなりたり

 とある。同じ号の、「老人リハビリの意味」という最後のエッセイでも、「これは、費用を節約することが目的ではなくて、老人は早く死ね、というのが主目標なのではないかだろうか。(中略)この老人医療改定は、老人に対する死刑宣告のようなものだと私は考えている」と述べている(『環』二六号、藤原書店)。
 私は、この痛ましい事件の発端となった、リハビリ診療報酬改定の流れをもう一度振り返って、問題点を見直してみたい。」(多田[200612→2007:111-112]、[]内は本ではルビ)

◇第三信 老人が生き延びる覚悟 42-58

 「[…]鶴見和子さんの訃報が届きました。往復書簡集『邂逅』で、一年余りテープでの謦咳に接してきました。私は声を忍ん<0043<で泣きました。心の心棒が一本外れてしまったような気がしたからです。
 その鶴見さんの死が、何と私がいま戦っているリハビリテーション(リハビリ)の日数制限の、最初の犠牲者であったことが、私の胸に突き刺さりました。
 鶴見さんは、十一年前に脳出血で左半身麻痺となったのですが、精力的にはリハビリ治療をうけながら、著作活動を続けました。往復書簡でも、毎回私に新しい観点を教えてくれました。私には、日本のエコロジーの精霊「山姥」の化身に見えました。十年以上も苦しいリハビリの訓練に耐え、力強く私たちを叱咤してくれていました。しかし今年になって、理学療法士を派遣していた整形外科病院から、いままで月二回受けていたリハビリを、まず一回だけに制限され、その後は、打ち切りになると宣言されたそうです。医師からは、この措置は小泉さんの政策ですと告げられました。
 その後、間もなくベッドから起き上がれなくなってしまい、二カ月ばか<0044<りのうちに、前からあった大腸癌が悪化して、去る七月三十一日に他界されたのです。直接の死因は癌であっても、リハビリの制限が、死を早めたことは間違いありません。
 藤原書店刊の本誌『環』(二六号)に掲載された短歌にも[…]」(多田、石牟礼・多田[2008:44-45])

◆2006/06/30 「リハビリ診療報酬を考える会」44万筆をこえる署名を厚労省に提出

 「本年4月の診療報酬改定では、必要に応じて受けるべきリハビリ医療が、原則として、発症から、最大180日に制限されてしまいました。個々の患者の、病状や障害の程度を考慮せず、機械的に日数のみでリハビリを打ち切るという乱暴な改定です。それも、国民にほとんど知らされることなく、唐突に実施されてしまったのです。
 障害や病状には,個人差があります。同じ病気でも、病状により、リハビリを必要とする期間は異なります。また、リハビリ無しでは、生活機能が落ち、命を落とすものもいます。障害を負った患者は、この制度によって、生命の質を守ることが出来ず、寝たきりになる人も多いのです。リハビリは、私たち患者の、最後の命綱なのです。必要なリハビリを打ち切ることは、生存権の侵害にほかなりません。
 こうした国民の不安に対して、除外規定があるから問題はない、と、厚労省は言います。しかし、度重なる疑義解釈にも関わらず、現場は混乱するだけで、結果として大幅な診療制限になっているのです。
 このままでは、今後、リハビリ外来や、入院でのリハビリが崩壊し、回復するはずの患者も、寝たきりになる心配があります。リハビリ医療そのものが、危機に立っているのです。
 さらに、厚労省は、医療と介護の区別を明確にした、と言います。しかし、医療のリハビリと、介護のリハビリは、全く異質なものです。介護リハビリでは、医師の監視のもとで、厳格な機能回復、維持の訓練のプログラムを実施することは出来ません。
 リハビリは、単なる機能回復ではありません。社会復帰を含めた、人間の尊厳の回復なのです。リハビリ打ち切り制度は、人間の尊厳を踏みにじるものです。
 私達、リハビリ診療報酬改定を考える会は、この、打ち切り制度の撤廃をめざして、5月14日から、全国で署名活動を行いました。その結果、わずか40日余りで、40数万人もの署名を集めることができました。これは国民の300人に一人が署名したことになります。
 この、国民の声は、もはや圧殺できるものではありません。
 厚労省は、非人間的で、乱暴な、この、制度改定を謙虚に反省し、リハビリ打ち切り制度を、白紙撤回すべきであります。私達は、これを、強く要請します。
            平成18年6月30日
            リハビリ診療報酬改定を考える会・代表  多田富雄」(全文)

 「私は患者の皆さんと一緒に、六月三十日に厚労省を訪ね、担当者に車二台分の署名簿を手渡し、声明文を電子音声で読み上げました。そのとき泣<0050<く泣く苦しみを訴えていたポリオの後遺症の女性は、まもなく動けなくなり、入院してしまいました。鶴見さんのように命を落とした人もいます。
 しかし狡猾な厚労省は、机上の空論を並べるだけで、何も対策を講じようとはしません。その間に、二十紙を超える新聞が反対の社説を掲げました。テレビなど、マスコミの取材にも、政府は見直しをするつもりがないといっています。
 そこで私のような老人は智恵を出し合って、次々に新しい手を繰り出し糾弾しなければなりません。いまは一方の当事者でありながら沈黙を守っているリハビリ医学会を攻撃しています。本来なら真っ先に反対しなければならないのに、声を上げようとしない。それは間接的に、打ち切りを支持していると思われても仕方ありません。一部の幹部が厚労省の顔色をうかがっているからです。それを糾弾するために『世界』、『現代思想』などに論文を書き続けています。」(多田、石牟礼・多田[2008:50-51]*)
*石牟礼 道子・多田 富雄 20080630 『言魂』,藤原書店,216p. ISBN-10: 489434632X ISBN-13: 978-4894346321 2310 [amazon][kinokuniya] ※
 cf.日本リハビリテーション医学会 http://www.jarm.or.jp/
 ※多田頁に引用

◆2006/07 『全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会機関誌』VVol.5 No.2  2006年 7月発行 特集1 診療報酬改定2006―リハ制度改変後の現場から

◆2006/07/31 「診療報酬改定はリハをどう変えるか――第43回日本リハビリテーション医学会開催」
 『週刊医学界新聞』2693
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2693dir/n2693_01.htm

◆2006/07/31 鶴見 和子逝去

多田 富雄 第三信「老人が生き延びる覚悟」 42-58
 200611 『環』27

 「[…]鶴見和子さんの訃報が届きました。往復書簡集『邂逅』で、一年余りテープでの謦咳に接してきました。私は声を忍ん<0043<で泣きました。心の心棒が一本外れてしまったような気がしたからです。
 その鶴見さんの死が、何と私がいま戦っているリハビリテーション(リハビリ)の日数制限の、最初の犠牲者であったことが、私の胸に突き刺さりました。
 鶴見さんは、十一年前に脳出血で左半身麻痺となったのですが、精力的にはリハビリ治療をうけながら、著作活動を続けました。往復書簡でも、毎回私に新しい観点を教えてくれました。私には、日本のエコロジーの精霊「山姥」の化身に見えました。十年以上も苦しいリハビリの訓練に耐え、力強く私たちを叱咤してくれていました。しかし今年になって、理学療法士を派遣していた整形外科病院から、いままで月二回受けていたリハビリを、まず一回だけに制限され、その後は、打ち切りになると宣言されたそうです。医師からは、この措置は小泉さんの政策ですと告げられました。
 その後、間もなくベッドから起き上がれなくなってしまい、二カ月ばか<0044<りのうちに、前からあった大腸癌が悪化して、去る七月三十一日に他界されたのです。直接の死因は癌であっても、リハビリの制限が、死を早めたことは間違いありません。
 藤原書店刊の本誌『環』(二六号)に掲載された短歌にも[…]」(多田、石牟礼・多田[200806:44-45])

◇「この問題の発端は今年の三月の末の出来事でした。[…]はじめはそんな乱暴なことは冗談だろうと思いました。[…]でもそれは本当だったのです。患者の七〇%が打ち切られた都立病院もありましたし、泣く泣く治療を諦めたものも続出しました。そんな患者には、鶴見さんのように中止したら寝たきりになり命を落とす人が大勢いました。」(多田[200611a]→石牟礼・多田[2008:48-49])
 「私は患者の皆さんと一緒に、六月三十日に厚労省を訪ね、担当者に車二台分の署名簿を手渡し、声明文を電子音声で読み上げました。そのとき泣<0050<く泣く苦しみを訴えていたポリオの後遺症の女性は、まもなく動けなくなり、入院してしまいました。鶴見さんのように命を落とした人もいます。」(多田[200611a]→石牟礼・多田[200806:49-51]、前の「命を落とす人が大勢いました」の続き)

◇「鶴見和子さんは[…]一〇年以上もリハビリテーション(リハビリ)の訓練をたゆまず行い、精力的に著作活動を続けていたが、今年になって、理学療法士を派遣していた二ヶ所の整形外科病院から、いままで月二回受けていたリハビリをまず一回だけに制限され、その後は打ち切りになると宣言された。医師からは、この措置は小泉さんの政策ですと告げられた。
 その後間もなくベッドから起き上がれなくなってしまい、二ヶ月のうちに、前からあった大腸癌が悪化して、去る七月三〇日に他界された。直接の死因は癌であっても、リハビリの制限が、死を早めたことは間違いない。
 その証拠に、藤原書店刊『環』に掲載された短歌に[…]
 同じ号の、「老人リハビリの意味」という最後のエッセイでも、「これは、費用を節約することが目的ではなくて、老人は早く死ね、というのが主目標なのではないかだろうか。(中略)この老人医療改定は、老人に対する死刑宣告のようなものだと私は考えている」と述べている。」(多田[200612→200712:111-112]、鶴見の文章は鶴見[200608])

上田 敏 200706 「鶴見和子さんは二〇〇六年七月三十一日、宇治の「京都ゆうゆうの里」で大腸癌のため<0007<に八十八歳の生涯を閉じられた。辞世の歌は七月二十四日の[…]」(上田「「回生」を生きた豊かな十年」、二〇〇七年六月、鶴見・大川・上田[200708:7-8])

鶴見 和子  20060830 「老人リハビリの意味」,『環』Vol.26 20060830 特集:「人口問題」再考
 http://www.fujiwara-shoten.co.jp/kan/kan26.htm

 政人いざ事問わん老人われ生きぬく道のありやなしやと
 
 ねたきりの予兆なるかなベッドより
 おきあがることできずなりたり

 「私のような条件の老人は、リハビリテーションをやっても機能が全面的に回復するのは困難である。しかし、リハビリテーションを続けることによって、現在残っている機能を維持することができる。つまり、老人リハビリテーションは、機能維持が大切なのである。もしこれを維持できなければ、加齢とともに、ますます機能は低下する。そして、寝たきりになってしまう。」(p5)

 「戦争が起これば、老人は邪魔者である。だからこれは、費用を倹約することが目的ではなくて、老人は早く死ね、というのが主目標なのではないだろうか。老人を寝たきりにして、死期を早めようというのだ。したがって、大きな目標に向かっては、この政策は合理的だといえる。そこで、わたしたち老人は、知恵を出し合って、どうしたらリハビリが続けられるか、そしてそれぞれの個人がいっそう努力して、リハビリを積み重ねることを考えなければならない。」(同、p6)

 「これは、費用を節約することが目的ではなくて、老人は早く死ね、というのが主目標なのではないかだろうか。([…]この老人医療改定は、老人に対する死刑宣告のようなものだと私は考えている」(鶴見[200608],多田[200612→200712:111-112]に引用)

◆浦田 修(福岡・みさき病院理学療法士) 2006/10 「リハビリは社会復帰を含めた人間の尊厳回復です――月に6割減収の診療所 訪問リハを中止、縮小も」,『いつでも元気』No.180
 http://www.min-iren.gr.jp/syuppan/genki/180/genki180-03.html
 「目に見えるような「回復期」がすぎ、「維持期」に入ると、維持すること自体、努力が必要になってきます。続けるなかで、新たな回復も生まれます。それが途中で打ち切られると、関節が固まったり、筋力が低下したりする合併症が急激に進行する恐れがあります。
 また、障害をもってしまった患者さんにとってはリハビリが生きる希望となっている方も少なくなく、それを打ち切ることは精神的な打撃になりかねません。」
「日本福祉大学の二木立教授や、藤田保健衛生大学のリハビリ医学講座の才藤栄一教授は「維持期のリハビリは必要であり、(長期間にわたる効果のないリハビリが行なわれていることを防ぐのが目的なら)“月に○回まで”という回数制限を設けたうえで、長期のリハビリは認める改定が必要だった」と指摘していますが、まさにそのとおりだと感じています。」(浦田[2006])

◆2006/10/26 リハビリ日数制限の実害告発と緊急改善を求める集会
 リハビリ診療報酬改定を考える会 ・ 全国保険医団体連合会 共催
 日 時 : 2006年10月26日(木)  12:30〜14時
 会 場 : 衆議院第1議員会館 第1会議室
 参加者 : 国会議員 患者団体 医療団体

◇主催者挨拶文
 http://blog.goo.ne.jp/craseedblog/e/31872dddf7348bd70c7f15fa8342a7c4

 「本日は、ご多忙のところお集まり頂き、ありがとうございます。私は主催者の一人、リハビリ診療報酬改定を考える会の事務局役を勤めておりますNPO法人リハビリ医療推進機構CRASEED代表の道免でございます。
 平成18年度診療報酬改定では現代史上まれに見る患者切り捨てが始まりました。皆様ご承知の通りのリハビリ打ち切り制度です。
 いまだかつて、必要な医療を途中で打ち切ることが、制度として作られたことはなかったと思います。
 しかも、国会での議論もないまま、官僚とごく一部の学者主導で、断行されてしまいました。
 この問題は与野党で対立する事案ではなく、患者の立場を思う良心的な国会議員の皆さんの力で、官僚の勇み足を正す事案であると考えています。
 本日は、実害の実態を報告して頂きますので、国会議員の皆様にも実態を把握して頂き、政治主導で、一日も早く、打ち切り制度を緊急停止させるきっかけになれば幸いです。
 よろしくお願い致します。」

◇多田富雄のメッセージ(考える会事務局 道免和久代読)
 「リハビリ日数制限の実害告発と緊急改善を求める集会」にお集まりの皆さん。ご来賓の皆様方!体調不良のため、メッセージをお送りすることをお許しください。
 今回の診療報酬改訂によるリハビリ打ち切りは、障害を負った患者の「再チャレンジ」の機会を奪い、ひいては生存権まで危うくする非人間的なものです。除外規定はあるものの、患者の個別性をまったく無視し、一律機械的に、日数で診療を打ち切るという乱暴な制度は、決して容認できるものではありません。
 国民的な署名運動を無視し、苦しんでいる患者の声を聞こうとしない厚労省に、断固として緊急な改善を求めていこうではありませんか。
 すでに有名な社会科学者の鶴見和子さんのような、犠牲者も出ています。彼女は脳卒中でリハビリを続けていましたが、リハビリが制限されてまもなく、起き上がれなくなって、去る7月に亡くなったのです。このように放置すれば急速に機能を失い、命の危険がある患者も多いのです。私たちは調査の結果など待っていられない。こんな悲劇を繰り返さぬために、すぐさま緊急停止ボタンを押すように、働きかけましょう。
 私たちの声は小さくても、いま確実に国民に浸透しつつあります。メディアも注目しており、国会質問では幾度となく取り上げられています。すでに厚労省も無視できない訴えとなっています。
 そこに流れているのは、署名に参加した44万人の声のみならず、多くの心ある国民の叫びでもあります。この改定の緊急の見直しを実現させるために、国会議員の皆様の力強いご支援をお願いし、また患者、医師の悲痛な声が、為政者の良心に届くようメディアの方にもお願いします。
2006年10月26日
リハビリ診療報酬改定を考える会代表
東京大学名誉教授 多田富雄」

◆2006/11/02 参議院厚生労働委員会

 165-参-厚生労働委員会-3号 平成18年11月02日
 「○福島みずほ君 新たな難病の人たちに対する対応も重要ですが、人数が増えたからという一点をもって、難病で今までやってきたのに、今度治療費を負担せよとなることの現実的な負担というのもこれも大変大きいです。
 厚生労働省が、今だれだって難病にかかる可能性があるわけですから、難病認定されている人たちを切り捨てることがないように、かつ研究対象と治療の補助を合体させる今の制度を見直すようにお願いをいたします。今日の質問も、その制度設計そのものもありますが、パーキンソン病、そして潰瘍性大腸炎、この二つに関して難病認定を外さないでほしいということを強く要望いたします。
 次に、リハビリの打切りについて質問いたします。これは予算委員会でかつて私自身が質問をしたところです。
 リハビリの打切りをやるに当たって、長期のリハビリは効果がないというデータが出たのでしょうか。長期のリハビリは効果がないなどの調査をした上で、このリハビリの打切りに踏み切られたんでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) 今回のリハビリの見直しにおきまして算定日数上限を設けましたのは、これは高齢者リハビリテーション研究会専門家会合におきまして、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういう御指摘があったということがまず出発点でございます。
 具体的にそのリハビリの終了した実績を見てみますと、例えば脳卒中におきましては百日で約八〇%の方が治療を終了しているということがあったということで、標準的なそういった治療期間というものを勘案してそれぞれ日数を定めたと、こういう経緯でございます。
○福島みずほ君 長期のリハビリは効果がないというのは、どういうデータが出ていますか。
○政府参考人(水田邦雄君) これにつきましては、正に専門家の御意見として先ほど申し上げましたようなデータもございましたし、専門家の御意見として経験的にそういうことが分かっているということで中医協にお諮りし、定めたものでございます。
○福島みずほ君 八割の人が百八十日以内である程度リハビリができているということも聞いたことがありますが、それも一つの理由でしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) それは、今ただいま私が申し上げたとおりでございます。
 それで、その残りのそれじゃ二割の方どうするかということでございますけれども、それにつきましては、これも何回か御答弁させていただいておりますけれども、除外疾病というものを設けまして、続ければ改善されるというようなことにつきましては、例えば脳卒中につきましてはそういった手だてはできるという仕掛けになってございます。
○福島みずほ君 そうではなくて、二割の人たちがもう現場で切り捨てられているという実態が起きています。これは今までもほかの方の質問で出ていますが、八割の人がある程度効果が出たら、あとの二割はいいのかというふうに思います。
 実際、鶴見和子さん、もう亡くなられましたが、彼女は三月の段階で、あなたのリハビリは打ち切られます、これは小泉さんの政策ですと医者に言われて、二週間後に立ち上がれなくなって、そしてそれから数か月後に亡くなってしまいました。これは、御存じの、厚生労働省が知っているとおり、三月三十一日に打切りになるのではないかという、まあ誤ったというかそういうのがあり、四月一日でリセットし直して、どんな人も四月一日から最高限百八十日で打ち切ると、こうやったわけです。
 現場であなたはリハビリは打ち切られますと、そういうことを現場で言われている人たちが多いんですけれども、そういう実態は御存じでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) 事実関係は今先生が申されたとおりでございまして、三月時点で四月に打ち切るということはあり得ないことでございます。したがいまして、それは現場において医師なり医療機関と患者の間のコミュニケーションが悪かった、あるいは私どもからの情報発信力が弱かったのかもしれません。その点については今後とも取り組まなきゃいけないことだと思っておりますけれども、その意味では、正しい情報が届かなかったということが、それが定性的にはあったかと思います。
○福島みずほ君 いや、現場で非常に混乱が生じていて、実際私もこの通知をいただいていますが、規定する疾患とそれ以外というものがよく実際分からないんですね。例えば、「神経疾患等が含まれる。」という場合の「等」というのに一体何が入るのか。言語障害などの発達障害は入るんだけれども、構音障害は入らないとか、現場でも、その「等」というのが一体これは入るのか入らないのか。この通知も、「等」などが入っているために、一体これは百八十日で打ち切られるものなのか打ち切られないものなのか、これをきちっと、私たちもこの通知を見ても、法文として、通知として解釈しようにも実はこれは非常に分かりづらいんです。「等」というのが一体どっちなのか。自分はどっちに入るのか。
 現場で物すごく頑張って、自分のリハビリを延長してくれと言ってかち取った人もいます。でも多くは、医者に、いや、リハビリは百八十日で打切りですと、こう言われれば、それでみんなはあきらめるか我慢しているという状況です。百八十日でリハビリを打ち切るというこのことそのものが実は間違っていると思いますが、いかがですか。
 あるいは、ちょっと二つのことを同時に質問して済みませんが、現場で頑張った人はできるかもしれない、でも、この通知をよく読んでいる医者も実は少ないでしょうし、構音障害が入るかどうか一つ取っても、入らないと言われていますが、頑張ってかち取ったという人もいて、これはもう余りに患者さんにとって負担が多過ぎるものだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(水田邦雄君) まず、その百八十日で一律打切りということは、これは大臣からもございましたけれども、正しくないわけでありまして、その時点でその五十を超える疾患ないし症状に当たるかどうか、これは医師の判断によるわけでありますけれども、そこの判断がまずあるわけでございます。したがって、その個々に見なきゃいけないということでございまして、その点につきまして現場の方が徹底していないのであれば、まず、それは私どもの方から徹底をさせていきたいと思っております。
 それから、それじゃ、そのときの基準となるその五十の疾患ないし症状ということについて、などが入っていると、「等」が入っているということでございます。これは具体的に今ここでその「等」に何が入っているかというのを全部申し上げることは難しいわけでございますけれども、やはりこれはひとつ社会保険事務局に個別のケースに即して照会をいただくということが手順としてはあろうかと考えております。
○福島みずほ君 いや、非常にやっぱり分かりづらいし、実際は打ち切られています。
 例えば、これも疾患別リハビリテーション料の算定日数上限規定の対象から除外される疾患として、失語症とかなんとかってこう幾つか、七つのものが列記をされています。でも、これを医者が見れば、これ以外は百八十日の中に入ると通常はこれは読めてしまうと。
 ですから、一律に打切り、画一的に打切り、おかしいじゃないかと私が質問をすれば、画一的でないと言うけれど、この厚生労働省の通知は一応配慮しろとは書いてありますが、こういうものは除外されるとしか書いてないので、現場では画一的、一律的に除外がされています。
 このことについての認識はいかがですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 七つというのはよく分かりません。
 この診療報酬の改定の告示におきましては五十の疾患、五十を超える疾患、それから症状というものが列挙されておりますので、現場の専門家はそれを見て判断をしているものと思います。
 ただ、現場で必ずしもそれがそのように履行されていないんじゃないかという御指摘、これは正直申し上げまして現場でどういった運用がなされているか不明なところもあるわけでございますんで、そこのところは、やはりこの規定に照らして適切に運用するように私どもの方から必要があれば繰り返し申し上げたいと思います。
○福島みずほ君 今、これは別紙として厚生労働省からもらった一連の資料ですが、これがきちっと現場で運用をされていないということもあると思いますが、そもそも制度設計に無理なわけです。自分が除外規定に当たり、かつ、あるいは除外規定に当たらなくても、何とかリハビリを認めさせてくれというのであれば現場で闘うしかないわけで、実際リハビリを受けている人にはそんな余力がなかなかないわけで、現状では、あなたは百八十日で打切りですと言われて百八十日で打切りになっています。
 こういうことを診療報酬の改定で出すことそのものが間違っているというふうに思っています。このリハビリの打切りについてデータがあったというふうにおっしゃいますけれども、私の知るところでは根本的なそのデータの開示をまだいただいておりません。是非それは教えていただきたいですが、余りきちっと状況を把握せず、十分調査をせずにこのリハビリの打切りに踏み切ったんではないかと私は思っております。
 ただ、こういう質問を繰り返しているのは、是非、その現場から四十四万署名が集まって、現場で混乱し、リハビリの打切りがされていて、症状が固定したり、なかなか起き上がれなくなったり、そんな声をたくさん聞くからです。もちろん無駄なリハビリがゼロだとは言いません。しかし、百八十日ってなりますが、実際は、例えば肺炎にかかったりいろいろして、六か月の間にリハビリが十分行われなくて、その後リハビリが必要という人たちの話もたくさん聞いています。
 大臣、このリハビリの診療報酬の改定については、二月までの段階でもう一回調査をするというふうに厚生労働省は答弁をしていますが、これでは間に合わないというふうに考えています。いかがですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 事実関係だけまず私から述べたいと思いますけれども、これにつきましては、中医協の結果、診療報酬改定の結果検証部会において調査をすることにしております。その調査につきましては、既にこれは開始をしてございます。
 ただ、その結果を評価して最終的に取りまとめるのに時間を要するということでございまして、調査につきましてはもう速やかに実施をしているところでございます。その結果を踏まえまして適切な措置を講じていきたいと、このように考えております。
○福島みずほ君 もう調査をしているんであれば、なぜ二月にというか、これはいつごろ調査結果が出ますか。
○政府参考人(水田邦雄君) ただいま申し上げましたように、調査結果の取りまとめまでには時間を要しますので、二月に取りまとめということを申し上げているわけでございます。
○福島みずほ君 そうしたら、その調査結果というのは、リハビリを百八十日で打ち切ったことの調査結果ですか。どの調査結果ですか。
○政府参考人(水田邦雄君) それは、正に患者の状況でございます。この算定日数上限に掛かられた方はどのくらいおられるかということもございますし、その理由なり、そういったことを調査をするということでございます。
○福島みずほ君 私たちはその調査を待って二月にということをずっとこの委員会でも聞かされていたんですが、その調査は一体いつ行われたんですか。
○政府参考人(水田邦雄君) ただいま、先ほど答弁いたしましたとおり、既に調査は開始をしてございます。調査票発送時期は十月末とするということでございますので、これはもう既になされているものと思います。
 それから、十一月中に記入をしてもらって十二月中に回収を予定すると、こういうことでございます。
○福島みずほ君 調査の中身については分かりましたが、是非、厚生労働省には、ペーパーだけの調査ではなくて、もっと現場で何で四十四万人の署名が集まったのかということを是非考えていただきたいというふうに思っています。でないと、全然実態が出てきません。障害者自立支援法に関しても、介護保険についても、障害者自立支援法についての調査結果についても、現場から出てきているのとは、私たちが把握しているのはちょっとずれております。
 障害者自立支援法についても一言お聞きをいたします。」

◆2006/11/14 日本リハビリテーション医学会「診療報酬改定に関するアンケート調査の結果」

◆2006/11/21 日本リハビリテーション医学会理事長→柳澤伯夫厚生労働大臣
 「平成18年診療報酬改定におけるリハビリテーション料に関する意見書」

平成18年11月21日
厚生労働大臣 柳澤 伯夫 殿
社団法人日本リハビリテーション医学会
理事長 江藤 文夫
「平成18年診療報酬改定におけるリハビリテーション料に関する意見書」
(中略)
意見項目
 1.疾患別リハビリテーション診療報酬体系のなかに、「総合リハビリテーション施設」を取り入れることが必要です。
 リハビリテーション医療は障害を横断的かつ総合的に扱うことが多く、疾患別診療報酬体系の上位概念として、包括的、計画的に各種のリハビリテーションアプローチが可能な「総合リハビリテーション」を位置づけることが、サービスを効果的・効率的に提供するために不可欠です。
 「総合リハビリテーション施設」においては、医師を中心に、各専門職によるチームアプローチとカンファレンスなど、系統だったシステムにより質の高いリハビリテーション医療の提供が可能であり、本学会の調査においても総合的アプローチの有効性が示されています。
 現行の疾患別体系には、分類疾患の重複やリハビリテーションを必要とする重要な病態が入っていないなど、多くの問題が指摘されています。これらの問題は「総合リハビリテーション施設」を適切に位置づけることにより解消可能と考えます。
 2.算定日数制限は問題症例を生み出す恐れがあり、見直しが必要です。
 算定日数制限を疾患別に一律に定めることは主治医の個別診断に基づく判断を制限し、問題症例を生み出すことが危惧されます。算定日数の上限を超えてもリハビリテーション医療が必要な状態は多々あり、個別性が尊重されるシステムが必要と考えます。算定日数上限以降をゼロにするのではなく、実施頻度をきめ細かく規定するなどにより、現実に即したシステム作りが可能になると思われます。
 特に外来例において、リハビリテーションの継続が可能なシステムを保障することは入院期間の短縮につながるだけでなく、糖尿病や高血圧に対する服薬管理などと同様に、利用者の地域生活を支援する上で不可欠と考えます。
 介護保険制度に於るリハビリテーションの供給体制が不十分な現状で、医療保険における算定日数上限を設定することは、維持されるべき身体機能を低下させ、医療費の増大を招くとともに、国民の健康・福祉の向上という理念にそぐわないと考えます。
 3.代替医療者の参入緩和は、国民が専門職による質の高いリハビリテーションを受ける機会を減じる恐れがあり、慎重な対応が必要です。
 あん摩マッサージ指圧師等に対し、数日間の講習により理学療法士等に準じた診療報酬請求を認める制度は、リハビリテーション医療の質を低下させる恐れがあり、医療の質的向上を目的とした今回の改定趣旨にそぐわないと考えます。
 4.理学療法・作業療法・言語聴覚療法の削除は専門性に係わる重要な課題であり、見直しが必要です。
 「理学療法」「作業療法」「言語聴覚療法」の項目が診療報酬表から削除されたことは、実質的にそれぞれの治療を担う専門職の専門性を否定することに繋がりかねず、診療報酬体系にその専門職名を冠した療法料を復活させる必要があると考えます。」

◆2006/11/28 参議院厚生労働委員会
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/165/s069_1128.html

 「急性期、回復期に手厚いリハビリを認めたのに対して、維持期の患者に上限日数<0017<を決めたのは、リハビリを続けても目立った効果が期待できないからと繰り返した。そもそもこの措置が決められたのは、「高齢者リハビリ研究会」の専門家によって、「効果の明らかでないリハビリが長期間にわたって行われている」という指摘があったからだと言われている。これも真っ赤な嘘であったことが後日わかった。
 これは、二〇〇六年一一月二八日の衆議院厚生労働委員会で、社民党の福島みずほ党首の質問で明らかにされたが、厚労省幹部永田邦雄保険局長の、ぬらりくらりとした答弁でうやむやにされた。議事録には書いてない合意があったというが、そんな合意がいつどこでなされたかなど、一切証拠はなかった。またそんな形で都合よく利用されていても、専門家と称する「高齢者リハビリ研究会」のメンバーのリハビリ医は、一言も反対しなかった。腰抜けというほかない。
 この「高齢者リハビリ研究会」は、日本のリハビリ医学の先駆者である上田敏氏が座長を務めている。鶴見和子さんに発病一年後からリハビリを実施し、何とか歩行機能を回復させた功績があるのに、一般患者には、半年で打ち切るという案に合意したとは考えられない。またそんな証拠はどこにもなかった。それなのにこの偽の合意が、このよ<0018<うに患者を苦しめていることに対し、一言も反対の声を上げないのは、学者として、また医師としての良心に恥じないのだろうか。」(多田[2007:17-18]、衆議院は参議院の誤り)

 以下議事録は国会図書館のHPの検索による
「○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
 感染症法に入る前に二点お聞きをいたします。
 まず初めに、リハビリの打切りの問題です。
 この点は何度か質問してきました。十一月二日、私の質問に対して水田政府参考人は、リハビリの打切りの、百八十日などの打切りの制度を導入した理由について、次のようにおっしゃっています。高齢者リハビリテーション研究会専門家会合におきまして、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういう御指摘があったということがまず出発点でございますと答弁をされています。
 本日に至るまで、この指摘の資料が出てきておりません。どういうことでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) 今回の診療報酬改定、リハビリテーションの見直しを行ったわけでございます。その中で算定日数上限が導入されたわけでございますけれども、その直接の契機と申しますか、これは今委員が引用されました高齢者リハビリテーション研究会の報告書で、長期にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われていると、こういう指摘があったわけでございます。ただ、より基本的に今回のリハビリテーションの診療報酬改定の基本にありますものは、最もその重点的に行われるべき急性期のリハビリテーション医療が十分に行われていないと、こういう指摘があったことを受けたものでございます。
 それで、それは全体関連しているものでございます。リハビリといいましても、やはり専門医あるいは理学療法士といった医療資源、限られているわけであります。そういった制約条件の中で、急性期に集中してリハビリテーションを実施するようにするために、一日当たりの算定単位数の上限を引き上げる一方で、この算定日数上限を設けまして、より計画的なリハビリに取り組んでいただけるような仕組みに今改めたところでございます。この早期リハビリの必要性につきましては、これは委員もお認めになると思いますけれども、教科書にも出ていることがございますし、研究報告も多数あるわけであります。
 したがいまして、それにつきましては委員にも提出させていただいたところでございます。
○福島みずほ君 はっきり言いますが、研究会の中の議事録を全部点検いたしました。急性期こそ集中的なリハビリ訓練が必要という指摘は石神委員という方がされています。それはそうだろうと。急性期こそ集中的なリハビリ訓練が必要だという指摘はそのとおりだと思います。
 しかし、水田参考人、あなたはずっと高齢者リハビリテーション研究会専門家会合において長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると指摘があったと言っています。しかし、どんなに議事録を点検しても出てきません。厚生労働省に今日まで何回も何回もこの指摘があったという資料を提出せよと言っていますが、今日に至るまで出てきておりません。これはどういうことですか。指摘がなかったにもかかわらず、勝手にそういう報告をしてリハビリの百八十日などの打切りを決めたのは問題ではないですか。
○政府参考人(水田邦雄君) その点につきまして精査をいたしましたところ、会議の場におきましては、この長期にわたる効果がないリハビリテーションに関して特段の意見は出されてございませんが、報告書の取りまとめ時におきまして委員の意見調整をする段階で記述が加えられ、特に各委員から異論が出されることなく合意に至ったものと、このように認識しております。
 さらに、診療報酬改定に当たりましては、これは中医協にも報告され、その点については説明をした上で今回の改定は定まったものでございます。
○福島みずほ君 いい加減にしてください。
 水田参考人ははっきりと、私の、答弁に対して繰り返し、しかも、これは十一月二日、この厚生労働委員会の答弁です。「今回のリハビリの見直しにおきまして算定日数上限を設けましたのは、これは高齢者リハビリテーション研究会専門家会合におきまして、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういう御指摘があったということがまず出発点でございます。」、議事録に一切出てこないんですよ、こういうことは。集中的なリハビリ訓練が必要だという指摘は出てきます。しかしこれは、この委員会のすべての方が急性期にこそ集中的なリハビリ訓練が必要だということに合意をされると思います。どんなに、ないんですよ、そういう指摘は。
 長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているという指摘、これはあったのか。今まで出てきていません。じゃ具体的にこういう資料があるのかと何回も今まで、本日まで、これは怪しいと思ったので聞き続けてきましたが、今まで資料も出てこないんですよ。
 つまり、私は何を言いたいかというと、根拠がないんですよ。議事録にも出てこないんですよ。だれも指摘していないんですよ。それを、なぜこの答弁の中で、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういう御指摘があったことが出発点だということをなぜ言えるのか。
○政府参考人(水田邦雄君) リハビリテーション研究会の会合でと申し上げたのは、その意見調整も含めたものであったとこの際は言わざるを得ないわけでございますけれども、私どもは、報告書で最終的に委員の合意が得られて提出されたものが、それが私ども意見の集約だと思っておりますので、正にそういった指摘があり、その指摘がリハビリテーション研究会の会合だけではなくて中医協というもう一つ別の場でも開陳され、それにつきましては議論として成立をしたわけでございますので、これにつきまして私どもが牽強付会であったというものではないと考えております。
○福島みずほ君 自民党も、自民議員がリハビリ制限検証連盟を発足させたというふうな記事が出ております。
 問題じゃないですか。その研究会の中でだれも長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているなんということを言った人いないんですよ。みんなこのリハビリの打切りで、みんなというかいろんな人がこのリハビリの打切りで苦しんでいます。
 水田局長ははっきり言っているわけじゃないですか。長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういう御指摘があった、指摘などないんですよ。やらせじゃないですか。つまり、ないんですよ。
 ないにもかかわらず勝手に報告書に書いて、そしてここで、なぜか、なぜかと聞いたらそういう御指摘があったと言うけれど、じゃどういう指摘があるのか。だれが、具体的にどこに長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているという実証研究があったのか。アンケート、例えば実態調査をしたらそういうのが出てきたのか。そういう資料は一切出てこないんですよ。どうですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 繰り返しになりますけれども、意見として示された、私どもは報告書そのものが専門家の意見であると考えておりますので、はっきりここに書いてある、長期にわたる効果がないリハビリテーション云々ということは言われているわけであります。これは委員の間で合意された事項でありますので、私どもが何か作ったというものではございません。
○福島みずほ君 私は、リハビリがあって、そのリハビリに基本的に原則として制限日数を付けるということはやっぱり物すごい変更だと思います。この極めて重要なことがその専門家会合においてだれも、だれもというか、長期にわたって効果が明らかでないリハビリがあるからということを言っていないわけですよ。それが報告書になぜか書かれていて、そして、私は、じゃ、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、そこに、どこにどういう実態があり、だれがどう指摘をし、どうしたのかって聞いても出てこない。議事録を全部見ましたが、出てこないんですよ。おかしいじゃないですか。
 要するに、私は、法律を作るには立法趣旨が必要である、制度の変更をするためには変更の理由が必要である。しかし、この委員会の中で、効果が明らかでないリハビリが行われている、でも私たちはその立証を示されていないんですよ。おかしいじゃないですか。
○政府参考人(水田邦雄君) その点につきましては、正に委員の共通認識であったがゆえにそういった報告書の文言がまとめられたものだと承知をしております。
 それから、今回はリハビリテーションに関しまして診療報酬改定が行われたわけでありますけれども、これは、全体マイナス改定の中でこれについては特に削減はしていないわけであります。その中で、一方で早期のリハビリを充実しなきゃいかぬと、この要請があったわけでありますんで、そのためにはやはり算定日数上限という考え方を導入して計画的にリハビリに取り組んでいただく、緊張感を持ってやっていただくというところで全体の整合性を保つ必要が診療報酬改定の場面においてはあったわけでございます
○福島みずほ君 繰り返しますが、急性期にこそ集中的なリハビリ訓練が必要である、早期のリハビリが重要である、これはだれも納得することです。しかし、その問題と、百日あるいは百八十日という期間制限を原則として設けるということは別のこと、段差があることじゃないですか。
 私がなぜこう言うかというと、水田局長はここの委員会で、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われると、こういう御指摘があったということがまず出発点でございます、しかし、繰り返しますが、専門家会合においてだれもそういう指摘をしていないんです。そして、私たちは国会議員ですから、国民に対して、国会議員に対して説明責任を有していると思うんですよ。どこに長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているという、どこにそういうのがあるのかと聞いても、あるいはだれがそういうふうなことを指摘、会合でしたのかと聞いても出てこないんですよ。資料がないものを私たちはどうやって信用ができるんですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 高齢者リハビリテーション研究会の委員のメンバー、これ自体は公表してございます。この委員の方々が合意をして報告書をまとめられたわけでありますから、その発言者ははっきりをしていると思います。私どもは、こういった現場の経験を積まれた方々の御意見は御意見として尊重するということでございます。
 ただ、データ云々に関しましては、むしろ私ども、早期リハビリを実現するために全体として効率化をする要素もなきゃならないということでこの算定日数上限を導入しようとしたわけでありますが、その日数の設定に当たりましては、平成十六年度のリハビリテーション・消炎鎮痛等処置に関する調査データを参考にいたしまして、関係学会等にも意見を聞いた上で定めたものでございます。
○福島みずほ君 委員会は議事録が公開されていますし、だれがどういう発言したか全部分かります。私が言っているのは、その中で長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているなんていう指摘はされていないんですよ。どこにも存在しない。この会議の中で一回も出てきていないし、証拠も出てきていないし、そういう発言をした人もいないんですよ。議事録には出ていない。それは厚生労働省も、そんなのはないと、出せない、ない、存在しないということを認めていますよ。あるのは、集中的なリハビリ訓練が必要だということだけです。でも、集中的なリハビリ訓練が必要だということと、それから長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているというのは全然別問題じゃないですか。
 厚生労働省は行政を担当するものです。ですから、審議会で出てこなかった意見を報告書にまとめるに当たっては、本当にそういう実態があるのかどうか、そしてそれに基づいて百日、百八十日という期間制限を設けることが妥当かどうかという政策判断をなさるはずですよね、なさるべきですよね。だって、そのことによって何十万、何百万、何千万という人が影響を受けるわけですから。
 今日に至るまでそういう言い方もデータも出てきていないんです。いかがですか。
○政府参考人(水田邦雄君) もう繰り返しになるわけでありますけれども、私ども、委員の意見は報告書に尽くされていると思っております。それは、会合というのは意見調整の場面であったかもしれません。そこはつまびらかにいたしませんけれども、そういったものが出ているわけでありますんで、それはそれとして受け止めていただきたいと思います。
 その上で、そういった専門家の経験に踏まえた意見を踏まえて、私ども政策判断として、一体の整合性ある早期のリハの重点化を図るということと併せまして、それを実現するために一体的な政策としてこの算定日数上限を入れたわけでございます。
 日数につきましては、先ほども言いましたように、データもございますし、関係学会とも調整の上定めたものでございます。
○福島みずほ君 データはないんですよ。長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われている。
 じゃ、このデータ、出してくださいよ。
○政府参考人(水田邦雄君) それは、繰り返し申し上げていますように、現場に精通した専門家の経験に基づく判断として申されたことだというふうに私何回も申し上げております。
○福島みずほ君 いや、不思議ですよ。会合で一切そういう議論も、記載も、一切そういう討論も、そういう発言もないんですよ。全くないんですよ、そういう発言が。そして、じゃそういうことを出せと言ったって出てこないんですよ。
 何でこういうことが盛られているのか。
○政府参考人(水田邦雄君) 議事録には載っておりませんけれども、一般論として申し上げまして、委員が共通認識として持っていることであれば、それは最終報告書の段階で意見集約、調整の段階でそれが報告書に盛り込まれるということはそれはあり得ることであろうし、今回正にこういった委員会の報告書としてまとめられたのが、その中にこういった記述があるということでございます。
○福島みずほ君 どうしてこのことをずっと聞いているかといいますと、このリハビリの打切りについてはいろんな人から声が上がっていると、先ほども言いましたが、自民党の中でもこの見直しの議連が発足しているわけです。
 なぜこういうことが導入されたかという、十分その実態の検証と影響の把握を厚生労働省はやったのかというそもそも論なんです。データを出せと言っても出てこない。会議、会合において指摘があった。でも、じゃ、専門家会合において指摘があった、だれがどういう指摘したんですか。どういうデータに基づいてどうなったんですか。会議で一切出てこなかった、議事録で出なかったことが突然出てくると、百八十日で打ち切るというのはどこでどういう判断をされたんですか。
○政府参考人(水田邦雄君) 繰り返しになりますけど、報告書はこのリハビリテーション研究会の委員がまとめられてございますので、私どもは報告書がすべてであると思っております。
 それから、百八十日という算定日数上限につきましては、これは専門家、関係学会にも意見を聴いた上で中医協にお諮りをして決めたものでございます。で、その基には平成十六年度のリハビリテーション・消炎鎮痛等処置に係る調査のデータを用いたものでございます。
○福島みずほ君 全く納得がいきません。初めに結論がありきか、どこかでとても無理をしたと、厚労省がどこかで見切り発車をしたんじゃないですか。全然そういう議論、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているなんていうことがないのに、私は、やはりこういう御指摘があったということが出発点だと、この委員会で趣旨を説明しているけれど、こんなことないんですよ、データも出てこなければ、だれも会議で指摘をしていない。この点については納得を本当にしません。
 大臣、私はこの点について予算委員会から始めずっと大臣に質問していますが、どうですか。これは見直す必要があるんじゃないですか。データすら出てきてないんですよ。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 今、水田局長との間の御議論、聞いておりまして、水田局長の言っているこの取りまとめの文書が、それが研究会の文書であるということは、これは御理解願いたいと思います。
 その上で申し上げますと、お医者さんがなおリハビリに効果があるとされる場合は、これは継続してリハビリをやっていただいて結構ですと、こういうことも同時に私ども申し上げておりますので、そういう個別判断にかからしめているということには一つの合理性があると我々は思っているということでございます。
○福島みずほ君 納得しません。
 百八十日、百日ということを導入することが、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われているということが出発点だと言っているわけです。その出発点に関して、納得いくデータも、こういうことがありますとかいうことは一切ないんですよ。ですから、理由の説明が、それを裏付ける資料が一切出てこない、そしてそのことと百日、百八十日に打ち切ったということにも飛躍があるというふうに考えております。
 これはずっと質問していますが、やはり納得いく質問がないし、今日に至るまで厚労省からはこういう客観的な指摘があったものは存在しませんというふうに、要するに報告書以外にですね、言われていて、それは余りにずさんな見切り発車であると言わざるを得ません。このリハビリの打切りについては見直しが早急にされるべきだということを強く主張します。
 次に、児童扶養手当の削減、母子家庭問題について一言お聞きをいたします。
 母子家庭の現在の状況についてどのように把握していますか。」

◆2006/11/28
 福島みずほのどきどき日記
 http://mizuhofukushima.blog83.fc2.com/blog-date-200611.html
 「TBSラジオ。厚生労働委員会において、リハビリの180日での打ち切りについて審議会でまったく審議がなかったことを指摘。この問題について11月2日の厚生労働委員会で水田健康局長は
 「今回のリハビリの見直しにおきまして算定日数上限を設けましたのは、これは高齢者リハビリテーション研究会専門会合におきまして、長期にわたって効果が明らかでないリハビリが行われていると、こういうご指摘があったということがまず出発点でございます」
 と答弁しているが、報告書で突如出てきた以外についてこのような記述・発言・裏付けるデータは今に至るまでまったく出てきていない。このことは担当者も認めていることである。まったくひどい。ごまかしの説明と答弁は許せない。」

◆200612 多田 富雄「リハビリ制限は、平和な社会の否定である」,『世界』2006-12→多田[2007:111-124])

◆2006末 リハビリテーション医学会声明

 「こんな事態になっても、日本医師会はずっと押し黙ったままです。腰抜けといわれても仕方ありません。リハビリテーション医学会の学者も、初めは知らんふりでした。私たちが騒ぎ立ててから、やっと昨年の末になって、気のぬけた声明を出しただけです。職責者として、また専門家として、恥ずかしくないのでしょうか。」(多田[200704]→石牟礼・多田[2008:108])

 
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 ■2007

◆2007 「やっと一年もたったころ、厚労省のお役人ではなく、保険診療の医療費を審議する中央社会保険医療協議会(中医協)」の土田武史会長が、見るに見かねて緊急の見直しを命じた。四十八万人の署名が提出され、難民と化した患者が出ていること、受け皿になる介護保険が不備であるという情報さえ知らされなかった縦割りの行政、制度の周知がなされなかったため、医療現場の混乱が起きている事実を知らされて、会長は早急に対策を講じなければなら<0239<ないと判断したのである。
 看過することはできないと認めた土田中医協会長の、ヒューマンな英断による緊急な見直しと仄聞した。厚労省や、支払い基金側の抵抗を押し切っての、異例の再改定であった。人間不信に陥ることの多かったこの事件で、唯一のさわやかなニュースだった。
 その後厚労省は」(多田[200707:239-240])

◆2007/03/14 診療報酬再改定

◇「リハビリ日数制限の見直し」『医療ニュース』72(医療教育情報センター)
http://www.c-mei.jp/BackNum/072n.htm

 「昨年4月の診療報酬改定で、脳卒中などの患者が医療保険で受けるリハビリが制限された。それまでは制限なく受けることができていたが、診療報酬改定によって一部の特定疾患を除き、90〜180日の日数制限が設けられてしまったのである。つまり急性期のリハビリは医療保険で、維持期リハビリは介護保険でという区別分担となった。
 しかし、改定後「医療保険のリハビリが必要な日数には病気の種類や個人差が大きい、また介護保険で行われるリハビリは医学的に十分とはいえない」という批判の声が高まり、現場の医師・患者から48万人の署名が厚労省に提出され、国会でも野党が激しく反対した。
 柳沢厚労相は3月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)に対し、リハビリテーション料の緊急見直しについて諮問を行い、即日答申を得た。厚労省は当初平成20年度の次回改定で見直しを考えていたが、異例の緊急改定となった。
 今回の緊急改訂では、リハビリにより改善の見込みがある患者は算定日数上限を超えた以後もリハビリを継続できるよう、現行の除外患者(筋萎縮性側索硬化症(ALS)、悪性関節リウマチなど約50種の特定疾患)に新たに急性心筋症梗塞、狭心症、慢性閉塞性肺疾患を追加した。これらの疾患以外でも改善の見込みがあると医師が判断したときは、リハビリの延長を認めるとした。
 さらに維持期リハビリが必要な若年患者や介護保険で適切なリハビリを受けられない患者を救うため、医療保険でも維持期リハビリができるようにするという。そのため原則月1回に限り算定できる包括点数として新たに「リハビリテーション医学管理料」を設定した。今回の答申後、中医協・土田武史会長は、リハビリ料に問題が生じたのは、医療保険と介護保険の連携が十分でなかったためと言っている。
 このことは「医療保険は早期リハビリを、介護保険は維持期リハビリを受け持つ」というポリシーを概念として捉えているからで、こうした役割分担で規制できない病状はいくらでもある。脳血管障害、心疾患などの後遺症のリハビリ、神経変性性疾患のリハビリ、高齢者認知症のリハビリなど病気によって一概に律することはできないことをもっと検討すべきである。
 厚労省も医療が保険局、介護は老健局という縦割りであることが「医療と介護」の間の風通しを悪くしているのなら、この両者間の綿密な連携が必要である。(NH)」
(No072;2007/03/19)(全文)

◆2007 予算委員会で長妻議員が質問(多田[2010:91])

◆2007 多田 富雄 第五信「ユタの目と第三の目」 95-114

 「介護と医療は、目的も手段も違います。私たちは医療を求める患者です。<0108<患者が医療を求めるのは、当然の権利、療養権です。そういう患者を診て、医療を施すかどうかは医師の裁量権の問題です。拒否すれば、医師法違反になります。
 こんな事態になっても、日本医師会はずっと押し黙ったままです。腰抜けといわれても仕方ありません。リハビリテーション医学会の学者も、初めは知らんふりでした。私たちが騒ぎ立ててから、やっと昨年の末になって、気のぬけた声明を出しただけです。職責者として、また専門家として、恥ずかしくないのでしょうか。
 何よりも、厚労省にリハビリ打ち切りの口実を与えたといわれる、「高齢者リハビリテーション研究会」と称する医学者の責任を問わなければなりません。自分がいってもいないことを根拠にされて、こんな制度が作られたのに、黙ったままなのです。私は実名をあげて告発しようと思います。
 科学者には、自分が関与したことには、責任を持たなければならない倫<0108<理があります。後で、そんなつもりはなかったといっても、結果の責任は免れません。利用されたことに気がついたとき、どうして抗弁しなかったのでしょうか。厚労省の役人が怖いのか、黙ったままです。
 ハンセン病裁判のときも、AIDS薬害のときも、私を含めて医学者は一言も発言しなかった。そのことは、苦い経験として私を打ちのめします。
 水俣病のときも、わかっていながら体制側にくっついて、患者を苦しめた医学者がいたことを、私は知っています。直接手を汚さなかったにしても、無関心を装った加害者は多かったでしょう。これが日本の医師、科学者の実情なのですね。
 もう黙って見過ごすことは出来ません。何とか言葉の力を信じて、発信し告発し続けます。リハビリ問題が、一般の人にはたとえ小さな問題であっても、これは基本的人権の問題です。」(多田、石牟礼・多田[2008:108-109]*)
*石牟礼 道子・多田 富雄 20080630 『言魂』,藤原書店,216p. ISBN-10: 489434632X ISBN-13: 978-4894346321 2310 [amazon][kinokuniya] ※

◆2007/01/15 『リハニュース』32 特集:診療報酬改定の影響について―リハ関連5団体の場合
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

◆才藤 栄一(日本リハビリテーション医学会理事・藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座) 2007/01/15 「日本リハ医学会の場合」,『リハニュース』32
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

 診療報酬改定から数か月が経過したが、安定状態に入ったとは言いがたい状況にあるのはご存知のことと思う。恐らく後日、今回の改定はリハ医療の大きな変曲点として認識されることになるだろう。改定内容について私個人が最も重要と考える点は、1)疾患別の単位化、2)総合リハ施設基準の廃止を含む施設基準の単純平坦化、3)各療法の独自算定の廃止、4)代替者の導入の大幅緩和、5)算定日数上限の設定であり、それ以外で注目すべき改定は、集団療法廃止、急性期患者の1日単位上限の緩和、従事者1日単位上限の緩和、回復期入院日基準の早期化、障害児・者のリハの新設、摂食機能療法の算定日数拡大、訪問リハの単位化である(総合リハビリテーション34巻5号「巻頭言」2006年)。
 ここでは、本医学会の社会保険等委員会特任理事(当時)として実際に関係諸機関と7か月間交渉にあたった立場で得た公にされていない事実にも私の責任において触れながら、私見を述べる。
 道免和久先生や患者さん方の算定日数制限に対する反対運動には敬意を表する。今までのリハ医療においてこのような運動は存在しなかったし、タイムリーだと思う。権利を主張しないと一部の勢力の利権で事が容易に決まってしまうほど「公」の機能が低下しているからである。ただし一点だけ指摘したい。私の知る事実から考える限り、日本リハ病院・施設協会の石川誠先生に対する批判は誤りである。彼が算定日数制限を誘導したのではない。また、除外規定も諸批判が噴出したために作られたのではなく、それ以前に彼が厚生労働省(厚労省)に働きかけて拡大したものである。もし彼がいなかったら、今回の改定はもっと酷いものになっていたであろう。非難すべき相手を間違ってほしくない。
 私見では、たとえ算定日数について規制が必要だとしても、リハ医療に精通した医師が診察診断した上でのリハ処方は認める、規制は頻度制限で行うなど、もっと柔らかな方法を導入すべきで、一律で繊細さに欠ける今回の改定はお粗末であった。そして、私たちがこのようなお粗末な結果しか得られなかった最大の原因は、言い訳がましいと言われるのを覚悟で弁明すれば、今回の改定が「私たちがコミットする以前に、既に多数の問題をもつ異質な大枠が決められていて、それに対して、限られた期限の中、種々の力関係の中で、軽んぜられながら、反駁に終始しなければならなかった過程」だったことに由来すると考えている。従って、最近になって厚労省が今回の改定について頻発している「関連学会の意見を聞いた上で〜」というコメントにあるこの「関連学会」の主たる団体はリハ医学会ではない。昨年の9月の時点で、彼らがリハ関連4団体としたのは、整形外科学会、臨床整形外科医会、運動器リハ学会、リハ医学会であり、リハ医学会はやっと最後に挙げられていて、もちろんリハ病院・施設協会や各療法士協会は入っておらず、厚労省担当課長も実際このような認識であった。そのために急遽、「リハ関連5団体」を作ったのである。
 今回の改定で長期的に見て深刻な問題は、疾患別の単位化と各療法の独自算定の廃止だと思う。リハ医療は本来、各科による疾患別治療という「縦糸」に対する障害治療という「横糸」として存在すべきものであり、疾患別という概念が大前提のように議論されてきたのは根拠のないもので詭弁である(詳細は省く)。また、各療法での算定がなくなったのは、専門性軽視以外の何物でもない。つまり、改定過程が示したのは、未だにリハ医療がほとんど理解されていないということであった。
 リハ医学会には、リハ病院・施設協会や各療法士協会と連携を図りながら、国民により良いリハ医療を提供するためにより適切な制度の提言をしていく責務がある。」(全文)

石川 誠(日本リハビリテーション病院・施設協会副会長) 2007/01/15 「日本リハ病院・施設協会の場合」,『リハニュース』32
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

 「平成18年の診療報酬は、平成15年3月に閣議決定された「医療に関する基本方針」、平成17年12月の「医療制度改革大綱」を基盤として、平成20年度から施行される「医療費適正化計画」を前倒しする形で実施された改定と考えられる。
 当協会には平成17年8月末に厚労省保険局医療課から改定案の原型が示された。これをみた幹部は愕然とした。「リハ施設基準の疾患別体系への再編と算定日数制限」が示されていたからである。運動器リハ学会、臨床整形外科医会から運動器リハ施設基準の新設要望があるためとの説明を受けたが、算定日数制限や総合リハ施設基準の廃止に関しては理解できず、断固反対と繰り返し主張した。しかしリハ病院・施設協会の単独交渉では成果が期待できないと判断し、リハ医学会、理学療法士協会、作業療法士協会、言語聴覚士協会に連帯を呼びかけた。幸い各団体とも同様の考えであり、平成17年11月に「リハ関連5団体」として結束し交渉にあたることになった。
 以降、各団体から数名の幹部により構成される会議において、密な情報交換を行い、徹底的な議論の上、共通の要望を掲げ厚労省と交渉していった。入院の算定日数制限には同意したが、外来は日数制限ではなく回数制限とすること、総合リハは存続させることを主張し、平成18年3月ぎりぎりまで厳しい交渉が続いた。
 しかし、残念ながら総合リハ施設は形骸化し疾患別施設基準に決定された。ただし、算定日数制限には除外規定が設けられた。除外規定に関しては当初多くの誤解が生じ現場では混乱が続いた。失語症や高次脳機能障害を伴わない脳卒中片麻痺は180日でリハ打ち切りと考えた医療機関が多かったのである。厚労省は3月末〜4月末にかけて疑義解釈の通知を連発したが未だに混乱は収まっていない。しかし、リハの集中実施期間は短縮されたとはいえ日々の提供量は増加し、状態悪化時を起算日とできること、介護保険では算定日数制限はなく、短期集中リハ加算が新設されたことは若干の救いとなった。
 今回の改定で最も重要な点は、急性期・回復期リハは医療保険、維持期リハは介護保険に整理されたことである。したがって、診療報酬の次回改定で平成18年度改定の問題解決を要望するとともに、介護保険のリハの重点整備が大きな課題となろう。各医療機関が介護保険によるリハの充実に努力するとともに、「リハ関連5団体」が結束し継続的に厚労省に働きかけることが一層重要になったと考える次第である。」(全文)

◆日下 隆一(日本理学療法士協会副会長) 2007/01/15 「日本理学療法士協会の場合」,『リハニュース』32
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

 日本理学療法士協会調査(以下、協会調査)n=132、北海道理学療法士会調査(以下、北海道調査)n=84、東京都理学療法士会調査(以下、東京都調査)n=198を基に、施設基準のあり方について考察した。なお、協会および東京都調査は、集計途中のデータである。
 □ 新たな施設基準を取得した施設の割合は、運動器リハI85%、脳血管リハII 60%、呼吸器リハI 51%、脳血管リハI35%、運動器リハII 14%、呼吸器リハII 11%、心大血管リハI 5%、心大血管リハII 2%であった。
 □ 調査施設全体の点数の増減(昨年度と今年度の6月の比較)は、北海道調査では−5.4%、協会調査では−4.1%であったが、個別にみると、点数減施設57%、点数増施設25%、点数不変施設11%であった。
 □ 点数減施設の特徴は、
急性期リハができなくなった 10%
維持期リハができなくなった 65%
 □ 点数増施設の特徴は、
急性期リハができるようになった 32%
回復期リハができるようになった 40%
維持期リハができなくなった 42%
 □ 患者数の増減でみると、点数減施設の66%、点数増施設の24%で患者数の減少がみられた。
 □ 常勤理学療法士数の増減は、東京都調査では平均0.2人の増であるが、協会調査では点数減施設0人(増減なし)、点数増施設1.5人増であり、理学療法士を募集して満たせた施設は全体の37%であった。
□ 施設基準の面積用件に関して取り組んだ施設は全体の11%であるが、点数減施設では6%、点数増施設では18%であった。
 調査結果は、新たな施設基準取得への施設の積極性が点数にも影響を与えていることを示唆するものであったが、突出した運動器リハI施設数の状況は施設基準に問題があったものと思われる。特に、脳血管リハI施設が極めて少ない状況は、単に点数に関わるだけでなく、急性期リハの充実、さらには在宅ケアにおけるリハ提供体制にも影響を与えるだけに、見直しが必要と思われる。この場合、面積用件に取り組める施設状況ではないこと、面積用件の重要性が低下していることなどを勘案すると、面積用件を大幅に緩和し、人的用件に関しても社会情勢に相応し緩和からの逓増性という考え方が必要と思われる。これは、リハ拡充に消極的な施設のリハ提供拡充を促すものであると考えられる。また、理学療法士の需給問題は、次第に好転していると思われた。」(全文)

◆中村 春基(日本作業療法士協会副会長) 2007/01/15 「日本作業療法士協会の場合」,『リハニュース』32
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

 今回の診療報酬の改定に対して、(社)日本作業療法士協会(以下、協会)では、昨年6月と9月に影響調査を行ったのでその一部を紹介する。
 □ 調査対象および調査方法:調査は旧リハ施設基準が作業療法I、作業療法IIを各150施設、発達障害領域50施設を無作為中抽出し、アンケート調査を行った。回答数は98施設(28%)で、うち身体障害系は86施設(29%)、発達障害系は12施設(24%)であった。
 □ 結果:疾患別リハ施設基準取得状況は、旧Iの施設は、脳血管I、運動器Iをほぼ全施設で取得していた。呼吸器リハIは58%、心大血管リハIは13%であった。旧IIでは、運動器Iが88%、脳血管Iが46%であった。
 □ 1カ月間の部門実績集計は、作業療法実施対象者数は、脳血管リハI(75,823人、2,001,589単位)、運動器リハI(19,696人、319,879単位)、脳血管リハII(49,024人)、運動器リハII(692人)、呼吸器リハI(327人)であった。訓練時間は2単位実施が49%、3単位以上実施が18%、1単位実施が33%であった。
 □ 疾患別リハの実施内容では、呼吸器リハを除き、「運動」が最も多く、ADL、上肢動作の順で実施されていた。呼吸器リハでは身辺処理が最も多かった。
 □ 在宅訪問リハ指導管理料の実施件数の変化では、増加が12%、変化なしが88%であった。実施単位数では1単位が58%、2単位が40%、3単位以上が1%であった。その実施内容をみると、運動、起居・移動が最も多く、次いで上肢動作、感覚・知覚へのアプローチ、生活・社会適応、代償手段の適応等の順であった。
 □ 算定日数制限については、3月時点での対象者の50.5%が日数制限対象者であった。3月時点での修了者の54%は介護保険関連事業へ移行し、サービス等利用なしで在宅生活となったケースは19%であった。OT対象者の46%がリセットの対象となり、6.8%が訓練終了となった。10月の日数限定による修了者対象者は1,710名であり、修了者中90.2%は継続して訓練が必要と捉えられている。また、修了者中38.9%は介護保険への移行が困難であった。
 □ 集団訓練については、63.4%が改定後集団訓練を廃止し、集団訓練導入者の34.5%は個別訓練移行している。しかし、22%の施設で現在も集団の形態を活用しており、集団の特性を活用した訓練の必要性を認めている。
 □ 収益の増減では、旧Iでは、増収57%、減収34%、増減なしが9%であった。旧IIでは、増収36%、減収59%であった。
                     ◎
 以上、中間報告の概略を紹介したが、協会はこれらの調査結果を踏まえ、リハ医学会が要望した4項目*に加え、(1)心大血管リハおよび呼吸器リハ対象者への作業療法を提供できる体制、(2)急性期リハの充実のために、発症後一定期間を対象に、集中的、総合的なリハが提供できる体制の充実、(3)療法別報酬体系の設置、(4)集団作業療法の設定、(5)訪問リハステーションの設置等について重点的に取り組んでいく。
 最後に、次回改定に向けてはリハ医療関連団体が一枚岩になり関係団体に働きかけることが必須であると認識している。作業療法士有資格者数は現在33,696名で、5年後は5万人を超える職能集団となる。国民の健康と生活の向上に寄与できる集団として、協会は今後も「質」と「量」を担保していきたい。
*リハ医学会が要望した4項目については、学会HP、学会誌43巻12号をご覧ください。」

◆長谷川 賢一(日本言語聴覚士協会副会長) 「日本言語聴覚士協会の場合」,『リハニュース』32
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No32/frame_32.htm

 昨年5月の時点における現状は脳血管Iの施設は約50%、言語聴覚士のみで施設基準Iの施設は約2%、基準IIは約28%、基準なしの施設が約7%となっている。Iの施設はほとんどがそのままIに移行したが、IIの施設はIに移行が約42%、移行なしが約44%である。Vの施設は約40%がIもしくはIIに移行したが、残りは施設基準が取れていない。医療と介護分野における言語聴覚士の数を比較すると、改定前後で変化はなく、ほとんどが医療分野で、介護分野は10%に満たない。現在の言語聴覚士数は約11,300名であるが、絶対数が不足している現状にある。
 検討すべき課題としては疾患別施設基準、算定日数制限、施設基準IIの診療報酬、回復期リハ病棟への言語聴覚士の位置づけなどが挙げられる。中でも今回の最大の変更点である疾患別施設基準は、疾患から派生する様々な障害に対応するというリハ分野の特性から検討を要する点が多い。特に脳血管疾患は合併する障害も多く、包括的な施設基準のほか、人員配置も含め検討の余地があると考える。
 介護保険においても言語聴覚士は様々なサービスに位置づけられ、活躍の場が広がってきた。しかし、訪問看護ステーションからの言語聴覚士による訪問サービスでは業務内容に制限が設けられている。当協会が行った在宅サービスの実態調査によると、利用者は多彩な障害を持っており、また嚥下障害以外に様々な訓練ニーズを持っている。言語聴覚に障害のある方が、限定した訓練しか受けられない状況は問題であり、制限条項を削除すべきと考えている。
 今後の方針としては、改定直後の調査に続き、今年1月には第2回目の実態調査を行い、現状を把握するとともに今後の対策についてまとめることにしている。これをもとにリハ関連5団体とも連携を図りつつ幅広く活動していく考えである。保険以外の取り組みとしては、介護保険分野、小児・聴覚分野、教育・福祉分野への取組み促進のほか、障害児・者の多様なニーズに対し、質の高い専門的サービスで応えられるよう生涯教育を更に充実し、言語聴覚士の資質向上を図っていく方針である。」(全文)

◆2007/03/10 市民シンポジウム「これからのリハビリを考える市民の集い」
 http://hodanren.doc-net.or.jp/news/unndou-news/070313riha-sinnpo.html
 http://www.youtube.com/watch?v=GntS-nGa2Rs
 日時 :2007年3月10日(土)  14〜16時
 会場 :東京・両国・KFCホール 3F 地図
 シンポジスト :各関係団体(国会議員 患者団体 医療団体等)と要請中
 入場料 :無料(定員:360名)
 問合せ :全国保険医団体連合会 リハビリシンポ担当 Tel:03-3375-5121

 「三月十日には、全日本保険医団体連合会の主催でこれからのリハビリ<0110<を考える会」という市民集会が開かれ、私も車椅子で参加し、挨拶しました。三百七十人に及ぶ患者の悲痛な声は、私の「忿怒佛」を燃え立たせました。
 みな障害をもった人たちです。無常なリハビリ打ち切りで、どんな被害を蒙ったかを、泣きながら訴えていました。出席もしない厚労省からの、挑発的なメッセージが読み上げられたときは、会場全体がどよめきました。」(多田、石牟礼・多田[2008:110-111]*、「これは基本的人権の問題です。」に続く部分)

◆2007/03/25 「「リハビリ難民」政治動かす 来月から日数制限見直し」
 『しんぶん赤旗』
http://a-koike.gr.jp/doctor/iryou/iryou070325_2.html
 厚生労働省は、保険の利くリハビリテーション医療に設けていた日数制限を見直し、四月から新しい診療報酬で実施することを決めました。日数制限の設定は昨年四月から導入されたものですが、リハビリの必要があるのに、打ち切られた患者が続出。実施からわずか一年で、大幅修正を迫られる事態となりました。(宮沢毅)
◇48万署名
 「四十八万人の署名が提出された。医療現場も混乱をきたしている。こうした事態を私は重く受け止めている」
 日数制限見直しを了承した十四日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)総会で、土田武史・中医協会長は、早急な見直しの必要性を強調しました。
 一部の委員から「わずか二時間足らずの議論でいいのか」という声も出ましたが、土田会長は「一割の人が(リハビリの)対象から外れている。緊急性がある」と強調。二年に一度という通常の診療報酬改定の周期を前倒しする異例の措置を決めたのです。
◇被害続出
 「リハビリを打ち切ると病院から突然通告され、困っています」。昨年三月、赤旗編集局に悲痛な訴えが次々と届きました。その一カ月前に厚労省は、リハビリ医療を、原則として四種類に分類し(1)脳血管疾患百八十日(2)心臓疾患百五十日(3)運動器百五十日(4)呼吸器九十日という上限を設定。四月実施に向け、病院に徹底していました。
 内容のひどさとともに、実施直前に患者に伝える乱暴な手法に患者や医療機関の批判が集中しました。日本共産党の小池晃参院議員の提起なども受けた厚労省は、「周知期間」を設けるとして、本格実施を最大半年延長する措置をとりました。しかし、自らもリハビリを続ける東京大学名誉教授の多田富雄氏が新聞の投書で「リハビリ中止は死の宣告」(「朝日」四月八日)と訴えるなど患者の怒りは日増しに広がります。
 六月には全国組織「リハビリ診療報酬改定を考える会」が発足し、わずか一カ月ほどで四十万人を超える署名を集め、日数制限の白紙撤回を要求する運動に発展しました。全国保険医団体連合会(全国保団連・住江憲勇会長)は大規模な全国調査を実施し、リハビリ打ち切り被害が二十万人以上にも達する危険があることを警告しました。日本共産党は国会で政府に「日数制限の緊急停止」を迫りました。
 テレビや新聞でもひんぱんに「リハビリ難民」という言葉が登場するなか、厚労省も昨年末になって、ようやく実態調査を実施しました。その結果、リハビリが必要な患者の治療が打ち切られている例が少なくないことが判明し、今回の見直しのきっかけとなりました。
◇問題点も
 今回の見直しは、「全面撤回」とはいえないものの、かなり広範にわたる改善となっています。
 ▽日数制限の除外疾患に心臓疾患を追加した▽「改善が見込まれない場合」でもリハビリが継続できるケースを認める▽介護保険の受け皿がない場合、維持期のリハビリは継続できる―などです。(別項)
 ただ、「医療費への財政支出を増やさない」姿勢を変えていないため、日数を超える維持期のリハビリの診療報酬点数を低く抑えるなど問題も少なくありません。
 リハビリ打ち切り問題の大本には、自民・公明の与党と政府による医療費抑制政策があります。昨年四月の診療報酬改定は、マイナス3・16%という過去最大の引き下げでした。これは国庫負担を約二千四百億円減らし、診療報酬全体で約一兆円を削減するという大規模なものでした。そのひずみが集中的に現れたのがリハビリ患者切り捨て政策でした。
 欠陥が露呈した日数制限の制度の手直しに終わらせるのではく、日数制限の全面撤回・制度の再構築が改めて求められています。

◇改定ポイント
 ▼リハビリ改定のポイントは次の通り。
 (1)急性心筋梗塞(こうそく)、狭心症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)を日数制限の対象から新たに除外する。
 (2)日数制限の対象の疾患であっても、医師が必要と認め、改善の見込みがある場合は、リハビリは継続できる。
 (3)改善が見込まれない場合でも、治療上有効と判断された障害者、先天性・進行性の神経・筋疾患(筋萎縮性側索硬化症=ALSなど)患者のリハビリは継続できる。
 (4)介護保険を受けられない四十歳未満の患者や、介護保険で適切なリハビリが受けられない患者に対応する制度を新設。日数制限を過ぎても、身体機能維持のリハビリは可能とする(疾患の区別なしに実施)。」

◆鶴見 和子・大川 弥生・上田 敏 20070801 『回生を生きる――本当のリハビリテーションに出会って 増補版』,三輪書店,319p. ISBN-10: 489590279X ISBN-13: 978-4895902793 2100 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

◆2007 診療報酬改定:算定日数上限の除外対象患者の範囲が拡大されるとともに、「リハビリテーション医学管理料」の新設により、医療保険でも維持期リハビリテーションが実施できるように

◆二木 立 20071108 『『医療改革 危機から希望へ』,勁草書房,235p. ISBN-10:4326700572 ISBN-13: 978-4326700578 \2835 [amazon] ※

◆多田 富雄 20071210 『わたしのリハビリ闘争――最弱者の生存権は守られたか』,青土社,172p. ISBN-10: 4791763629 ISBN-13: 978-4791763627 1260 [amazon][kinokuniya] ※ r02

 「急性期、回復期に手厚いリハビリを認めたのに対して、維持期の患者に上限日数<0017<を決めたのは、リハビリを続けても目立った効果が期待できないからと繰り返した。そもそもこの措置が決められたのは、「高齢者リハビリ研究会」の専門家によって、「効果の明らかでないリハビリが長期間にわたって行われている」という指摘があったからだと言われている。これも真っ赤な嘘であったことが後日わかった。
 これは、二〇〇六年一一月二八日の衆議院厚生労働委員会で、社民党の福島みずほ党首の質問で明らかにされたが、厚労省幹部永田邦雄保険局長の、ぬらりくらりとした答弁でうやむやにされた。議事録には書いてない合意があったというが、そんな合意がいつどこでなされたかなど、一切証拠はなかった。またそんな形で都合よく利用されていても、専門家と称する「高齢者リハビリ研究会」のメンバーのリハビリ医は、一言も反対しなかった。腰抜けというほかない。
 この「高齢者リハビリ研究会」は、日本のリハビリ医学の先駆者である上田敏氏が座長を務めている。鶴見和子さんに発病一年後からリハビリを実施し、何とか歩行機能を回復させた功績があるのに、一般患者には、半年で打ち切るという案に合意したとは考えられない。またそんな証拠はどこにもなかった。それなのにこの偽の合意が、このよ<0018<うに患者を苦しめていることに対し、一言も反対の声を上げないのは、学者として、また医師としての良心に恥じないのだろうか。」(多田[2007:17-18])

 「この闘争で、ひとつ気にかかったことは、このような社会問題と化したリハビリ打ち切りに対する、専門家の集団としての学会の態度の曖昧さである。
 「高齢者リハビリ研究会」の官僚べったりの腰抜けの態度については先に述べたとおりだが、こうした反動的意見では、日本リハビリテーション病院・施設協会副会長の石川誠氏の発言が指導的であった。
 急性期、回復期の患者だけを対象とする病院は、慢性期のリハビリ打ち切りで、大きい利益を受ける。石川氏は厚労省に太いパイプを持ち、他方では大手セキュリティ企業のセコムを後ろ盾にした私立の回復期専門リハビリ病院長である。リハビリ上限日数によって、回復期の手厚い診療が保障されれば、彼の思う壺である。<0029<」(多田[2007:29])

 「こんな事態になっても、日本医師会はずっと押し黙ったままです。腰抜けといわれても仕方ありません。リハビリテーション医学会の学者も、初めは知らんふりでした。私たちが騒ぎ立ててから、やっと昨年の末になって、気のぬけた声明を出しただけです。職責者として、また専門家として、恥ずかしくないのでしょうか。」(多田[200704]→石牟礼・多田[2008:108])

 
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 ■2008

向井 承子 20080201 「超高齢社会と死の誘惑」,『現代思想』36-2(2008-2):101-109(特集:医療崩壊――生命をめぐるエコノミー)
 「なにより残念なのは、重箱の隅をいじりまわすような「操作」でいのちをも奪う制度の倫理性を語る専門家をほとんど知らないことである。
 脳梗塞の後遺症のリハビリを打ち切られようとして指一本の執筆活動で厚労省に闘いを挑んだ免疫学者の多田富雄氏は、医療費削減政策下での診療報酬制度の操作を「まるで『毒針』(『わたしのリハビリ闘争』)と鋭く指摘された「毒針」の意味を歴史を踏まえて分析評価する専門家の登場を、二〇年以上、ただ当事者として書き続けてきた私は待ち焦がれている。」(向井[2008:109]、最後の部分)

立岩 真也 20080201 「有限でもあるから控えることについて――家族・性・市場 29」,『現代思想』36-2(2008-2):48-60 資料→立岩[2009:]* *2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 3360 [amazon][kinokuniya] ※ et. English

 「[…]これもひとまずは単純に論理的な誤りである。つまり医療やリハビリテーション――と呼びうること――を行うのが有効である/有効でないという区分と、(もとに戻るという意味での)なおる/なおらないという区分とは別のものなのだが、つなげられてしまう。その結果、なおらないが有効である場合にそれを使うことができないことになる☆02。」(立岩[2008:50])
「☆02 近年のことについて多田富雄『わたしのリハビリ闘争――最弱者の生存権は守られたか』(多田[2007])。」(立岩[2008:58])

多田 富雄 20080301 「死に至る病の諸相」,『現代思想』36-3(2008-3):40-47→多田[2010:140-156]

◆天田 城介 2008/05/01 「リハビリ・1」(世界の感受の只中で・13),『看護学雑誌』(Vol.72 No.05).**-**.医学書院
 http://www.josukeamada.com/bk/bs07-13.htm

◆2008-06-24 「回復期リハビリテーション病棟急増の背景ほか」
 http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20080624/1214307038

◆石牟礼 道子・多田 富雄 20080630 『言魂』
 藤原書店,216p. ISBN-10: 489434632X ISBN-13: 978-4894346321 2310 [amazon][kinokuniya] ※

◆2008/06 「リハビリ日数制限撤廃運動の経過報告(2007年4月〜2008年4月)」
 『ポリオの会会報』
 http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/archive/2008rehabilitation4.pdf

◆2008/03/28 土田武史「残された課題は多い――2008年度診療報酬改定(4)」(インタビュー)
 【特集・第4回】 2008年度診療報酬改定(4)
 土田武史さん(早稲田大学商学部教授)<下>
 キャリアブレイン
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/15285.html;jsessionid=5B081E24820E8CB6B9B9FC64665336EB

 過去最大のマイナス改定だった2006年度の診療報酬改定は医療費抑制や政策誘導が強く打ち出された改定となり、今回の改定は「前回の後始末」とも言われている。3月26日、診療報酬改定を審議する中央社会保険医療協議会(中医協)の会長を任期満了で退任した土田武史さん(早稲田大学商学部教授)は04年、06年、08年と3回の改定にかかわった。これまでの改定と今回の改定はどこが違うのか、次回の改定の方向性などについて話を聞いた。(新井裕充)
――中医協の公益委員として3期6年間、会長として2回の改定にかかわった感想をお聞かせください。
 私が2002年に公益委員に入った時の最初の議題は再診料の逓減制をめぐる現場の混乱でした。今回、再診料の引き下げ問題がありましたので、「再診料の混乱に始まり、再診料で負けちゃった」というところです(笑)。しかし、負け惜しみではなく、外来管理加算の見直しに手を付けたことは良かったと考えています。
――これまでの改定と今回の改定はどのような点が違いますか。
 2004年度改定までの中医協は改定率の議論が中心で、1号側(支払側)と2号側(診療側)の意見をどうやって一致させるかということが課題になっていました。改定率が決まると3分の2以上は終わりです。年が明けると点数設定の議論に入りますが、既にヤマを越えていますので、あとは(厚生労働省保険局の)医療課と日本医師会に任せるだけでした。それが、中医協の汚職事件で「中医協改革」があったため、改定率を内閣が決め、改定の基本方針を社会保障審議会が決める方法に変わりました。つまり、06年度改定から中医協の議論が点数中心になったのです。
――前回(06年度)の改定率はマイナス3.16%でした。
 きつかったですね。03年の閣議決定で診療報酬改定の抜本見直しを行うことになり、それが06年度から始まりました。マイナス3.16%でしたので、良く言えばメリハリの付いた改定、別の言い方をすればかなり強引な改定でした。その影響として、リハビリや7対1入院基本料の見直しなど、メリハリの付き過ぎた改革は後始末が大変だということが1つの反省材料になりました。そこで、今回は大きな改革をバサッとやるよりも慎重に、小刻みにやるという手法を取ったのでしょう。振り返ると、今回はそういう改定です。しかし、基本的な流れは同じです。やり方が違うだけです。
――基本的な流れとは、どのようなことでしょうか。
 病院と診療所の区分、急性期疾患と慢性期疾患の区分、病気の難易度に応じた診療報酬体系、患者が納得する診療報酬体系など主に4つあります。この中には足踏み状態のものもありますが、基本的な流れは今回も次回も同じでしょう。全体的に大きな改革をしていかないと、日本の医療のパフォーマンスを保てないことは確かです。これまで、日本の医療は奇跡的に良かった。費用が安くて治療効果は高く、寿命も伸びるし、新生児の死亡率も低い。しかし、高齢化と経済のグローバル化は進むし、小泉改革で財政的な圧力が強くなってきたため、今までのパフォーマンスを維持することが難しくなってきたのです。
――「医療崩壊」と言われています。
 医療崩壊は明らかに進んでいます。これまで3回の改定にかかわり、一生懸命にやってきたつもりですので、その時は「うまくいった」と思うのですが、後で振り返ると必ずしも適切ではなく、がく然とします。財政面、医師を増やさなかったことなど、いくつかのファクターがありますが、診療報酬改定にも責任があります。

□療養病床の再編やリハビリの逓減制は問題が多い
――06年度改定、具体的にはどのような失敗が挙げられますか。
 療養病床の再編やリハビリの逓減制などです。星野前会長の時代は改定率の議論が中心でしたから、コスト分析がベースでした。コストが安くなればそれを反映させる。病院を過度に儲けさせることはしないが、かといって赤字にさせることはしない。そういうコストを正確に反映した診療報酬体系が基本だったのですが、前回のように改定率がマイナス3.16%にもなると、明らかに医療費コントロールと政策誘導が強くなります。例えば、療養病床の医療区分1の点数を下げれば患者を介護保険に移行させるという流れをつくる。リハビリの逓減制もそうです。
――今回はプラス部分を病院勤務医の負担軽減に充てました。
 医療費を増やせないので診療所から財源を持ってくるということは本来やるべきではありません。しかし、今回も医療費コントロールが強く、やらざるを得ませんでした。診療報酬はコストを反映させるのがベースだと考えますが、政策誘導や医療費抑制というファクターも入れていかざるを得ません。コストを反映させる改定では支払側と診療側との折り合いが付きやすいのですが、政策誘導が絡むとなかなかうまくいきません。医療費抑制となれば、完全に利害が対立します。今後も政策誘導や医療費抑制のファクターは入るでしょうから、対立する場面が増えるでしょう。
――今回の中医協では労使交渉のような場面が多くありました。
 中医協は数少ない当事者自治の組織で、どこかで折り合いをつけなくてはいけません。上からバサッとやるのではなく、不満を残しながらもどこかで歩み寄ることが必要です。しかし、合意形成がだんだん難しくなってきました。以前はマクロベースの議論で、物価の上昇率など経済との関連性を議論しました。医療費コントロールが強くなり、点数中心の技術的なミクロの話になりますと、中長期的な視点が弱くなります。公益委員に求められるのは、ここをかじ取りすることでしょうが、なかなか難しいですね。
――点数設定の技術的な議論になると、医療課のペースになります。
 非常にうまかった。巧みでした。易しい議題から出してきたので、意図したことではないでしょうが、全体像が見えないという文句を言ったことがあります。また、総会の前日に医療課と打ち合わせをして、多くはそのまま進むのですが、総会を終えて帰宅してから問題があることに気が付くこともありました。あらかじめ練っておかないと、ブレてしまいます。

□残された課題
――会長は「残された課題」として初・再診料の抜本的な見直しなどを挙げましたが、それだけでしょうか。
 いや、もっとたくさんあります。例えば、回復期リハビリの成果主義は問題でしょう。成果主義というのは、生産や販売では数値目標が出ます。医療の場合、その数値をどのように出すか。「退院率」などと言うわけですが、そうすると患者選択をすることがあります。他の公益委員も反対していましたし、全国の医師から抗議のメールが来ています。リハビリの関係学会が成果主義の導入を認めたと聞いていますので、それが大きかったのでしょうが、リハビリに成果主義が本当に必要なのか疑問が残ります。検証をしながら進めてほしいと思います。ほかに、4月から始まる75歳以上の後期高齢者医療制度、医療と介護の接点の問題、療養病床と障害者施設の問題など、残された課題は多いです。
――産科・小児・救急はいかがでしょうか。
 正常分娩は医療給付化していくべきでしょう。かかりつけを持たない妊産婦の問題や少子化対策などを本気でやるのなら、給付率を高くして正常分娩を全部保険でやった方が良いでしょう。また、小児については前回にかなりやりましたし、予算を使い切れなかった対策もありましたので、今回はこれでいいでしょう。救急は難しいですね。夜間の診療所がうまく機能してくれればいいと思います。
――今後の日本の医療、どうしたら良いでしょう。
 年金や介護に比べれば医療は信頼性が高いと思います。しかし、今のうちに対応しないと大変なことになるでしょう。日本は対GDP比で医療費が安く、医師は少ないがパフォーマンスが良かった。医療事故の問題ばかりでなく、日本の医療の良さを国民が認識してほしいと思います。訴訟のために医療費の1割を使うようなアメリカ型医療に進んではいけません。残念なことに現実にはアメリカ型の医療に向かっていますが、医療はすべての国民に対して平等でなくてはいけません。国民皆保険制度は守らなければなりません。」

 
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 ■2009

◆2009-01-15 「厚労省の責任転嫁」  http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20090115/1232022552

◆田島 明子 2009/02/25 「「寝たきり老人」と/のリハビリテーション――特に1990 年以降について」『生存学』1:308-347
 http://www.arsvi.com/2000/090131t.htm

◆2009/04/15 『リハニュース』29 特集:平成18年度診療報酬改定
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No29/frame_29.htm

◆江藤文夫(日本リハ医学会理事長) 2009/04/15 「江藤理事長に聞く診療報酬改定」
 『リハニュース』29 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No29/frame_29.htm

 […]大高:次にこれも患者さん側にとって非常に深刻な問題ですが、算定日数の上限が疾患ごとに決められているということについてです。いくつかの疾患が除外されるようではっきりとはしていませんが、いずれにしてもこの切り捨てには大きな問題があると思うのですが。
 江藤:実際に、データをもっと整備していかないと、なかなか議論できない面があるのですけども、上限日数に関しては、どの程度根拠があるのかな、という疑問があります。その後は、どういうところで継続するか、ということになると、脳卒中でも運動器にしても、たぶん介護保険のほうでリハに関連する中身を充実させていこうという流れだと思います。機能回復がさらに続いているケースで、算定日数を越してやっている場合には、今の政策的な考え方では、医療保険の対象外と言っているのだと思います。ただし、算定日数制限は大きな流れとしては仕方ないとしても、オール・オア・ナッシングではなく、たとえば、「週1回は算定可能」といった細かな配慮が必要な問題と思っています。[…]」

◆田中 宏太佳(日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会 委員長) 2009/04/15 『リハビリテーション領域における平成18年度診療報酬改定について』
 『リハニュース』29 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/rihanews/No29/frame_29.htm

 […]平成18年2月15日には、中医協から答申が行われ、上記の内の2番目の項目の中で、リハに関係する診療報酬の改定内容が示されました。以下にその項目ごとに順を追って3月17日現在までに明らかにされていることを列記します。[…]
 ○表4 回復期リハビリテーションを要する状態および算定上限日数 [PDF ]
一 脳血管疾患、脊髄損傷等の発症又は手術後2ヶ月以内の状態 算定開始後 150日
(高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多発外傷の場合) 算定開始後 180日
二 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の骨折の発症又は手術後2ヶ月以内の状態 算定開始後 90日
三 外科手術または肺炎等の治療時の安静により生じた廃用症候群を有しており、手術後又は発症後2ヶ月以内の状態 算定開始後  90日
四 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経・筋・靱帯損傷後1ヶ月以内の状態 算定開始後 60日[…]」
おわりに
 今回の改定では、リハ診療報酬体系の枠組みが大きく変更されました。また急性期に重点を置いた点数配分がある面では促進されたことになります。算定日数制限の除外規定となる対象疾患においては、その程度に関して規定は無く判定基準は設けられていません。また廃用症候群や脳性麻痺等、および急性増悪では正確な日常生活動作の評価が求められるようになりました。リハを継続することで効果があると考えられる例の選択や、どのような状態に何単位のリハ治療を行うのかなどリハ医の的確な判断が今後ますます求められるものと思われます。」

◆澤田 石順(鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟専従医) 2009/05 「リハビリ棄民政策を阻止するための法廷闘争と言論活動」,『診療研究』447
 http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/suits/090510_reha-suits.pdf

◆多田 富雄 2009/09/03 「疑念を招く李下の冠――冠落葉隻語・15」,『読売新聞』2009-3-3夕刊→多田[2010:63-66]

 「この理不尽な制度を作った厚労省は、「効果のはっきりしないリハビリが漫然と続けられている」と、高齢者リハビリ研究会の指摘があったというが、そんな指摘は議事録にはなかった。むしろ、この制度を擁護し続けたのは、厚労省寄りの「全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会」の会長であった。
 慢性期のリハビリ打ち切りは、もっと早期に行われる回復期リハビリを充実させる政策とセットになっていた。回復期のリハビリを充実させることには、誰も異論はないが、その代償として、維持期、慢性期患者のリハビリ治療を犠牲にするのはあまりにも残酷である。それに回復期リハビリ病院の理事長が、自分の利益となる改訂の擁護をしているのは、どうしても疑惑を招く。
 その証拠に、制度発足から三年後の今、重度の維持期の患者が、リハビリ難民として苦しんでいるのに対して、回復期の患者を選択的に入院させる回復期リハビリ病院は繁栄を誇っ<0065<ている。難民となった維持期患者の医療費は、そっくり回復期の病院に回っている。利益誘導の疑念を持たれても仕方がない。
 この当事者にも、「李下に冠を正さず」という言葉をささげたい。」(多田[2010:65-66])
cf.全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会  http://www.rehabili.jp/index2.html
 会長挨拶 http://www.rehabili.jp/message/message.html
 
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 ■2010

◆2010/04/21 多田 富雄、前立腺癌による癌性胸膜炎のため逝去。76歳

◆多田 富雄 20100510 『落葉隻語――ことばのかたみ』,青土社,219p. ISBN-10: 4791765451 ISBN-13: 978-4791765454 1680 [amazon][kinokuniya] ※ r02.

◆2010/05/15 第3回 医療危機を考える公開懇談会

◆2010-06-23 「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」削除 http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20100623

 
 
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■文献

◆秋元 波留夫/上田 敏 構成 20050916 『99歳精神科医の挑戦――好奇心と正義感』,岩波書店,246p. ISBN-10: 400022543X ISBN-13: 978-4000225434 1995 [amazon][kinokuniya] ※ r02.
天田 城介 2008a 「死の贈与のエコノミーと犠牲の構造――老い衰えゆく人々の生存という戦術」『現代思想』36-3:82-101.
◆―――― 2008/05/01 「リハビリ・1」(世界の感受の只中で・13),『看護学雑誌』(Vol.72 No.05).**-**.医学書院
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◆鶴見 和子・大川 弥生・上田 敏 20070801 『回生を生きる――本当のリハビリテーションに出会って 増補版』,三輪書店,319p. ISBN-10: 489590279X ISBN-13: 978-4895902793 2100 [amazon][kinokuniya] ※ r02.
◆鶴見 和子・上田 敏 200307 『患者学のすすめ――“内発的”リハビリテーション 鶴見和子・対話まんだら 上田敏の巻』,藤原書店,238p. ISBN-10: 4894343428 ISBN-13: 978-4894343429 2310 [amazon][kinokuniya] ※ r02.
上田 敏 19830615 『リハビリテーションを考える――障害者の全人間的復権』,青木書店,障害者問題双書,327p. ISBN-10: 4250830187 ISBN-13: 978-4250830181 2000 [amazon][kinokuniya] ※/杉並369
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◆老い 2000〜
 http://www.arsvi.com/d/a062000.htm


UP:20100603 REV:20100604, 05, 06, 07, 10, 12, 15, 26, 0708, 12, 13, 20170723
多田 富雄  ◇リハビリテーション  ◇病者障害者運動史研究  ◇『現代思想』  ◇障害学  ◇社会モデル  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa
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