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障害者運動・対・介護保険――2000〜2003

立岩 真也 2010/06/30 『社会政策研究』10:166-186


 ※この文章は、加筆のうえ、『生の技法 第3版』(2012)の第11章「共助・対・障害者――前世紀末からの約十五年」になりました。お買い求めください。

『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』表紙

・関連項目
介助・介護
支援費制度 Assistance Benefit Supply System (for the Disabled Persons)
公的介護保険 Public Long-term-care Insurance

■英文要約
This paper reviews trends in policies regarding people with disabilities and the disabled movement that developed in relation to these policies following the introduction of public long-term-care insurance. People with disabilities opposed being put into the long-term-care insurance system established in April of 2004 because it would not allow them to live at home without placing a burden on their families. At that time they were not brought into this system. Beginning in April of 2003 the system of welfare for people with disabilities moved to a support payment system. This was basically just a partial change in the form of support supplied, but services which people with disabilities had essentially already obtained were recorded in a menu of services available and in practice this had the effect of informing people about the services already being used. The budget for related services had been expanded in 2002, and when in January of 2003 the Ministry of Health, Labour and Welfare stated its intention to impose an upper limit on services provided in conjunction with the introduction of the support payment system this announcement was met with strong opposition. As a result of this opposition the support payment system was implemented without an upper limit and a committee was established to consider how the system should be run in the future. Here once again an integration with long-term-care insurance containing restrictions regarding amounts of support was proposed. In this way the relationship between policymakers and people with disabilities continued to be strained. This series of events was also in part the result of the system of services obtained and spread throughout the country through the long efforts of the disabled movement. Restrictions were seen as necessary because of this movement's success in expanding support provided. Another factor which has caused difficulties for the disabled movement is the awareness, spread widely throughout society including in the mass media, of the limitations on available resources imposed by an aging society.

■和文要約(600字)
公的介護保険導入後の障害者施策の動向とそれとの関係の中で展開されてきた障害者運動の経緯を振り返る。2000年4月に開始された介護保険は、在宅で家族に負担をかけず暮らしていくことのできない制度だったから、障害者たちはこの制度に組み入れられることに反対した。その時には組み入れられなかった。障害者福祉の制度は2003年4月から支援費制度に移行した。それは基本的には供給形態を部分的に変更するだけのものだったが、これまで実質的に獲得されてきたサービスが制度のメニューに記載されることになり、実際に既に使える制度を人々に知らせる効果を有した。2002年の関連予算は増大し、2003年4月からの支援費制度の開始にあたりサービス提供に上限を設定する厚生労働省の意向が2003年1月に伝わると、強大な反対運動が起こった。そのため、上限設定は実現されずに支援費制度が開始されるとともに、今後の制度のあり方について検討会で検討されることになった。そこでは支給量の規定が存在する介護保険への統合案が再び語られた。こうして、行政側と障害者たちの緊張関係は継続していくことになる。この一連の出来事は、障害者運動が長い時間をかけて制度を獲得しそれが全国に広がってきた結果でもある。成功し拡大したために規制が必要だともされた。そして、高齢社会における資源の有限性という認識がメディアを含む広い範囲に存在することも、障害者の側の困難の一因ともなった。

■キーワード
 公的介護保険/障害者運動/支援費制度

 Public Long-term-care Insurance/Social Movement by Disabled People/Assistance Benefit Supply System

 注記:この文章は2004年に刊行を予定されていたと聞く本の1章としてその年の2月に書き終えられ、その内容を変更していない。もちろん、その後、様々なことが起こったのだが、分量の制約もある。また、この時期(まで)のこと、そしてその時点での筆者の了解と主張――基本的に変更の必要はないと考えている――をそれとして残しておくことにも一定の意義があると考えた。
 その後のとくに「障害者自立支援法」を巡る動きについては、立岩[2005]があり、岡崎・岩尾編[2006]に再録された。資源・財源(の有限性)について以下で挙げた筆者の[2000a]の一部は[2006][2008]に再録、あるいは加筆して収録された。また税制について立岩・村上・橋口[2009]が刊行された。(これらの文献のみ、文献表に追加してある。)また、2003年から2005年夏までの事態の推移についての資料集として立岩・小林編[2005]がある。また、ホームページhttp://www.arsvi.com/に関連情報を掲載している。併せてご覧いただければと思う。

 [以下略]

■文献(*はホームページに全文を掲載)

安積 純子・尾中 文哉・岡原 正幸・立岩 真也 1995 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補改訂版』,藤原書店
平岡 公一(研究代表者) 2003 『高齢者福祉における自治体行政と公私関係の変容に関する社会学的研究』,文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書(研究課題番号12410050)
ヒューマンケア協会 1999 『当事者主体の介助サービスシステム――カナダ・オンタリオ州のセルフマネジドケア』,編集:鄭鐘和 発行:ヒューマンケア協会・日本財団
―――――  2000 『セルフマネジドケアハンドブック』,ヒューマンケア協会
ヒューマンケア協会ケアマネジメント研究委員会 1998 『障害当事者が提案する地域ケアシステム――英国コミュニティケアへの当事者の挑戦』,ヒューマンケア協会・日本財団
中西 正司・立岩 真也 1998 「ケアコンサルタント・モデルの提案――ケアマネジメントへの対案として」,ヒューマンケア協会ケアマネジメント研究委員会[1998]
中西 正司・上野 千鶴子 2003 『当事者主権』,岩波新書
岡部 耕典 2004 「支援費支給制度における「給付」をめぐる一考察――「ヘルパー基準額(上限枠)設定問題」を手がかりに」,『社会政策研究』4
岡崎 伸郎・岩尾 俊一郎 編 2006 『「障害者自立支援法」時代を生き抜くために』,批評社
立岩 真也  1995a 「私が決め、社会が支える、のを当事者が支える――介助システム論」,安積他[1995:227-265]
―――――  1995b 「自立生活センターの挑戦」,安積他[1995:267-321]
―――――  1997 「「市町村障害者生活支援事業」を請け負う」,『ノーマライゼーション研究』1997年版年報:61-73*
―――――  1998 「ケアマネジメントはイギリスでどう機能しているか」,『ノーマライゼーション 障害者の福祉』18-1(1998-1):74-77*
―――――  1999 「資格職と専門性」,進藤雄三・黒田浩一郎編『医療社会学を学ぶ人のために』,世界思想社,pp.139-156
―――――  2000a 「選好・生産・国境――分配の制約について」(上・下),『思想』908(2000-2):65-88,909(2000-3):122-149
―――――  2000b 「遠離・遭遇――介助について」,『現代思想』28-4:155-179,28-5:28-38,28-6:231-243,28-7:252-277→立岩[2000d:219-353]
―――――  2000c 「多元性という曖昧なもの」,『社会政策研究』1:118-139
―――――  2000d 『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』,青土社
―――――  2002 「だれにとってのなんのための、資格?」,『ばんぶう』2002-06(日本医療企画)
―――――  2002-2003 「生存の争い――医療の現代史のために」(1〜14),『現代思想』30-2(2002-4):150-170,30-5(2002-4):51-61,30-7(2002-6):41-56,30-10(2002-8):247-261,30-11(2002-9):238-253,30-12(2002-10):54-68,30-13(2002-11):268-277,30-15(2002-12):208-215,31-1(2003-1):218-229,31-3(2003-3),31-4(2003-4):224-237,31-7(2003-6):15-29,31-10(2003-8):224-237,31-12(2003-10):26-42
―――――  2002- 「生存の争い――医療の現代史のために」,『現代思想』30-2:150-170,30-5:51-61,30-7:41-56,30-10:247-261,30-11:238-253,30-12:54-68
―――――  2003 「障害者運動・対・介護保険――2000〜2002」,平岡他[2003:79-88]
―――――  2004a ,岩波書店
―――――  2004b
,医学書院
―――――  2005 「障害者自立支援法、やり直すべし――にあたり、遠回りで即効性のないこと幾つか」,『精神医療』39:26-33→岡崎・岩尾編[2006:43-54]
―――――  2006 
『希望について』,青土社
―――――  2008 『良い死』,筑摩書房
立岩 真也・小林 勇人 編 2005 『<障害者自立支援法案>関連資料』,<分配と支援の未来>刊行委員会
立岩 真也・村上 慎司・橋口 昌治 2009 『税を直す』,青土社


UP:20100104 REV:20100120
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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